唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第29話

「……では朝の10時に東三門駅の西口前のタクシー乗り場で大丈夫ですか?」

 

『ええ。明日を楽しみにしてるわ』

 

「はい。俺も楽しみにしてます。では……」

 

『お休みなさい。唯我君』

 

その言葉を最後に通話が切れるが、俺の中で嬉しさが込み上がる。

 

(いよいよ明日は待ちに待ったデートだ……!)

 

しかも相手はボーダー屈指の美少女の那須と最高の相手だ。

 

明日のデートは絶対に成功させないといけない。成功すれば次があるが、失敗したら次はない。

 

重要なのは那須に対して優しくすること、そしてどんな事があってもがっつかないことだ。

 

映画に誘ってくれた那須の俺に対する好感度だが、チームメイトの次に誘った相手なので決して低くないだろう。しかしがっついて引かれて好感度が低くなったらシャレにならないからな。紳士的に行こう。

 

そして明日行く場所や電車のダイヤなども全てチェックした。万が一電車が止まった場合に備えて沿線のバスも調べ尽くしてある。

 

(明日頑張って次に繋げるぞ……)

 

改めて決心しながら俺はゆっくりと目を閉ざした。

 

 

 

 

 

 

 

翌朝……

 

「早く来すぎたな……」

 

俺は集合時間30分前に集合場所にいた。ちなみに那須は当然ながらまだ来ていない。

 

那須を待たせるのは悪いと思ったので早く来たが、この様子だと後15分は来ないだろう。

 

そこまで考えた俺は切符を2人分買うべく、駅の券売機に向かうとアナウンスが聞こえてくる。

 

『ただ今情報が入りましたが、本線は二木元町付近で人身事故が発生して運転を見合わせております。復旧の見通しは立っておりませんが……』

 

おいおい。人身事故で復旧の見通しが立ってないだと?しかも俺達が向かうのは四塚市で二木元町とは逆方向であるため、当分電車が来ない事を意味する。

 

俺は急いで那須に電話を入れる。すると直ぐに那須は出る。

 

『もしもし?どうしたの唯我君』

 

「今駅なんですけど、人身事故で当分動かないみたいですから、バスで行きましょう」

 

『え?そうなの?じゃあ集合場所とかも変わる?』

 

「駅は変わりませんが、バス乗り場は西口じゃなく、東口にあるのでそちらに来てください」

 

万が一に備えて、東三門駅から四塚駅までの間の駅のバスについては全て調べてある。

 

『わかったわ。私ももう着くから乗るバスの近くで待ってて』

 

「わかりました。では失礼します」

 

通話を切って、東口にあるバスターミナルの中から四塚に向かうバスの近くで待機する。

 

暫くすると那須がやって来て、俺の方に向かってくる。時計を見ると集合時間10分前だった。

 

「お待たせ。待った?」

 

「いえ、問題ありません」

 

那須とデート出来るなら1時間でも2時間でも余裕で待てるからな。

 

「とりあえずバスに乗りましょう」

 

那須に促してバスに入ると、既にそこそこ乗客がいるが席は空いている。

 

「じゃああそこに座りましょう」

 

那須か指差したの2人がけの席、つまり那須の隣に座る事を意味する。

 

内心ドキリとする中、那須は窓際に座るので俺のそれに続き、那須の隣に座る。すると女の子特有の香りが鼻を擽り、ドキドキが止まらなくなる。

 

そんな中、バスが出発する。バスなら目的地まで40分くらいだ。

 

「改めて、今日は宜しくね」

 

那須は微笑みを俺に向けてくるので、返事をしないといけない。

 

「こちらこそよろしくお願いします。ちなみに今日はどんな映画を見たいんですか?」

 

正直言って俺はアクション映画が好きだが、那須はそういう映画に興味を持たないだろうから那須に合わせる。

 

「うーん。私としてはファンタジー映画や恋愛映画かな。唯我君はどんな映画が見たい?」

 

「俺としてはコメディものかファンタジーものですね」

 

恋愛映画は余り見た事ないからな。ともあれこういえば那須の意見に合わせられるし問題ない。

 

「じゃあこれで良いかしら?」

 

那須が携帯を出してくるので見てみると、妖精の世界に迷い込んだ主人公が妖精女王を助けに行くという、いかにもなファンタジー映画の特集が載っていた。

 

「ではそれにしましょう。上映時間は11時と13時半ですが、バスが順調に進めばギリギリ見れますね」

 

予定通りに着けば四塚駅には10時40分に着き、映画館は駅前にあるので45分に入れるだろう。

 

そう思いながら俺達はバスに揺られて四塚市まで向かうが……

 

