唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ! 作:ユンケ
何度攻撃を受けたかわからない。しかし軽く100は受けただろう。
俺は目の前にいる歌川の攻撃を凌ぎながらそう考える。
歌川の攻撃は鋭く、それでありながら正確なので全然反撃する隙が見つからない。
偶に攻撃しても簡単に対処されてしまうが、それも当然だ。こっちは素人に毛が生えた存在な上、トリオン量は高くないので弾丸トリガーはシールドで簡単に防がれてしまう。
よって俺が歌川を倒すには刃トリガーが必要だが、俺が持つ刃トリガーはレイガストしかない。
そして今俺が死なずにいるのは、レイガストをシールドモードにして防御に徹しているからだ。シールドモードは防御力は高いが、攻撃力は低過ぎる。
しかし仮にシールドモードから攻撃力のあるブレードモードに変えたら、歌川の攻撃を凌げずにベイルアウトするだろう。
よって下手にシールドモードを解除するのは自殺行為である。
しかし決して諦めてはいけない。相手が人間である以上、常に満点の攻撃を出来るはすがない。
そう思いながら俺はスコーピオンによる袈裟斬りをレイガストで凌ぎながら、歌川の足元にヒビが入るのを見る。同時にグラスホッパーを起動して後ろに跳び、もぐら爪を回避する。
そしてまたレイガストを構え、距離を詰めてくる歌川の斬撃を受け止めるが、その際に歌川の顔に焦りと苛立ちの色が生まれていることに気付く。
まあ早く倒してチームメイトと合流したいと思う中、攻撃を防がれ続けたらそうなるな。
そして多分、俺を諦めて他の2人と合流する選択肢は選ばないだろう。
それをするって事は俺に背を向けることになるし、仮に逃げても他のメンバーとの交戦する中で、バッグワームを装備した俺に奇襲をされたら面倒なのは明白だからな。
よって俺を仕留めるのが最善だが、俺を仕留められず焦りと苛立ちが生まれている。
(耐えろ、相手の苛立ちがMAXになって荒い攻撃をしてくるまで……)
そう思いながら攻撃を凌ぎ続けている時だった。
「くっ……!」
苦悶混じりの歌川の声と共に振るわれた斬撃はこれまで見たことがない程、大振りだった。多分痺れを切らしたのだろうが、チャンス!
俺はここで初めて横にズレて防御ではなく回避の選択をして……
「スラスター、ON!」
シールドモードのまま、スラスターを発動する。同時にレイガストの要所要所からトリオンが噴出して、そのまま歌川に激突する。
「ぐっ!」
シールドモードのままなのでトリオン体の破壊は出来ないが、その衝撃により歌川は呻き声を上げながら吹き飛び、近くにある壁に激突して尻餅をつく。
粘った甲斐があったと思いながら、俺はレイガストをブレードモードにして投擲の構えに入る。
歌川は尻餅をついていて、隙だらけだが距離を詰めてカウンターを食らう可能性がある以上、投擲で仕留める。万が一仕留められなくても、カウンターを食らわずに済むからな。
そう思いながら俺は再度スラスターを発動しようとした時だった。
『唯我君、上空から大量のトリオン反応。逃げて』
国近からそう言われたのでチラッと上を見れば、大量のトリオン弾がこっちに向かってくる。
俺は反射的にグラスホッパーを起動して後ろに跳ぶ。そして歌川は逃げ切れないと悟ったのかその場から動かずに周囲にシールドを二重に展開する。
歌川が、動かせなくなる代わりに耐久力が上がる固定シールドを2つ、つまり両防御を使用すると同時に弾丸が雨のように降り注ぎ、周囲の家や地面を穿ち破壊していく。
幸い俺はトリオン弾の範囲から逃れられたが、体勢を崩した歌川が展開した固定シールドに降り注ぐ。
注視すると1つ目の固定シールドが破壊されて、もう1つの固定シールドを削り始める。
それを見た俺は再度レイガストを構える。今の歌川は動けないし固定シールドも削られている。トリオン弾を放ったと思われる男は多分両攻撃をしただろうし、弾丸が消えるまでは更なる攻撃が出来ないはず。
よって今が最大のチャンスだ。
「スラスター、ON!」
スラスターを利用してレイガストを投擲する。トリオンの噴出されたレイガストはトリオン弾を蹴散らしながら勢いよく進み……
ギィンッ
ボロボロの固定シールドを粉砕して歌川の腹に風穴を開ける。
見れば歌川の腹にある穴からトリオンが漏れ、光に包まれ……
ドッ!
