唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第21話

「さ、入って入って」

 

加古に案内された作戦室に入れられる俺と太刀川。そして席に座ると加古が話しかけてくる。

 

「何かリクエストはあるかしら?」

 

「カスタードと蜂蜜は入れないでくれ。朝に蜂蜜パンとシュークリームを食ったからな」

 

加古がそう言うと太刀川は迷わずに即答する。なるほど。確か太刀川はいくらカスタード炒飯で死に、諏訪隊の堤はチョコミント炒飯と蜂蜜ししゃも炒飯で2回死んだとコミックスに書いてあった。

 

外れ炒飯には共通する具材として甘いものがあったし、それを避けるためだろう。そうすればゲテモノ炒飯が出てくる確率は少し下がるだろう。

 

「わかったわ。じゃあちょっと待ってて」

 

加古はそう言ってキッチンに向かうと、太刀川は祈るように両手を組む。

 

「当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い当たり来い」

 

物凄い執念を感じる。あそこまで祈っていると外れが怖すぎる……

 

そこまで考えている時だった。

 

「ふんふんふーん♪」

 

加古の鼻歌が聞こえてきたのでチラッと見れば……

 

「「ぶほっ!」」

 

加古の手にはジンジャーエールがあった。待て待て待て!何故そこでジンジャーエールを持つ?!まさか炒飯に入れるのか?!

 

止めろ、マジで止めろ!そういうのはジンジャーエール好きの二宮に食わせろ。

 

そう思いながら冷や汗をダラダラ流しながら待つ事20分……

 

「お待たせー」

 

加古は炒飯を持ってくる。炒飯にはサイコロステーキや玉ねぎ、にんにくなどが乗せられている。これだけならまだわかるが、何故かライスが若干真っ赤だった。

 

「あの、加古さん。ライスには何を入れたんですか?」

 

思わず質問をすると……

 

 

 

 

 

 

 

 

「醤油といちごジャムよ。後は隠し味を入れたわ」

 

………ファッ?!

 

予想外の返答に思わず呆然としてしまう。いちごジャムを入れるとか予想外過ぎるわ!何故そこでいちごジャムを入れる!?いちごジャムを入れないでガーリック醤油炒飯にしろや!

 

というか隠し味って……まさかジンジャーエールじゃないよな?!

 

「さぁ、召し上がれ」

 

 

加古はニコニコしながらそう言ってくる。正直言って食べたくないが、食べ物を粗末にする趣味はないし何より逃げられる気はしないので腹をくくるしかない。

 

それは太刀川も同じようで大きく深呼吸をするが逃げる気配を見せない。

 

「「……いただきます」」

 

死神の足音が耳に聞こえる中、口を開けて食べ始める。

 

(ま、不味い……)

 

口の中には醤油といちごジャムと隠し味として仕込んだと思われるジンジャーエールの味が混ざり合った味とネチョリとした食感が広がってくる。

 

甘いとか辛いとか酸っぱいとかではなく、単純に不味い。不味い以外の感想が浮かばない。

 

「どう?美味しい?」

 

兵器を作った本人はニコニコしながらそんな質問をしてくる。悪意は感じられず、好奇心丸出しだった。

 

「ま、まあ悪くないな……」

 

「そ、そうですね。初めて体験する味ですよ……」

 

そんなニコニコした笑みに俺も太刀川もそう返すが、ハッキリ言ってクソ不味いです。

 

つかハーレムを作りたいと思っている俺だが、もし加古をハーレムに入れたら炒飯食べる回数も増加するんじゃね?

 

というか仮にハーレムを作れたら、他のメンバーも炒飯を食べる事になるのか?

 

そんな事を考えながら俺は無心になって炒飯を食べ続ける。少なくともここで拒絶するようなら加古や後に加古隊に入る黒江双葉との繋がりが無くなるから食べないといけない。

 

不味さの塊に対抗出来る理由が女子との交流なんて不純かもしれない。しれないが……

 

(俺はハーレムを築きたいんだ……!不味い炒飯1つ乗り越えられないでハーレムを築けるわけないだろいが!)

