唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第62話

Aブロック決勝戦、唯我と影浦の戦いは白熱している。

 

『影浦選手の猛攻に対し唯我選手も食らいついてはいるが、反撃の機会が中々見つからない!』

 

『影浦にはフェイントなどは通用しないですから、搦め手から攻めに転じる唯我からしたら影浦は最悪の相性です』

 

武富の実況と東の解説が響く中、訓練室では影浦が物凄い速さで腕をふるい、唯我はレイガストで捌いている。

 

しかし唯我の方は中々反撃出来ずにいる。偶に反撃出来てはいるがサイドエフェクトと影浦の反射神経により殆ど防がれたり回避されている。

 

「尊君……」

 

2人の戦闘を見る那須は不安そうな眼差しで両手を重ねて祈るように握る。

 

「不味いわね……思った以上にカゲさんは冷静ね」

 

「完全に割り切ってるね。荒船君あたりに釘を刺されたのかも。それならパフォーマンスの質は変わらないね」

 

小南が眉をひそめながら呟き、国近が小南の呟きに頷く。

 

「どういう事ですか?影浦先輩は割と短気ですからパフォーマンスの質が落ちてもおかしくないと思いますが」

 

那須は訝しげに尋ねる。

 

「試合を見ればわかるけど、尊はカゲさんの攻撃を全て防げてない。つまりこの状態が続けばジリ貧になるから、カゲさんは冷静に攻めてるのよ」

 

「普段の影浦君から今の状態でも苛々してると思うけど冷静さを維持してる事を考えると、試合前に荒船君に「ダメージが入ってるなら冷静に攻めろ」って釘を刺されたんだと思ったの」

 

実際影浦と付き合いが長い国近から見ても、普段の影浦より冷静だ。

 

「じゃあ……尊君は勝てないって事ですか?」

 

那須は嫌な気分になりながら質問する。相手が格上であるとわかっていても、好きな人がジリ貧になって負ける姿は見たくないのだ。

 

「普通なら厳しいけど……柚宇さん」

 

「何かね?」

 

「多分尊には隠してる切り札があるでしょ。尊からも柚宇さんからもそこまで焦りが見えないわ」

 

小南の言葉に那須は訓練室で影浦の攻撃を捌いている唯我を見ると、身体の至るところからトリオンが漏れ出ているが、目はまだ死んでおらず強い輝きを宿している。

 

「結論から言うと、あるよ〜。けどここ1番の切り札だから使うタイミングが重要だね」

 

普段オペレーターをしている国近は唯我に隠し球があることを認める。

 

「どんな切り札なんですか?」

 

「多分直ぐにわかるよ。私が尊君の為に一生懸命頑張ったからしっかり見ててね〜」

 

ビシィッ!

 

その言葉に国近と那須と小南の間の空気にヒビが入る。実際トリガーを作成したのはエンジニアだが、トレーニングステージを作ったのは国近であるので、国近の言ってることは間違いないではない。

 

しかしそんな事情を知らない2人からしたら、国近の発言には嫉妬を感じてしまう。

 

ただし那須は唯我に対して明確な恋心を持ってるから嫉妬であると理解したが、小南は何となく苛々して苛々する理由もわからず更に苛々してしまっている。

 

3人の間にギスギスした空気が生まれる中……

 

ざわっ……

 

客席の間に騒めきが聞こえるので改めて訓練室を見直す。

 

そこには……

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

俺は息を吐きながら影浦を見る。当の影浦は目を鋭くして睨んでくる。目には多少の苛立ちはあるがパフォーマンスの質は落ちていない。

 

確かに何回も攻撃を受けているが、それでも8割以上は捌いているので短気な影浦なら苛々してパフォーマンスの質が落ちると思っていたが、その気配は見れない。

 

よって俺の本来の戦闘スタイルは意味をなしていない。もう隠し球を使うしかないだろう。

 

そう思っていると影浦は右手の先からスコーピオンを出しながら走り出し、スコーピオンを蛇のようにくねらせる。

 

それを前に出てレイガストで受け止めようとすると肘からスコーピオンが出てきて、そのスコーピオンも蛇のようにくねらせて俺の左腕を切り落とす。

 

(枝刃か!)

