唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第55話

データの見直しをしていると背後から足音が聞こえてきたので振り向くと、玲と国近に加えて小南もいるが……

 

(な、何だ?3人の雰囲気が変だぞ?)

 

3人の醸し出す雰囲気にビビってしまう。玲と国近は真っ赤になって俯いて、小南は真っ赤になって俺を睨みつけている。ただし小南の顔には怒りの色は無く、羞恥の色を宿している。

 

(何で睨まれてる?さっき会った時は笑顔で別れたのに……)

 

頭に疑問符を浮かべる間にも3人は近寄ってくるが……

 

「えっと……何があったんですか?」

 

思わず質問してしまう。玲だけなら体調不良と思うが、3人の様子がおかしいとなれば休憩中に何かあったのだろう。

 

「(こっちは恥ずかしくて仕方ないのに、呑気なのが腹立つわね……!)……何でもないわよ!」

 

物凄く怒鳴られた。どうやら知らない間に不愉快な気分にさせてしまったのかもしれない。

 

謝るべきかもしれないが、理由もわからないまま謝ると場合によっては更に擦れてしまう可能性があるので迂闊に謝るのは危険だ。

 

「あ……怒鳴ってゴメン。別にアンタが悪いことをしたから怒ってるわけじゃないから」

 

小南はそう言ってくるが尚更わからない。怒ってるから怒鳴ったらまだしも、怒ってないのに怒鳴られる理由がわからん。

 

そう思う中、玲と国近はさっきみたいに俺の横に陣取るが……

 

「えっと……どうしましたか?」

 

さっきまでの2人は手を繋ぐだけだったが、今は手を繋ぐことに加えて腕を組んで思い切りくっ付いてくる。

 

「「………」」

 

思わず質問するが、2人は俯いたままで返事をしないで離れる気配も全く見せない。

 

仕方ないので小南に事情を尋ねようとするが、小南はさっきまでとは違い面白くなさそうな表情で俺を見ている。

 

「随分と好かれてるわね」

 

「まあそれなりに好かれてるとは思います」

 

腕に抱きついている事から、そこそこ好かれているのは馬鹿でもわかるし、鈍感なフリはしない。

 

「ですが俺としては普段お世話になっている先輩達3人に好かれるのは幸せですね」

 

そう返すと左右の2人は更に強くギュッとしてきて小南は真っ赤になる。

 

「はぁ?!べ、別に私はアンタの事なんて何とも思ってないからね?!」

 

それ完全にツンデレの台詞じゃねぇか。まあ馬鹿正直に言ったら色々面倒なことになるから言わないが。

 

まあ代わりに小南の言葉を素直に受け取ろう。

 

「そうでしたか……俺は小南先輩のおかげで強くなれた事から小南先輩に敬愛の念を持ってますが、小南先輩が俺を嫌うなら関わらないようにします」

 

そう返すと小南は慌てだす。

 

「えっ?!ちょ、ちょっと待って!恥ずかしいから否定しちゃったけど違うわよ!凄く努力して強くなろうとしてる尊はカッコ良くて好き……って!あくまで後輩としてよ!男としてじゃないから勘違いしないでよね!」

 

そう言いながら俺の後ろに回ってヘッドロックをかけてくる。その際に玲と国近な巻き添えを喰らわないようにしているところは尊敬するが、結構痛い。

 

まあ小南の可愛い言動が見れたから安い買い物だけどな。

 

しかしマジで何があった……もしかして香取とのやり取りを聞かれたか?多分それだろう。さっきから玲と国近は無言でくっつき、離れる気配がないし。

 

けど、あの時は隈なく周りを見たわけじゃないが正隊員は居なかったし、C級隊員は香取にビビって離れていた。

 

もしかして物陰に隠れていた、もしくは香取本人がバラしたのか?可能性としてはそれが高いだろう。

 

まあそれなら仕方ない。仮に香取とのやり取りを3人が知ったのなら、覆水盆に返らずだからな。

 

それに聞かれたと言っても、あの時は尊敬的な意味と言っていたし不純とは思われてないだろう。

 

そこまで考えていると……

 

 

 

 

 

『2回戦第一試合まで10分を切りました!那須選手と王子選手は開始5分前までにゲートに行くようにお願いします!』

 

武富がアナウンスを流してくる。時計を見れば確かに1回戦が終わって20分くらい経過している。

 

「あの、玲さん?」

 

さっきから無言で俯く玲に話しかける。行かないと失格になってしまうがもしかして棄権するつもりなのか?