光が一際強くなったかと思えば、光は空を飛んでいき歌川の姿は見えなくなった。
今歌川を倒したのはトリオン弾ではなく、俺のレイガストだったので俺の得点となる。
初陣で先制点を挙げたのだから太刀川隊に貢献出来ただろう。これについては自信があるし、試合が終わったら太刀川達に褒めてもらえるだろう。
しかし……
「歌川の点を奪われた。唯我を倒し次第すぐに向かうから足止めに徹しろ」
今から俺は先程大量のトリオン弾を放った男と対峙することになる。
男は戦闘服とは思えない黒いスーツを着てこちらを見ているが、その眼は鋭く心臓を鷲掴みされたような気分となり、息を呑んでしまう。
さっき歌川と戦った時は小さいながらも勝機が見えたが、目の前にいる男に対して勝てるビジョンが全く見えない。というかある程度戦える未来ですら薄っすらしか見えない。
要するに俺にとっての最善は、これから1秒でも長くこの男を足止めする事だ。
『国近先輩、1秒でも時間を稼ぐので建物が多い場所のピックアップをお願いします』
内部通信で国近に頼む。何とかして遮蔽物が多い場所に逃げないといけない。
『ほーい。出来るだけ二宮さんを足止めしてね』
国近がそう言うと視界に逃走ルートが表示され、それと同時に目の前の男ーーーNo.1射手の二宮匡貴が自身の周囲に巨大なキューブを展開して、それを何百と細かくして……
「アステロイド」
俺の頭の中でゾーマ戦のBGMが流れると共に数の暴力が俺に襲いかかった。
ドッ!
視界の端にトリオンの雨が降り注いだかと思えば、光の柱が空へ飛んで行く。
「おーおー、相変わらず二宮さんの両ハウンドはえげつないな。柚宇さん、やられたのは唯我と歌川のどっち?」
太刀川隊射手の出水公平は対峙する菊地原と犬飼に牽制射撃をしながら国近に通信を入れる。
『歌川君だよ〜。けど得点は唯我君のもの。唯我君はグラスホッパーで攻撃範囲から逃げて、歌川君が両ハウンドを固定シールドで防いでる隙にレイガストの投擲で撃破したよ〜』
「おっ、やるじゃねぇか」
出水の予想ではベイルアウトしたのは唯我だった。しかしベイルアウトしたのは歌川で、二宮の攻撃で歌川が身動きを取れないという事があったとはいえ唯我が倒したのだ。予想以上の健闘である。
太刀川隊にやって来た時はお荷物が増えたと思ったが、ある日を境に真面目に訓練をこなし始めた後輩に出水は感心する。今はまだ半人前だがこの様子だと遠くない未来にお荷物は卒業するだろう。
しかし……
(まあそろそろ死ぬだろうけど)
ドドドドドドドドッ!
爆音が聞こえたので、横をチラ見すると中心に少し離れた場所にある複数の建物がボロボロになって、煙が上がっている。
煙の中からはレイガストを構えた後輩が出てくるが、明らかに逃げの一手だ。
しかし出水はそれは仕方ないと割り切る。流石に二宮を相手にするのは無理だろう。実力もそうだが相性が致命的に悪過ぎる。もう唯我に出来る事は1秒でも長く生き延びることだけだ。
とはいえ唯我が落ちた後に二宮がフリーになるのは危険なので、出水は唯我に通信を入れる。
「唯我。無理強いはしないが、何とか気張ってこっちに来い。理想としては100メートル以内だ」
半人前にはかなり無茶なオーダーをして、出水は30メートルくらい離れた先にいる犬飼と菊地原に意識を戻し、戦闘を再開した。
ヒロインは何人まで希望?4人は確定
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4人
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6人
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7人
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10人以上