 

炒飯を完食するのは難しいがハーレムを築くことに比べれば簡単過ぎる壁だ。ここでくたばるようじゃハーレムどころか恋人1人すら作れないだろう。

 

前世は彼女居ない歴=年齢で、安月給だったので風俗にも碌に行けなかった俺からしたら、恋人の1人は諦められない。

 

俺はただただ炒飯を食べ続ける。これが無我の境地ってヤツかもしれない……まあ違うだろうけど。

 

そして……

 

「……ご馳走さまでした」

 

太刀川より先に炒飯を完食して、最悪の気分のまま、両手を合わせて挨拶をする。

 

「どうだった?」

 

「そうですね……今までに感じたことがない味でしたね」

 

当然悪い意味でだがな。アレを食べて美味いと言う奴は間違いなく味覚障害だろう。

 

しかし不味いと拒否するのだけは断固しないつもりだ。ここで拒絶するわけにはいかない。

 

とはいえ……

 

「んじゃ俺は今日の試合の反省点を踏まえて、ちょっとエンジニアに用があるんで失礼します。また炒飯をご馳走になってもいいですか?」

 

俺の言葉に加古は小さく笑う。

 

「もちろんよ。食べたくなったらいつでも作戦室に来て頂戴」

 

実際加古や黒江と仲良くなるには作戦室に足を運ばないといけないし願っても無いチャンスだ。というか当たり炒飯を食べてみたいし。

 

「ええ、宜しくお願いします」

 

一礼してから俺は作戦室を出る。そしてドアが閉まると同時に身体がよろめいてしまう。さっきまでは痩せ我慢をしていたが、もう限界に近い。

 

しかしここで倒れたら加古に見つかる可能性があるので最後の力を振り絞って、俺はエレベーターに乗り医務室がある1階のボタンを押す。

 

同時にエレベーターのドアが閉まり……

 

(あ、もう無理……)

 

遂に我慢の限界が来てしまい、俺の意識の扉もゆっくりと閉まっていくのを実感し……

 

 

ブツッッッッッッッッッッッッ

 

やがて視界が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン……

 

「ん……?」

 

雀の鳴き声が聞こえてきたので目を開けると、知らない部屋のベッドの上にいた。

 

周りを見るがウチの屋敷ではないし、ベッドも天蓋付きのベッドになっている。

 

しかもベッドには女物の寝巻き……というかネグリジェが置いてある。

 

「え?どういう事だ?」

 

確か俺はさっきまで加古の炒飯を食って気分を悪くして……その先はよく覚えてないが、少なくともこの部屋についてはわからない。

 

「どうなってるんだ?」

 

俺は頭に疑問符を浮かべながらもベッドから降りて、そのままドアを開ける。

 

廊下を見れば天井にはシャンデリアがあり、廊下の隅にはには調度品などが置かれている。しかし全く見たことがない物ばかりなので、ここは自分の家じゃないのは確かだ。

 

そこまで考えていると階段の方から足音が聞こえてきたので警戒すると、予想外の人物が現れた。

 

「あら尊君。起こしに行こうと思ったけど、起きてたのね」

 

そこにいたのは加古望だった。しかし何故かエプロンを着けているし、雰囲気も元々大人っぽかったが、色気が更に増している。

 

しかし起こし行こうと思ったって……どういう事だ?もしかして炒飯を食って気絶した後に医務室じゃなくて加古の部屋に運ばれたのか?

 

いや、それはないだろう。とりあえず本人から情報を得てみるか。

 

「あの、加古さん」

 

改めて話しかけると加古は不思議そうに見てくる。

 

「どうしたの?いきなり旧姓で呼ぶなんて」

 

「はい?」

 

いきなり何を言ってんだ?旧姓ってどういう事だ?!頭の中がパニックになっている中、加古は俺に近寄ってくる。

 

「えっ?!加古って旧姓なんですか?」

 

慌てて尋ねると加古は頭に疑問符を浮かべている。

 

「寝惚けてるの?尊君と式を挙げてから唯我に姓を変えたじゃない」

 

えっ?!俺と式を挙げただと?!

