唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第155話

 

 

「あらら、双葉の奴、焦りが出始めてるね。アレじゃ唯我先輩に一撃当てるのは無理だよ」

 

「そうね。唯我先輩は人を苛立たせるのは天才だから」

 

緑川がモニターを見ながらそう呟き、木虎が仏頂面で頷く。モニターでは唯我がシールドモードのレイガストを黒江の弧月を全て受け止めている。

 

今日トリガーを持ったばかりの黒江だが決して弱くない。上手い身体の使い方を活かして、多方向からの連続斬りにはセンスがあり、直ぐに頭角を現すのは明白だ。

 

しかし今相手にしているのは対攻撃手において圧倒的な防御力を持つ唯我だ。膨大な戦闘経験からレイガストの防御術のレベルは極めて高く、マスターランク以下の攻撃手の攻撃なら完封出来る程だ。

 

今回はグラスホッパーやシールドやエスクードを使ってないのでウザさは少ないが、フル装備で戦った時の唯我のウザさは半端ない。

 

エスクードを頭にぶつけられて、地面を数回転がされた挙句、身体を起こした瞬間にリボルバー銃から放たれた弾丸によって頭を吹き飛ばされた木虎は唯我と会うたびに舌打ちするし……

 

チームランク戦でシールドによって膝カックンをさせられて転んだ際に、歌川の下半身に顔をダイブしてしまった菊地原は唯我に対する愚痴が日に日に増しているし……

 

グラスホッパーによって川に落とされたり、ゴミ箱を顔面にぶつけられたり、地面に何回もバウンドさせられた香取は月に5回はもぎゃっている。

 

閑話休題……

 

何にせよ全ての攻撃を防がれている黒江の顔には見るからに焦りが生まれ……

 

「「あ」」

 

遂に無駄に大振りの一撃を放つ。同時に唯我のレイガストに切れ込みが生まれ、黒江の弧月がレイガストの切れ込みにハマる。

 

同時に唯我はレイガストを引く。それに伴い黒江はバランスを崩し始めるので慌てて弧月を手放す。

 

そんな隙を唯我が見逃すはずもなく、ブレードに変えたレイガストが黒江の胴を薙ぎ、模擬戦は終わる。

 

「まあ実力的には当然か。俺も入隊日に挑んで同じように負けたからな〜」

 

緑川は思い出すように呟く。入隊初日に正隊員と戦いたいと唯我と戦って、黒江と同じように完封されたのは覚えている。今でもあの防御を打ち破るのは困難である。

 

そんな風に考えていると2人がブースが出てきたので、次は自分が唯我に挑むべく歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「付き合ってくれてありがとうございます。A級1位の高さを知れました」

 

黒江がブースから出るなり頭を下げてくるが、苛立ちは見えない。どうやら負けは負けと受け入れているようだ。

 

「付き合うのは構わないが、A級1位の高さはこんなもんじゃない。俺はA級1位の部隊でぶっち切りで弱いからな」

 

「え?そうなんですか?」

 

「まあな」

 

この世界に来てから鍛練を重ねた結果、A級ランク戦でも点を取ったり、敵の足止めを出来たりとお荷物ではなくなった自負はある。

 

しかし太刀川や出水と肩を並べられるようになっと聞かれたら首を横に振るだろう。正直あの2人とはまだ差がある。

 

それに俺自身、フル装備じゃないからな。俺も更なる高さにいる。

 

「唯我せんぱーい。次は俺とやろうよ」

 

今度は緑川がこっちにやってくる。忙しい奴だな。

 

「構わないが5本先取で、今から15分経過したら勝敗はどうであれ中断して貰うからな」

 

研修の参加者の集合時間まで25分、10分前には待機しておきたいからな。

 

「全然良いよ。唯我先輩、上層部を兼任してから余り勝負出来てないしね」

 

そこは否定しない。とはいえ、大分新人に対する研修も確立出来たし、暫くは仕事の量は減るだろう。

 

