唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ! 作:ユンケ
「ぐっ……ダメだ。もう死ぬ……」
スポーツジムの一室にて、俺は汗をダラダラに流しながら備え付けのベンチに横たわっている。横に置いてあるスポーツドリンクを飲もうとしたが、既に無くなっていることを思い出して手を引っ込める。
ついさっきまで俺はジムの様々な器具を使って身体を動かしていたが、限界が来たので横たわっている。
(もう少し続けたいが……今日はこれ以上は無理だな)
精神的には疲れていない。何せ前世では二徹や三徹の経験もあるからな。
しかし肉体的な疲れはどうにもならない。転生してから毎日鍛錬しているとはいえ、元々の唯我尊の身体スペックが低過ぎるのだ。
(大分休んだし帰るか。そんで帰ったら飯を食おう)
飯を食って睡眠を……いや、ダメだ。飯を食ったら出水を始め様々な射手のデータを見直そう。加えて家の中でも出来る簡単なストレッチもするべきだ。そうでもしないといつまで経ってもお荷物のままだ、
そう結論づけた俺は疲労した身体に鞭打って立ち上がり、更衣室に向かって私服に着替えジムを出た。
辺りは6時を過ぎているからか薄暗く微かに見える夕焼けが綺麗だ。この天気の中、早足で歩けば気分はマシになるな。
(今はまだ直ぐにバテちまうが、いつか絶対に今日の倍以上のトレーニングをこなせるくらい強くなってやる)
改めて強くなると決心しながら帰路につく。そして俺、というか唯我尊の家である屋敷が見えてきた時だった。
(ん?なんだアイツ?)
見れば視界の先に苦しそうに震えながらヨロヨロしている人が目に入る。薄暗くなっていて良く見えないが、病人か?もしくは酔っ払いか?
(出来ればスルーしたいが、病人だったら洒落にならないな……とりあえず近寄ってみるか)
酔っ払いなら絡まれる前に見捨てれば良い話だ。病人なら手を貸すくらいはしよう。
方針が決まったので俺は人影に近寄るが、そこにいたのは予想外の人だった。
(こいつ……俺の見間違いじゃなければ那須玲じゃねぇか!)
まさかの同じボーダー隊員だった。原作じゃ11巻と12巻でバイバーを駆使して大暴れした美少女。
確か病弱って設定だった筈だが、どうやら本当みたいだ。
(しかし予想以上に辛そうだな。とりあえず声をかけてみるか)
「もしもし?大丈夫ですか?」
すると彼女はよろめく身体の動きを止めてこちらを見る。
「あっ……すみません。お見苦しい所を見せてしまいました」
彼女はそう言って謝罪をしてくるがフラフラなのは変わりない。流石ワールドトリガー登場キャラでぶっち切りの病弱キャラだな。
(ん?この反応からして俺、というか唯我尊知らないようだな)
まあ俺自身、ボーダー基地にいるときは太刀川隊作戦室以外には殆ど行かないし、今は私服だ。加えて入隊して一月もしてないから知らなくても仕方ないだろう。
しかし今はそんな事は後回しだ。
「いえ、それよりも大丈夫ですか?」
「大丈夫、よ。急に、苦しくなったけど……直ぐに戻ると思う、から……」
那須はそう言っているが痩せ我慢をしているのは明白なので放置は出来ない。
(仕方ない。余り頼りたくはないが……)
俺は携帯を取り出して家に電話をかける。
『もしもし?どちら様でございましょうか?』
すると優しそうな老人の声が耳に入る。彼は唯我家に仕えている執事で、仕事で忙しい唯我尊の両親に代わって、俺の面倒を見てくれている。
「俺だ。今帰る途中だが途中で病人を発見したから病院に運びたい。位置情報をそっちの端末に送るから急いで迎えに来てくれ」
『かしこまりました。今迎えを寄越しますので少々お待ちください』
その言葉を最後に通話を切る。そして那須にトレーニングジムで買った未開封のスポーツドリンクを渡す。
「とりあえずこれ飲んでください。多少楽になると思うんで」
俺がそう言うと彼女は
「ありがとう……ごめんなさいね。見ず知らずの私の為にここまでしてくれて」
いえ、そっちは知らなくても俺はよく知っています。貴女がボーダー隊員で、チームメイトが傷付くと傷付けた敵を容赦なく潰す人間である事など色々知っています。
「お気になさらず。それよりあと少しで迎えが来るんで頑張ってください」
そんな弱っている人を見つけたら放置出来ないだろう。
「ええ……それと病院じゃなくて大丈夫よ。家の方が近いし薬は家にあるわ」
「本当にそれで大丈夫なんですか?」
「ええ」
「わかりました。では車が着き次第、運転手をナビゲートしてください」
