唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第148話

 

 

 

「良し……これです……ババか……!」

 

ババを引いた俺は後ろにトランプを回してシャッフルしてから目の前の辻に渡す。

 

トランプゲーム第1戦はババ抜きで、既に出水と三輪、米屋と奈良坂、三浦と若村は抜けて俺と辻のタイマンだ。俺が残り2枚で辻が1枚、つまり辻がババを避けたら俺の負けだ。

 

「良し……これにするよ」

 

辻が選んだのはハートの6、つまり俺の負けだ。

 

「俺の負けです」

 

「んじゃ早速カードを引きな」

 

出水に促されたので裏返しになっている24枚のカードを見る。ぶっ飛んだ罰ゲームを書いてそうなのは出水と米屋は間違いない。奈良坂もジョークは通用するし、あり得そうだ。三輪も加古や二宮関係のお題を書いてそうだ。

 

(とりあえず自分の書いたもんじゃなきゃ良いな)

 

「これだ」

 

俺が引いたのは……「歳下のオペレーターに3分間抱き合うように頼んで、了承を得たら3分間抱き合いながらこれまでの感謝を告げる」……って!

 

「出来るかぁ!誰だこれ書いたの?!」

 

思わずカードを叩きつけながら叫んでしまう。これ絶対出水か米屋だろ?!

 

「ぷはっ!初っ端からぶっ飛んだの来たなぁ!?誰だこれ書いたの?」

 

米屋は楽しそうに笑いながら周りを見ると、他のメンバーもカードを見て……

 

「あ、これは俺だな。唯我か若村が引いたら面白いと思って書いた」

 

「奈良坂?!俺も狙い目って華さんに向けてやらせようとしたのか?!」

 

まさかの奈良坂だった。確かに若村は今高1で若村が好きな染井は中3だから効果はテキメンだろう。クールな見た目に反してサディストだな。

 

「何にせよ、罰ゲームは罰ゲームだし行ってこい」

 

「あ、トリオン体で行けよ。視覚同調して本当に実行したかモニターで確認するから」

 

「……了解」

 

そう言われた俺はトリガーを起動してから作戦室を出る。歳下のオペレーターで基地にいるのは早紀と武富しかいない。しかし武富とは抱き合ったことはないし、必然的に早紀となる。

 

早紀と抱き合うだけなら問題ない。これまでに何回か抱き合っていて、早紀から拒絶されてないからな。

 

問題は今早紀が女子会に参加している事だ。女子達のど真ん中で抱き合うなんて間違いなく今後いじられるだろう。

 

(仕方ない。仕事の重要な捺印って嘘の理由で一時的に抜けさせるか)

 

早紀を含む一部の女子は俺が今日仕事しているのを知っているし、出水達の集まりに参加しているって事は知らないだろうから誤魔化せるだろう。

 

そう思いながら俺は女子会が行われる嵐山隊の作戦室に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?結局のところ、早紀ちゃんは唯我君の事が好きなの?」

 

「……………はい」

 

『おぉぉぉぉぉぉぉっ!』

 

嵐山隊作戦室にて、周りの女子からの質問に早紀は真っ赤になりながら肯定すると周りが盛り上がる。

 

女子会の時点で聞かれる事は予想したが、ここで素直にならなかったら、先行していながら自分の存在を受け入れてくれた玲達の期待に裏切る事になる。

 

「ちなみにどんなところが?!」

 

「い、いつも自分を後回しにして助けてくれるお人好しなところ、とか……」

 

テンションが上がる周りに対して早紀はモゴモゴしながらそう返す。

 

「やっぱお人好しなところなんだ。玲ちゃん達も同じように言ってたし」

 

「まあね〜、お馬鹿な私に根気よく勉強を教えてくれるしね」

 

「あ、それはわかる。三輪なんかアタシに勉強を教える時は5回は馬鹿呼びするけど、アイツは嫌な顔しないで教えてくれるし、炬燵の周りの掃除を手伝ってくれるし」

 

「確かに嵐山隊のお仕事で新入隊員が絡む仕事が多い時は、手伝ってくれたよ、唯我君ってお人好しだよね」

 

「第3期東隊が結成してからコアラ達の連携訓練にも付き合ってたね」

 

「ランク戦の解説者にも可能な限り試合に参加する部隊に適した隊員を見繕って話を通してくれてますね!」

 

草壁の言葉に仁礼、綾辻、人見、武富がそれを肯定する。

 

「でも中3でそんな周りを助けてたら過労にならないのかな?」

 

氷見が不思議そうに呟くと周りの人は頷く。頷いていないのは唯我の正体が『前世でサービス残業を月に100時間やっていたサラリーマン』である事を知っている玲、桐絵、柚宇、早紀の4人だけだ。

 

pipipi

 

と、ここで電子音が鳴る。音源は宇佐美のポケットの中だ。

 

