唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第52話

「「お疲れ様(お疲れ〜)、尊君(唯我君)」」

 

1回戦が終わり、元の席に向かうと玲と国近が同時に労いの言葉をかけてながら笑顔を向けてくる。

 

それにより2人はお互いの顔を見合わせるが、直ぐに面白くなさそうな表情に変わる。なんか空気が重くなってきてる……

 

内心ヒヤヒヤしながらも席に座ると、左側にいる玲が手を握ってくる。

 

「尊君の試合を直で見るのは久しぶりだけど、努力してるのが凄くわかって……か、格好良かったわ」

 

「あ、ありがとうございます……玲さんにそう言われると嬉しいです」

 

恥ずかしそうに褒めてくる玲を見ると、こっちも恥ずかしい気持ちになってくる。玲は恥ずかしそうに俯きながらそのまま指を絡めてくる。

 

予想外の行動に心臓の鼓動が早くなるのを自覚する。もうマジで理性が吹っ飛びそうなくらい可愛過ぎる。

 

そこまで考えていると……

 

「自分の強みを発揮出来たのが良かったね〜。戦闘を記録しといたから、次の試合に備えるなら協力するよ〜」

 

国近が俺の右腕に抱きつきながらタブレットを渡してくる。右腕には国近の大きな胸の柔らかな感触が伝わってくる。

 

内心ドキドキしながらもタブレットを操作すると、さっきの戦闘記録が流れるが……

 

「……何回か防御の際に荒さがありますね……執拗な連続攻撃にこっちも無意識のうちにイライラしたのでしょう」

 

幾ら精神力に自信があるからカウンター重視の戦い方を選んだとはいえ、防御に徹するとストレスが溜まるのは否定出来ない。相手も崩れろと苛立つかもしれないが、こっちも早く隙を見せろと思うのだ。

 

まあ多少違和感を感じる程度の荒さだが、勝ち上がる為に不安要素は無くしておくべきだ。

 

「唯我君の戦闘スタイルなら仕方ないかもね。もしもストレスが溜まるなら、ストレス発散に協力するよ〜」

 

国近が俺の肩に頭を乗せながらそう言ってくる。

 

「いつもすみませんね」

 

国近には何回も助けて貰っている。前世でも国近みたいな有能な部下がいればさぞかし仕事は楽だっただろうに。

 

「唯我君を支えるのはオペレーターの仕事だから当然。もし唯我君さえ良ければボーダー以外、プライベートでの悩みやストレスの解消にも付き合うけど、どうかね?」

 

国近が更に距離を詰めながらそんな事を言ってくる。そんな風に提案されたら断るなんて絶対に無理「だ、駄目です……」って、玲?

 

「国近先輩はオペレーターとしての仕事で忙しいと思いますから……尊君のプライベートでの悩みなどは私が解決に尽力します」

 

玲が恥ずかしそうにそう言うと、国近はジト目で玲を見る。

 

「那須ちゃんだって身体が弱いんだから無理しちゃいけないよ。それに私は唯我君に夏休みに遊ぼうって誘われたからね〜」

 

「えっ……で、でも私だって尊君に夏休みに遊ぼうって誘われました」

 

玲がそう返すと国近はジト目を玲から俺に向ける。玲も不安そうな眼差しで俺を見てくる。

 

「どういう事かな唯我君?」

 

「……」

 

ここで焦ったりすると2人から「色々な人に良い顔をしている」って心象が悪くなるだろう。ならばやることは一つ。焦らず、堂々と返事をするだけだ。

 

「どういう事も何も2人と過ごすのは楽しいですから誘っただけですが、なんか変な所がありましたか?」

 

こういう風に堂々と、やましい事を考えてないように告げるのが1番だ。案の定、玲も国近も難しそうな表情になる。

 

「う〜ん。まあそうだけど……」

 

「ま、まあ尊君ならそうよね……」

 

すまん玲。そんな風に言ってくれてありがたいが、俺の中では邪な考えがある。ぶっちゃけ小南にも遊びに誘う予定だし。

 

「話を戻しますが、プライベートの悩みについては現状ありません。しかしもし出来た場合、頼るかもしれないですが、良いですか?」

 

そう言うと2人は小さく笑う。

 

「良いよ〜、お姉さんに任せたまえ」

 

「尊君にはいつも助けられてばかりだから……私も尊君を助けるわ」

 

ヤバい。国近の「のほほん」と玲の「美しさ」が合わさると破壊力が半端ない。2人の能力が能力共鳴を引き起こしてるかもしれない。

 

そんな事を考えている時だった。

 

