唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第51話

 

『予選トーナメントAブロック1回戦第1試合、開始!』

 

開始のゴングが鳴り響くと同時に南沢は弧月を振り上げ、俺は右手にキューブを展開して8分割するや否や、威力をほぼ0で弾速特化のアステロイドを南沢に放つ。狙いは南沢の弧月だ。

 

そして南沢が顔面にシールドを展開しながら弧月を振り下ろそうとすると、同じタイミングでアステロイドがシールドと弧月にぶつかる。

 

「スラスター、起動!」

 

同時にスラスターを利用して南沢との距離を詰める。

 

「ありゃりゃ、やっぱり先手必勝ってわけにはいかないか」

 

言いながら南沢は笑いながら弧月を振るってくるので、俺はレイガストで受け止める。

 

勝つ為に必要な段階についてだが、第1段階はクリアしたし、じっくりやっていきますか。

 

 

 

 

 

 

『唯我選手、開幕と同時にアステロイドを放ち、南沢選手との距離を詰めにかかる!』

 

開始と同時に激しく動く唯我に実況の武富はテンションを上げる。

 

『南沢の旋空を警戒したからでしょう。シールドモードのレイガストの耐久力は高いですが、旋空によって伸びた弧月の先端部分の威力に耐えるのは難しいですからね』

 

旋空はトリオンを消費して瞬間的にブレードのリーチを伸ばすオプショントリガーで、ブレードの先端に近ければ威力を増す。最大威力ならシールドモードのレイガストすらも真っ二つに出来るだろう。

 

そして旋空を使ってる時の弧月の長さは大体15メートルから20メートルくらいである。

 

試合開始時点で唯我と南沢の距離は20メートルだった。つまり南沢が開始直後に旋空を発動したら負けに直結する可能性があったので、唯我は即座に距離を詰めたのだ。

 

そして距離を詰めれば旋空の効果は殆どないので、唯我が主導権を握ったことを意味する。

 

『と、ここで南沢選手、あらゆる方向から弧月を振るって唯我選手を攻め立てる!』

 

訓練室では南沢が弧月による連撃を叩き込み、唯我が落ち着いて捌いている。あらゆる方向からの斬撃を一つ一つ対処しているのが実況席からでもよくわかる。

 

『一方の唯我選手、焦らずに適切に対処してます!噂通りの頑強さ!』

 

『太刀川にしごかれているので、並の攻撃手では崩せないでしょう。とはいえ早めに一撃当てないと南沢が不利になるでしょう』

 

『どうしてでしょうか?唯我選手は決定打が少ないので、攻撃を決めなくても南沢選手が不利になると思いませんが』

 

『それは見ていればわかりますよ』

 

東の視線の先では2人の攻防が続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、唯我の必勝パターンになってきたじゃん」

 

客席の一角にて米屋は試合を見ながらそう呟く。唯我は最初に放った射撃以降、一切攻撃していないで南沢がずっと攻撃している。

 

普通に考えたら唯我が防戦一方と思われるが……

 

「あらら……海のヤツ、焦り始めてるやん」

 

南沢のチームメイトの隠岐はあちゃぁとばかりに額に手を当てている。訓練室では南沢の放つ斬撃が激しくなっているが、同時に荒っぽさが出始めている。今はまだ隙がそこまで大きくないが、いずれ致命的な隙を晒すのは想像に難くない。

 

加えて……

 

『ここで唯我選手、シールドモードのレイガストを南沢選手にガンガンぶつけ始める!』

 

唯我がレイガストを南沢にぶつけ始める。しかしスラスターは使ってないので、吹き飛ぶことはなくよろめかせるだけだった。それにより南沢の剣は余計に荒くなる。

 

「しかもレイガストのシールドを広げてグラスホッパーによる逃げ道を塞いでるのが厄介だな」

 

「こうやって相手の思い通りにさせない事で、相手のパフォーマンスの質を落とすのがアイツの強みだからな。アイツが高校に上がる頃にはボーダー全攻撃手の攻撃を防げるんじゃね?」

 

三輪の呟きにチームメイトの出水がそう補足する。実際太刀川に喰らいつけている事から強ち間違いではないと思う。

 

「それは凄いと思うけどよ……なんでよりによって葉子と同じブロックなんだよ……」

 

「あー、確かに唯我の戦い方って香取ちゃんが嫌いそうなスタイルだよな」

 

嘆く香取隊銃手の若村麓郎に出水は頷く。短気で我儘な隊長を持つ若村からしたら、胃痛が生まれ始める。勝てばまだしも、負けたとなれば数日は不機嫌丸出しになるのは容易に想像できる。

 

その時だった。

 

『おーっと!ここで唯我選手が遂に攻撃に回ったぁっ!』

 

武富の声が訓練室に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

(さて、そろそろ反撃に移るか)

 

俺は反撃に転じることを決める。目の前の南沢は引き攣った笑みを浮かべ、瞳には驚愕と焦燥を宿していて、剣のパフォーマンスは最初に比べてかなり落ちている。

 

まあ全ての攻撃を防ぎ、レイガストのシールド形状変化により移動も妨げているから当然だけど。

 

そう思いながら俺はレイガストに切れ込みを入れ、南沢が振るった弧月に合わる。

 

切れ込みに弧月が食い込んだ瞬間に切れ込みを無くし弧月を拘束してら間髪入れずに足払いをかけて南沢の体勢を崩す。

 

「うおっ!ここで反撃かよ!」

 

南沢は焦りながらも一旦弧月を消して、グラスホッパーを展開する。

 

対して俺もレイガストを消して、そのまま南沢の腕を引っ張ってぶん投げ、グラスホッパーを踏ませない。

 

そしてそのまま南沢に飛びかかり、地面に倒した瞬間に南沢の背中に手を当てて……

 

「アステロイド」

 

そのままアステロイドにより風穴を開ける。

 

「やられちまった〜」

 

南沢の呟きと共に南沢のトリオン体が爆発して、試合終了のブザーが鳴る。

 

『試合終了!唯我選手の勝利です!』

 

『最初に距離を詰めてからは、キッチリ自分の得意な形に出来たのが大きいですね』

 

『試合を見れば一方的でありましたが、南沢選手にも勝ち目はありましたか?』

 

『そうですね。南沢の強みはグラスホッパーによる機動戦です。最初から唯我を倒す手段を使うのも悪くない選択ですが、太刀川相手に何度も戦ってる唯我なら対策していると考えるべきでした。最初にグラスホッパーを使って距離を取り、障害物を利用して旋空を使うのが最善と思われます』

 

そんな会話が聞こえてくる。まあ確かに障害物を利用されたら、一方的な展開にはならなかった可能性は充分にある。短距離における家越しの旋空とかされたら危なかったかもしれない。

 

「あ〜、東さんの言うようにするのが1番か〜。先手必勝にこだわり過ぎちゃった〜」

 

身体が戻った南沢はやっちまったぜ的な口調で身体を起こす。

 

「今回は俺の負け。けど次は唯我ちゃんの防御を打ち破るから宜しく!」

 

「悪いがそう簡単に破れるわけにはいかない」

 

そうでもしなきゃ太刀川隊の戦力にはなれないからな。確かに強くはなっているがまだまだ足りない。

 

よって今回の大会で一皮剥けるつもりだ。

 

 

まあ1番の目的は小南が満足する試合を見せることだが。向こうが満足してくれたら、さり気なく遊びに誘ってみよう。

 

そう思いながら俺は訓練室を後にするのだった。

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