唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第37話

ドサッ

 

背中にベッドの柔らかな感触を感じた俺は息を吐く。

 

(1勝8敗1分か……ま、小南が相手ならかなり上出来だろう)

 

まだまだやるべき課題はあるが、それでも成長していると感じることは出来た。これからもっと強くならないといけない。

 

そう思いながら俺は起き上がろうとするが……

 

(ヤベェ、ずっと防御に徹していたからか、頭が痛ぇ)

 

さっきまでは試合中だったから気にしてなかったが、終わってから頭痛を感じるようになってきた。

 

(ダメだ。ちょっと疲れたし、休もう)

 

そう思いながら俺はゆっくりと目を閉じてしまった。

 

『……?』

 

目を閉じる直前に誰かに呼ばれたのは気のせいと思いながら。

 

 

 

 

 

 

「尊?おかしいわね。モニターには尊の個人ポイントが表示されてるからブースにいる筈だけど……」

 

個人ランク戦を済ませて、ブースに戻った小南は唯我に通信をするが返事はなく訝しげな表情を浮かべる。

 

「どうしたのかしら?見に行ってみるか」

 

そう呟き身体を起こすとブースから出て、隣のブースに入るとベッドの上で寝ている唯我を発見する。表情を見ると若干息が荒い。

 

「寝てるわね……もしかして集中し過ぎが原因?」

 

試合は10本勝負だが、かかった時間は30分以上で唯我はその大半を小南の攻撃を裁くことに費やしていた。その際に集中し過ぎて精神的に疲れたのだと小南は推測した。

 

「仕方ないわね」

 

小南は苦笑いを浮かべながら唯我をゆっくりと起こし、そのまま背中におぶる。ベイルアウト用のベッドはそこそこ柔らかいが、しっかりと医務室で休ませるべきと小南は考えたからだ。

 

そして起こさないようにゆっくりとブースを出ると、注目が集まるが小南は気にしないで歩き出す。

 

と、ここで視界の先に出水達を発見する。

 

「よう小南。やっぱ唯我はお疲れか?」

 

「やっぱりってこうなる事を知ってたの?」

 

「太刀川さんと何十回も模擬戦すると見れる光景だからな。つか運ぶなら俺が運ぶぜ」

 

「良いわよ。あたしが戦ったし、あたしが運ぶわ」

 

出水の気遣いに小南は遠慮する。一方出水の隣にいる米屋は残念そうに口を尖らせる。

 

「ちぇー、小南の次に挑むつもりだったんだけどな」

 

「アンタは本部所属だからいつでも戦えるでしょ。というかコイツの防御を見ると、後1ヶ月もしたらマスター以下の攻撃手の攻撃なら全部捌けるわね」

 

実際小南でも唯我の防御を崩すのは苦労した。今は荒削りの部分があるが目を見張る部分はある。このまま唯我が半年鍛錬を続け、自身の実力が伸びなかったら自身の攻撃を捌かれる可能性がある。

 

「とりあえずコイツは連れてくから」

 

小南はそう言ってからそのまま個人ランク戦ラウンジを後にして、医務室に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……んんっ」

 

目を開けると見覚えのある天井が目に入る。

 

「ここは医務室、だよな?」

 

加古の炒飯により気絶した後に見たことがあるし、間違いないだろう。

 

そして医務室にいる理由だが、小南との試合が終わった後に疲れ果てて寝てしまい、多分小南が医務室に運んでくれたからだろう。

 

と、ここでカーテンが開き、制服を着た小南が顔を出してくる。

 

「起きたのね。体調は?」

 

言われて改めて体調を確認するが、頭痛は無くなっている。

 

「大丈夫です。あの、どれくらい寝てましたか?」

 

「2時間ちょっとね」

 

予想よりも長く寝ていたようだ。しかしそうなると……

 

「もしかして俺を運んで起きるまで待っていたんですか?だとしたら手を煩わせて申し訳ありません」

 