 

頭に疑問符を浮かべていると玲は俯いたまま、俺の腕から離れて無言のままゲートに向かって行く。マジで大丈夫なのか?

 

疑問符を浮かべていると首に感じる痛みが無くなったかと思えば、空いた右腕に柔らかさを感じたので横を見ると……

 

「な、何よ!玲ちゃんや柚宇さんが気持ちいいって言うから試してるだけよ!文句ある?!」

 

「いえ。問題ありません」

 

小南が怒りながらそう言ってくるが、別に文句はない。というかツンデレ小南最高過ぎだろ?

 

というか玲は戦えるのか?

 

俺は不安になりながらゲートに向かう玲を見て息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(恥ずかしい……けど、凄く嬉しい……)

 

入場ゲートに向かう那須は顔に熱があるのを自覚しながらそう思う。

 

ついさっきまで唯我と香取のやり取りを盗み聞きしていたが、話を聞くにつれて恥ずかしい気持ちが強くなっていた。

 

特に……

 

ーーー当然だろ。3人ともベクトルは違えど本当に素晴らしい女性だ。敬意を払う事、好感を持つ事の何が悪い?ーーー

 

あの一言は衝撃的だった。自分達が居ないと思う中であんな風に大胆に好意を告げるのは予想外だった。

 

後輩としても、人としても、そして異性としても好意を抱く相手から尊敬的な意味とはいえ好きと言われ、那須は恥ずかしさと嬉しさで唯我に対しても何も言えないままゲートに向かっている。

 

(凄く嬉しい……けど、私だけを対象に言って欲しかったわ)

 

国近や小南が唯我を気に入っている事、2人が唯我の精神的な支えになっている事は知っている。

 

知ってはいるが、やはり自分だけを好きと言って欲しかったのは事実だ。

 

(桐絵ちゃんはまだ後輩として尊君を気に入ってるだけだけど、国近先輩は多分異性としても尊君を気になり始めてる……)

 

今日国近と会った際、唯我を見る目が以前よりも優しくなっていたし言動も献身的になっていた。しかも同じチームだから今後の展開次第では……

 

(ううん。今は試合に集中しないと……)

 

那須は一度頬を叩き、意識を試合に向ける。既に目はいつものランク戦の時のように真剣な眼差しだ。

 

先程唯我は無言だった那須に対して集中出来るか不安視していたが、当の那須は一度切り替えてからは恥ずかしい気持ちにしっかり蓋をしている。

 

理由としては那須が今回のトーナメントに参加した1番の理由は自分の頑張ってる姿を唯我に見せたいからだ。

 

そんな理由で参加した以上、恥ずかしくて戦闘に集中出来ずに負けたとなるのは嫌だし、何より真面目で努力家な唯我に失望されたくないからだ。

 

唯我の性格的に失望するとは思わないが、それも絶対ではない以上、試合に恥ずかしさや嬉しさを持ち込むつもりは那須には無かった。

 

(尊君に恥ずかしい気持ちや嬉しさを伝えたいし、尊君に甘えたい…….けど、それは私の試合が全て終わってから……終わるまでは試合に集中しないとね)

 

那須は両手で自分の頬を叩き、意識を完全に切り替える。いつも通りの那須となった。

 

 

 

『お待たせしました!それではこれより2回戦の試合を始めます!』

 

と、ここで休憩時間の終了を告げるアナウンスが流れる。

 

(見ててね、尊君……大好きよ)

 

那須は内心にて自身の気持ちを伝えながら訓練室に入るのだった。

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