唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第59話

『さあ!これより2回戦最後の試合、唯我選手対香取選手の試合を行います!』

 

武富のアナウンスに会場が盛り上がる中、俺は開始地点に到着する。客席にいる男子からの殺気についてはスルーする。

 

同時に香取が前からやってくるが、物凄い目で睨みつけている。

 

「待ちくたびれたわ。イチャイチャして余裕こいてるみたいだけど、ギタギタにしてあげるから」

 

香取はそう言ってから開始地点に向かうが、負けるつもりは毛頭ない。

 

そう思いながら俺はレイガストを展開してシールドモードにして構えを取る。対する香取も前のめりになる。構えから察するに速攻で来るだろう。

 

緊張感が高まる中……

 

『予選トーナメントAブロック2回戦第2試合、開始!』

 

試合開始のアナウンスが流れ、同時に香取が突っ込んでくる。迎撃しようとレイガストを前方に構えて前に出ると、香取はグラスホッパーを展開してから踏んで横に跳び、再度グラスホッパーを使って右サイドから奇襲をしてくる。

 

俺は右足を軸にして、左足を前方に置く事で右側を向きレイガストで香取が振るうスコーピオンをガードする。

 

ガードすると香取は予想していたのか、そのまま幾度に渡ってスコーピオンを振るうが……

 

(右、左、上、右上……)

 

目線と腕の振り方から攻撃方向は大体読めるのでレイガストを細かく動かして全てガードを振るう。原作の香取はハンドガンを持つ万能手だが、この時代の香取はまだ純粋な攻撃手なので搦め手が少ないからさして問題はない。

 

暫くガードしてると香取は苛立ちに満ちた表情をしながら右手を振り上げ、レイガストにスコーピオンを叩きつける。

 

予想以上の衝撃が腕にくるが……

 

(叩きつける直前に左手のスコーピオンが消えた事は見逃してないからな)

 

今の大振りは左手のスコーピオンを消した事を隠すための囮だ。そうなると香取がやろうとする事は……

 

「っと」

 

俺が後ろにジャンプすると、僅かに遅れて地面からスコーピオンが生えて、さっき俺がいた場所を刺す。もぐら爪か……決まれば足がもげていただろうが、問題ない。

 

当の香取は決まらなかったのかさっきよりもイライラした表情を浮かべる。これまでの試合で選手の声は聞こえなかったし、多少挑発してみるか。

 

「どうした?ギタギタにすんじゃないのか?ま、試合前に自分のコンディションを整えてないからこうなるわな」

 

「は?アンタこそイチャイチャしてるだけでアップ運動してないじゃない」

 

香取は先程よりも怒りのオーラを強めるが、気にしない。

 

「確かにアップ運動はしてないが、試合前に3人から激励を貰った。その時点で俺のコンディションは万全だ」

 

3人からの激励は俺のテンションを最大まで高めてくれたのだ。ぶっちゃけ今の俺に疲労からのミスはないだろう。

 

「本っ当……ムカつくわね、アンタ……!」

 

その言葉に香取は歯軋りをするが、怒りというのは戦闘中には持ってはいけないものだ。もちろん怒りを原動力にする奴もいるだろうが、しっかり制御出来なければリスクが大きい。

 

そう思っていると香取が突っ込んできて、先程よりも激しくスコーピオンを振るってくる。パワーがひしひしと伝わってくるが、さっきよりも荒い振り方なので余裕で対処出来る。

 

「スラスター、ON」

 

そして香取が一旦体勢を立て直そうとしたタイミングでスラスターを起動して、香取にレイガストをぶつける。

 

結果香取は後ろに吹き飛び、近くにある電信柱に背中をぶつける。

 

「この……!」

 

香取は毒づきながらもグラスホッパーを7つ展開する。1つは香取の足元付近、2つは香取の近くに、残り4つは俺の近くに展開する。

 

(なるほど、どのグラスホッパーを使って攻めるか迷わせてその隙を突く作戦か)

 

そう思っていると香取は足元のグラスホッパーを踏み、自分右側近くにあるグラスホッパーに向かう。

 

(どのグラスホッパーを使うかはわからないが問題ない。全てのグラスホッパーを使えない状態にすれば良いだけだ)

 

そう思いながも香取がグラスホッパーを踏み俺の方に突撃しようとした瞬間……

 

「シールド」

 

俺は香取がいる場所と4つのグラスホッパーがある場所の中間地点四箇所に、シールドを展開する。

 

それに対して既にグラスホッパーを踏み、こっちに向かっている香取は目を見開くがワンテンポ遅く、シールドの1枚とぶつかり地面に落下する。

 

シールドは離れた場所にも展開出来るし、グラスホッパーによる勢い程度の突進では壊れないので、こういう使い方も出来る。

 

