唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ! 作:ユンケ
「正直言って意外でした。貴方はA級に入るだけで個人ランク戦は興味ないと思ってました」
目の前にいる女ーーー木虎藍は鋭い目を向けながら開口一番にそんな事を言ってくる。そこには若干の皮肉と敵意を感じる。
まあ木虎の気持ちはわからんでもない。同期の人が親のコネを使い、碌に努力もしないでA級に入ったならソイツを不愉快に思っても仕方ない。
しかしそれは俺ではなく俺が転生する前の唯我尊がやった事だから、俺からしたら筋違いでしかない。
「別にどうでも良いだろ。それよりもさっさと始めようぜ。もう試合は始まってるし」
「そうですね……試合になると良いのですが」
木虎を見ると勝ちを確信しているのが丸分かりだ。まあ俺は今日がデビュー戦だからな。
「へいへい。さっさと来い」
言いながら俺はサブトリガーのレイガストを起動してシールドモードにする。手には思った以上の重量を感じる。
(なるほどな……確かにこれは攻撃手に人気は出ないわ)
レイガストはかなり重く大きいので素人が振ると隙がデカくなるし、攻めるんだったらスコーピオンや弧月の方が隙が少ないだろう。
レイガストを使うから木崎レイジみたいに極限まで小さくして殴るスタイルにするか、村上みたいに敵の崩しに使った方が良いだろう。
俺がレイガストを持って構えを見せると、木虎は右手にハンドガンを顕現して放ってくる。対する俺はレイガストでそれを防ぐもそれと同時に木虎は地面を蹴ってこちらに詰め寄ってくる。
俺は迎撃するべくメイントリガーのアステロイドを起動して3×3×3の計27分割して放つ。威力と弾速と射程の比は40:50:10だ。向こうが近づいてくる以上、射程はそこまで必要ない。
すると木虎は弾が当たる直前に地面を強く蹴ったかと思えば壁に飛んで俺のアステロイドを回避する。そして壁を横走りして俺との距離を詰めにかかる。
そしてガンガン撃ってくるのでレイガストとシールドを使って全て防ぐが、俺が木虎に向けて射撃をしようとすると直ぐに俺の死角に入ろうとする動きを見せてくる。
ハッキリ言ってウザ過ぎる。明らかに俺に対して封殺しようとしているのが丸分かりだ。これを何とかしないと勝ち目はないだろう。
そこまで考えた俺はレイガストを上に掲げてシールドの形を変化してテントのように俺の身体を覆う。そしてアステロイドを起動していつでも放てるようにする。さぁ、早くスコーピオンでレイガストをぶっ壊せ。そんで壊れた瞬間に威力重視のアステロイドを叩き込んでやる。
そう思いながら俺はカウンター狙いで木虎が攻め込むのを待つも、木虎はハンドガンを撃つだけでスコーピオンを振るってくる気配を見せない。
おかしいぞ。何故スコーピオンを使ってこない。ハンドガンの威力じゃシールドモードのレイガストを壊すのは大変だというのがわからない訳でもあるまい……あ、思い出した。
(そういや木虎ってB級に上がった頃は銃手だったけどトリオンが少なくて苦労していたんだったな)
俺は前世で得た知識を思い出して納得する。木虎は俺、というか唯我尊の同期だから入隊して1ヶ月程度。今はまだスコーピオンを使わず銃手でもおかしくないな。
まあそれは今どうでも良いか。今は木虎に勝つ事が重要なのだから。
俺はそう思いながらテント状のレイガストの天井部分に穴を開けてメイントリガーにセットしてあるハウンドを威力重視に加えて自動追尾で放つ。
するとハウンドは穴から外へ出たかと思えば、そのまま木虎に向かって降り注ぐ。それを見た木虎は攻撃を止めてハンドガンを消したかと思えばシールドを2枚展開、つまり両防御をする。
それによってハウンドがシールドにぶつかって1枚が割れる。幾ら威力重視で放ったとはいえ。威力そのものがそこまで高くない弾トリガーによる攻撃でシールドが割れる……その事から入隊当初の木虎は本当にトリオンが低かったことを理解する。
しかし容赦はしない。俺自身も強くならないといけない以上、手は抜けない。加えて手を抜いたりしたら出水から飛び蹴りを食らいそうだし。アレは痛いからな。
そう思いながら俺はレイガストをテント状の形から普通のシールドモードに戻して……
「スラスター、ON」
スラスターを起動しながら手を離す。同時にスラスターは木虎に向かって一直線に飛んで行き、そのまま壁に叩きつける。
(おっ、実際にやると便利だなこれ)
さっき村上と戦った時にやられた技だが、やられる立場からしたらウザい事この上ないが、やる立場からすれば凄く便利に思う。今回はお試しでレイガストをトリガーに入れてみたが正式に入れることも検討しよう。
そんな事を考えながら前を見ると壁に叩きつけられた木虎がレイガストを振り払ったのを確認したので瞬時にレイガストを消して、メイントリガーのアステロイドとサブトリガーのメテオラを顕現して……
(出水直伝、両攻撃を食らえや)
射手の師匠である出水が好む両攻撃を威力重視でぶっ放す。木虎はレイガストを振り払ったばかりで隙だらけだった故に、そのまま爆散した。
