唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第47話

「ふぅ……」

 

自宅に帰宅した国近は鞄を置いて、ベッドに寝転がる。頭の中に浮かぶのはついさっき自宅まで送ってくれた後輩、唯我についてだ。

 

先ほど自分が車と衝突しそうになった際に唯我に助けて貰ったが、その時の唯我の言葉と表情は普段見せているものと全く違うものだった。

 

(本当に唯我君って何があったんだろう)

 

上層部が自分の隊に放り込んだ時の唯我は自尊心に満ち溢れていて、金で全てが解決出来ると思っていて毎日出水にしばかれていた。

 

しかし1ヶ月もしない内に人が変わったかのように真面目で礼儀正しく努力家な人間となった。今は慣れたが、変わった当初は夢でも見ていたのかと思ったくらいだ。

 

その際に自分の隊の隊長は「曲がり角で真面目な人間と頭をぶつかり合って、お互いの人格が入れ替わったんじゃね?」とアホな事を言っていた。(※当たらずとも遠からずである)

 

しかし腑に落ちない点がある。入隊当初は碌に努力しなかった唯我が、何を以ってあそこまで変わったのか理解出来ない。

 

確かにボーダーに入って生き方が変わった人もいるが、唯我については変わり過ぎだ。

 

変わる前の唯我は自分に対して甘過ぎる人間だったが、今の唯我は他人には甘いのに自分に対してはこの上なく厳しい人間となっている。毎日ハードなトレーニングを自分に課していて、今日は半ば無理やり休ませたくらいだ。

 

人間というのはあそこまで変われるのか……というのが国近の考えである。

 

本人は「金だけじゃどうにもならないことを知ったから変わることにした」と言っているが、それだけじゃないのは間違いない。

 

何か別の理由があると国近は推測しているが、その事について踏み込むつもりはないし、今日踏み込まないという気持ちが更に強まった。

 

気にならないといえば嘘になるが、誰にだって触れられたくない部分はあるし、今日新たに見た一面も自分に対する優しさから見えたものだからだ。

 

普段は自分に勉強を教えたり、強くなる為に模索し続ける真面目で可愛い後輩である。

 

しかしさっきの唯我の目は初めて見たが、鷹の目のように鋭くて魅入ってしまった。加えて国近自身を助ける為に腰に手を回されてから抱き寄せられた時は鋭い目に加えて、力が付いてきている腕の感触によりドキドキしたくらいだ。

 

(唯我君の事は全然分からないし、今後も分からないかもしれない。けど優しくして貰ってるのは間違いないし私も力になってあげるべきだよね〜)

 

唯我本人は特に迷惑ではないと言っているが、国近からしたら迷惑をかけてばかりと思っている。

 

(うん、これからは真面目に勉強に取り組んで、戦術についても学んでみようかな)

 

前者を出来れば唯我の負担を減らせるし、後者が出来れば唯我の力になれるかもしれない。

 

唯我を支えたいと思った国近はベッドから起きてテーブルに向かい、勉強道具を取り出した。さっきまで唯我から教わった部分を復習する為である。

 

それから国近は風呂に入るまで勉強をしたが、勉強嫌いの国近が乗り気でした勉強は今まで以上に捗るのだった。

 

 

この時の国近は知らなかった。近い将来、唯我尊の持つ秘密について知り、今以上に深い関係になるということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドパッ!

 

右手に持つリボルバー銃から高速で放たれた光弾は的に向かって飛び、そのまま中心部を穿つ。

 

同時にレーダーに10時方向に新しい的が現れたことが示されたので、左足を軸に身体を10時方向に動かして引き金を引く。

 

ドパッ!

