唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第34話

『対戦ステージ市街地A、個人ランク戦10本勝負、開始』

 

アナウンスが流れると同時に小南は猛スピードで距離を詰め、右手に持つ弧月を振るってくる。俺はバックステップしてギリギリで回避する。

 

しかし間髪入れずに左手の弧月を振るってくるのでレイガストを構えようとするが……

 

「っ!」

 

ぶつかった瞬間、小南は弧月を押しつけるように力を込め、その勢いを利用して横に跳ぶ。

 

そして横に跳びながら右手の弧月をぶん投げてくる。

 

慌てて首を横に動かすが、弧月は俺の首を擦り僅かにトリオンが漏れるのを自覚する。

 

しかし目の前の小南の攻撃は終わってない。そのまま左手に持つ弧月を振るってくるので首からトリオンが漏れるのを気にしないで、再度レイガストを構えて弧月を受け止める。

 

「スラスター、起動(オン)!」

 

同時にスラスターによるシールドバッシュをぶちかます。さっきみたいに横に跳ばれたら厄介だし、ぶつかった瞬間も油断出来ない。

 

小南が吹き飛びバランスが取れてないので、レイガストをブレードモードにしてスラスターを使用した投擲をしようとする。

 

しかしその前に小南は左手の弧月を民家の壁に突き刺すことで体勢を直しながらも、右手に新しい弧月を展開するや否や再度ぶん投げてきたので横にとんで回避する。

 

距離が離れているので回避は余裕だが、その間に小南は地面に足をつけて体勢を完全に直しているので、攻撃を諦めてレイガストをシールドモードにする。今投げても受け流されてカウンターで死ぬのは目に見えている。

 

「最初の投擲で取るつもりだったんだけど、思ったよりやるじゃない」

 

楽しそうに笑っているが、こっちとしてはかなりヒヤヒヤした。これまで戦ってきた攻撃手はレイガストを割ろうとしたり、何度も攻撃を重ねて防御を崩そうとしたり、回り込もうとしてきたりしてきた。

 

しかし小南はこっちの防御を横に跳ぶ為の勢いに利用してから、隙があった首を狙ってきたのだ。余りにも型破り過ぎる。

 

原作で小南の戦い方は近界民のそれに近いと評価されていたが、太刀川を始めとした他の攻撃手より読み難い。

 

「じゃあ普通に戦おうっか!」

 

言いながら小南は再度突撃をしてくる。牽制射撃としてアステロイドを放つが、シールドを使うことなく軽いステップで回避しながら距離を詰めてくる。

 

そして左の弧月を振るってきたのでレイガストで受け止め、再度スラスターを発動しようとするが、その前に横に移動しながら右の弧月を振るおうとしてくるので、スラスターを発動せずレイガストをズラして小南の持つ弧月の峰にぶつける。

 

その際に弧月の軌道をズラせたが、僅かに掠ったのか左肩からトリオンが漏れる。

 

(まだ動かせるから問題ない……っと!)

 

次に小南は足払いをかけてこようとしたので慌てて後ろに跳ぶが、即座に距離を詰めて絶え間ない連撃を浴びせてくる。

 

何とかレイガストを小刻みに動かしてガードするが、剣速が速過ぎて完全には防げず、身体の要所要所からトリオンが漏れる。

 

玉狛特製トリガーを使った小南は一撃必殺に特化していたが、ボーダーの規格に収まったトリガーを使った小南の攻撃は剣速に特化している。

 

まさに蝶のように舞い、蜂のように刺すといったところだ。

 

正直言って太刀川よりやり難い。太刀川の剣は重さも速さもあるが、記録を見直せばある程度読めるが、小南の剣は型破り過ぎる。どっちが強いかは人によって意見は違うが、俺的には小南の方が強い気がする。

 

そんな小南の連撃を必死に耐え続ける。現時点の俺に誇れるのは粘りだけだからな。

 

「記録は見たけど、本っ当にしぶといわね……」

 

「今の俺にはそれしかないんで。馬鹿にしたいならしてください」

 

小南からしたら俺は弱いだろうから馬鹿にされても仕方ない。いつか距離を詰めるがな。

 

「まさか。入隊して半年以内なのに、あたしの攻撃に耐えれるってことは相当努力したんでしょ。そんなあんたを馬鹿にするつもりなんかないわよ」

 

言いながらも小南は攻撃を更に苛烈にする。どうやら意地でも俺の防御を崩すつもりのようだ。負けず嫌いの小南らしい。

 

しかし攻撃が激しくなった分、付け入る隙も僅かながらに見えてきた。確実な隙を見抜き、決めてみせる。

 

そうおもいながら暫く攻撃を受け、レイガストが割れそうになった時だった。

 

小南はトドメとばかりに2本の弧月を上段から振り下ろす。レイガストごと俺をぶった斬るつもりだろう。

 

それを見た俺は身を屈め、小南を斜め下から見上げ……

 

「スラスター、起動(オン)!」

 

「っ!」

 

レイガストが弧月とぶつかり合う前にシールドバッシュをぶちかまし、小南を空中に飛ばす。これは予想外だったのか小南は目を見開く。

 

さっきは地面から離れずに吹っ飛ばしたから住宅地の壁を利用して簡単に体勢を立て直していたが、空中なら立て直しが出来ない。

 

俺は即座にレイガストをブレードモードにしてから、大きく振りかぶり……

 

「決まれ……スラスター、起動!」

 

小南に向けてレイガストをぶん投げる。スラスターによって加速したレイガストは一直線で小南に向かって突き進む。

 

この距離なら外さないし、小南のトリオン量は高くないからシールドを展開しても突き破れるし、小南はグラスホッパーを入れてないからあの体勢から逃げるのは無理だ。

 

メテオラの爆風を使えばレイガストを逸らせるかもしれないが、小南はトリオンキューブを展開してないから、メテオラを撃つ前に倒せる。

 

 

勝った、そう思うのも仕方ないかもしれない。

 

しかし次の瞬間だった。何と小南は空中で右手に持っている弧月を振るい、小南を真っ二つにしようとするレイガストの横っ腹に叩きつけたのだ。

 

すると一瞬だけ火花が散るも、レイガストは僅かに軌道を逸らして小南の左腕を斬り飛ばして、そのまま空へ飛び去った。

 

ダメージは大きいが、今の投擲で仕留める予定だった俺からしたら実質失敗だ。

 

レイガストの投擲による軌道を弧月で逸らすことは太刀川も偶にやっていたが、小南は思うように動けない空中でそれをやったのだ。もしかしたら技術なら太刀川より上だろう。

 

予想外の光景に思わず動きを止めてしまったが、それは明らかに悪手である。

 

それに気付くが、その前に小南は落下しながらもキューブを展開する。

 

「メテオラ!」

 

叫ぶと同時にメテオラが放たれるのでシールドを展開するも、ワンテンポ遅れての展開であり、全て防ぐ事は出来ず数発が地面に当たり、その衝撃と爆風で後ろに吹き飛んでしまう。

 

何とか体勢を立て直そうとするが、既に小南は地面に着地して間髪入れずに俺との距離を詰めて……

 

『トリオン供給器官破損、緊急脱出』

 

レイガストを展開する前に、トリオン供給器官をぶった斬られた。

 

(ああ、やっぱ一瞬でも油断したのはアホだな)

 

 

自分の反応に文句を言いながら俺は光に包まれ、空へ飛び上がった。

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