唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ! 作:ユンケ
太刀川隊
それは界境防衛機関ボーダーに存在する部隊であり、最強の座を誇る部隊だ。実際にはその上に特別部隊として玉狛第一が存在するが、世間ではボーダー最強の部隊は太刀川隊と認知されている。
そして唯我尊に転生した俺はそこの部隊に所属しているのだが……
「……これでここの掃除は終わりっと。国近先輩、捨てる物があるならこのゴミ袋に入れてください」
「ほ〜い」
現在、俺は太刀川隊の隊室を掃除をしている。俺が呼びかけると国近がのんびりした口調でゴミ袋にお菓子などのゴミを捨てる。
なぜ俺が掃除をしているのかというと理由は簡単、隊室がクソ汚いからだ。
前世ではワールドトリガーのコミックスを読んでいて、太刀川隊の隊室は汚くて月に一度ボーダーの職員が掃除をするというのは知っていたが……
(たった1週間で汚くし過ぎだろ?!)
唯我尊に転生した日にも掃除をしたのだが、1週間で普通に汚くなった。立場を無視して良いなら殴り飛ばしたい。
前世ではそれなりに綺麗好きだった俺からしたらこの汚さは耐えられないので自主的に掃除をしている。
現在俺は国近と2人きりとなっている。前世では風俗以外で女を抱いた事がなく、女に飢えていた俺からしたら襲いたいのは山々だが、一時のテンションに身を任せたら碌なことにならないので我慢する。
「これで私のゴミは全部捨てたよ〜」
「ありがとうございます。では後で捨てておきます」
「ありがとね。それにしても、やっぱり唯我君は変わったよ〜」
国近が何度目かわからない言葉を口にする。これは国近だけでなく、出水や太刀川にも何回も言われて耳にタコが出来ている。
「まあ実家の方で色々あったんで。もしかして前の方が良かったですか?」
「ううん。全然」
「そ、そうですか……」
即答かよ?!入隊の経緯が経緯だから仕方ないかもしれないが、唯我尊の扱いって本当に悪過ぎだろ!
(こりゃ太刀川隊以外からマトモな評価を受けるには時間がかかりそうだな)
俺はまだ実力不足なので基本的に他所の隊員とは接触してないが評判は良くない。まあコネでA級1位に入隊のしたのだから仕方ないけど。
とりあえず他所の隊員と接触するのはある程度の実力ーーーB級中位で通用するレベルになってからだな。その位の実力を付けてから個人ランク戦をすれば原作みたいに雑魚扱いされるような事はないだろう。
「ま、まあ今の方が良いなら何よりです。それよりも防衛任務前にトリガーセットを変えて貰っても良いですか?」
「良いよ〜。今回はどうするのかね?」
「そうですね……メインにあるメテオラを抜いてハウンドを入れてくれませんか?それとサブにはバイパーをお願いします」
「ほ〜い」
俺がトリガーを渡すと国近はトリガーを開いてパソコンに接続してトリガーチップの変更を始める。
これは俺がどのトリガーを使うかを決める為だ。防衛任務をする度に毎回トリガーセットを変えて色々と試している。
本来の唯我尊のトリガーセットは……
主トリガー
アステロイド:拳銃
カメレオン
シールド
FREE TRIGGER
副トリガー
アステロイド:拳銃
シールド
バッグワーム
FREE TRIGGER
って感じだが、俺は射手タイプとして戦うと決めたのでトリガーセットは全然違う。
ちなみに今のトリガーセットは……
主トリガー
アステロイド
メテオラ
シールド
グラスホッパー
副トリガー
アステロイド
シールド
バッグワーム
FREE TRIGGER
って感じで、今から国近に主トリガーのメテオラをハウンドと交換して、副トリガーにバイパーを追加して貰う。そんで2時間後に行われる防衛任務で実践してみるって感じだ。
「ほい唯我君。トリガーセットを変えといたよ」
「ありがとうございます」
「いやいや。それよりも……」
すると国近は楽しそうに笑いながらパソコンの近くにある棚からゲームのコントローラーを取り出して俺に渡してくる。それだけで次に言う言葉は予想出来た。
「防衛任務まで時間あるし、やろうよ?」
