唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第143話

 

 

 

『………………』

 

俺達は今処刑を待っている気分だ。周りを見れば他の皆は目を瞑っている。

 

何せ………

 

「ふんふんふーん♪」

 

グチャグチャ

 

バキバキッ

 

ヌチャヌチャ

 

ジュルジュルジュル

 

グギュグギュ

 

調理したら絶対に出ない音が加古の可愛い鼻歌と共に流れているからだ。

 

しかも……

 

「二宮君の炒飯の隠し味はジンジャーエールで良いとして、若い三輪君、忙しい唯我君に東さんと冬島さんには元気がつくように栄養ゼリーね。堤君の炒飯は臭いが凄そうだし良い匂いのする桃も入れてみようかしら。ベビースモーカーの諏訪さんにはビタミンCが取れるように洋梨、蓮は肌が綺麗だし肌荒れの抑止力になるヨーグルトをいれるとして、太刀川君には何を入れようかしら?やっぱりタバスコ?」

 

何か隠し味にハズレ食材を追加しようとしているし。結局あのクジに神経を張り巡らせた意味は何だったんだ……

 

「あ、女の子と仲が良い唯我君の炒飯にはスッポンの生き血を追加で仕込むのも悪くないわね」

 

おぃ!マジでヤバいぞ。サルミアッキに栄養ゼリーにすっぽんの生き血なんて炒飯に入れない食材が3種類は流石にヤバいぞ。数日寝込むかもしれん。

 

そう判断したポケットから携帯を取り出す。幸い周りの人は目を瞑って祈っている……いや、冬島もメールを打っていた。

 

向こうも俺に気付くが小さく笑うだけで特に喋らない。どうやら考えている事は一緒のようだ。

 

そしてそのまま時間的に防衛任務が終わっているであろう早紀にメッセージを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?尊先輩からメール?」

 

防衛任務が終わって一息つこうとしていた早紀は携帯を取り出す。

 

「済まん。今加古さんの炒飯パーティーに参加しているが、ハズレ食材が最低でも3種類入る状況だ。会場に来て仕事を理由に俺をこの地獄から引き摺り上げてくれ」

 

それを見た瞬間、早紀は加古の作戦室に向かう。ハズレ食材一つだけでも泣きたくなるのに三つも入るとなればマジで唯我が死ぬかもしれない。

 

(というか3つって何があったらそんなに入るのよ)

 

地獄の炒飯パーティーの恐ろしさに震えながら早紀は歩く速度を速めて、作戦室の前に着くとインターフォンを鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン

 

(来たか!)

 

インターフォンが鳴った瞬間、俺の胸中に希望が生まれる。

 

「はーい」

 

キッチンからエプロン姿の加古が出てくる。エプロンにはカラフルな色が点在しているが気にしたら負けだ。

 

「って早紀ちゃんじゃない」

 

加古がロックを解除します。

 

「失礼します……やはりここにいましたか尊先輩」

 

早紀は怒りを滲ませた表情を浮かべるが演技だろう。

 

「ど、どうした早紀。そんなに怒って」

 

「どうしたも何もないでしょう。今日提出予定の来期の研修計画書、まだ出てないとさっき廊下で本部長に言われましたよ」

 

「げっ!」

 

本当は一昨日提出しているが、敢えて提出してないフリをする。

 

「やっぱり出してなかったんですね。らしくないですよ」

 

「い、いや……お前に対するクリスマスプレゼントを考えていたら忘れちまった」

 

「何馬鹿をやってんですか?とにかく時間がないんで今すぐ作成して貰いますから。加古さん、申し訳ありませんが尊先輩を引き取らせて貰います」

 

「あら、それなら仕方ないわね」

 

『っ!』

 

加古が頷くと冬島以外の人間が裏切り者とばかりに睨んでくるが俺も命が惜しいから許せ。

 

「ありがとうございます」

 

「良いわよ。ところで互いに名前呼びするって事はイブは楽しめたのかしら?早紀ちゃんが赤いドレスを着ていてやる気だったのは知ってたけど」

 

「っ!失礼しますっ!早く行きますよ!」

 

早紀は真っ赤になって俺の手を引っ張りながら作戦室から出ていくが、昨日のやり取りが撮られていたのかよ。頼むからラブホに出入りしている場面であるなよ。

 

内心ヒヤヒヤしながら作戦室を出て、エレベーターに乗ると早紀は恥ずかしそうに両手で頬を押さえる。

 

「……まさか見られていたなんて。似合ってないって笑われるかもしれないわね」

 

「そんな事ないぞ。俺はあの時のお前は綺麗だと思ったぞ」

 

「っ!へ、変なことを言ってからかわないでくださいっ!」

 

「変なことじゃない。あの時のお前は間違いなく綺麗だった。俺もお前に見惚れて「煩いですよ竜賀さん……!」痛ぇっ!足を踏むな足を!」

 

「知りませんよ、馬鹿……!」

 

