唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ! 作:ユンケ
「うーむ……毎日飯を食ってるのに、豪華な部屋で豪華な飯を食うのは慣れん。貧乏性が抜けてないのか?」
豪華な部屋にて、ステーキを口にしながらそう呟く。部屋には俺しか居ないので独り言を呟いても問題ない。両親(仮)は仕事先で会食らしいし。
現在俺は唯我家の巨大な部屋で1人で夕飯を食っている。転生してから毎日ここで飯を食っているが前世にて普通の部屋で普通の飯を食っていたからか、未だに環境の変化に戸惑っている。
だって仕方ないだろ?転生前のメインディッシュが冷凍ハンバーグに対して転生後はA5の霜降り肉だぞ?
(そういや元々存在していた唯我尊の人格はどこに言ったんだ?まさかとは思うが俺本来の肉体に転生したか?)
だとしたらマジで申し訳ない。俺は周囲が悪い環境から良い環境に変わったから戸惑う程度だが、唯我の場合良い環境から悪い環境に変わったのだ。前世の職場の上司は二宮や風間が可愛く見えるくらい怖い上司だし、原作通りの御坊ちゃまなら潰れてしまっているだろう。
そう思いながら俺は最後の一口を食べて手元にある鈴を鳴らす。するとドアが開き3人のメイドが現れる。1人が食器を片付け、1人が机を拭き、最後の1人が紅茶とケーキを俺の前に置く。そして最後3人揃って礼をしてから部屋を出て行った。
相変わらず手際が良いな。連携の練度なら風間隊に匹敵するレベルだと思ってしまう。
俺は驚きながらも手元にあるケーキを食べ始める。プロのシェフが作ったケーキだけあって味は当然ながら極上だ。
(っと、ケーキも良いが、食べたらちゃんと射手の戦闘記録の見直しや学校の勉強もしないとな)
前世では中学どころか大学を卒業しているから今更中学の勉強なんて怠いが、学校に行った際に数学や英語はともかく、物理や化学、古典とかは全然覚えてなくて大変だった。
学業を疎かにしたら親からボーダーを辞めさせられる可能性もあるが、それは絶対に嫌だ。折角ワールドトリガーの世界に転生したのだからボーダーでの生活を満喫したい。
そんな訳で学業を疎かにするつもりはない。俺は食後の予定を綿密に計画しながらケーキを食べる。
そしてケーキを食べ終えてから紅茶を飲み、テーブルの上にある鈴を鳴らし、入ってきたメイドとすれ違いながら部屋を出て自室に向かう。
そしてボーダーから支給された端末を巨大テレビと接続して操作する。同時にテレビにボーダーに所属する射手のデータが表示される。そこには出水を始め、加古、水上、蔵内、那須といったボーダーが誇る射手が映っている。
ちなみに二宮のデータはない。何故かというと参考にならないからだ。二宮の戦闘スタイルは圧倒的なトリオン量を駆使して力押しだ。唯我尊のトリオン量は二宮の3分の1ぐらいなので絶対に出来ない。
(出水の援護スタイルは射手として当然身に付けるべき。しかしそれだけでは足りない)
射手の仕事は敵から離れた場所から攻撃や味方の支援をする事で局面をコントロールする事。それは射手として当然であり大小差はあれど射手は皆、その技術を持っている。
しかしそれだけで足りない。それだけ身に付けただけじゃ普通の射手ーーー出水の下位互換にしかならない。出水は天才だから超えるのは無理だろうし。
だから唯我尊という名前をボーダーに轟かせるには、それ以外の武器を身に付けないといけない。
それ以外の武器と言ったら出水が好む合成弾や加古のように刃トリガーを利用した接近戦、水上のように放った言葉とは違う種類の弾を放つとか那須のようにピョンピョン跳ねながら蜂の巣にするなど色々ある。
もちろんそれらについて練習はするが、それ以外にも色々と身に付けたい。
(いっそ原作の三雲修のようにスパイダー戦術を身に付けるか?)
アレは原作を読んでいて中々良い技だった。
太刀川は空閑に比べて遥かにデカいし、機動力は低いから原作のスパイダーによってエースの強さを上げるってのは難しいかもしれないが、他にも使い道はある。
例えば出水を高い建物の屋上に立たせて、その周囲にスパイダーによる巣を展開。そんで俺がメテオラを使ってワイヤートラップを壊そうとする奴の足止めをすれば、出水に狙撃手だけに注意を割けば合成弾を好き放題撃たせる事も可能だろうし。
しかし問題が一つだけある。それをやったら他の部隊はスパイダー戦術について理解を深めるだろう。そうなったら原作が開始してから玉狛第二が勝ち進むのが厳しくなる可能性もある。
玉狛第二が勝ち進めなくなる事自体は気にしていない。そんなことを気にしていては俺の目標が達成出来なくなるし。
問題は転生モノでよくある原作改変によって悪い未来が生まれる可能性がある事だ。
俺はワールドトリガーが長期休載中にこの世界に転生したので玉狛第二の二度目の四つ巴試合のB級ランク戦ROUND7の結果は知らない。
知らないが物語の都合上勝ち上がる可能性は高く、遠征選抜試験も受かるだろう。
しかし俺がスパイダー戦術を今から使ったら玉狛第二は対策をされて原作より勝ち進むのが難しくなる。それによってもし玉狛第二が遠征試験で落ちたらどう言った方向に進むのか予想出来ない。
それでもしも俺にとって悪い出来事が生じたら……って考えると悩んでしまう。
(でも待てよ。唯我尊として強くなろうとしてる時点で既に原作改変してるから大丈夫か?)
