唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ! 作:ユンケ
「アステロイド!」
俺がそう叫ぶと両手からキューブが現れて、それぞれ8分割してから放つ。すると目の前にいる蠍のような怪物ーーー戦闘用トリオン兵、モールモッドに飛んでいき、モールモッドの全身を蹂躙する。
放たれた弾丸の内何発かはトリオン兵の弱点である大きな目に当たり、モールモッドは地面に崩れる。
「漸くモールモッドは撃破、か……」
『んなもん出来て当然だっつの。寧ろ弾丸トリガーのみで負けたら蹴り入れてるぞ』
俺の独り言に対して出水から通信が入る。言い方は少々気に入らないが怒りはしない。今の俺は出水公平の後輩にして弟子の唯我尊なのだから。
加えてモールモッドをタイマンで倒せたとはいえ、倒し方は中距離からドカドカ撃つ簡単なやり方、これで倒せないようじゃ先はないのは紛れも無い事実だ。
(確かに出水の言う通りだな。この戦い方なら防衛任務はこなせるがダメだ)
唯我尊に転生した俺の目標は、原作の『弱くてモテなくて、舐められまくりの唯我尊』から『強くてモテる、舐められない唯我尊』になる事だ。
防衛任務をこなせる程度ではまだまだ足りない。正規隊員ならこなせて当然なのだから。俺の目標を達成するには、最低でも他のA級隊員とタイマンである程度戦えるレベルにならないといけない。
(そうなるとやる事はまだまだある。射手に対する理解を深めたり、身体を鍛えてトリオン体での動きを高める準備をしたり、ある程度の近接戦闘能力を得たりと遊んでる暇はないな)
1つ目と3つ目については問題ない。何せ自分が所属する隊には最強の攻撃手と最強クラスの射手がいるから良い修行になる。
問題は2つ目の身体を鍛える事だ。こればっかりは俺自身の努力が必要である。しかし唯我尊の肉体スペックはメチャクチャ低いのでかなり時間がかかりそうだ。
(一応家でも筋トレはやってるし、出掛ける時も送迎はして貰わずに走っているが全然足りない……)
幸い前世に比べて時間は幾らでもある。前世ではブラック企業で働いていたので徹夜は当たり前、仕事場にもよく泊まっていて遊ぶ時間は殆どなかった。
しかし今は時間が有り余っている。学校は3時に終わるし、防衛任務がない時間は完全な自由時間。何より睡眠時間を8時間近く取れる程だし。
(時間はたっぷりあるとはいえ、遊んではいられない。鍛錬に時間をかけまくっては他の女子相手にフラグを立てれないし)
何度も考えている事だが、俺の最終目標は防衛任務やランク戦、果ては一年半後に起こる大規模侵攻で活躍出来るくらい強くなる事と、ボーダーに所属する可愛い女子と楽しく過ごす事だ。
そして後者を出来るようにするにはボーダーの人間に対して『唯我尊はコネ以外にも優れた部分がある』って認識を植え付けないといけない。もちろん他にもやるべき事はあるが、『コネだけの雑魚』って認識のままでは絶対に無理だろう。
(とりあえず目標としては今年までにA級隊員とタイマンで戦えるレベルだな。そんで唯我尊本来のエリート思考を出さなきゃ知り合いは沢山出来るから、そこから更に強くなったり、女子と関わりを持っていくか)
そこまで考えていると……
『お〜い。門が開いたよ〜。バムスター2体にモールモッド1体だから唯我君だけでも大丈夫だと思うよ』
少し離れた場所に黒い門が開いたかと思えば国近から通信が入る。
『よし唯我。行ってこい。ただしバムスターは一撃で、モールモッドは二撃以内で仕留めろ。使う弾丸は好きにしろ』
出水からオーダーが入る。最近の防衛任務では基本的に俺がトリオン兵の討伐をして、2人がフォローする感じだ。その際に出水は必ず倒し方のオーダーを出してきてくる。
そんで倒せたら次にトリオン兵が出た時には違うオーダーを出して、オーダー通りに倒せなかったら防衛任務後に指摘をしてくる。
「了解」
バムスター2体とモールモッド1体か……まあ多分大丈夫だろう。使うならバムスターにハウンドを放ちながらモールモッドにアステロイドを撃ち込む……いや、バムスターは一撃で倒せと言われたから外さないように、纏めて倒すのでなく1体1体確実に撃破していこう。
方針を決めた俺は屋根を蹴って一番近くにいるバムスターとの距離を15メートルまで縮めて……
「ハウンド!」
弱点の目を狙って高威力に設定したアステロイドを放った。
2時間後……
『お疲れ〜。トリオン兵の片付けは次の片桐隊に任せて3人は帰還して』
防衛任務の交代の時間となり、国近から指示を受ける。今日出てきたトリオン兵はバムスター20体、バンダー5体、モールモッド17体と割と多かったが、バラバラに来たので全部俺が倒した。