 

 

 

「こりゃ間に合わないな……」

 

「そうね……」

 

途中にて連続で赤信号に捕まってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

1時間後……

 

『次は四塚駅、四塚駅でございます』

 

11時過ぎ、漸く目的地に到着するが目的の映画が始まったところだ。次は13時半に上映される。

 

バスが止まったので金を払い、バスから降りると都会ということもあり、かなりの人で賑わっている。

 

「とりあえず他の場所を回る感じで良いかしら?」

 

「そうですね。行くとしたらカラオケやゲーセン……あ、那須先輩の学校は禁止してますか?」

 

那須の学校はお嬢様学校だから、そういったことに厳しいかもしれない。

 

「放課後に行くのは禁止されてるけど、休日については節度を持ってれば大丈夫よ。その2つならゲームセンターに行ってみて良いかしら?カラオケは先週くまちゃん達と行ったから」

 

「わかりました」

 

那須に頷き、俺達は映画館の近くにあるゲームセンターに入る。中に入るとゲームセンター特有の騒がしい音が聞こえてくる。

 

「那須先輩はゲームセンターでは何が好きですか?」

 

「お菓子の掴み取りね。ボーダー高1グループで競ってるわ」

 

高1グループとなれば出水や米屋、小南や熊谷あたりだろう。

 

「唯我君は好きなものはあるの?」

 

「クレーンゲームは好きですね」

 

というか得意だった。前世ではガンガン取って出禁を食らった事もあった。

 

「そうなの。私は何度かやったけど全然取れないわ」

 

「アームの確認と掴み方が重要ですから」

 

言いながら俺は一番近くにあるクレーンゲームを見ると、そこには犬やペンギンなど可愛らしい動物のぬいぐるみがあった。

 

「なんか欲しいのありますか?」

 

「出来るの?じゃあウサギのぬいぐるみ、取れる?」

 

ウサギのぬいぐるみを見れば、倒れてるし多分いけるな。

 

俺はクレーンの爪を確認するが、隙間は殆どないし角度も大きいので割と難易度は低いな。

 

そう判断してからコインを入れる。同時に軽やかな電子音が流れて、操作可能になった。

 

このクレーンゲームではクレーンを横、奥、回転運動が出来るが、まずは横移動をしてウサギのぬいぐるみに並ばせる。

 

(次に奥に移動だが、クレーンの速さからして3秒だな)

 

俺は体内時計で3秒測りながらクレーンを奥に移動をする。

 

最後にクレーンを回転させることが可能だが倒れているぬいぐるみを入手する場合、頭と尻を掴むように掴む必要がある。

 

(角度的には60度近くだな)

 

俺は回転ボタンを長押しするとアームはゆっくりと時計回りに回転する。そして何周もさせていると那須が話しかけてくる。

 

「あの、ずっと回転してるけど良いの?」

 

「はい。タイミングを見計らってます」

 

一発勝負してミスをするより何度も回転させてタイミングを計ることが重要だ。

 

アームが10周したあたりでタイミングがわかったので、来たと思った瞬間にボタンを離す。するとアームが開き、クレーンはゆっくりと降りてぬいぐるみの頭と尻を挟み込む。

 

そしてアームが閉じて上に上がるが、ぬいぐるみはしっかり固定したままだ。

 

「凄いわ。全く落ちる気配が見えないわ」

 

那須が褒める中、クレーンはスタート地点に戻りアームを開く。それによってぬいぐるみは重力に従って受取口に落ちるので、俺は取り出して那須に渡す。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう、大切にするわ」

 

那須はウサギのぬいぐるみをギュッと抱きしめて微笑みを浮かべてくるが、それだけで手に入れた甲斐があるってもんだ。というかウサギのぬいぐるみになりたい。

 

「そう言って貰えて嬉しいです。他にも何か欲しいものがあるなら、簡単なクレーンゲームなら取りますよ」

 

まあこのゲーセンは子供向けのクレーンゲームが多いので比較的簡単だろう。

 

「ううん。一番欲しかったものは取って貰えたから充分よ」

 

「そうですか、では違うゲームで希望はありますか?」

 

「そうね……あ、唯我君さえ良ければプリクラに付き合って貰って良い?前にチームでやったんだけど、唯我君とも撮りたいわ」

 

プリクラか……やったことはない(やる相手が居なかった)からどんなものが詳しくはわからないが興味あるな。というか俺とやりたいと言ってくるなら……

 

 

 

 

 

「もちろんです」

 

俺の中で断る選択肢は存在しなかった。

 

 

 

ヒロインは何人まで希望?4人は確定

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