唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第53話

『おおっと!那須選手が住宅街に逃げた!堤選手は……追わない!比較的広い場所に向かう』

 

『狭い路地に迷い込んでしまい、那須から全方位攻撃を受けたら最悪ですからね。無理に攻め込まず出てくるのを待ち、カウンターを狙うつもりでしょう』

 

武富の実況と東の解説が耳に入る。現在、予選トーナメントEブロック1回戦第4試合、つまり1回戦最後の試合が行われている。

 

試合をしているのは俺に甘えるようになっている玲と互いに死線(炒飯地獄)を生き延びて戦友となりつつある堤だ。

 

現在玲は建物を盾にして動き回り、堤は遮蔽物が少ない場所に向かうが、東の言うようにこの状態で玲に近寄るのは愚策だ。

 

堤の使う散弾銃トリガーは威力と範囲は強いが、射程が短いことと銃のサイズが大きいことが弱点だ。

 

一方玲が得意とするバイパーは威力は低い代わりに弾道を毎回設定できるので、障害物が多い場所で真価を発揮する。

 

このままだと千日手だ。玲は遮蔽物がない場所に行きたくないだろうし、堤は遮蔽物がある場所には行きたくないからな。

 

しかし玲は動かないといけない。理由としては開幕直後に堤の攻撃を受けて右腕が損傷したからだ。

 

ルールでは制限時間内に決着がつかなかったらトリオン体の損傷具合で勝敗を決める為、この状態が続いたら無傷の堤が勝利する。

 

よって玲は遅かれ早かれ攻めに行かないといけないのだ。

 

そこまで考えていると玲は建物の陰に隠れながら両手にキューブを展開して、ゆっくりとそれを合成させる。

 

『那須選手、ここで合成弾の作成に入った!』

 

『合成弾は強力な反面、作ってる最中はシールドを展開出来ない欠点がありますが、一対一の状態で尚且つ遮蔽物が多い場所で使うならアリでしょう』

 

その通りだ。合成弾を使う射手はそれなりにいるが、ガードが使えないデメリットもあるのでチーム戦で使うときは「周りに敵がいない時」「味方がガードしてくれる時」「狙撃手の場所が予想出来てる時」など制限がある。

 

しかし今は堤とそこまで離れてないが、遮蔽物が多いし、タイマンなので主導権を握るために使うのも悪くないだろう。

 

そう思っていると玲は合成弾を完成させて8分割する。多分変化炸裂弾だと思うが、どういったコースで撃つかがカギだ。

 

そして玲は発射した。8つのキューブの内4つを上空へ飛ばし、2つを右側の道なりに沿って飛ばし、最後の2つを左側の道なりに沿って飛ばす。

 

堤の方を見れば4つの弾丸に目を奪われながら、右手に持つ散弾銃の銃口を上に向けて、左手に持つ散弾銃を消す。不意打ちに備えてシールドを展開出来るようにしたのだろう。

 

そして堤が引き金を引こうとした瞬間、2番目に飛ばした2発の弾が道を通って地面を這うように堤に襲いかかる。

 

それに対して堤はシールドを展開しながら散弾銃を発砲する。

 

ドドドドドドッ!

 

シールドと散弾に弾が当たると爆風が生じる。やはり変化炸裂弾のようだ。

 

爆風が生じる中、玲が住宅街から現れると堤は散弾銃を消してシールドを2枚展開しながら走り出す。防御重視で距離を詰めて、一気にカタをつける作戦だろう。シンプルだが、玲に対しては悪くない戦法だ。

 

しかし、玲が放った変化炸裂弾はまだ残っている。

 

爆風の中から2発の弾丸が後ろから堤に襲いかかる。堤は慌ててシールドを後ろに展開する。

 

ドォォォォォォォォォンッ!

 

地面が爆発する。幸いシールドによりトリオン体は無事だが、堤の身体は空高く舞い上がる。堤はグラスホッパーを持ってないから地面に落ちるまでは無防備だ。

 

それに対して玲は左手にトリオンキューブを展開する。もちろん堤もそう簡単にやられるわけにはいかないので、自分を囲むようにしたシールドを2重に展開する。

 

広範囲シールドは耐久力が低いが、二重なら話は別だ。これなら鳥籠のように囲む攻撃や一点集中攻撃も防げるだろう。

 

と、なると玲は堤が地面に落ちる前に合成弾を作って仕留めるかもしれない。

 

そう思う中、玲は右手を堤に向けて……

 

『っとぉぉぉぉっ?!ここで那須選手、レイガストを展開したぁ?!』

 

まさかのレイガストを展開する。え?!玲ってレイガストを入れてないよな?!もしかして俺の影響?

 

予想外の展開に驚く中、玲はレイガストを振りかぶりそのまま投擲する。その際にトリオンが噴出しているのでスラスター付きだろう。

 

そしてそのまま堤のシールドを2枚とも突き破り、胴体に風穴を開けるのだった。

 

『ここで試合終了!那須選手がレイガストを投擲して2回戦に進出!』

 

『那須の変化弾で相手のシールドを広げたり、足を止めてからスラスターを利用したレイガストの投擲……思ったよりも相性が良いですね。隙が出来るのは難点ですが、チーム戦なら那須のガードを担当する熊谷に投擲を任せるのもアリかもしれません』

 

そんな解説が聞こえる中、服を引っ張られるので横を見ると国近がジト目で見てくる。

 

「那須ちゃんに2人きりでレイガストを教えたのかな〜」

 

「いえ。俺は教えてないですね。投げ方からして違うので独学だと思います」

 

言いながら国近の手を掴み優しく握ると国近はくすぐったそうに息を漏らす。

 

「ごめんね〜、変なこと聞いて」

 

「いえ。余り使われてないレイガストを使う人がいたら気になるのは当然かと」

 

そんな風に返事をしているとアナウンスが流れる。

 

『これより全ブロックの1回戦が終了しました!2回戦は30分後に行われますが、先に説明した通り2回戦はEブロックから行われますので、那須選手と王子選手は開始5分前までにゲートにいてください!』

 

武富の言葉が訓練室に響き、客席にいる人も飲み物やトイレを目的とするためか立ち上がる。

 

「それにしても玲さんは二連戦で大変ですね」

 

「それは唯我君もじゃん。2回戦最後の試合で香取さんと戦って勝ったら、その次にカゲ君か米屋君と戦うんだから」

 

そうなんだよなぁ。まあ休憩時間があるからありがたいけどな。

 

ともあれ今は焦る必要はない。俺の2回戦は最後だから今のうちにゆっくり休んで香取との戦いに備えられるしな。

 

「すみません国近先輩。俺ちょっと手洗いに行ってきます」

 

開幕前に作戦室でジュースを結構飲んだからか、トイレに行きたくなってしまった。

 

「ほ〜い。気をつけてね〜」

 

国近から見送られながら俺は立ち上がり、客席を後にする。

 

そしてトイレに行き、混雑する前にさくっと済ませてトイレから出ると、職員やC級隊員がこっちにやって来て、瞬く間に行列が出来る。

 

早く済ませられた事に安堵しながら俺は客席に戻ろうとするが、試合の終わった玲やデータの見直しに付き合ってくれた国近を労う必要がある。

 

そう判断して自販機に向かう。国近の好きなジュースを買い、玲に対して何が好きかわからないのでとりあえず癖のないお茶を買った。

 

そして客席に戻ろうとすると……

 

 

 

 

「チッ……」

 

なんか自販機に向かおうとしている2回戦の相手の香取が俺に舌打ちをしてきた。

 

……なんかイラッとしてきたな。

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