やっぱりゲームの誘いか……まあ防衛任務前だし良いか。
前世の知識から国近はゲーム馬鹿だというのは知っていたが、いざワールドトリガーの世界に入ると予想以上で驚いた。何せ防衛任務がなかったから数時間は当たり前だし。
ゲームは前世での数少ない趣味だったから嫌いではないが、国近のゲームのやり込み度に比べたら大したことない。やはりブラック企業で働いていたのでやる時間が少なかったからだろ。
とはいえ、やらないって選択肢はない。今の俺は国近の後輩である唯我尊なのだから。
「了解しました」
「決まり〜。じゃあ何やる?」
「そうですね……では桃鉄で」
アレなら格ゲーとかに比べてやり込み要素は少ないからな。国近の持つゲームの中ではマトモに競える数少ないゲームだ。
が……
「え〜、アレは4人でやった方が楽しいから却下〜」
「じゃあ国近先輩が選んでください」
一応前世では一通りのゲームはやっているから出来ないゲームはない。実力は別だけど。
「うーん……じゃあ」
国近が悩んでいる時だった。作戦室のドアが開いたかと思えば作戦室の主である太刀川慶が帰ってきた。
「おっ、唯我。良いタイミングでいたな。防衛任務まで1時間あるしレポートを手伝ってくれ」
太刀川はそう言って机にバサバサと資料やプリントを置く。またかよ……まだ大学に入学して3ヶ月も経ってないだろ?
俺は内心でため息を吐いてしまう。俺が唯我尊に転生したのは1週間と少し前。そんでこの世界の時期は唯我尊が入隊して半月経過した時期ーーー前世で読んでいたワールドトリガーの時期の1年半くらい前だ。
つまり唯我尊は中3になったばかりで、太刀川は大学に進学したばかりだ。にもかかわらず、この男は中学生にレポートの手伝いを要求してくるのだ。
いや、俺も前世で妹にレポートの手伝いを頼んだ事はあるが、妹は一歳年下だったからギリギリセーフだろうが、太刀川は四歳下の部下、それも中学生に頼んでいるのだから問題だろう。
(そういやアイツや親父達は今、向こうでどんな生活を送ってるんだ?)
俺は前世で存在していた家族の事を思い出す。俺は就職は失敗したが、それ以外の高校生活や大学生活は比較的順風満帆だったのでそれなりに仲が良かった。
しかしもう会えないと考えると寂しい気持ちになってくる。こっちの世界の両親ーーー唯我尊の両親からも愛されているが、俺からしたら知らない夫婦に愛されているので嬉しくない。
閑話休題……
「え〜。唯我君は今からゲームをしないといけないからダメ〜」
太刀川の要請に対して俺が口を開ける前に国近が反対する。まあ俺としてもレポートよりもゲームをする方が良い。俺も大学時代、レポートに苦労したのだ。少なくとも大学に進学するまではレポートなんてやりたくないのが本音だ。
「そこをなんとか譲ってくれよ。中間試験が近い科目もあってレポートは邪魔「ほう。随分と面白い事を言っているな、慶」……はい?」
あ、忍田本部長だ。
太刀川が恐る恐る後ろを向くと忍田本部長が額に青筋を浮かばせながら仁王立ちしていた。気の所為か彼の背後には虎がいた。
どうやら太刀川は作戦室のドアを開けっぱなしの状態で俺にレポートを頼んで、それを偶然通りかかった本部長が聞いたようだ。やれやれ、こういう事は作戦室のドアが閉まったのを確認してから言っとけ。
「レポートを邪魔呼ばわりするだけじゃ飽き足らず、歳下の部下にレポートを頼むとは良い度胸だな。防衛任務まで時間があるし、少し話そうか」
言うなり本部長は太刀川の襟首を掴んで作戦室から出て行った、
「ちょっと待って忍田さん!俺が悪かったから許してくれ!てか唯我に国近!助け……」
その言葉を最後に作戦室のドアが閉まって開く気配を見せない。同時に俺と国近は視線を交わす。そして……
「じゃあ格ゲーをやろっか」
「了解しました」
さっきまでのやり取りを見なかった聞かなかった事にした。
結局俺は防衛任務が始まるギリギリまで国近のゲームに付き合わされたのだった。ちなみに防衛任務の際、太刀川からは覇気を感じなかったが自業自得だから気にしない。
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