唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第16話

バッグワームを付けながらレーダーを見るとレーダーには反応が8つある。バッグワームを使ってるのは俺と鳩原だろう。

 

そして俺の転送位置は居場所がわからない鳩原以外の9人の中で1番西だ。

 

太刀川は1番東で出水は1番南にいる。出水はともかく太刀川と合流するのは厳しい。

 

そう思いながら俺はレーダーで1番近くにある反応に向かうが……

 

(げっ、二宮)

 

まさかの二宮だった。幸い二宮は俺がいく予定ではない方向に向かってるし、こっちはバッグワームを着ているため、気付かれてはいないが、捕まったら問答無用で削り殺されるので即座に距離を取る。

 

『国近先輩。1番近くに二宮さんがいたのでタグ付けてください』

 

『ほーい。それと太刀川さんの近くに風間さんと辻ちゃんがいるからタグ付けるね』

 

『というか唯我は俺と合流しろ。お前はガードに専念して、俺が合成弾をガンガン撃つ』

 

国近にタグ付けを頼んでいると、出水からそんな風に指示を受ける。

 

合成弾は強力だが、作ってから撃つまではガードが出来ないのが欠点だから、使うなら周りに敵が居ない時や近くに味方がいる時だ。

 

そして防御力のある俺が出水のガードに入れば出水は合成弾を撃ち放題となる。シンプルだが強力な戦術だし、乗るのが吉だ。

 

『了解』

 

返事をして出水がいる方向に向かって走り出す。

 

しかし暫く走っているとレーダーに映っているマーカーがこちらに近寄っている。

 

やって来る方向を見れば、風間隊の歌川遼がこっちにやって来ている。どうやら高い建物の屋上から俺を発見したようだ。

 

『出水先輩。歌川に見つかりましたが、引っ張りましょうか?』

 

『良し、じゃあ……いや待て。こっちにも菊地原と犬飼先輩が来てるから歌川の足止めをしろ。風間隊が2人揃ったら面倒だ』

 

『了解』

 

まあ連携を重視する風間隊が揃うのは危険だな。

 

内部通信を切ってからアステロイドで牽制射撃をするが、簡単に回避される。

 

スピードも早く無駄な牽制射撃は無理と判断した俺はバッグワームを解除してレイガストを取り出し、シールドモードにする。

 

同時に歌川は地面を強く蹴って距離を詰めてスコーピオンを振るってくる。

 

スコーピオンをレイガストで受け止めると、歌川は直ぐに横に跳びながらスコーピオンを振るうのでレイガストの広げて幕のように展開する。

 

それにより攻撃を凌ぎながらアステロイドを放つが当然シールドに防がれる。

 

しかしこれも予想の範囲内であるので焦らずに歌川と向かい合いながら距離を取る。俺の目的は1秒でも長く歌川を足止めすることだ。

 

同時に歌川はスコーピオンを丁寧な動きで振るってくるが……

 

(右上段から間髪入れず斬り上げ、その際に副トリガーは斬り払い。記録通りだ)

 

ギィン、ギィン、ギィン

 

シールドモードのレイガストの面積を動きやすいサイズに変えて、歌川の剣戟を凌ぐ。

 

風間隊の武器は3つ、カメレオンによる隠密戦闘、高いレベルの連携、正確無比な剣戟だ。

 

剣戟については機械のように正確だが、正確すぎるが故に記録をしっかり見れば動きを予測する事は難しくない。

 

太刀川からA級に上がってからの風間隊の戦闘記録を全部見直せと言われた時はクソ面倒と思ったが、全部見たからか動きを理解する事が出来て防御に成功している。

 

何度も防いでいるが歌川は焦る事なく右手のスコーピオンを振るい、左手のスコーピオンを消したかと思えば左手からキューブを生み出して弾丸を放つ。

 

同時に直ぐに爆発してレイガストが震える。シールドモードだから壊れてはいないが、爆風で視界が悪くなる。

 

(歌川がメテオラを使うのは崩しにくい相手を崩す為。メテオラを使った後は……もぐら爪)

 

俺はバックステップをするとさっきまで居た場所の地面からスコーピオンが生えていた。後少し遅かったら死んでいただろう。

 

爆風が広がる中、アステロイドによる牽制射撃を仕掛ける。すると歌川が煙の中から出てきて、距離を詰めてスコーピオンを振るうので防御する。

 

レイガストとスコーピオンがぶつかる中、歌川の表情に若干の驚愕の色がある。ある程度実力を付けたとはいえ、未だ俺はコネでA級になった雑魚って印象があるから、ここまで凌いだのが予想外だったのだろう。