「別に良いわよ。トリオン体の状態で運んでたし、まだ読んでない本もあったから」

 

小南は笑いながら手を振ってくる。

 

「それよりも尊。さっきのランク戦だけど、かなりまあまあだったわね」

 

小南が言うかなりまあまあとはB級上位、つまり俺の力はB級上位レベルって所か。

 

とはいえA級レベルじゃないし、太刀川と出水はA級上位レベルだし、まだまだ力不足なのは否めない。

 

(まあこれならお荷物扱いはないだろうし、転生して以降に立てた最低限の目標は達成だな)

 

唯我尊になってから色々目標を立てたが、最低限にして1番重要な目標は「太刀川隊のお荷物からの脱却」だからな。

 

「ありがとうございます。俺も今日、小南先輩と戦えて良かったです」

 

「本当?どんな所が良かった?」

 

さりげなく質問している体を見せているが、明らかに興味津々だ。十中八九褒められたいのだろう。

 

ならば当然褒めるつもりだ。実際小南と戦えて良かったのは事実だし、名前呼びされた事から小南に気に入られているだろうから褒めまくって更に気に入られたい。

 

「はい。誰にも真似出来ない戦い方を間近で見れたのが良かったです。記録で小南先輩の戦い方は知ってましたが、記録で見た時よりも数段迫力と洗練さがあり見惚れてしまいました」

 

「も〜!アンタ褒め過ぎよ!」

 

小南はニヤケ顔を浮かばせながらポカポカ叩いてくる。幸せオーラ全開の小南はメチャクチャ可愛く、さっきまで獰猛な笑みを浮かべながら戦った人間と同一人物とは思えない。

 

「加えてわざわざ俺を運ぶ優しさも知れました。俺はまだ未熟ですが、少しずつ強くなって小南先輩のように強くて魅力的な人間になりたいです」

 

「〜〜〜っ!」

 

そこまで言うと小南は笑うのをやめて真っ赤になって恥ずかしそうに俯く。もしかして攻め過ぎたか?

 

「えっと……小南先輩?」

 

「にゃに……何よ?!」

 

一度噛んでから今以上に真っ赤になって俺に叫ぶ。

 

「もしかして不快な気分になってしまいましたか?」

 

「べ、別になってないわよ!アンタに褒められ過ぎて嬉しさを通り越して恥ずかしくなったとかじゃないんだから勘違いしないでよね!」

 

そう言って指を突きつけてくる。ツンデレには似合いそうな言動だ。まあ口にしたらぶっ殺されそうだから言わないけど。

 

「と、とにかくあたしのように強くて魅力的な人間になりたいんだったら、今以上に実戦経験を積みなさい!アンタとは年季が違うんだから!」

 

「もちろんです」

 

そりゃそうだ。小南は5年以上前から戦っていて、俺は人一倍鍛錬を積んでいるとはいえ数ヶ月しか戦ってないから、小南の言うように年季が違う。

 

「ま、まあ……もしも伸び悩んだら、相談に乗ってたり模擬戦に付き合ってあげるわ!」

 

そう言って余り大きくない胸を張りながらそう言ってくる。これも口にしたらぶっ殺されそうだな……

 

「小南先輩にそう言って貰えて嬉しいです。頼りにしてます」

 

「当然よ。あたしは先輩なんだからガンガン頼りなさい」

 

そう言って頭をわしゃわしゃしてくる。子供扱いされているようで恥ずかしいが、小南からしたら俺は歳下に見えるから仕方ない。

 

「はい。ありがとうございます」

 

今回手に入れたギリギリの一勝は今後強くなる上で重要なものになるだろうから大切にするつもりだ。

 

これからもっと、それこそトップランカーと渡り合えるくらい強くなってやる。

 

周りの連中もA級や上位ランクを目指すべく訓練しているのだから、特訓メニューについても見直して、更に訓練する時間を増やすべきだ。

 

俺は小南にわしゃわしゃされながら、今後について色々考えるのだった。

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