唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第40話

「唯我!頼む助けてくれ!」

 

太刀川隊作戦室にて、国近の為に期末試験に備えた模擬試験を作成して、今から国近に会いに行こうとしたタイミングで作戦室のドアが開き、太刀川が入ってくる。

 

時期的に助けを求める理由は想像出来る。

 

「期末レポートのテーマが決まったんですか?」

 

それ以外想像出来ん。

 

「ああ。期末レポートは2種類あるんだが、筆記試験も多くてな。是非頼む!」

 

大学生が表向き中3の俺に頭を下げてレポートを頼む……側から見たら酷い絵面だな。原作によれば二宮も出水に頭を下げたようだが、酷い差を感じてしまう。

 

「……はいはい。やるのは構いませんが、やるのはあくまで実験結果の纏めまでですから考察は自分で書いてくださいね」

 

1から10までやるのは流石に怠いし、太刀川の馬鹿っぷりから代筆がバレるかもしれないので、誰もが同じ事を書く部分だけやる。

 

「助かるぜ。んじゃこれが実験データな。提出は3週間後だから、2週間以内に頼むぜ」

 

太刀川はそう言ってUSBメモリを渡してから違うテーブルに移動して、大学の教科書を出して勉強を始める。勉強している太刀川はシュールだが、作戦室に来る前に風間にしばかれただろうな。

 

ともあれUSBメモリを貰ったし、出て行くか。今から国近と会う約束だしここにいたら太刀川の見張りにやって来そうな風間や忍田と鉢合わせするかもしれない。そして太刀川がドジ踏んで、レポートの代筆がバレたら面倒だからな。

 

俺は作戦室を出て国近に電話をかける。

 

『もしもし?今から勉強かね?』

 

「ある程度は出来たんで。今基地に居ますが、会えますか?」

 

『今学校近くのスーパーにいるけど、基地と学校の間に私の家があるからそこで良い?カフェとかは学生で溢れてるし』

 

コイツ普通に自宅に招いてるが、年頃の女子が男を招くな。まあ多分男と見られてないからだろうけど。

 

「わかりました。んじゃ国近先輩が家に着いたら位置情報を教えてください」

 

わざわざ家に誘ってるのだから位置情報を聞いてもおかしくないだろう。

 

『ほ〜い。とりあえず唯我君はウチの高校がある方向に向かって〜』

 

そんな呑気な声とともに通話が切れたので携帯をしまって基地の出口に向かう。

 

そして出口から外に出ると前方から見知った顔が出てくる。

 

「よう唯我。個人ランク戦帰りか?」

 

話しかけてきたのは出水で、周囲には三輪や米屋や奈良坂、仁礼など一歳年上の先輩がいた。多分米屋と仁礼の勉強を見る為だろう。

 

「いえ。個人ランク戦ではなく国近先輩の赤点回避の為の準備をしてました。今から国近先輩に勉強を教えに行きます」

 

「本当に2歳年下から教わっているのか……」

 

「A級1位には馬鹿が多いのか?」

 

「いや、馬鹿なのは太刀川さんと柚宇さんだけだから。ちなみにどんな準備をしたんだ?」

 

奈良坂と三輪が呆れ、出水がツッコミを入れる。まあ出水は平均より上だから馬鹿じゃないだろう。

 

そう思いながらも俺は出水に国近の為に作ったプリントを見せる。他の連中もそれを目にするが、大半が驚いてる。

 

「問題の意味はわかんねーけど随分と細かく書いてんな」

 

「細かいと言っても基礎問題中心の模擬試験ですよ。三門市立第一高等学校のテスト問題は7割近くが基礎なんで、基礎の中からより解きやすい問題や配点が高い問題を見繕えば、赤点回避は簡単です」

 

実際この学校の問題を調べたが、ちゃんと授業を聞いてれば誰でも50点は取れる問題だ。これで赤点を取る奴は単純にサボり過ぎだ。

 

「マジか?!頼む!高1の対策問題も作ってくれ!」

 

「俺にも頼む!秀次と奈良坂、ガチで怖いんだよ!」

 

ここで米屋に匹敵する馬鹿の仁礼が頼み込んで、米屋が便乗するが……

 

「いや、国近先輩の勉強に加えて太刀川さんのレポートも手伝わないといけないんで他を当たってください」

 

もっと早くに言ってくれたならまだしも、今から作るのは怠すぎる。

 

「俺からしたらお前らの留年問題より柚宇さんの留年問題の方が重要なんだから唯我を巻き込むな」

 

「それ以前に歳下に教わるのに抵抗があるんじゃなかったのか?」

 

「やっぱプライドより留年回避だぜ!」

 

ここで出水が庇って三輪が問い詰めると、米屋がドヤ顔でそう返し三輪と奈良坂の額に青筋が浮かぶ。

 

何でも良いがもう行って良いか?

