唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第31話

「「あ……」」

 

俺と那須は同時に呟いてしまう。視線の先に見えるのは互いに重なり合う俺と那須の手。俺の手が那須の手の上に乗って、柔らかな感触が伝わってくる。

 

既に耳には映画の音声が流れているが、俺の目は那須の手に向いて離れる気配がない。

 

那須の手から伝わってくる熱は暖かく、全身に伝わって幸せな気分になってくる。

 

しかしいつまでも握っていてはドン引きされるかもしれないので離れないといけない。

 

「すみません。嫌でしたよね」

 

そう言って離れようとするが……

 

「い、嫌とは思ってないわ。何というか……説明はし難いけど、唯我君の手、暖かくて気持ちよかったから……」

 

モジモジしながらそう言ってくる。そんな風に言われると理性が飛びそうだが、映画館なので我慢する。

 

しかし本人が気持ちよかったと言うなら多少攻めてもいいだろう。

 

「で、でしたらこのままで良い、ですか?」

 

これまでのやり取りで嫌われてないのはわかってるので、多少踏み込む。太刀川は模擬戦の際、受けに回りながらも常に攻め時を探り、攻め時を見つけたら恐れずに攻めろと言っているしな。

 

すると那須は暗闇の中でもわかるほど恥ずかしそうにしながらも、やがて頷き……

 

「じゃ、じゃあこうして……」

 

言うなり俺の手を優しく握り返してくる。さっきまでは俺が那須の手の甲に自分の手を乗せていたが、今は互いの掌が触れ合い、指同士が絡み合う。

 

それにより先程以上に幸せな気分になる。まさか那須から握ってくるとは思わなかった。予想よりも好かれているようで何よりだ。

 

「………」

 

「………」

 

しかしメチャクチャ恥ずかしく、俺と那須は事あるごとにチラチラ見つめ合ってしまう。映画は進んでいるが、最早那須の手の柔らかさにより余り集中出来ない。

 

だからといって手を離すつもりはない。那須が離したいなら離すが、那須は俺の手をそれなりの力で握っているので離すつもりはなさそうだ。

 

そして俺から離すつもりはない。こんな幸せを自ら手放すなんてあり得ない。

 

それから暫くの間ドキドキしていたが、人間ってのはどんな事にも慣れる生物だからか、少しずつ恥ずかしさは失っていき映画に意識を向けるようになった。

 

しかし幸せな気分は一切薄れる事なく、那須の手から伝わる温もりを手放したくない気持ちが徐々に増えているのを嫌でも自覚してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

2時間後……

 

(終わったか……)

 

映画が終わり、周囲が明るく中、息を吐く。映画の内容そのものは悪くなかった。ストーリーはシンプルだが、演出や迫力のレベルは高かったのでB級上位レベル、もしくはA級下位レベルの映画だろうし満足だ。

 

客はゾロゾロと出て行くが、出口には人が密集して那須にはキツいだろうから最後に出る予定だ。

 

暫く待ってシアター内にいる客が30人を切ったところで、忘れ物がないかを確認する。

 

「じゃあ出ますが……このまま手を繋いでも、良いですか?」

 

2時間近く那須の手を握っていたが、全然飽きる気はないし、まだ離したくない気持ちが強い。無論那須が嫌なら直ぐに離すが。

 

「ええ……良いわよ」

 

那須は恥ずかしそうにしながらも了承するので、手を握り合ったまま立ち上がり、那須のペースに合わせてゆっくり歩く。

 

映画館を出ると綺麗な夕焼けが街を照らしていて、少し涼しくなっている。

 

「面白かったわね」

 

「そうですね。奇抜なネタはないですが、演技が真に迫っていたからでしょう」

 

映画で重要なのはいかに、演技でないと見せつけられるかだ。演技っぽいと思ったら白けるなんてザラにある。

 

と、ここで映画の感想の話になったので……

 

「あの、那須先輩。那須先輩さえ良ければまた一緒に映画を見に行きませんか?」

 

俺は次に繋げる為の誘いをかける。これが今日のデートで一番重要なことだ。

 

「もちろん。唯我君が誘わなかったら私が誘ってたわ」

 

那須は優しく微笑みながら了承してくれる。次があるなら今回のデートは成功だろう。

 

「今日はありがとう。唯我君のおかげで良い気分転換が出来たし、また明日から訓練を頑張れるわ」

 

那須はそう言っているが、気分転換とは伸び悩んでいることだろう。

 

那須隊は結成したばかりで下位常連、偶に中位入りしても大敗して下位に落ちるパターンが多い。

 