同時に仮想空間からランク戦ブースに戻される。思ったよりも上手く動けたし、次からもガンガン行きますか。
『木虎ダウン』
機械音声が個人ランク戦ステージに鳴り響く。
「おーおー、唯我の奴気合入ってんなー」
モニターを見る出水は面白そうに笑いながらジュースを飲む。モニターでは木虎を蜂の巣にする唯我が映されていた。
そしてその下のモニターには……
唯我⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎
木虎✖︎✖︎✖︎✖︎
ランク戦の結果が表示されている。5本勝負であるので唯我の勝ちは確定している。
(しかし木虎の戦い方はどうにもなぁ……トリオンが少ないのは仕方ないが、今のやり方じゃ限界が来るぞ)
普通射手や銃手はトリオンに余裕がある人間がやるポジションだ。
唯我もトリオンは高くないが彼の場合、射手としてオーソドックスな戦い方以外に近接戦による捌きを取り入れるなど独特な戦い方をして、未熟ながらも頭角を現しつつある。
一方の木虎は速い動きと正確な射撃によりハンドガン型トリガーを使う銃手としては理想な動きを見せている。
しかし銃手はトリオン量の差が戦闘力の差に直結しやすいポジションだ。トリオンの低い木虎が銃手らしい戦術を使っても防御重視の唯我を崩すのは厳しい。
「ラスト一本か。さて、どうなるやら……」
「スラスター 、ON」
そう呟きながらスラスターを起動してシールドモードのレイガストを投げつけて、一拍おいて自動追尾に設定したハウンドをぶっ放す。
それによって……
「くっ……!」
木虎の右足がハウンドによって掠り削られる。レイガストとハウンドによる時間差攻撃。面積の広いシールドモードのレイガストに当たれば体勢を崩し隙が出来て、避けれたとしても自動追尾するハウンドが襲いかかる。
前者で決まれば隙が出来るので両攻撃出来るし、レイガストを避けた場合時間差のタイミング次第では咄嗟のシールド展開も難しくなる。
今回は偶然だが、時間差のタイミングが良かったので木虎の機動力を奪えた。木虎の武器は正確な射撃技術と高い機動力。右足を負傷した今、木虎の力は文字通り半減した。
(これで終わりだな。後は離れた場所でハウンドとメテオラを使って誘導炸裂弾を作りぶっ放せば俺の勝利は確実……いや、折角だしアレを試してみるか)
俺は戦意を失っていない木虎の銃撃をシールドで防ぎながら新しくレイガストを作り上げる。但しシールドモードではなくブレードモードにして。
俺がやりたいのはレイガストとスラスター による投擲。原作で三雲修がキューブになった雨取千佳をラービットから守る為にやったアレだ。トリオン量の少ない三雲のレイガストですら、ラービットの首に大きな一撃を当てたのだ。
刃トリガーの強度や斬れ味はトリオン量に左右される。そんで俺が憑依している唯我尊のトリオン量は三雲の2.5倍。その事から相当な一撃になるだろう。
(てかもしも雨取千佳のトリオンで作ったレイガストを投擲したらヤバくねぇか?)
多分自殺を趣味とする世界最強の生物にもダメージを与えられると思う。
そう思いながらも俺は距離をとって木虎の射程外に出てからレイガストを構える。
「スラスター、ON」
そして俺はそう呟いてレイガストを投擲する。放たれたレイガストは風切り音を鳴らしながら流星のような速度で飛んで行き……木虎の横を掠め、背後にある住宅地を貫いた。
「…………」
「…………」
木虎は無言で背後の住宅地と俺を見比べる。そんな目で俺を見ないで欲しい。まさか狙いを定めるのがあんなに難しいとは思わなかったんだよ!
(そう考えると原作の三雲は凄いな。とりあえず今後に備えて練習しよう)
狙いは外れたが、レイガストの投擲による一撃の威力が高いのは間違いない。練習を重ねて当てれるようになったら立派な武器になるだろう。
……まあ、今はランク戦の最中だし木虎を倒す事を最優先にしよう。
そう考えていると再起動した木虎がこちらに向かって近寄ってくるので、俺はメインのアステロイドとサブのメテオラを起動する。レイガストによる投擲はある程度慣れるまで封印しよう。
そして俺達は互いの弾丸を撃ち合ったが、木虎は既に片足を失っている上にトリオン量が少ないので俺は木虎の攻撃を全て防ぎ、少しずつ削って勝利したのだった。
ヒロインは何人まで希望?4人は確定
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4人
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5人
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6人
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7人
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10人以上