 

(確かに俺はまだまだ弱いが、風間隊の記録は何度も何度も見たし、太刀川に毎日ボコされている以上、そう簡単に崩されるわけにはいかない)

 

俺はレイガストを構えて我慢比べの準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

観戦室……

 

「おい、アイツ本当にコネでA級に入ったのか?」

 

「そうは聞いてるが……」

 

「歌川の攻撃を凌げてる時点で雑魚じゃねぇだろ」

 

観戦室では太刀川隊と二宮隊と風間隊の試合が流れている。試合が始まって数分しか経過してないが、一部では戦闘が始まっている。

 

中央では風間と鳩原の援護がある辻が戦い、南では出水と犬飼と菊地原が戦っていて、西で唯我と歌川が戦って、個人ランク2トップの太刀川と二宮はフリーである。

 

そして真っ先に落ちると予想されていたが唯我だが、マトモに攻撃する機会は少ないが歌川の攻撃を凌いでいて、観戦者からしたら予想外である。

 

実際唯我の防御の高さはチームメイトの太刀川と出水に鍛えられているからだが、訓練場所が太刀川隊作戦室なので記録には残されていないのだ。その結果、観客席には驚きの空気が生まれている。

 

そんな中、何かと唯我と縁がある那須は不安そうに試合を見ている。

 

「唯我君、反撃出来てないけど大丈夫かな?」

 

実際唯我は歌川の攻撃を凌いでいるが全て防いでいるわけではなく、肩や頬にはかすり傷があり、トリオンが少し漏れている。

 

加えて唯我の方からは殆ど反撃出来ていない。偶に牽制射撃をしてはいるが、全てシールドに防がれて歌川のトリオン体にはダメージがない。

 

よって唯我はこのままジリ貧になっていく……というのが那須の感想だ。

 

しかし……

 

「大丈夫よ。彼は役目をこなしてるから」

 

背後からそんな声が聞こえてきたので那須が振り返る。

 

「あ、加古さん。お疲れ様です」

 

「お疲れ玲ちゃん。隣失礼するわ」

 

那須の隣に座るのは元A級1位部隊に所属していた加古望。同じ女性射手ということもあり、そこそこ交流がある。

 

「ところで加古さん。役目をこなしているってどういう事ですか?このままだと唯我君はいずれ負けてしまう可能性があると思いますけど」

 

「玲ちゃんのチームは少し前に結成したばかりだから難しいかもしれないけど、点数を取るだけが全てじゃないの」

 

言いながら加古はモニターを指差すと、那須もモニターを見直す。

 

「風間隊の長所は3人による連携で、歌川君は中距離戦も出来るし、謂わば風間隊の縁の下の力持ち。その彼を風間さんや菊地原君と離れた場所で足止めするのは立派な仕事よ」

 

「あ、相手の長所を引き出せないようにしてるんですね」

 

「ええ。確かに唯我君が歌川君を倒せる可能性は低いけど、歌川君を長時間足止め出来れば、太刀川隊が風間隊を下す可能性が高くなるわ」

 

「なるほど……ありがとうございます」

 

チームを組んだばかりの那須からしたら如何に点数を取れるかしか考えてなかったので、加古の話は勉強になった。安心したように礼を言う。

 

「どういたしまして。やっぱり抱き合った人が負けそうなのは不安?」

 

「か、からかわないでください」

 

加古のからかうような口調に那須は若干頬を染めて否定する。昼の一件は嫌ではなかったが、恥ずかしかったのは事実だ。

 

「ごめんなさいね。それにしても……」

 

「?何かありましたか?」

 

「何でもないわ(彼、本当に唯我君かしら?別人じゃないの?)」

 

5月に唯我尊がA級に所属させろと言ったので、A級の加古にも話がかかったが当然加古は断った。直接の面識は殆どないがその時に加古望の中で唯我尊は傲慢なお坊っちゃまというイメージとなった。

 

しかしモニターに映る唯我尊からは傲慢の色は見えず、寧ろとにかく足止めする唯我からは泥臭さが見える。

 

何が何でも足止めをするという気迫はモニターからも伝わっていて、加古からしたら傲慢な唯我は泉に落ちて、真面目な唯我に生まれ変わったとすら思えるくらいだ。

 

加古が誰もが思った疑問を抱く間にも唯我と歌川の戦闘は続く。

 

しかしモニターを見ると、加古は2人の戦闘はもう直ぐ終わると確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故ならスーツを着た魔王が2人の方向に向かっているからだ。

 

加古の頭の中でジョーズの曲が流れ始めた。

 

 

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