判断が難しいな……とりあえずスパイダー戦術は後回しにしよう。原作でも三雲修は数日でスパイダー戦術をマスターしたのだ。焦ることはない。スパイダー戦術を導入するかはゆっくりと考えて決めよう。
(それ以外の戦術は……うーむ。色々あり過ぎて悩むな)
前世でワールドトリガーを読んでいた頃は『こんなトリガーの組み合わせは面白い』とか『このキャラ、トリガーチップの数少なくね?』みたいに考えた事はあるが、いざ自分がトリガーを使うとなれば悩んでしまう。
(ま、これはこれで中々興味深いし、可能な限り楽しんで強くなろう)
いくら高い目標があるとはいえ、折角漫画の世界に入れたのだ。色々な事をしないと損だしな。
そんな事を考えながら俺は寝るまでに戦闘記録の見直しをしたり、学校の勉強をしたり、軽いストレッチをするなど様々な事をするのだった。
翌日……
「よーし。今日の訓練を始めるぞ」
国近が作った仮想空間にて、太刀川隊の隊服を着た出水がそう言ってくる。
「はい。ですがその前に質問なんですが、何故今回は太刀川さんも居るんですか?」
疑問なのは出水の隣にいる太刀川の存在だ。俺はまだ強くないので、基本的に太刀川隊の作戦室以外の場所には行かず、太刀川隊の作戦室で国近が作った仮想空間で鍛錬をしている。
しかし訓練の際に仮想空間に入るのは毎回俺と出水だけで、太刀川が来るのは初めてだ。
「それはだな、お前の実力がB級下位くらいになったから、そろそろ基礎だけでなく、実戦経験を積ませる為だ」
太刀川がそう言ってくる。B級下位、つまり個人ポイント的に4000から5000くらいだろう。俺の目標を達成するには最低マスタークラスの実力は必要だからまだまだ先は長い。
「それはわかりましたが、実戦経験って事は太刀川さんと模擬戦を?普通に負ける未来しか見えないんですけど」
真面目な話、今の俺が太刀川とやっても一勝も出来ないだろう。この男、私生活には問題がありまくりだが剣を持つと超一流だからな。
「それはわかってる。俺がやるのはお前の反応速度の向上だ」
「反応速度、ですか?」
「ああ。戦闘力が同じでも反応速度が速いと遅いでは全く違う。反応速度が速ければ圧倒的な格上が相手でもやり過ごす事は出来るが、遅いと何も出来ずに負けるからな」
なるほど……まあ確かに勝てなくても相手の攻撃に反応出来れば時間稼ぎは出来るが、反応出来ないんじゃどうしようもない。
加えて鍛えてくれるのは個人総合1位の男。彼の攻撃に対して反応出来てある程度やり過ごすことが出来れば、他の相手なら割と余裕でやり過ごせるだろう。
「わかりました。じゃあ宜しくお願いします」
「よーし。じゃあ行くぞ?」
太刀川がそう言うと、出水は俺達から距離を取る。同時に太刀川は腰にある刃トリガー、弧月を抜き……
「は……?」
次の瞬間、俺の頭はかち割られて、体から力が抜け尻餅をついてしまう。
同時に真っ二つにされた俺の頭は直ぐに再生する。今、俺がいる仮想戦闘ルームはそういう仕組みだから特に驚きはしないが太刀川の攻撃速度は速すぎる。
『唯我君。先ずは1本ね~』
とてもユルい国近の声が耳に入る。視界の先には楽しそうに笑う太刀川と苦笑いしている出水が目に入る。
「とりあえず目標は今日中に俺の初撃は確実に回避出来るようになれよ〜」
太刀川がそう言うと再度俺に突っ込んできて……
『はい、2本目〜』
俺が再度真っ二つにされる中、国近の声が耳に入るが……
(これ、無理ゲーだろ?)
俺は一時的に自分の目標を忘れてそう呟いてしまった。
その後、俺は何度も何度も太刀川に斬られたが、68本目で初めて初撃を回避出来て、500本を超えたあたりで太刀川の初撃を確実に回避出来るようになった。まあ二撃目は無理だったけど。
ヒロインは何人まで希望?4人は確定
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4人
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7人
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10人以上