「ん?ほうほう、これは面白そうだね」

 

「どしたの栞?」

 

「今陽介から連絡があって、今例の罰ゲームトランプゲームをやってて、唯我君がここに来るから部屋に入ったら絶対に逃げられないようにしろだって」

 

「何だと?私関係で来たら殺す」

 

その言葉に真木は額に青筋を浮かばせる。去年真木は若村に頬を引っ張られ、若村をボコボコにしている。

 

それから暫くして……

 

ピンポーン

 

インターフォンが鳴るので作戦室の住人の綾辻がモニターに向かう。

 

「はーい」

 

『すみません唯我です。少々早紀をお借りしたいのですが、宜しいでしょうか?』

 

その言葉に早紀がビクンと跳ねて周りの人は期待の眼差しを向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ〜、唯我君。折角だから入ってよ。お菓子もあるよ」

 

綾辻はドアを開けるなり、俺の手を引っ張り強引に入れてくる。

 

部屋を見れば柚宇、真木、三上、早紀、綾辻、桐絵、宇佐美、氷見、仁礼、人見、玲、武富がいる。

 

「いや、早紀を仕事で呼びに来たんで、そこまで気を遣わなくても……」

 

「仕事って罰ゲームだよね?」

 

馬鹿な?!読まれていただと?!

 

「陽介からメールが来て、絶対に逃げられないようにしろってさ。という訳でどうぞ!」

 

宇佐美が俺の背中を押して部屋の真ん中に運ぶ。同じタイミングで早紀が仁礼と人見に押されて俺達に向かい合う。とりあえず終わったら米屋と奈良坂はぶん殴る。

 

「……それで?罰ゲームは何なんですか?私に何かいやらしい事をするんですか?」

 

早紀が恥ずかしそうに聞いてくる。正直言ってメチャクチャ言いたくないが、言わないと先に進めないので数回深呼吸をして……

 

「お、お題なんだが、歳下のオペレーターに3分間抱き合うように頼んで、了承を得たらこれまでの感謝の気持ちを抱き合いながら伝える……って事だ」

 

正直に話すと早紀は目をパチクリしてから……

 

「えぇぇぇぇっ?!」

 

『きゃぁぁぁぁぁっ!』

 

驚き顔を露わにして、周りは騒ぎ立てる。野次馬がいる場所では言いたく無かった……

 

「いや、無理強いはしないからな。嫌なら嫌ってハッキリ言ってくれ」

 

今の状況は米屋達も見ている。早紀が嫌がる中で辞退しても責めないだろう。

 

しかし……

 

「………わかりました、どうぞ」

 

早紀は予想に反して顔を赤くしながらも両手を広げて迎え入れる構えを見せてくる。

 

え?了承するの?マジで?拒否するかと思ったわ。

 

とはいえここまで来たらやるしかないか。

 

俺は覚悟を決めてからスマホを片手に持つ女子達を意識から逸らして早紀を抱きしめる。

 

同時に早紀も真っ赤になりながら俺の背中に手を回してくる。次はこれまでの感謝を告げるんだったな。

 

「早紀、話すキッカケは罰ゲームだが、今から話す事は本当の事だから信じて欲しい」

 

「……はい、わかってます」

 

早紀が頷いたので口を開ける。

 

「お前と関わってから半年弱、何度も助けてくれて感謝する。俺には思いつかないアイデアだし、会議で使う資料の作成、研修内容のテストの相手、他にも色々あるがお前が居なかったら、正隊員を増やせたかわからなかった」

 

「………私こそ何度もりゅ……尊先輩に助けてもらいました。自分のチームに使える戦術の考案、駿を始めとしたチームメイトの訓練の協力をありがたかったですし、2人で計画を立てるのは楽しいですっ。私に充実した時間を作ってくれてありがとうございます」

 

早紀は抱きしめる力を強めるが、人前で竜賀呼びは避けてくれて良かったわ。バレたら色々面倒だしな。

 

っと、今は褒めることを優先だ。これを機会に目一杯感謝の気持ちを伝えよう。もう抱き合ってるしな。

 

「ああ。これからも宜しくな、早紀」

 

「こちらこそ宜しくお願いします」

 

互いに挨拶をして抱きしめる。さっきまでは恥ずかしかったが、早紀の言葉や抱擁による幸せが勝ったので時間まで動揺しないで済みそうだ。

 

「すみません。もう少し強く抱きしめてください」

 

「はいはい。了解」

 

お望み通り抱きしめる力を強め、互いに温もりを感じ合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻……

 

「……おい、奈良坂」

 

「………済まなかった。こんなに甘くなるなんて思わなかった」

 

モニター越しでも丸分かりである2人の作る甘々な空気に出水達はブラックコーヒーを飲みながら奈良坂を睨み、奈良坂は冷や汗をかきながら謝罪するのだった。

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