唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第60話

『こ、ここで試合終了!唯我選手がAブロック決勝に進出しました!』

 

試合終了のブザーが鳴ると武富が戸惑いながらアナウンスをして、客席の大半が戸惑いの表情を浮かべている。一方A級隊員を筆頭に一部の人間は興味深そうに俺を見ている。

 

『失礼ですが東さん。最後の攻防ですが、何故香取選手の後ろからアステロイドが来たのでしょうか?』

 

『アレは置き玉ですね。唯我がグラスホッパーを利用して香取に瓦礫にぶつけてる途中、唯我はさり気なくアステロイドを香取の左右に散らしてました。大半の人は瓦礫を浴びせられた香取に目を奪われていたから見落としたのでしょう』

 

東がそう言うと、モニターに先程俺がグラスホッパーを利用して香取に瓦礫にぶつけるシーンが流れるが、俺が右手にあるアステロイドを8分割して香取の左右に散らしているシーンも流れる。

 

そして瓦礫の雨が無くなった瞬間、香取は散らした弾丸に目もくれずに俺に突進する。

 

『香取は瓦礫によりアステロイドを見れず、瓦礫の雨が無くなった際には怒りにより唯我に注目してアステロイドを見逃したのでしょう』

 

正解だ。瓦礫の雨をプレゼントしたら香取がブチ切れるのは容易に想像出来たので置き玉を設置して、置き玉に背を見せた瞬間に発射して仕留めたのだ。

 

そう思いながら伸びをすると、香取が呆然としているのに気付く。まあアレだけブチ切れたのに、気付いたら負けたとなれば呆然とするよな。

 

「じゃあな。次やる時はもうちょっと猪武者をやめときな」

 

そうアドバイスをすると……

 

「……も」

 

「も?」

 

「もぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

絶叫を上げてそのまま訓練室から出て行った。予想外の行動に俺はポカンとしてしまう。訓練室内の声が外に聞こえないのは香取からしたら幸いだろう。

 

『と、ともあれこの試合で2回戦は全て終了しました!予選トーナメント決勝戦は30分後に行われます!決勝戦はAブロックから行われますので、唯我選手と影浦選手は開始5分前までにゲートにいてください!』

 

いよいよ予選決勝か。相手は予想通り影浦……厳しい戦いになりそうだぜ。

 

俺は息を吐きながら香取が去って行ったゲートとは反対側のゲートに向かうと、出口には玲と国近と小南が待っていた。

 

「お疲れ〜尊君。決勝進出おめでとう」

 

「最後の置き玉は凄く勉強になったわ。お疲れ様」

 

「決勝も勝ちなさいよ!」

 

3人がそんな風に言ってくるが……

 

「いや、割とえげつない戦い方でしたが、引かないんですね」

 

「引く?何言ってんのよ。本物の戦場では勝つ事が全てよ。勝てれば勝ち方なんてどうでも良いわ」

 

小南が一蹴する。流石大規模侵攻前から戦ってきた人間の言葉だけあり、重みが違うな。

 

「何にせよお疲れ。次の試合までしっかり休みなさいよ」

 

「はい。とりあえず手洗いに行きたいのでまた後で」

 

3人に一礼してからそのままトイレに向かうと、横からボリボリ音が聞こえてきたので横を見ると……

 

「よう唯我。ぼんち揚食う?」

 

迅がニコニコ笑いながらぼんち揚を突き出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、さっきの試合見たけど面白かったぞ。グラスホッパーにあんな使い道があるなんてな」

 

ボーダー基地屋上、風を浴びながらぼんち揚を食べる中、迅から称賛の言葉を貰う。

 

「それはどうも。で、話があるなら手短にお願いします。次の試合も俺が出るんで」

 

というか迅と密会してるのが第三者に見られたら色々邪推されそうだ。

 

「悪い悪い。一応報告があってな。ついさっきまで会議に参加してたんだけど、例の大規模侵攻についての話が進んでな。とりあえず今週末くらいからB級以上の隊員から少しずつトリオンを供給して貰う指令を出せそうなんだよ」

 

なるほどな。確かにトラップを作る際にも大量のトリオンが必要だが、1年前からトリオンを供給すれば原作時より防衛設備も増やせるだろう。

 

「それは何よりです。でしたら迅さんにこれを渡しておきます」

 

言いながら俺はタブレットを操作して迅のタブレットにあるデータを送る。それを見た迅は軽く驚きを露わにする。

 

「随分と面白いもの作ったな」

 

「まだ荒削りですが、全く役に立たないってことはないと思います。ボーダーはまだ生まれたばかりの赤ん坊のような組織ですから」

 

