唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第10話

「さぁて……最近は唯我の練習に付き合ってご無沙汰になっていたランク戦をやるか」

 

ボーダーの廊下の一角にて、A級1位太刀川隊の出水公平は一人で廊下を歩きながらそう呟く。先程まで三輪隊の三輪秀次と米屋陽介の2人過ごしていたが、2人が防衛任務に向かったので1人となっていた。

 

その為暇になったので久しぶりに個人ランク戦が出来るC級ランク戦ラウンジに向かうと……

 

「ん?なんかいつもと空気が違うな」

 

ラウンジに入る直前にいつもと空気が違う事を察する。そしてラウンジに入ると、ラウンジにいる全員が巨大モニターを見ているのでそちらに視線を向けると、最近お荷物から卒業しかけている自分の隊の後輩が映っていた。

 

「おっ、唯我の奴遂に個人ランク戦デビューか。相手は村上……確か今期のスカウトで入隊した人だったな」

 

モニターには唯我と村上が互いのトリガーを駆使して戦っている光景を表示していた。2人の戦いはまさに一進一退の攻防であった。

 

 

唯我⚪︎⚪︎✖︎✖︎✖︎⚪︎⚪︎✖︎⚪︎

村上✖︎✖︎⚪︎⚪︎⚪︎✖︎✖︎⚪︎✖︎

 

(10本勝負で、今はラスト。ここまでの戦績は5ー4だからほぼ互角だな)

 

出水は試合を確認しながら自分の端末を操作して唯我の戦績を確認する。

 

(これまでに4試合やってB級下位レベルの相手4人に勝ち越し……今の唯我の実力は中級一歩手前ってところか)

 

端末で唯我の戦績を確認した出水は改めてモニターを見ると、唯我の右足は無くなっていて全身に切り傷が付いていて、村上の方は左手がボロボロになっていて使用不可な上に脇腹に穴が開いているなど、既に誰の目から見ても決着は目前だった。

 

(唯我のあの脚じゃ村上の攻撃はマトモに回避出来ない。対して村上は脇腹からトリオンが漏れまくっていて少ししたらトリオン体は破壊されるな)

 

長引けば唯我の勝ちである以上、村上が唯我に勝つには早めに仕留めないといけない。

 

それはモニターに映る村上も理解しているようで、大きく踏み込みながら唯我との距離を詰める。すると唯我は村上との距離が5メートルを切ると同時に村上の足元にグラスホッパーを設置して踏ませる。

 

分割してないグラスホッパーはそのまま村上を地表30メートル以上まで吹っ飛ばす。

 

同時に唯我は両手にトリオンキューブを生み出したかと思えばそれらを合わせ始める。つまり……

 

「実戦で合成弾を試すって腹か!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こいつで仕留める……)

 

俺は上空に飛ばした村上を見ながらメイントリガーのバイパーとサブトリガーのメテオラを合わせ始める。

 

以前出水から教えて貰った合成弾を初めて実戦で使用する算段だ。出水からやり方を教えて貰って以降、毎日仮装戦闘モードで練習していたので最初は30秒以上かかった合成も今では10秒で出来るようになった。

 

しかし村上を仕留められるかと言われたら微妙だ。村上が空中で体勢を立て直してから落下して俺を仕留めるのにかかる時間も10秒くらいだと推測出来る

 

ただ勝つだけならグラスホッパーで距離を取って離れた場所から射撃をすれば勝てるだろう。

 

しかしそのやり方はしない。ランク戦でも逃げの戦法を使ったら逃げ癖がついてしまう可能性があるし、逃げたら腰抜け扱いされて評価が下がるのは間違いない。

 

ボーダーの可愛い女子と仲良くなりたい俺としては評価を下げるのだけは見逃せない。タダでさえコネで入隊した事が理由で評判は良くないのだから。

 

そこまで考えてながら合成弾を製作していると空へ吹っ飛んだ村上が空中で体勢を立て直してこちらに落下してくる。弧月の切っ先はこちらに向けられている。

 

(落ち着け……揺らいだら合成弾の製作に支障が出る)

 

合成弾の不発で敗北とはマジで笑えない。てか出水にしばかれそうだ。

 

そう思いながらも俺は失敗することなく合成弾を完成させる。対する村上も弧月を構える。

 

そして……

 

「変化炸裂弾!」

 

「旋空弧月」

 

俺が放った変化炸裂弾は村上を囲むように放たれた後に爆発して、村上の弧月は射程が伸びて俺を真っ二つにする。

 

その結果俺と村上の身体は光に包まれて……

 

『10本勝負終了、勝者唯我尊』

 

そんなアナウンスが流れると同時にランク戦ブースのベッドに倒れこむ。9本目で俺が5ー4でリードしていたので最後の1本は俺が取ったのだろう。でなきゃ引き分けだし。

 

そう思いながら身体を起こしてモニターを見ると……

 

 

唯我⚪︎⚪︎✖︎✖︎✖︎⚪︎⚪︎✖︎⚪︎△ 4531→4571

村上✖︎✖︎⚪︎⚪︎⚪︎✖︎✖︎⚪︎✖︎△ 5141→5101

 

どうやら最後は引き分けだったようだ。

 

(5勝4敗1分……一応勝ったが余り喜べないな……)

 

何せ持っているカードを殆ど注ぎ込んでギリギリだったのだ。加えて村上には強化睡眠記憶のサイドエフェクトがあるので、奴が家に帰って寝たら俺の使ったカードは全て学習される。多分明日戦ったら良くて2ー8、下手したら完敗する可能性は充分にあり得る。

 

(まあどうこう言っても仕方ない。一応次に当たる時に備えて新しいカードを用意しておこう)

 

でないと今後村上に勝つのは難しいだろう。てか原作を読んでいた頃から思ったが、太刀川を始めとした村上が勝ち越せない攻撃手4人って化物だろ?

