唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ! 作:ユンケ
俺が決勝トーナメントに進出してからは他のブロックでも決勝トーナメントに進出する隊員が現れる。
Bブロックからは弓場が勝ち上がった。決勝で嵐山と戦ったが、嵐山の銃撃を回避しながら射程距離ギリギリの位置をキープして勝利した。
Cブロックからは加古が決勝トーナメントに進出した。というか決勝の相手が女子を苦手とする二宮隊の辻で、辻が棄権したのだ。その際に客席でため息を吐く二宮が印象的だった。
Dブロックからは生駒が参加者に決まった。決勝の相手は弓場の弟子で俺の兄弟子の里見一馬で、弓場と同じように早撃ちで生駒を攻めたが、普通の旋空で里見の下の足場を崩し、その隙を突いて生駒旋空で真っ二つにしたのだ。
そしてEブロックでは……
『ここで出水選手のメテオラが炸裂!更にメテオラによって生じた爆風を目眩しにハウンドを放つ!』
『トリオン量の差もありますが、那須の長所を冷静に潰してますね』
現在出水と玲が激突しているが、出水が圧倒的に押している。
出水はメテオラで建物を壊し、追尾性能が高いハウンドで玲に攻撃している。両攻撃しているので今の出水はシールドを使えないが、玲は反撃に出れない。
何故なら玲の十八番のバイパーは設定に時間がかかるからだ。幾らリアルタイムで弾道を引ける玲でも爆風とハウンドが飛び交っている状態ではマトモに攻撃出来ず防御に徹している。
更に出水のトリオン量は玲よりも遥かに多く、その分射程の長さも違うので一方的に玲を攻撃しているのだ。
幸い直撃はしてないが玲の周りには建物が無くなり、真っ平らになっている。
そして出水は少しずつ玲との距離を詰めているが、平地で戦った場合だと射手としての経験もトリオン量も豊富な出水の有利は揺るがない。
最早苛めじゃね……って思うような光景が訓練室から流れていた。
さて、玲はこのままやられちまうのか?
「ふぅ……やっぱり出水君は凄いわね……」
自分の周りにある建物が吹き飛び、瓦礫だらけの平地になるのを見ながら那須はため息を吐く。既に逃げることは出来ない。背を向けて逃げた瞬間に蜂の巣にされるだろう。
「さて、唯我に頑張ってる姿を見せたがってる那須ちゃんには悪いけど、唯我同様何をやらかすかわかんないし、そろそろ終わらせるぜ」
離れた場所にいる出水は軽い口調だが、目は笑っておらず油断や隙は全く見えなかった。改めてA級1位の射手の力量を嫌でも認識してしまう。
こうなると技術勝負をするべきではなく、多少博打をするしかないと玲は考えた。
そして出水がキューブを展開した瞬間……
「バイパー!」
右手にレイガストを展開しながらバイパーを放つ。弾道は出水を囲うように、所謂鳥籠だ。
対する出水は自身の周囲にシールドを展開する。シールドの面積が大きいので耐久力は下がるが、那須のバイパーも全方位からの攻撃で1発1発は大したことはない。
そしてそのままレイガストをシールドモードにしながら出水との距離を詰めにかかる。スラスター有りのレイガストの投擲は使わない。既に自分の好きな男がやっているだろうから出水は簡単に対処すると判断したからだ。
那須は常に全方位からのバイパーを放ちながら出水との距離を詰めようとする。この状態から出水の十八番の両攻撃は使えない。
しかしそれでも出水はもう1つのトリガーを使えるので油断は出来ない。
「アステロイド」
出水がそう呟くと出水の広範囲シールドの外側に那須が展開したキューブより2倍近く大きなキューブが展開されて、大量に分割して那須に襲いかかる。
那須はレイガストで防御することに成功するも威力重視のアステロイドだからかヒビが入ってしまう。
しかし那須は諦めずに全方位からのバイパーを放ちながらボロボロになったレイガストを破棄して、新しいレイガストを展開する。最優先事項は出水に両攻撃をさせないことだ。
そして更に距離を詰めようとすると、出水は周囲に新しいキューブを展開するのでレイガストをシールドモードにするが……
「メテオラ!」
巨大なメテオラを分割しないで那須から少し離れた足元に叩きつける。
瞬間、圧倒的な爆風が生まれる。レイガストを展開したので爆風を直撃したわけではない。
しかし爆風がレイガストを押しているので、レイガストを持つ那須は思うように動けなくなる。
同時にレーダーを見ると、出水が那須から距離を取るのが判明する。
慌ててバイパーを発射するが、暴風によりトリオン制御能力がマトモに弾道が引けずに変な方向に飛んでいってしまう。
そうして爆風が晴れると離れた場所に出水がいて、右手にはトリオンキューブが浮かんでいて……
「終わりだぜ、那須ちゃん」
そう言いながら弾丸を放ってくる。対する那須はレイガストを前方に構えて、出水に両攻撃をさせない為にバイパーを……
(あれ?何で出水君は両攻撃しなかったの……?)