原作でも最高順位が8位で、修達のデビューしたシーズン最初の順位は12だったし、B級上位も大概だが中位も相当魔境だな。

 

ともあれ悩んでいるのなら力になるべきだろう。

 

「那須先輩が宜しければ出水先輩を紹介しましょうか?新しく得る事が出来るかもしれないです」

 

出水は那須と同様にパイパーにおいて、毎回弾道を引ける一流射手だ。加えて他の弾トリガーの扱いも上手いので那須にとっては最高の教材だろう。

 

「えっ?良いの?」

 

「はい。出水先輩が承諾するかはわからないですが、多分大丈夫でしょう」

 

原作でも烏丸が修の修行を頼んだ際に俺(唯我)を使った形で引き受けたし、ある程度実力がある俺の頼みなら聞いてくれる可能性はあるだろう。

 

「じゃあお願いしても良いかしら?」

 

「もちろんです。話が通ったら連絡します」

 

「ありがとう」

 

「いえ。ところで今日はもう帰ります?」

 

もう少し遊びたい気持ちはあるが、これ以上遊ぶと遅くなってしまう。俺はともかく、那須が夜遅くまで歩くのは良くないだろう。

 

「そうね。私、ちょっと作戦室に取りに行かないといけないものがあるから」

 

那須はそう言うので俺は頷き、ゆっくりとした足取りで歩き出す。四塚市を調べたところ、クリスマスには凄いイルミネーションがあるらしいが、是非とも那須を始めとしたボーダー女子と行きたいものだ。

 

そう思いながら駅に向かうと、既に人身事故による運休については解決しているようなので、切符を2枚買ってホームに立つ。幸い電車が出て行った後だからか、最前列だ。

 

しかし四塚駅はそこそこの都会だからか、5分くらいすると沢山の人が後ろに並ぶ。こりゃ満員電車になるかもしれない。

 

暫く待っているとようやく電車がきたが、既に混雑している。

 

ドアが開くとそれなりの人が降りるが、まだまだ残っているので俺は乗るなり那須に負担がかからないギリギリの速さで奥に進み、那須をドアの角に押して自分の身体をバリケード代わりにする。

 

同時に背中に重みが伝わってきて、痛みを感じる。この重み……前世において会社に出社する際に乗る電車で良く感じた痛みだ。

 

「唯我君、私は気にしないで良いから」

 

余程苦痛に満ちた表情をしていたからか、那須はそんな事を言ってくる。しかしここでやめたら、那須に負担がかかるし却下だ。そもそも帰りの時間帯における混雑具合を調べなかったら俺のミスだ。

 

「俺が勝手にやってるだけですから、那須先輩こそ気にしないでください」

 

那須の言葉を一蹴して、他の乗客からの圧力から那須を守る。

 

すると電車が動き出し、更に負担がかかるが歯に力を入れて苦痛に耐え始める。降りる駅まで3駅で10分弱だし、頑張ろう。

 

そう思いながら粘るが、次の駅に着くと人は降りず、寧ろ更に乗ってきて背中に痛みが走る。また電車が発車するが、背中にゴリゴリと痛みが来る。

 

(クソッ、前世ならまだしも唯我尊の肉体じゃキツいな)

 

多少トレーニングしているとはいえ、元々貧弱であったので前世の肉体に比べたら劣っている。早い所力を上げないといけない。

 

トレーニングを厳しくすることを誓う中、電車は進み次の駅に到着すると人がそこそこ降りて、痛みが無くなる。これならバリケードをする必要はないだろう。

 

「ごめんね唯我君。いつも唯我君に助けられてばかりね」

 

那須は申し訳なさそうに謝ってくるが、別に罪悪感を感じる必要はない。

 

「さっきも言いましたが、俺が勝手にやってるだけです」

 

「そうだとしても私が納得してないの。だから何か本格的にお礼をさせて。結局初めて会った時のお礼も出来てないから、何でも言って」

 

そういや初めて会った時、俺は苦しそうな那須を助け、後日那須は俺にお礼をしたいと言った。その際に俺は困ったら相談すると言ったが、相談してなかったな。その事もあり那須はお礼をしたいのだろう。

 

しかし何でもと言った以上、気にしてないと遠慮しても那須は納得しないだろう。

 

よって俺は要求しないといけないが……

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、那須先輩を名前で呼んでもいいですか?」

 

今日のデートは順調だし、もう一本踏み込んでみよう。




次回で那須さんと最初のデートは終了です。

このまま無事に終わるのか?!(すっとぼけ)

ヒロインは何人まで希望?4人は確定

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