 

体内でスコーピオンを枝分かれさせて、刃を増えたように見せる技だ。

 

そうなると本命は左腕の一撃だろう。案の定影浦は左腕を振り上げている。

 

既に片腕が落ちた以上、マトモにレイガストを使うのは無理だ。よって俺は隠し球を切る事にした。俺は影浦が腕を振り下ろそうとした瞬間に後ろに跳び、リボルバー銃トリガーを顕現させる。

 

予想外の一手に目を見開く影浦を見据え、リボルバー銃の銃口を影浦の額に向け……

 

ドドドドッ

 

即座に脇腹と足に標準を変えて引き金を4度引いた。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

目の前で息を吐く唯我尊に対して、影浦は目を鋭くしながら睨みつけている。

 

目の前にいる男は部位欠損こそしてないが全身に自分が付けた切り傷があり、そこからトリオンが漏れている。

 

一方の自分は右肩と脇腹にかすり傷が出来ているが、トリオン漏れは止まっている。

 

唯我はこっちの攻撃の大半を防いでいるが、全て防げているわけではないので少しずつ傷が出来ている。このまま行けば唯我のトリオン体に限界が来てこっちが勝つとわかっているので、影浦は苛立ちをスコーピオンに乗せずにいた。

 

まあ試合前に荒船に絶対に苛立つなと釘を刺された部分が大きいが。

 

 

閑話休題……

 

現状、こっちは殆ど無傷で圧倒的に有利だが……

 

(野郎、何を企んでやがる?)

 

だからこそ影浦は不気味に感じていた。自分が圧倒的有利であるにもかかわらず、唯我の目は死んでおらず、唯我からは強い戦意の感情を受信している。

 

この状態でも強い戦意を出すということは十中八九何か隠し球を持っていると影浦は読んでいた。

 

このまま逃げて時間切れを狙えば、ダメージの少ない自分が勝つがそんな情けない勝ち方をする趣味は影浦には無かった。

 

そう判断した影浦は右手からスコーピオンを出して唯我に突撃を仕掛ける。何を企んでいるがわからない以上、長引かせるのは悪手と判断したからだ。

 

対する唯我はレイガストでガードしようとするが、同じタイミングで影浦は枝刃により右肘からスコーピオンを出して、唯我の腕を左腕を斬り落とす。

 

これで唯我はマトモな防御が出来ない。右腕は無事だが、片腕が落ちた状態で重いレイガストを持つのはバランスが悪過ぎるからだ。

 

トドメを刺すべく左腕を振り上げた時だった。

 

(リボルバー銃だぁ?!)

 

唯我は右腕にリボルバー銃を顕現して銃口を影浦の額に向ける。隠し球があるとは思っていたが、弓場と同じ武器とは思わなかった。

 

しかし……

 

(額……じゃなくて脇腹と足か)

 

感情受信体質の影浦は額に刺さった感触は無く、足と脇腹に刺さった感触が4つ生まれる。

 

すると案の定、唯我は銃口を下に向けながら発砲するのでスコーピオンを消して刺さった箇所の前に、メインとサブのシールドを4分割して展開する。

 

しかしここで影浦は嫌な予感を感じる。搦め手の得意な唯我が単純にリボルバー銃を撃つだけなのかと。

 

本能から危険と警告を受けた影浦はシールドを展開しながらも横に跳ぶ。

 

すると……

 

バリンッ バリンッ

 

4つの弾は4枚のシールド全てを破壊して、2発は影浦の脇腹と右足を穿った。

 

(んだこの威力……!弓場さんより遥かにあるじゃねぇか!)

 

普段弓場と結構戦っている影浦は弓場の弾丸の威力は把握して、どのくらいの面積でシールドを展開すればいいかわかっている。

 

唯我の弾丸についても普段弓場の銃撃を防ぐ時と同じ面積のシールドで防御したが、易々と破壊されたので弓場の弾丸より数段威力があるのは明白だ。

 

と、ここで頭と心臓部に刺さった感触が生まれる。影浦は残った2発の弾丸でトドメを刺すのだろうと理解したが。

 

同時に影浦は自身の十八番のマンティスの準備に入る。

 

回避は不可能。先程無理矢理ジャンプしたのに加えて右足が無いので、何処を狙ってくるのかわかっても回避出来ない。

 

防御も無理。集中シールドを簡単に破った弾丸に対して防御に回ったら負ける。

 

よって影浦は殺られる前に殺ることを選択した。

 

そして……

 

「おおおっ!」

 

ドドッ

 

「くたばりやがれっ!」

 

唯我の手から必殺の弾丸が2発、影浦の両手からスコーピオンが伸びて……

 

 

 

「かっ……」

 

「クソッタレが……!」

 

影浦の頭と心臓部に風穴が開き、唯我の上半身と下半身が泣き別れになった。

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