 

しかし放った光弾は的の中心部ではなく、隅っこを穿った。その事に内心苛立つが、レーダーに新しい反応が現れたので我慢する。

 

そして反応があった方向を向いて再度発砲すると今度は中心に近い場所を穿った。今のは惜しかったな。

 

 

ブーーーーーッ

 

『終了だよ〜。結果は1000点中722点で、的に当たった弾丸は89発だね。それとそろそろ時間だから一旦休憩ね』

 

と、ここでブザーが鳴り、国近がそう言ってくる。

 

その言葉に俺は小さく頷き、トレーニングステージから作戦室に戻る。

 

今俺がやっているのは国近が作ってくれた射撃トレーニングプログラムだ。

 

ルールはこんな感じだ。

 

①参加者はスタート地点から半径2メートル以上動いてはいけない

 

②参加者の周囲に的が現れるのでレーダーを利用してそれを撃つ

 

③的が現れるのは参加者から10メートル以上20メートル以内の場所のどこか

 

④1発撃つと的に当たろうが外れようが的が消えて、次の的が現れる

 

⑤これを100回繰り返す。

 

⑥点数については1000点満点。点数を得るパターンは2つある。

 

⑦的に当たったら5点。100個の的に弾を命中出来たら500点

 

⑧的に当たった際、中心に近ければ近いほどボーナス点が入る。中心付近なら5点で隅付近なら1点

 

 

 

 

って感じだ。それで今回の俺の点数は722点で、的に当たった弾丸は89発だ。

 

つまり的に当てた際の点数は89×5で、445点。

 

ボーナス点については722-445で、277点だ。

 

的に当てるそのものは大分出来るようになってきたが、的の中心近くには中々当てれてない。

 

内心ため息を吐きながら作戦室のソファーに座ると、国近が横に座ってきて、俺の口にどら焼きを咥えさせてくる。

 

「お疲れ〜、いいとこのどら焼きだからありがたく食べたまえ〜」

 

「うむっ……ありがとうございます」

 

受け取った俺は一口食べてから礼を言う。

 

「どういたしまして。それとさっきの訓練で唯我君、新しい的が出た時に左足を軸に身体を動かしながら撃ってる時があったね。その時は大抵外したり狙いが甘かったりしてた」

 

「そうでしたか」

 

「今やってるトレーニングプログラムは制限時間は導入してないし、しっかり的を見据えてから撃った方が良いかな?」

 

「肝に銘じておきます。ご指摘ありがとうございます」

 

「うんうん。次のトレーニングでは頑張りたまえ〜」

 

国近はニコニコしながら俺の頭を撫で撫でしてくる。国近の手は温かくて、癒される。

 

 

 

以前国近にオーバーワークをするなと怒られてから数日が経過した。

 

怒られた翌日からの俺は訓練時間そのものは減らしてないが、1時間半訓練したら15分の休憩を入れるようにした。しっかり休憩を挟んでの長時間訓練なら国近も納得してくれたので良かった。

 

それだけなら良いんだが腑に落ちない点がある。

 

(何というか今まで以上に優しくなったんだよなぁ)

 

国近は怒られた日、そして俺が前世の俺を表に出した日以降、国近は変わった。

 

苦手な勉強の際も一通り自分でやって、どうしてもわかんないところだけ俺に教えを求めてくるようになった。こちらとしても負担が減ったのは楽だが、勉強嫌いの国近が真面目に取り組むようになったのは驚いた。

 

加えて今さっきまでやってたトレーニングプログラムについてもだ。トレーニングプログラムは毎回国近が作ってくれているが、その際は俺がリクエストをしてから国近が作る。

 

しかし今回は国近が俺がリクエストをする前に俺の為にと言ってプレゼントしてきたのだ。内容も理想的で凄くありがたいが、こんなに早く立派なものを作ってくれたのには度肝を抜いた。

 

更には訓練で悩んでいると今みたいに真摯にアドバイスしてくれる。実際の俺の動きを第三者の目線から的確なアドバイスしてをくれるのは本当に助かる。

 

加えて俺を見る目が優しくなったような気がする。俺はてっきり前世の俺を出したから距離を置かれると思っていたんだが、全然そんなことは無く、何というか……以前よりも献身的になったように見える。

 

しかし……

 

「国近先輩」

 

「?何かな?」

 

「いつもありがとうございます」

 

国近の支えは元々ありがたかったが、こうやって隣でアドバイスをしてくる国近はとても頼りに見えるな。

 

「ふふ〜ん。どういたしまして〜」

 

国近は楽しそうに笑うが、俺には凄く眩しく見えるのだった。

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