「じゃあ102に入れ。俺は103に入る」

 

「はーい」

 

緑川が元気よくブースに入るので俺もそれに続く。

 

さて、久しぶりに楽しむとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では一旦休憩とします。40分後にもう一度集まってください。食事については食堂や売店をご利用ください。マップはこの部屋の入口にあります」

 

通信室にて草壁早紀はそう告げる。A級オペレーターとして、新人育成室長補佐として、中央オペレーターに対するオリエンテーションを嵐山隊オペレーターの綾辻と一緒にやって一段落したところだ。

 

「お疲れ様早紀ちゃん」

 

「綾辻先輩もお疲れ様でした。お昼はどうしますか?」

 

「私は事前にサンドイッチを買ってきたよ。早紀ちゃんは?」

 

「お弁当を準備してきました」

 

そう言ってから休憩スペースに行き、弁当箱を開けると肉や魚、野菜がバランスよく散りばめられている。

 

「わー、美味しそう。早紀ちゃんが作ったの?」

 

「はい。最近は料理の練習を重ねてます」

 

「それって唯我君のため?」

 

「………はい」

 

からかうような口調の綾辻に対して早紀は顔を赤くしながらも否定しないで頷く。明らかに恋する女子の顔だ。

 

「早紀ちゃんって随分可愛くなったよね。オペレーターに転向した頃は冷たい印象だったけど」

 

「あの頃は見苦しい姿をお見せしました」

 

木虎に勝てずにオペレーターに転向したが、転向直後の自分は荒れていて黒歴史だ。

 

「別に見苦しくはなかったよ。けどこんなに可愛くなるなんて恋って凄いね」

 

「手を出すなら尊さん以外に手を出してください」

 

早紀は即座に釘を刺す。自分も遅れて参戦したが、だからといって自分の後輩が現れるのは嫌だ。

 

「そんな警戒しなくて大丈夫だよ。でも唯我君っていつの間にか人のハートを掴んでない?」

 

「そうですよ。あの人、男女問わずに優しいですから気付いたら好きになっちゃったんですよ」

 

少なくとも早紀の知る限り、竜賀が誰かを依怙贔屓する姿は見ていないし、自分の知らないところで誰かにフラグを立てていてもおかしくない。

 

「もしかしたら歌歩ちゃんも怪しいかもね」

 

「っ!何でですか?!」

 

ここで予想外の名前が出て早紀の顔に焦りが生まれる。

 

「何でもお正月に初詣に行った際、歌歩ちゃんの弟君が逸れて怪我したらしいの。で、その時に唯我君が泣いてる弟君の面倒を見て歌歩ちゃんを探したみたい」

 

「まあ尊さんならあり得ますね」

 

ボーダー基地を一緒に歩いていると迷子になったC級の案内をしたり、トリガーについて悩んでいるC級の相談に乗ったりと面倒見が良いのは知っている。

 

「で、歌歩ちゃんが早紀ちゃん達が唯我君に惹かれたのも何となくわかるって言ってたの。でもこれって少し前の早紀ちゃんのパターンじゃない?」

 

綾辻の言葉に早紀の口が引き攣る。確かに早紀も以前自分の代わりに竜賀がハズレ炒飯を食べてくれた事により、柚宇達が惹かれたのを理解した。

 

それから自分は恋に落ちたことを考えると、歌歩が落ちる可能性は充分にある。

 

(誰にでも優しくするから惹かれたけど、今だと私だけを優しくして欲しいって思うようになるなんて恋って厄介ね)

 

早紀は内心ため息を吐く。元々竜賀にこれ以上彼女が出来ないように監視の目を増やすようにしていたが、隙を突いてフラグを立てるのは勘弁して欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(玲さんは最後の一手でデキ婚を考えているけど、それは私達にも飛び火が来るから何とか穏便になって欲しいわ)

 

普段はお淑やかだが竜賀が絡むと誰よりも貪欲な肉食獣になる玲の事を思い浮かべながら、早紀は弁当を食べ進めるのだった。

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