『それではAブロック1回戦第2試合を行いたいと思います!試合参加者の笹森選手は赤ゲートに、香取選手は青ゲートに来てください!』

 

武富のアナウンスが流れる。とりあえず今は試合に意識を集中するか。

 

「唯我君はどっちが勝つと思うかね?」

 

国近がそんな事を聞いてくるが……

 

「6ー4で香取ですかね」

 

そう返す。単純な剣の腕なら香取の方が上だが、香取は記録を見る限り腕はあるが短気な性格で、思い通りにならないと剣が荒くなる。

 

一方の笹森は普段諏訪や堤のガードを担当しているから捌きに定評がある。

 

笹森が香取の攻撃を凌ぎ、香取のストレスが溜まれば笹森に勝機はあるだろう。

 

『東さんはこの試合はどう見ますか?』

 

『そうですね。実力は香取が上回っていますが、香取にとって笹森は相性が良くないので笹森にも勝機はありますね』

 

流石東。ここで馬鹿正直に「香取は短気だ」なんて言わず、柔らかな表現をするとは解説の鏡だ。解説が太刀川や二宮ならズケズケ言って香取を不機嫌にさせただろう。

 

そう思う中、2人は訓練室に入り開始地点に立つ。勝った方が俺と戦うのだからしっかり見ておくべきだ。

 

そして……

 

 

『予選トーナメントAブロック1回戦第2試合、開始!』

 

2試合目の開始を告げるゴングが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

「頼む、日佐人が勝ってくれ……」

 

香取が攻め、笹森が凌ぐ中で客席にいる若村は祈るより自身の隊長と戦っている笹森を応援する。

 

「おいおいジャクソン、自分の隊長の負けを祈るなよ」

 

「そうだぜジャクソン。なんで香取の負けを祈るんだよ?」

 

そんな祈りをする若村に対して、出水と米屋がボーダー屈指の変人攻撃手が若村に対して付けた渾名で呼びながら質問する。

 

「ジャクソン言うな。葉子は唯我の事、メチャクチャ嫌ってんだよ。もし日佐人に勝って唯我に負けたら絶対八つ当たりされる」

 

若村は顰めっ面をしながらそう返す。

 

「え?前に唯我にボコされたから?」

 

「いや葉子と唯我は戦ってないと思う。そうじゃなくて葉子って出水の元チームメイトの烏丸のファンなんだよ」

 

「あー、なるほどな」

 

元チームメイトの烏丸京介は本部時代にイケメンで女子から人気があった。

 

そして烏丸が玉狛支部に移って、後釜がコネ入社で入った唯我となれば烏丸ファンからしたら気分は良くないだろう。

 

「だから俺としては日佐人に負けて欲しいんだよ。日佐人に負けても不機嫌になると思うけど、唯我に負けるよりはずっとマシだろうからな」

 

「理屈はわかったが、香取が唯我に勝てば……厳しいだろうな」

 

「ああ。葉子みたいな人間からしたら唯我って相性最悪だからな」

 

解説や実況を聴きながらも米屋は途中で厳しいと口にして若村は頷き、訓練室を見る。訓練室では笹森がトリオンを漏らしながらも香取の攻撃を凌ぎ、香取は客席からでもわかるくらい不機嫌な表情を浮かべていた。

 

笹森以上の防御力を持つ唯我と戦ったら、不機嫌を通り越してブチ切れないかと若村は心配している。

 

「でも昔の唯我ならともかく、今の唯我ならそこまで不満に思われないだろ」

 

唯我に対する悪評はもう殆ど無くなっている。少しずつ悪評がなくなっている中で、小南相手に勝ち星を1回挙げて評価が上がっている。

 

しかし……

 

「けどアイツ、那須ちゃんに加えて最近じゃ柚宇さんとも仲良くなってるから別の意味で嫌われてるぜ」

 

それはあくまで戦闘面での話だ。出水の視線の先では那須と国近に挟まれ、手を握り合っている唯我の姿が映る。

 

那須と仲が良かったことは有名だったが、最近になって国近が唯我に構っている光景が本部基地の至る所で目撃され、男性隊員からはかなり嫌われている。

 

 

 

 

 

そんな中……

 

『試合終了!香取選手の勝利です!』

 

そんなアナウンスが流れる。結果的に香取は力づくで笹森の防御を破り、相打ち上等とばかりに片腕を引き換えに笹森の首を刎ねたのだ。

 

 

 

「ああ……胃が痛くなってきた」

 

武富のアナウンスに若村は胃に手を当てて憂鬱そうにするのだった。

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