 

(ともあれ個人ポイント6000以下の5人と戦って勝ち越せって太刀川のオーダーは達成出来たし、次は6000以上7000以下の相手か……).

 

俺は今日までずっと太刀川隊作戦室で鍛錬していたので現在他の隊員がどれくらい個人ポイントを持ってるかはそこまで詳しくないが、入隊の時期を考えるとそれなりにいるだろう。

 

俺は次の挑戦者を探すべくモニターを見るも……ダメだ。6000以上7000以下の人間がいない。6000以下と7000以上は何人かいるが俺が探し求めている人間は1人も居なかった。

 

仕方ない、とりあえず休むか。ぶっちゃけ肉体的な疲れはなくても精神的な疲れはあるし。特に最後の村上との戦いは一戦あたり5分近く戦った。それも集中しながら10戦、1時間弱も戦ったのだ。

 

その前にも4人と戦ったので多分2時間以上個人ランク戦をやったから休みたい。とりあえず飯を食って仮眠室で休もう。

 

俺は方針を決めたのでブースを出て食堂に向かおうとする。と、同時に横から何か飛来してくる気配を感じたのでキャッチすると缶コーヒーだった。

 

「よう唯我。お疲れさん」

 

横を見ればお茶を持った出水がこちらに歩いてくる。

 

「どうも出水先輩」

 

「ああ。そんでやって来たらお前がモニターに映っていた。今日がお前のデビュー戦だったけどどうだった?緊張したか?」

 

「どうって……太刀川さんと出水先輩に何千回もボコボコにされたんでぶっちゃけ全然緊張しなかったですね」

 

何せNo.1攻撃手とボーダー屈指の射手の2人にしごかれたのだ。最後の村上との戦いはともかく、それ以外では特に緊張はしなかった。

 

「だろうな。しっかしお前、さっきまでお前の試合や戦闘記録を見たけど近距離でも射撃戦って、本当に射手らしくない戦闘スタイルだよなー」

 

出水はカラカラと笑うが事実だから怒らない。普通銃手や射手は離れた場所から射撃をするポジションだが俺の場合、近距離でもガンガン射撃をする射手と、最早原作の唯我尊と比べて完全な別人と化した。

 

「否定はしません。ですが二宮さんも俺と同じで近距離で射撃戦をやってるじゃないですか」

 

「いやいや。二宮さんの近距離での射撃戦は圧倒的なトリオンで相手を寄らせずに封殺するやり方で、お前の相手の攻撃を捌いて隙を突くやり方とは全然違うからな?」

 

ですよねー。自分で言っといて違うと思った。俺は二宮みたいにトリオン量は多くないから敵を封殺するやり方は使えない。よって射撃戦をするとしたら、離れた場所から射撃で戦局をコントロールするやり方と近距離で敵の攻撃を捌き隙が出来たら射撃をするやり方だ。

 

勿論前者も大切なやり方なのでマスターするつもりだが、太刀川との数え切れない近接戦をやったお陰で後者についても開花してしまったので、今のスタイルを捨てるつもりはない。

 

「まあそうですね。そういえば出水先輩もランク戦ですか?」

 

「まあな。お前はブースから出てきたってことは飯か?」

 

「はい。2時間近くランク戦をやったんで」

 

「それなら飯を食っといた方が良いな。食い終わったら反省会するから作戦室に来いよ〜」

 

「了解しました。宜しくお願いします」

 

俺は出水に一礼してから個人ランク戦のラウンジを後にして食堂に向かう。頭に浮かぶのはさっきまで行った5試合。

 

最後の村上戦はギリギリだったが、B級下位クラスの隊員には全員勝ち越せた。

 

その事から俺の実力は『B級下位の隊員の中では上位』または『B級中位の隊員の中では下位』ぐらいだろう。可能なら早いうちに諏訪や堤や笹森、荒船や那須や熊谷、照屋のように原作でB級中位に在籍している面々とも戦ってみたいものだ。

 

そいつらと互角もしくは勝ち越せたら、ボーダー内部における唯我尊の評価も比較的マシになるだろうし。

 

(まっ、思ったよりもランク戦は楽しかったし、今は楽しませて貰うか)

 

折角毎日ブラック企業で働くキツい生活から逃げれたんだしな。

 

そう思いながら俺は起こりうる未来に夢を馳せながら食堂に向かうのだった。

 

 

 

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