ボーダーは正式に発表されてからまだ3年。たったそれだけの期間で三門市と密接な関係を築いたとはいえ、まだまだ改善点はある。そしてその中で大規模侵攻まで変えておきたい事を纏めたデータを迅に見せたのだ。

 

「ああ。確かにこれは必要になる。荒削りって事は今後も改善するんだろうけど、改善出来たら上層部にプレゼンしてくれないか?」

 

「いや迅さんがやってくださいよ」

 

んな事をしたら目立つだろうが。

 

「俺は暗躍担当だからな。こういう発表は仕事じゃないよ。それに唯我が発表した方が良い未来になるんだよ」

 

そう来たか。サイドエフェクトを出すのは卑怯と思うが、大規模侵攻による被害を減らしたい気持ちはあるし……従うか。

 

「わかりました。ただ俺は迅さんと違って、発言力は高くないので発言力を高める準備を完璧に済ませてからにしてください」

 

俺としてもコネクションを作るチャンスでもあるし、乗らせてもらう。それに上層部や隊員が俺が動く理由を聞いてきても、今回は答えられる理由もあるからな。

 

「そう言ってくれて助かる。それにしても荒削りって言ってるけど、しっかりした構成だな。本当にお前の正体が気になるよ」

 

「前にも言いましたが、俺の詮索はしないでください。それとも俺がボーダーに害を与える未来でも見えましたか?」

 

まあ俺は害を与えるつもりは無いから大丈夫だとは思うけど。

 

「悪い悪い。つい気になっちゃったけど詮索をするつもりはないよ」

 

「なら結構です。とりあえずもう直ぐ試合なんで失礼します」

 

「ああ、ありがとな」

 

迅に一礼してから屋上を去り、訓練室のある階まで戻る。そして廊下を歩いていると玲達がいて、こっちにやって来る。

 

「どこ行ってたのよ?!遅いから探したわよ!」

 

「すみません。トイレに向かう途中に腹を痛めて長引いてしまいました。ご心配をおかけしました」

 

小南に対して嘘を吐きながら一礼する。馬鹿正直に答えたら色々面倒だからな。

 

「べ、別に心配なんてしてないわよ!玲ちゃんと柚宇さんの付き添いよ!」

 

「え〜、でも那須ちゃんが「また香取さんの時みたいに揉めてるかも」って言ったら、真っ先に慌てたのは小南だよね〜?」

 

「柚宇さん!」

 

小南は真っ赤になって国近に怒るが、メチャクチャ可愛いなオイ。リアルじゃツンデレはクソって意見もあるが、小南のツンデレはわかりやすくて最高だな。

 

「尊も微笑んでんじゃないわよ!次の試合が近いんだから行くわよ!」

 

小南はそう言って俺の手を引っ張るので、俺はされるがままになって訓練室に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「唯我がボーダーに敵対する未来は見えないけど……甘い未来は見えまくるんだよなぁ」

 

屋上にて、迅は息を吐く。唯我の未来は何度も見ているが、未来には無限の可能性があるので様々な未来が見える。

 

太刀川にぶった斬られまくる未来、色々な隊員とランク戦をする未来、堤と一緒に三途の川を渡りかける未来など様々だ。

 

しかし一番見えるのは甘い未来だ。唯我がボーダー女子と甘い空気を作る未来はよく見るので、迅は最近ぼんち揚のお供にブラックコーヒーを用意するくらいだ。

 

これから先には小南、国近、那須とは沢山甘い空気を生み出すのは確定事項。

 

他にも自分も会った事がない女子を含め、何人かの女子と甘い空気を生み出す可能性が高くはないが見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに1番ぶっ飛んだ未来は全裸のボーダー女子複数人がハイライトをオフにして、唯我の服を剥ぎ取ってから唯我の両手足を鎖でベッドに拘束して、全員で囲んで唯我を喰い尽くす未来だった。

 

可能性は殆ど0に近いがハイライトを失った女子の中には綾辻遥や草壁早紀もいて、アレを見た際に迅は寝込んでしまい、本気で自分のサイドエフェクトを呪い殺したいと思ったくらいだ。

 

他にも修羅場も見えたこともある。現状刺される未来は見えないが、刺されるんじゃね?と思う迅であった。

 

「ま、刺されそうになったら忠告すれば良いか。それよりもコイツを詳しく見とかないと」

 

迅はそう言って自分のタブレットを操作する。

 

タブレットの画面には先程唯我が送った「B級隊員量産計画」というタイトルのデータファイルが表示されていた。

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