そこまで話すと同じタイミングでリムジンが俺の前にやって来て、那須が驚きの表情を浮かべる。まあいきなりリムジンが来たら普通驚くよな。
「とりあえず乗ってください。歩けますか?」
「ええ。その位なら」
那須はそう言ってフラフラしながらもリムジンのドアに近寄るので、俺はドアを開けて中に入るように促す。そして彼女が入ったのを確認した俺は続く形で中に入る。運転席を見ると唯我家の執事長がいた。
「悪いな、前は送迎は要らないって言ったのに急に呼び出して」
「いえいえ。坊っちゃまの頼みを聞くのが私どもの役目ですのでお気になさらず。それで?彼女を総合病院に送れば宜しいのですか?」
「いや。家に薬があるみたいだし彼女の家に送ってやってくれ。そんな訳ですからナビゲートしてください」
「ええ。申し訳ないですが、よろしくお願いします」
最後に那須に話しかけると、那須は執事長に丁寧に挨拶をする。
「承知しました」
執事長がそう言って車を走らせる。リムジンは市街地をゆっくりと進む。周りにいる人間は物珍しそうに見ているのが丸わかりだ。
「あっ、そこを右にお願いします。それで曲がってから3つ目の信号を左に曲がった先に家があります」
那須がそう言うとリムジンは右に曲がって目的の信号に向かって突き進む。その際にチラッと横を見ると那須がゆったりと座席に座っている。
(しっかし漫画で見たよりも美人だな……)
隠れファンがいるってのは知っているが、この美貌なら納得だ。並の男なら大抵がデレデレするだろう。
まあ、それは日常生活だけでランク戦になるとピョンピョン跳び回って敵を蜂の巣にするから恐ろしいんだよなぁ……
そんな事をぼんやりと考えながら彼女を見ていると、リムジンは彼女が指摘した信号を左に曲がり真っ直ぐ進む。そして1分くらいすると彼女が口を開ける。
「あ、ここです」
那須がそう言うと執事長がリムジンを停めるので、俺はドアを開けて彼女を降りるように促す。
「降りれますか?歩けないなら肩を貸しますよ?」
「大丈夫よ。乗っていたら少しはマシになったから」
そう言って彼女は車から降りる。疲れているように見えるがよろめいていないので心配ないだろう。
「なら良かったです。そんじゃ俺はこれで失礼します」
「あ、待って。後日お礼をしたいんだけど」
「お気になさらず。お礼を求める為にやった訳じゃないんで」
流石にあんなに苦しそうな人を見ていたら助けるのが当然だ。これが前世にて俺をこき使っていた上司ならマッハで見捨てたと思うけど。
「そうなの……じゃあせめて名前を教えて欲しいわ」
那須はそう言ってくるが悩んでしまう。那須もボーダー隊員なので唯我尊と名前を言ったら直ぐに俺の素性を把握してしまうだろう。まだ弱い時点で名乗るのは避けたい。
が……
(ここで名乗らないともっと怪しまれそうだな)
名乗らないと怪しまれるし、同じボーダー隊員だ。次に会う可能性は充分にあるしその時に問い詰められたら厄介な事になりそうだ。
そう結論を出した俺は……
「唯我尊だ」
自分の名前を口にする。すると那須は考えるような素振りを見せる。
「うーん……どっかで聞いた名前ね」
その反応からしてボーダーで俺の話は聞いてないのだろう。ま、それならそれで構わない。暫くしたらーーー俺が一定以上の実力を付けたら関わる可能性も増えし。
「気の所為じゃないですか?俺は貴女とは会ってないのですから」
「そうかしら……あ、名乗るのが遅れたわ。私は那須玲」
うん、知っています。
「ご丁寧にどうもそれじゃあ那須さん。俺は失礼しますがお大事に」
「うん。改めてどうもありがとう。本当に助かったわ」
那須が最後に小さく頭を下げたので、それを確認した俺はリムジンに乗る。同時にリムジンは自宅に向かって走り出す。チラッと後ろを見れば那須が家に入る光景が見えた。
(しかし、まさか基地の外でワールドトリガーのキャラと会うとはな……)
転生してから二週間近く経過しているが、俺は基本的に作戦室でトレーニングをしているのでボーダーで話した事があるのは那須を除いたら太刀川隊のメンバーだけだ。
出来ればある程度強くなるまで太刀川隊以外の面々とは接触したくなかったが仕方ない。明らかに苦しそうな人を放置は無理だ。
(それよりも……帰ったら真剣に考えないとな)
俺独自のスタイルについて。その為に必要なメニューについて。
そして……
「原作に入ったら介入するかしないか、するとしたらどこまで介入するかを、早いうちに綿密な計画を立てておきたいな」
ヒロインは何人まで希望?4人は確定
-
4人
-
5人
-
6人
-
7人
-
10人以上