早紀は足を踏みながら俺の脇腹を殴ってくる。助けてくれたのは感謝するが、痛いからな。

 

ここでエレベーターが止まったので早紀も攻撃をやめてくれる。

 

「っと、礼を言うのを忘れてた。助かった早紀。お前が来なかったら俺は死んでいた」

 

「っ……お気になさらず。ところでハズレ食材が3種類と言っていましたが、何だったんですか?」

 

「サルミアッキ、栄養ゼリー、すっぽんの生き血」

 

「…………………助けに行って良かったです。それ竜賀さんが1番最悪ですよね?」

 

「いや、堤が1番ヤバいな。くさや、シュールストレミング、桃だし」

 

「………………………………」

 

あ、早紀の表情が死んだ。まあ気持ちは嫌というほどわかるけど。

 

「何にせよ助かった。済まんが仕事をやっている体を見せておきたいから少し付き合ってくれ」

 

後で太刀川達が事務室に来て、俺達が居なかったら面倒なことになるからな。

 

「は、はい。わかりました」

 

早紀が頷いたので俺達は事務室に行き、パソコンを起動してから計画書を開いてから息を吐く。

 

pipipi

 

と、ここで携帯が鳴る。俺のでなく早紀のようだ。

 

「失礼します………そう」

 

早紀は携帯を操作すると小さく息を吐く。

 

「どうした?何か面倒ごとか?」

 

「いえ。母の仕事先で急なトラブルがあったから、今日は帰れないという連絡です」

 

そんな風に言ってくるが、そうなると早紀は1人でクリスマスを過ごすって事になるが……

 

「だったら俺達のクリスマスパーティーに参加するか?」

 

「結構です。甘ったるい空気を浴びそうなので1人で過ごします」

 

一蹴されるが、俺としても早紀ともその甘ったるい空気を作り出したいんだよなぁ。

 

とはいえ無理に誘うのは厳しいから諦めよう。

 

「わかった。じゃあせめて……」

 

俺は部屋の隅に置かれた冷蔵庫を開けて、ロールケーキを2つと缶ジュースを取り出す。

 

「今、クリスマスの気分を味わうのはどうだ?」

 

差し出されたケーキとジュースを見た早紀は目をパチクリするが、小さく微笑みを向けてくる。

 

「本当にお人好しですね竜賀さんは……ご馳走になります」

 

早紀がケーキとジュースを受け取り、プルトップを開けて……

 

「メリークリスマス、早紀」

 

「メリークリスマス、竜賀さん」

 

缶ジュースをぶつけ合って一口飲む。こんな穏やかなクリスマスパーティーも良いものだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

pipipi

 

加古隊の作戦室に電子音が鳴る。音源は冬島のポケットの携帯だ。

 

「(来たな……)もしもし、どうしました室長?」

 

『どうしたもあるまい!貴様今どこにいる?!ミーティングの時間だ!』

 

電話の相手は鬼怒田開発室長だ。先程冬島は唯我同様に仕事を理由に逃げる為に鬼怒田にヘルプのメールを送ったのだ。

 

「え?ミーティングって26じゃありませんでした?」

 

『25に変わったと通達したであろう!基地にいるから今直ぐ来んかい!』

 

実際は変わってないが変わった事にして貰っている。鬼怒田も加古のハズレ炒飯の恐ろしさを知っているので助ける事にしたのだ。

 

「了解」

 

冬島は笑みを浮かべながら通話を切る。

 

「と、いうわけで悪いが俺も上がって開発室に行かせてもらう」

 

「汚ねえぞおっさん!」

 

冬島の言葉に諏訪が怒鳴り、他の面々も同意するが命が惜しいのでスルーする。

 

「あら?冬島さんもお仕事?戦闘員以外の顔を持っている人は大変ね」

 

「ああ、悪いな加古ちゃん」

 

「でも冬島さんの分は完成寸前だし……そうだ!太刀川君に冬島さんの分をあげるわ!」

 

「ふぁっ!?」

 

とばっちりを受ける太刀川の声が作戦室に響く。同情はするが見捨てる。

 

「済まん太刀川。後任せた」

 

「待ってくれ冬島さん!ミーティング前に腹ごしらえは大切だ!」

 

「俺、ミーティング前に飯を食べると眠くなるから無理だ、頑張れ」

 

「待てや冬島ぁっ!」

 

太刀川の絶叫も虚しく、冬島は早足で作戦室から出ていく。

 

「こ、こうなったら……加古!流石に2杯は多過ぎるから、冬島さんの炒飯は7等分してくれ!」

 

『っ!』

 

太刀川の言葉に他の6人がギョッとした表情を浮かべる。

 

「わかったわ。もう直ぐ完成から待っててね」

 

加古はキッチンに戻ってしまう。

 

『太刀川、殺す……!』

 

6人分の怒りが太刀川に向けられ、太刀川は冷や汗を流しながら口笛を吹く事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その20分後、医務室に意識を失った7人が運ばれるのだった。

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