放とうとするがそんな考えを抱いてしまう。爆風で動けない状況で両攻撃をしないなんておかしい。
そうなると……
「っ!スラスター!」
那須は出水の行動を理解をしてスラスターを起動して、この場から逃げようとする。
しかし出水が放った弾丸の方が僅かに早く……
「そんな……」
那須のトリオン体をレイガストもろとも粉砕した。それにより爆発が起きて試合終了のブザーが鳴る。
『ここで試合終了!Eブロック優勝は出水選手!爆風で目くらましをしてからの徹甲弾により那須選手を粉砕!』
『那須の両攻撃を使わせない戦術は良かったですが、爆風の中でバイパーを撃つのは至難でしょう。加えて出水は2、3秒で合成弾を撃てるのが強みです』
そんな風に解説が流れる。那須も出水が合成弾を撃ってくると予想したが、気づくのが少し遅かった。
その事に那須は悔しく舌を噛む。もっと早く気付いていれば対処は出来た。要するに自分の未熟さが原因で負けたのだ。
そしてこんな風に何も出来なかった所を好きな人に見られて凄く嫌な気分になってしまった。
「っ……」
「?那須ちゃん?」
那須はその事に下唇を噛みながら踵を返して、出水の呼びかけもそのまま無視して訓練室を出る。
その際に唯我が国近と小南を連れてやってくるが、一言も声をかけずに逃げ出してしまう。
唯我は優しいから慰めてくれるかもしれないが、惨めに負けた今の自分からは避けたかったのだ。
そしてそのまま早足で去っていった。
『これで予選トーナメントは全て終了しました!決勝トーナメントの対戦カードの組み合わせは1時間後に決めますので、決勝トーナメント進出者は5分前までに訓練室に集まってください!』
そんなアナウンスが流れる。その間に昼食を食べるべきだろうが昼食は後回しだ。
負けて落ち込んでないかと玲の様子を3人で見に行くと、玲は俺達と目が合うとそのまま去って行った。どうやら顔を合わせたくないのだろう。
どうしたものかと悩んでいると肩を叩かれるので振り向くと国近が真剣な表情を浮かべている。
「行ってあげなよ尊君」
そんな風に言ってくる。国近の意図はわからないが、放っておくわけにもいかないし従おう。
「わかりました。では失礼します」
そう言って玲を追いかけると、玲はエレベーターに乗ってドアが閉まる。行き先は……屋上か。
俺は上ボタン押してもう1つのエレベーターが来るのを待つのだった。
「それにしても柚宇さんは尊の背中を押すなんて意外ね」
「確かに那須ちゃんを優しさに溺れさせる可能性が高いから嫌なのは事実だけど、あそこで放置するのは尊君らしくないからね」
「まああそこで引き止めるのは尊の在り方に反してるわね」
「まあね〜、まあ今回だけで戦局が変わるとは思わないし気楽に行くよ。だから小南もそんなにソワソワしなくて良いんじゃない?」
「してないわよ!あたしは玲ちゃんが心配なだけで尊の事なんか何とも思ってないから!」
「うんうん。わかってるからね〜」
「だから……!」
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