 

頭に疑問符を浮かべていると、出水がアゴを動かして逃げろとジェスチャーをするので一礼して早足でこの場を去る。

 

暫くすると背後から俺を呼ぶ声と悲鳴が聞こえてきたが、全力でスルーすることにした。

 

そして三門市立第一高等学校に向かって暫く歩いていると、商店街付近にて買い物袋を持った国近が歩いているのを発見する。

 

「お疲れ様です国近先輩。荷物を持ちます」

 

言いながら俺は国近の持つ買い物袋を優しく持つ。

 

「ありがとね。私の家は通り過ぎてるから回れー右」

 

国近がのんびりした声でそう言うので回れ右をして国近の横に立つ。

 

買い物袋を見ると肉や白菜、豆腐や白滝が入っている。この食材から察するに……

 

「鍋でも作るんですか?」

 

「せいか〜い。久しぶりにお客さんが来るから奮発してみたよ」

 

のほほんとした声でそう言われる。そういや転生してから鍋なんて食ってなかった。というか前世でも大学卒業してからは鍋なんて殆ど食った記憶がない。

 

「そうですか。では楽しみにしておきます」

 

そう返しながら暫く歩くと国近は曲がり角を曲がるのでそれに続く。

 

「ここだよ〜」

 

国近が指差したのは二階建ての小洒落たアパートだった。家賃は知らないが、外観と立地条件からして月7、8万くらいか?いかん、前世の癖でつい値段を気にしてしまった。

 

内心自分にツッコミを入れながら国近の案内された部屋に入る。

 

「お邪魔します」

 

「いらっしゃ〜い」

 

国近の案内の元、リビングに入るが……

 

「国近先輩。いつ誰が来るかわからない以上、服や下着を出しっぱなしにしないでください。シワができてしまいますよ」

 

メチャクチャ汚かった。虫とかが湧くタイプの汚さではないが、服や下着、漫画などが部屋中に散らばっていて、女子の部屋とは思えない。

 

普通女子の下着を見たらムラっとするかもしれないが、部屋の散らかしっぷりから全然色気を感じない。そもそも下着とは女子が纏っていてこそ真価が発揮されるものだ。

 

「ごめんごめん。というか唯我君、真顔で下着について指摘されたらこっちが恥ずかしいんだけど」

 

国近はジト目でそう言ってくるが、鼻の下を伸ばしてないからか軽蔑の色はない。

 

「申し訳ありません。しかし片付けはお願いします。漫画やゲームの整理については手伝いますか?」

 

テーブルも散らかっているしこれじゃ勉強出来ない。

 

「じゃあお願いして良いかね?」

 

「はい」

 

国近がベッドの上にある下着や私服を整理し始めたので、俺は漫画やゲームの整理を始める。太刀川隊作戦室を掃除している俺からしたら国近がどういう風に整理しているか大体わかるからな。

 

こうして俺達は勉強前に30分近くかけて部屋の片付けをするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね玲。わざわざ勉強会に付き合って貰って」

 

「気にしないで。困った時はお互い様だから」

 

商店街付近にて那須隊攻撃手の熊谷友子が隊長の那須玲に礼を言うと那須は笑顔で手を振る。成績が余り良くない熊谷は那須に頼み、これから勉強会をするところだった。

 

「ところでくまちゃんは1dayトーナメントに申し込んだの?」

 

「私、その日は前から家族旅行に行く予定だからしてない。玲は?」

 

「私は申し込んだわ。色々な人と戦える折角の機会だしね」

 

那須はそう答えるが、一番の理由は違う。

 

(尊君に頑張ってるところを見せたいから……って言うのは恥ずかしいから無理ね)

 

一番の理由は最近気になっている後輩の唯我に自分を見せたいからだ。唯我の戦闘記録は毎日見ているが、どの記録からも気迫を感じてやる気にさせてくれる。一方自分も頑張っているって事を見せたい気持ちも抱き始めていた。

 

少し恥ずかしい気分になっている時だった。那須はある存在に気付いて目を少し大きくする。

 

(尊君に……国近先輩?)

 

視界の先では今考えていた唯我がチームメイトの国近と話していて、彼女の持っている買い物袋を持ち、2人で並び歩き始めた。

 

2人はそのまま自分達がいる方向とは別方向に去って行くが、那須は未だに2人から目を離せず、胸中にモヤモヤした存在が生まれ始めた。

 

「玲?どうしたの?」

 

「あっ、ううん。何でもないわ。それより行きましょう」

 

那須の態度に不思議そうに話してくる熊谷。対する那須は慌てて、歩き始める。

 

しかし頭の中では唯我と国近の事が離れなかった。唯我と国近はチームメイトだから一緒にいてもおかしくない。

 

おかしくはないが、その光景を想像するだけで胸にモヤモヤが現れて、もどかしい気分になる。

 

(嫌な気分……別に尊君が誰と過ごしても尊君の自由だけど……)

 

那須は嫌な気分になりながらもそれを表に出さないように注意しながら熊谷と一緒ボーダー基地に向かうのだった。

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