以前太刀川相手に使って勝ち星を挙げた事もある戦術だ。しかも太刀川と戦う時は基本的に作戦室で戦うので、戦闘記録に残ってない。

 

多分今ので香取は完全にブチ切れたから、このままケリを付けるとしようか。

 

そう思いながら俺は手にアステロイドを展開して、身体を起こそうとする香取を見据えるのだった。

 

「この……!コケにしてんじゃないわよ!」

 

香取は憤怒を顔に宿し、罵詈雑言を浴びせながら突撃をしてくる。

 

対する俺は焦らずにレイガストを消してからアステロイドを27分割して、香取の両側にある民家の壁を撃ち抜く。それにより大量の瓦礫が宙を舞う。

 

 

「はぁ?!何処を狙って「グラスホッパー」っ!」

 

香取が叫ぶ中、俺は瓦礫の周りに大量のグラスホッパーを香取に飛ぶように展開する。

 

グラスホッパーに触れた数十個の瓦礫は一直線に香取に向かう。まさかトリガー以外の存在を武器にするとは思ってなかったのか香取はシールドの展開に遅れ……

 

 

 

ガガガガガガガガガガガガッ

 

大量の瓦礫を浴びる展開となる。トリオン体だからトリオンが漏れることはないが、精神的に負担はあるだろう。

 

何故ならトリオン体の痛覚は通常はごく僅かに感じる程度だが、僅かにあるのは事実。ごく僅かといえ、大量の瓦礫が全身を襲えば相当イライラするのは明白だ。

 

香取が瓦礫を食らって仰け反る中、俺はレイガストを展開して最後の一手を打つのだった。

 

 

 

 

 

 

『おおっと!唯我選手、シールドをグラスホッパーと香取選手の間に展開して高速移動を阻害した?!』

 

『唯我の戦い方はかなりユニークですね。やられた側はかなり苛立つでしょうから唯我のスタイルとはマッチしています』

 

「おっ、出た出た。太刀川さん相手に勝ち星を挙げた戦術じゃん」

 

出水が実況と解説の声を聞きながら見覚えのある戦術を見てそう呟き、米屋は笑いながら頷く。

 

「相変わらず唯我の発想力が半端ねーな。面白えな」

 

「俺は面白くねぇよ。葉子の奴、完全にブチ切れてるじゃねぇか……」

 

米屋の言葉に若村は胃痛を感じながら訓練室を見る。訓練室では地面に落下した香取が身体を起こしているが、その顔に憤怒の色を宿しながら唯我に突撃を仕掛ける。

 

その際に口を開いて何かを言っているが、訓練室内の声は聞こえない。しかしこの場にいる全員が、罵詈雑言であると確信していた。

 

『香取選手、更に激しく唯我選手を攻め立てる!一方の唯我選手はレイガストを消してアステロイドで……香取選手の両側にある壁を破壊?!』

 

訓練室にいる唯我はレイガストを消してアステロイドで壁を破壊している。十八番のレイガストを消す行動に出水達が疑問符を浮かべていると、唯我は瓦礫の近くにグラスホッパーを大量に展開して、大量のグラスホッパーに触れた大量の瓦礫を香取に飛ばす。

 

『どわぁっ?!大量の瓦礫が香取選手を蹂躙する!これは痛そうだ!』

 

「え、えげつねぇ……」

 

若村がドン引きしながらそう呟く。さっきまで唯我に嫉妬の感情を向けていたC級男子もメチャクチャビビっていた。

 

しかしA級隊員など一部の人間は唯我が更なる布石を打っている事に気付いていて、興味深そうに訓練室を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

グラスホッパーによって飛ばされた瓦礫が全て香取にぶつかると、香取はフラフラするも直ぐに俺を睨み付ける。最早憤怒を通り越して殺意を宿していた。

 

そんな香取は獣のように飛びかかりスコーピオンを振るうので、レイガストで受け止めると……

 

「あぁぁぁぁっ!」

 

香取は獣のような雄叫びをあげてレイガストを蹴る。予想外の行動にバランスを若干崩してしまう。

 

「がぁぁぁぁぁぁっ!」

 

再度雄叫びを上げて突撃する香取に対して俺は息を吐く。

 

「やれやれ……さっさと動物園に帰りな。アステロイド」

 

そう呟いた瞬間、香取の背後からアステロイドが飛び、そのまま香取を蜂の巣にするのだった。

 

 

「……は?」

 

 

ブーーーーーーーッ

 

予想外の一撃に理性を取り戻したのかポカンとした香取を尻目に試合終了のブザーが鳴りひびいた。

ヒロインは何人まで希望?4人は確定

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