 

(マジでどうなってんだ?!加古はまだ俺に恋愛感情を抱いてるとは思えないし、それ以前に俺は中3だから式を挙げるのは無理だ)

 

頭の中がパニックになっている中、加古は更に距離を詰めてくる。

 

「もしかして体調が悪いの?それとも私が加古だった時におけるリアルな夢を見たのかしら?」

 

夢……もしかしたらそうなのかもしれない。元々唯我尊に転生した事自体夢かと思ったし……もうなんか全てが夢なのかもしれない。

 

「そうかもしれないですね。ついさっきまで風間隊と二宮隊とランク戦をしてたようだったので」

 

「あー、じゃあ夢ね。まあ時間が経てば落ち着くかもしれないわ。とりあえず水でも飲みなさい」

 

「そうですね」

 

とりあえず頭の整理がしたいのは事実だ。

 

「決まりね。あ、そうそう。忘れてたわ」

 

加古は言うなり俺に近寄り………

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

「っ?!」

 

いきなりキスをしてきた。俺が驚く中、加古は目を瞑り唇をすり合わせてくる。

 

「ぷはっ……おはよう尊君」

 

加古は蠱惑的な表情を浮かべて挨拶をしてくる。その魅力的な表情に俺の中で何かがキレた。

 

これが夢か現実かはわからない。わからないが……

 

「おはようございます……あの、もう1回お願いします」

 

わからないが、折角加古の夫的ポジションになったんだし堪能するしかない。

 

「ふふっ……良いわよ……んっ」

 

加古……いや、唯我となった望は頷くと再度キスをしてくる。マジで幸せ過ぎる。ハーレムを夢見ていた俺だが、こんな幸せなら気にしない。

 

「んんっ……続きは夜、尊君が仕事から帰ってきてからね」

 

望はそう言って俺の手を引っ張り階段を下るが、夜だと?!今からマジで楽しみだ!

 

俺は夜に希望を抱きながら一階に降りると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから今日もお仕事頑張って。はい、ブルーベリー鯖味噌カレー炒飯」

 

満面の笑みを浮かべてテーブルの上に炒飯(外れ)を置く。

 

瞬間、さっきまでの幸せは一瞬で吹き飛び、絶望が襲ってくる。

 

(いやいやいや。何で朝から外れ炒飯なんだよ?!)

 

カレー炒飯なら満足だ。鯖味噌カレー炒飯も美味しくはなさそうだがまだ許容範囲だ。

 

けどブルーベリーはねぇだろ!!何故ブルーベリーを入れる?!仮に結婚してるなら夫を毒殺するつもりか?!

 

内心ツッコミを入れまくっていると……

 

 

 

 

 

 

「尊君、あーん」

 

天使が魅力的な表情で俺の口に毒物を入れてきた。

 

これは……死ぬかもしれない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ……!」

 

炒飯の不味さが口に広がってきたタイミングで俺は身体を起こしていた。

 

周りを見れば毒物が盛られた皿も毒物を食わせてきた望の姿もなく、白いベッドの上にいた。離れた場所にある棚には薬品が置かれていて、所々にボーダーのマークがついていた。

 

ポケットにある携帯を取り出して、年と日付を見ると俺が転生して余り経ってないことを示していた。

 

つまりは……

 

「夢か……」

 

さっきの夢だったようだ。しかし良い夢と悪夢を同時に見るってあるんだな……

 

「あー、前半だけだったら最高だったのに……」

 

思わずそう呟く。前半はマジで最高だった。夢とはいえキスをして、その余韻が残っているし。

 

しかし後半が最悪過ぎた。しかも炒飯を食べて目が覚めたから、寝汗がダラダラ流れて気分が悪い。

 

というか加古と結婚したら、マジでポイズン炒飯を食べる機会が増えそうだな……

 

俺は倦怠感を感じながら、先程見た夢について思い出し、幸せな気分と最悪な気分を交互に味わうのだった。

 

 

 

 

 

尚、現在の時刻は8時過ぎで、7時間近く眠っていたことを証明した。

 

ポイズン炒飯って睡眠薬にも使えそうだな……下手したら永眠するかもしれないけど。

 

 

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