唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第113話

「すみません。お待たせしました」

 

午後5時前、個人ランク戦を済ませた俺は食堂の一角にいる柚宇に話しかける。柚宇は優しく笑いながら首を横に振る。

 

「まだ時間になってないから大丈夫だよ。それより尊君。そろそろ行こっか。案内よろしくね?」

 

「はい」

 

俺は頷きながら歩き始めると柚宇は大きな鞄を左手に持ち、俺にに並んで右腕を俺の左腕に絡めてくる。その際にC級男子からは睨まれるが気にしない。知り合いでもない奴に睨まれても怖くないからな。

 

一方知り合いに見られたら面倒だ。太刀川や出水は笑うし、桐絵はプリプリ怒り出すし、玲は冷たい笑みを浮かべてくるからな。

 

まあ玲と桐絵は夜まで防衛任務らしいから見られないだろうけど。

 

そう思いながらも基地を出て道を歩いていると柚宇が話しかけてくる。

 

「それで竜賀さんの借りてる部屋は近いの?」

 

ボーダー基地を出たからか、柚宇は小声で俺を竜賀呼びしてくる。

 

「歩いて10分以内だな」

 

「結構近いね〜」

 

「まあな。もし困ったことがあったらいつでも相談に来てくれ」

 

「えへへ〜、やっぱり竜賀さんは優しいな〜」

 

柚宇は幸せそうに笑いながら腕に抱きつく力を強めてくる。そんな柚宇を見ているとこっちも幸せな気分になってくる。

 

「そりゃどうも。対して柚宇は可愛いな」

 

「む〜、子供扱いしないでよ〜」

 

頭をわしゃわしゃすると柚宇は頬を膨らませながらジト目で見てくる。怒ってるつもりなのかもしれないが可愛いだけだからな?

 

そんなやりとりをしながらも俺達は俺が借りてるアパートに着いたので中に入る。

 

「まあ入ってくれ」

 

「お邪魔しま〜す……お〜、結構広いね」

 

柚宇はリビングに入るなり、そんな風に呟きながら部屋を見回す。そんな柚宇を見て和みながらも俺は鞄を床に置いて、ダンボールの開封をする。

 

「今から荷物の整理をするが、本当に手伝ってくれるのか?体力のないお前には厳しくないか?」

 

柚宇の身体能力なら本や小物が限界だろう。

 

「大丈夫だよ。トリガー、起動」

 

柚宇はそう言うと、ボーダー基地でよく見るオペレーターの制服を身に纏う。

 

「これなら大丈夫だよ」

 

「それは否定しないが、隊務規定的には……どうなんだ?」

 

ボーダー隊員に定められた隊務規定は色々あるが、トリガーの使用については罰が重い。

 

C級隊員は基地の外でトリガーを使ってはいけない、模擬戦を除くボーダー隊員の戦闘は禁止、民間人にトリガーを向けたり横流しにしてはいけないとかだ。

 

しかし自宅で荷物の整理に使うのはどうなのだろうか?私的利用だから悪いかもしれないが、第三者に迷惑をかけないから大丈夫な気がする。

 

問題があるとすれば使用している理由をボーダーに聞かれる事だ。トリガーには盗難紛失防止の為に位置情報がわかるようにしている。加えてトリガーの使用がわかるようになっていれば、私的使用と疑われるだろう。

 

「大丈夫だよ〜、さっき沢村さんにお願いしたら、そのくらいならって認めてもらったし。まあオペレーターのトリガーには武器がないからね」

 

どうやら問題はないようだ。その事に安堵しながらも俺はダンボールを開ける。

 

俺はトリガーを使わない。柚宇のトリガーには武器が装備されてないからまだしも、俺のトリガーには武器が装備されている。万が一にも暴発したら大変な事になるし、念には念を入れておく。

 

「じゃあ柚宇は食器とか炊飯器を頼む」

 

「ほ〜い」

 

柚宇は頷きながら棚の方に向かうので、俺はダンボールから本や服を取り出してクローゼットや戸棚に運び入れる。といっても一人暮らしだから、そんなに多くない。

 

世間の金持ちは服や靴を沢山買っているが、庶民派の俺は必要最低限だけあれば問題ないからな。

 

次々と荷物をクローゼットや戸棚に入れて、文房具や学校の教科書、パソコンを机の中に入れていく。

 

チラッと横を見れば柚宇は炊飯器をキッチンの一角に置いて、皿を次々に戸棚に入れていく。高いところに入れる際は背伸びをしているが、一生懸命に背伸びしているところを見ると癒されるなぁ。

 

そんな事を考えながらもこちらの整理を済ませて、柚宇の手伝いに向かう。柚宇が背伸びしながら持つ皿をスッと取って戸棚に入れる。

 

「ほれっ」

 

「ありがとね竜賀さん。後でお礼するから〜」

 

柚宇はそう言ってくるが、お礼と言ったらキスを思い出してしまう。これまでに柚宇のみならず、桐絵や玲もキスをしてきたからな。

 

まあそれならそれでありがたい。キスをされると幸せな気分になるし、俺としては今後3人がするスキンシップの内容にキスが追加されて欲しいからな。

 

とはいえ煩悩を出すと引かれそうだし一度は遠慮しよう。重要なのは引かれないようにすることだからな。

 

「気持ちは嬉しいが、この程度の事で礼なんかいらないぞ?」

 

「私が勝手にするだけだから気にしないで〜」

 

柚宇はそう返しながらも作業を再開する。そんな柚宇を見て嬉しく思いながらも俺も整理の再開をするのだった。

 

 

 

 

 

30分後……

 

「これで、良しっ……」

 

最後のダンボールの中の荷物を全て所定の位置に配置する。これで引っ越し作業は幕を下ろした。

 

「終わった終わった〜」

 

柚宇は伸びをしながらトリガーを解除して可愛らしい私服に変わる。

 

「手伝ってくれてありがとな。今度なんか奢る」

 

柚宇が居なかったらもう30分くらいかかっていたからな。礼の一つをするのは筋だろう。

 

「ん〜、じゃあご飯を奢るんじゃなくて、私のお願いを聞いてくれないかな?」

 

そんな風に頼んでくる。何でも命令を聞くってのはお約束ではあるが、柚宇の性格からして理不尽な要求はしないだろう。

 

「何だよ?」

 

「今日のお泊まり会で、竜賀さんと一緒にお風呂に入りたいから、一緒に入って」

 

そんな要求をしてくる。俺としては願ったり叶ったりだが、馬鹿正直にガッついてはいけない。

 

先ずは一方引いて質問する。

 

「理由を聞いていいか?」

 

「ん〜、竜賀さんともっと仲良くなりたいからかな。それとも竜賀さんは嫌?嫌なら無理強いはしないからね?」

 

口調はおっとりしているが、目には不安の色を宿している。そんな風に見られるとこっちが悪い事をしてるように思えてしまう。

 

「わかった。入るからそんな捨てられた子犬のような目は止めろ。恥ずかしい気持ちはあるが、嫌ってわけじゃないし」

 

言いながら柚宇の頭を撫で撫ですると柚宇は口元を緩ませて幸せオーラをポワポワと生み出す。

 

「えへへ〜、ありがと〜。ぎゅ〜」

 

柚宇は幸せそうにしながらもぎゅっと抱きついてくる。咄嗟のことで床に倒れてしまうが、こういうのも良いなと思い、優しく抱き返す。

 

それから俺達は腹が減り夕食の準備をするまでずっと抱き合っているのだった。

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