唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第63話

『こ、ここで試合終了!唯我選手の隠し球と影浦選手のマンティスが同時に決まり、両選手のトリオン体が破壊されました!』

 

真っ二つにされた感触を僅かに感じながらも武富のアナウンスを聞く。向かい側にいる影浦も仮想訓練モード故に直ぐにトリオン体を修復しながら身体を起こす。

 

つか勝敗はどうなるんだ?影浦の眉間と脇腹に風穴が開けたと同時に真っ二つにされたからわからん。

 

頼むから引き分けとして再試合だけは勘弁だ。隠し球が決まったから勝てたんで、もう一戦はかなり厳しい。

 

『尚、勝敗につきましてはビデオ判定となり、トリオン体が早く破壊された方の敗北となります!』

 

同時に上空のモニターに先程の攻防がスローで再現される。俺が放った2発の弾丸と影浦のマンティスが交差する。

 

スロー判定によりお互いの攻撃がゆっくり再現され、俺が影浦の頭に放った弾丸が最初に当たり、その僅か0.08秒後に影浦のマンティスの先端が俺の腹に触れ、その0.7秒後に2発目の弾丸が影浦の脇腹に当たった。

 

そして俺が真っ二つにされた時には影浦の全身から僅かだがベイルアウト特有の光が出ていて、俺の身体からは出てない。

 

結果……

 

『判定結果が出ました!ほんの僅かですが、影浦選手の方が早くトリオン体が破壊されてます!よってAブロック優勝者は唯我選手です!』

 

俺の勝ちが決定した。これで小南がいる決勝トーナメントに進出出来たし、第1段階クリアだ。

 

「ふぅ……」

 

俺は息を吐きながらへたり込んでしまう。正直最後の攻防では負けると思っていた。

 

というか銃トリガーを顕現してから4連射したが、その際に影浦が回避してくるとは思わなかった。

 

『しかし最後に唯我選手の使った隠し球は弓場選手と同じ銃トリガーですが、何故影浦選手の防御を突き破れたのでしょう?』

 

『大体予想は付きますが、ここで話すのはフェアじゃないでしょう』

 

東はそう言うが、別に話しても問題ない。隠し球としていたが、バレた以上次からはガンガン使うし、攻撃手に対してはバレてもどうにも出来ないだろう。

 

何故なら俺のリボルバー銃は合成弾、それも2つのアステロイドから作れる徹甲弾を使っている。

 

加えて銃の射程は弓場の銃の半分の10メートルで、その分威力を高めている。

 

つまり俺の使う銃は射程を捨て、トリオン効率を除外した代わりに1発1発が弧月の一振りよりも高い威力の弾を放てるのだ。

 

そうなれば大半の相手の集中シールドも壊せる。出水で試したら集中シールド二枚重ねは突破出来なかったが、1枚だけなら突破出来たしな。

 

 

 

「……おい」

 

と、ここで影浦は身体を起こしながら話しかけてくる。睨みつけてはいるが怒りの色は見えない。

 

「次やる時に借りは返すから待ってろ。テメェもその時までに腕を上げとけ」

 

「そうですね」

 

影浦の言葉に対して負け惜しみとは思わない。さっきのは初見殺しが決まったから勝てた側面が強く、以前から俺がリボルバー銃を持っている事を知られていたら負けていただろうからな。

 

初見殺しは決まって当然。情報が知れ渡って尚、勝ち続けられる人間が強者なのだ。よって影浦の言っていることは紛れも無い事実であり、もっと鍛錬しないといけない。次からは初見殺し抜きでもある程度戦えるようにしないとな。

 

「後、普段の行動はちったぁ自重しろ。テメェが何人女とイチャつこうが俺はどうでも良いが、客の大半からお前を倒せって期待の感情をぶつけられて疲れたわ」

 

影浦はそう言って去って行く。それについては……うん、無理だな。俺が強くなる理由は今の生活を更にピンク色にすることだし。

 

というか影浦からしたら完全なとばっちりだな。マジで済まん。

 

まあ何にせよ決勝トーナメント進出が決まったし、今は休むとしよう。

 

そう思いながら俺は訓練室の入口に向かうと、玲達が待っていた。

 

俺が入口をくぐると、玲が真っ先に近寄ってきて……

 

「お疲れ様……」

 

ギュッ

 

正面から思い切り抱きついてくる。さっきまで背後から抱きしめられることはあったが、正面から抱きしめられるのは初めてで凄いインパクトがある。

 

(ついでに国近と小南の顔のインパクトもヤベェ……)

 

2人とも般若のような表情となりドス黒いオーラを噴出している。ハッキリ言って国近の般若顔はトラウマになりそうだ。

 

そして周りにいるC級男子の殺気もヤバい。マジで月が見えない夜道は気をつけたほうがな。

 

しかし当の玲は背後のオーラを気にすることなく抱きしめてくる。

 

