唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ! 作:ユンケ
エレベーターを降りて、屋上に繋がるドアを開けると外から風が吹き込んでくる。若干仰け反りながらも前に出ると、既に屋上にいる玲と目が合う。
彼女は目を見開くも、直ぐに弱々しい笑みを浮かべる。そんな彼女を見ながらも俺は距離を詰める。
「尊君……さっき顔を見るなり、逃げ出してごめんなさい」
「驚きましたが、別に怒ってないですから謝らないでください」
実際怒る理由はない。玲は悪いことはしてないからな。
そう思っていると玲はポツリと呟く。
「……尊君には情けない姿を見せちゃったわね」
そう言ってくるが、特に情けないとは思わない。普段チームメイトとして出水の戦いを見ている人間からしたら、大体こうなることは予想出来た。玲が弱いんじゃなくて出水が強過ぎるのだ。アイツとタイマンでマトモに撃ちあえるのは二宮くらいだ。
「……悔しいわ。尊君はあんなに頑張ってる姿を見せてくれたのに……」
「そう言ってくれるのはありがたいですが、俺も玲さんが頑張ってる姿は何度も見ましたよ」
実際王子との戦いからは玲の執念を感じることが出来たからな。
「……でも」
「まあ感情的には納得してないかもしれません。けど一言だけ言わせてください……お疲れ様でした」
俺は小さく一礼する。何はともあれ、試合が終わった以上、労うのは必然だ。
すると玲は一瞬だけピクンとしてからそのまま俺に抱きついてくる。
「……勝てる可能性は低いとわかってたわ」
「それについては仕方ないでしょう」
「ええ……でも実際に負けると悔しいわ。私も決勝トーナメントに上がりたかったわ」
「普通はそう考えてもおかしくないでしょう」
寧ろ上がりたいと思わない奴はトーナメントそのものに参加しないだろうからな。
「それに、尊君に嫌われると思ったら怖くなって……」
何言ってんだ?俺がこの程度で人を嫌う訳ないだろうに。こっちは前世で散々上司にこき使われていたのだからメンタル面には相当の自信があるからな。
「俺は玲さんを嫌いません。俺にとって玲さんは優しくて美しい、素晴らしい女性です。それとも玲さんは俺をそんな薄情な人間と思っていたのですか?」
「そんな事ないわ。尊君は凄く優しい人だと思ってる。けど万が一を考えたら……」
「そんな考えは捨ててください。俺は玲さんを心から大切に思ってますよ」
「尊君……」
玲はそう呟くと俺の胸に顔を埋め、抱きしめる力を強めるので俺は右手で玲の頭を優しく撫で、左手を玲の背中に回して優しく抱きしめるのだった。
「……ごめんなさい。あんな風に甘えちゃって」
それから数分すると玲は恥ずかしそうにチラチラ見ながら謝ってくるが、謝る必要はない。寧ろ役得でしかない。
しかしもっとこの役得をしたいので、今回で玲を完全な甘えん坊にしたい。
「気にしないでください。もしも玲さんさえ良ければもっと甘えてください」
その言葉に玲は顔を上げるも、やがて顔を赤くしながら躊躇するも口を開ける。
「で、でも私は歳上だから……」
「歳なんて関係ないですよ。人間は誰かに甘える生き物なんですから、甘えたいと思うなら甘えてください」
ガキの頃は親に甘えることなんて当然だし、人によっては教師や友人、後輩に甘えることもあるからな。
「……本当に良いの?私、我慢しないよ?」
寧ろ我慢すんな。自重しないくらい甘えてほしいわ。
「はい。好きなだけ甘えてください」
そう返事をすると玲の行動は早く、いきなり抱きついてくる。
「尊君……尊君」
俺の名前を連呼しながらスリスリしてくる玲。さっきよりも数段甘え方が凄い。
「本当に甘えん坊ですね」
「……だって、ずっと前から尊君に甘えたかったら……けど、もう遠慮しないわ」
言いながら抱きしめる力を強める。遠慮をしなくなったのなら今後は今以上に甘えてくるのは明白だ。
「尊君、頭を撫でて……」
「わかりました……」
「んっ……」
言われたように撫でると玲はくすぐったそうに目を細める。可愛過ぎかよ?
「気持ちいいわ……尊君にこうして貰うの、凄く幸せ……」
「この程度の事で幸せと思うなら、幸せをあげますよ」
「お願い……ずっと、大人になってからも私を幸せにして……」
そう言って甘えん坊全開となっているが、これ遠回しにプロポーズされてないか?まあ俺の歪んだ解釈かもしれないから口にはしないが。
そこまで考えているとポケットの携帯が鳴り出すので抱きつかれながらも取り出すと国近からメールが来ていた。内容を見れば、食堂の席を確保したから玲を慰めたら来いとのことだった。
「玲さん。そろそろ昼食をとりに行きませんか?」
そう言うと玲はゆっくり離れる。
「そうね。尊君は決勝トーナメントに出るし、桐絵ちゃん達にも謝らないとね」
どうやら納得してくれたようだ。そんじゃあ昼食を食べて決勝トーナメントに「尊君」と、ここで玲が俺の名前を呼びながら近寄ってきて……
ちゅっ
俺の頬にキスをしてきた。え?まさかのキスですか?凄く幸せなんだけど。
そんな中、玲はクスリと笑う。
「じゃあ行きましょう」
そう言ってから俺の手を握って歩きだすので俺は引っ張られる形でそれに続いた。
次は是非唇同士でしたいものだ。
(尊君にキス、しちゃった……)
那須は唯我を引っ張りながら顔に熱が溜まるのを自覚する。唯我から思い切り甘えてくれと言われたので、今まで我慢していたものが解き放たれてしまったのだ。
(けどキスしちゃったし、尊君が嫌がらないならドンドンアピールしないと……今告白しても不幸になるだけだから)
那須自身、恋愛感情か親愛感情かは判断出来ないが唯我に好かれているとは思っている。
しかし唯我は小南や国近にも似たような感情を抱いているとも思っている。
この状況で告白しても2人を理由に振られるかもしれないし、受け入れて貰えても小南や国近との関係が悪くなり唯我がショックを受けるかもしれない。
唯我とは付き合いたいが、唯我の交友関係を破壊したいとまでは思ってないので那須は告白するつもりはなかった。
よって玲に取れる方法は2つある。
1つはとにかくアプローチをし続けて唯我の中で自分の存在を小南や国近よりも遥かに高い位置にする事
そしてもう1つは……唯我を独り占めするのを諦めて、小南と国近に3人で唯我を共有するように働きかける事
しかし両方とも難しい。前者はやる事は簡単であるが、他の2人もアプローチをかけるだろうから差をつけるのは厳しい。
後者については成功すれば独り占めするのは無理だが、他の2人に取られる心配はなく確実に愛して貰える。しかし真面目な唯我がハーレムを築いていると周りから言われても、唯我本人はハーレムを望んでいるとは考えにくいので実現は難しい。
(とりあえず今は地道にアタックしないといけないわね)
幸いさっき頬にキスをしたので今後も挨拶代わりにする事ができるし、頬へのキスの回数を増やしたら親愛の証として唇同士のキスにも挑戦したいと那須は思った。
それから食堂に向かうまで、那須は唯我に対していつ頃唇同士のキスに挑むか計画を立てるのだった。
ヒロインは何人まで希望?4人は確定
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