その際にちゃんと出水のオーダーに従って倒せたので修行としては成功だろう。
「お疲れさん。いやー、唯我が真面目に修行してるからこっちは暇だったぜ。次からはゲームを持ってくか」
「いや、退屈だったのは否定しないですけど、本部長にバレたらマズいんじゃないすか?」
太刀川が俺の肩を叩きながらそう言うと出水がツッコミを入れる。
まあ確かに……防衛任務の際、多量のトリオン兵が来た時以外は、修行として俺がトリオン兵と戦っている。今回のように少数がバラバラになってやって来た場合、太刀川と出水は俺をフォローする必要がないので暇を持て余しているのだと推測出来る。
「バレないようにするさ。あ、それと悪いんだけど、報告書を任せて良いか?」
「何すかいきなり?また本部長に呼ばれたんすか?」
「それだったらまだマシなんだがなぁ……加古から炒飯食べに来いって呼ばれてるんだよ」
「あ〜じゃあ仕方ないっすね。頑張ってください」
「ああ。お前も来るか?」
「絶対に嫌です」
出水が即座に却下すると太刀川は絶望した表情に変わって一足先に本部基地に去って行った。
(加古が炒飯……あ、思い出した)
確か加古の作る炒飯って2割がクソマズイ炒飯で太刀川や諏訪隊の堤大地はしょっちゅう死ぬんだったな。詳しくは覚えてないがいくらカスタード炒飯とかだっけ?
(しかしいつかは加古にしろ、まだ入隊していない双葉とも仲良くしたいな……)
確か双葉が入隊するのは原作開始時点の1年以内だ。つまり今から1年以内なのは間違いない。双葉が入隊した時に弱かったら悪い印象を与えるがそれは避けないとな。
俺的に双葉はワールドトリガーの女子キャラではかなり好きなキャラなので仲良くしたい。流石に手を出すのは犯罪だから出さないけど。
そんな風に考えながら太刀川より遅れて基地に入り作戦室に向かう。そして机の上に置かれた報告書を書き始める。前世では仕事柄しょっちゅう書いていたが、転生してからも書くとは嫌になってしまうな。
そして暫く時間が経過すると音楽が作戦室に流れる。この音は俺の携帯の着メロではないから出水か国近だろう。
すると出水がポケットから携帯を取り出してなにかを確認する。が、直ぐに携帯をしまって俺に話しかけてくる。
「悪い唯我。家の用事が急に入ったから今日のトレーニングは休ませてくれ」
「あ、はい。わかりました」
「本当悪い。報告書は書いたから俺はもう行く」
「お疲れ様です」
「お疲れ〜」
俺と国近がお疲れの挨拶をすると、出水はそのまま作戦室を後にした。
(急用なら仕方ないし、今日は残りの時間は生身の鍛錬に当てるか)
そう判断した俺は報告書を書き終えてから国近と向き合う。
「では国近先輩。俺も報告書を書いたので失礼します」
「ほーい。またね〜」
国近から緩やかな挨拶を貰い俺は作戦室を後にする。さて……じゃあ帰りがてらジムに行くか。ボーダー基地にもトレーニング施設はあるが、良い評判を持ってない時には行くつもりはない。面倒な奴に絡まれたら嫌だし。
10分後……
「はぁ……はぁっ……はぁ……!」
俺は息を切らしながら走っている。転生して間もない頃は基地の入り口まで家の人間がリムジンで迎えに来てくれていたが、体力をつけると決めてからは迎えを頼んでいない。
それについては自分で決めた事だから止めるつもりはないが……
(今更だが、唯我尊の肉体、弱過ぎだろ……)
思わず愚痴ってしまう。前世にてワールドトリガーのファンブックであるBBFにて唯我の体力は作中で最弱クラスであるのは知っていたが、これほどとは思わなかった。
(クソッ……普通転生したら特典が付いてくるだろうが。別に大量の宝具が入った宝物庫とか時を止める力なんて要らないから、せめて人並みの体力くらい寄越せや……)
身体に掛かる負担に苦しんでしまう。しかし足は止めない。ここで止めたりしたら体力は付かないから。
辛いのは否定しない……が、ブラック企業での徹夜に比べたらマシだ。それにこの程度で折れるようでは、ボーダーで優秀な隊員として大規模侵攻での活躍だのボーダーの可愛い女子から人気を得る事など夢のまた夢だ。
だから俺は足を止めずに、ボーダーと自宅の間にあるジムに向けて足を進めるのだった。
ヒロインは何人まで希望?4人は確定
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4人
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6人
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7人
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10人以上