「あんな隠し球を持ってるなんて驚いたわ。決勝トーナメント進出おめでとう。決勝トーナメントでもカッコいい所を見せてほしいわ……」

 

そう言って玲は抱きしめる力を強めて、顔を俺の肩に乗せてくる。

 

「そうですね……決勝トーナメントは強者揃いですが、頑張りたいです」

 

そう言って抱き返そうとしたが、その前に背中を引っ張られる。

 

「いつまで抱き合ってるのかな〜?仲の良いのは結構だけど、私も応援してたのにスルーするのは頂けないなぁ〜」

 

国近だった。さっきの般若顔はなくなっていたが、ニコニコしながらも黒いオーラを出していた。

 

「スルーしたつもりはありません。国近先輩の応援には感謝してます」

 

誠実な対応をすると、オーラの質が低くなり、満面の笑みからジト目に変わる。

 

「……なら良いけど。でも那須ちゃんばかり狡いし私も抱きしめて良いかね?」

 

国近がそう言うと玲と小南は口にはしてないが、目が断れと語ってくる。自分からがっつくのはアレだし遠回しに遠慮した方がいいかもしれない。

 

しかし……

 

「えいっ」

 

返事をする前に国近は俺に抱きついてくる。同時に小南の黒いオーラが更に増し、玲はオーラは出してないが悲しそうな眼差しで俺を見てくる。

 

「我慢出来なくてごめんね〜。ところでカゲ君に勝ったから約束通りご褒美をあげるけど何が良いかね?」

 

あー、そういやそんな事を言っていたな。影浦との戦いで集中していたからすっかり忘れてたわ。

 

そう思っていると国近は俺の耳に顔を寄せて小声で話しかけてくる。

 

「流石に凄くエッチなお願いは無理だけど、ね」

 

クスリと笑いながらそう言ってくる。蠱惑的な仕草だが、裏を返せば少しエロい願いなら叶えてくれるってことだろう。

 

しかし……

 

「いえ。俺は自分の為に全力を尽くしただけですからご褒美は大丈夫です。寧ろ俺の訓練に付き合ってくれた国近先輩に礼をします」

 

ここで要求するのは悪手だ。2人きりの時に多少甘えるくらいなら問題ない。しかし玲や小南が見てる時にがっついたら国近は受け入れてくれるが、2人からは引かれるだろう。

 

国近からのご褒美というリターンと玲と小南から引かれるというリスクは釣り合ってない。

 

それなら無欲を装ってリスクを回避するのが最善だ。

 

「相変わらず欲がないね〜」

 

国近はちょっと残念そうに呟きながら離れる。背後にいる玲は悲しそうな顔を止めて息を吐き、小南はジト目で見ているもののドス黒いオーラを消している。

 

やはり今のは最善の選択のようだ。ハーレムを目標とする以上、1人だけにがっつくのは論外だからな。正直欲がないわけじゃないが、極力欲を出さないようにするのは絶対だ。

 

そして最後に小南を見ると、小南はわかりやすく慌て始める。

 

「な、何よ?!言っとくけど、勝ったからって浮かれんじゃないわよ!初見殺しの技で勝てただけであんたはまだ半人前なんだから!」

 

小南は慌てながらそう言ってくる。ツンデレ的台詞に対する返事として最善なのはわかってる。

 

「そうですね。小南先輩の言う通り、俺はまだまだ未熟です。ご忠告感謝します」

 

ツンデレに対する返事は喧嘩腰にならず、相手の言う事に対して素直に受け入れることだ。喧嘩腰に反論したら揉めるのがオチだからな。

 

すると小南は案の定、ウッと言葉に詰まるがやがて余り大きくない胸を張る。

 

「わ、わかってるなら結構よ!もっと強くなりなさい……ま、まあ前に戦った時よりも強くなったとは思うわ。だから……」

 

言うなり小南はさっきの2人のように抱きついてきた。それに伴い、玲はまた悲しそうな眼差しで見てきて、国近はニコニコしながらも圧を出してくる。

 

「勘違いしないでよね!約束通り決勝トーナメントに上がったご褒美、あんたがやって欲しそうだからやってあげてるだけで、あたしがやりたくてやってるわけじゃないんだから!」

 

早口で捲したてる小南だが、お前の性格的にやりたくないことはやらないだろうに。まあ役得だから口にはしないけど。

 

「ありがとうございます。では次の約束、小南先輩と戦う約束についても守りたいです」

 

「ふんっ……」

 

小南はそう返しながらも、態度に反して優しく抱きしめてくる。もうC級男子の殺気については気にしないことにする。

 

よくよく考えたら今後も3人以外の女子とも仲良くする予定だし今更だからな。

 

 

 

 

そう判断した俺だったが、その後に小南ばかり狡いと玲と国近も抱きついてきた時は死の気配を感じてしまったのだった。

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