唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第69話

「今ので殺るつもりだったけど、やるわね」

 

身体からトリオンが漏れているのを自覚する中、同じ感じで脇腹からトリオンが漏れる桐絵がそう言ってくる。

 

「ありがとうございます。しかし桐絵先輩、グラスホッパーを入れたんですね」

 

桐絵は今まで使わなかったグラスホッパーを利用して窮地を逃れ、更には反撃して一太刀浴びせてきた。反応が少しでも遅れていたら、俺は負けていただろう。

 

「色々模索してる尊を見てたら、あたしも模索しようと思っただけよ」

 

言いながら小南は右手に持つ弧月の鋒を向けてくる。弧月を右手にしか持ってない以上、もう一振りの弧月を使うかグラスホッパーを使うかメテオラを使うか判断が難しいな。

 

何にせよ無理に攻めるつもりはない。ただでさえカウンター戦術を武器としている俺が無理に攻めたら自分のポテンシャルを引き出せずに負けてしまうからな。

 

そして……

 

「ふっ!」

 

桐絵は距離を詰めて弧月を振るってくるのでレイガストで受け止めるが、レイガストに密着して離れないまま攻撃を重ねてくる。

 

片手のみで攻撃しているのでガードは簡単だが、密着しているのでリボルバー銃を向けにくい。無理に向けても隙を晒すのがオチだ。弓場なら問題なく立ち回れるだろうが、俺の技術では上手く立ち回れないだろう。

 

しかも桐絵は攻めの激しさを緩くした反面、こっちがカウンターをした際に何をするかわからなくて怖い。

 

今までの桐絵は両手に弧月を持っていたので、俺がカウンターを狙った際はシールドを余り使わず回避や受け流しを多用していたが、今の桐絵にはグラスホッパーがある。

 

こっちがカウンターを狙った際にグラスホッパーを踏ませたら隙を晒してしまう。

 

そう思いながら桐絵の弧月を封じようとレイガストに切れ込みを入れるが、それを見抜いた桐絵はレイガストの横っ腹に蹴りを入れて、レイガストをズラすことで切れ込みに弧月が入らないようにする。

 

(やはり対策はしてくるか!)

 

俺はレイガストを横薙ぎに振るい、桐絵の袈裟斬りを受け止めてからアステロイドを27分割して多角的な攻撃を仕掛ける。

 

俺みたいな射手が攻撃手と戦う時は多角的な攻撃で相手の意識を散らす必要があるからな。

 

と、ここで桐絵はレイガストを蹴ってその勢いで後ろに下がりながらメテオラを放つ。ただし分割しないで丸々ぶっ放してきたので、アステロイドとぶつかった瞬間に大爆発が生じる。

 

俺も後ろに爆風から逃れると同じタイミングで爆風から桐絵が出てきて、弧月をぶん投げてくる。

 

俺は遠隔シールドで防ごうとするが……

 

「グラスホッパー!」

 

なんと桐絵は弧月にグラスホッパーをぶつけて軌道を変える。狙いは俺の足だが、予想外の作戦に反応が遅れ俺の左足に掠る。

 

トリオンが漏れるのを自覚しながら前に出る。予想外の作戦とはいえ、いつまでも気にするのは悪手だ。

 

何故なら桐絵は既に新しい弧月を展開して俺との距離を詰めにかかっているから。

 

迎撃するべく前に出るも左足が僅かに遅い。さっきの一撃は斬り落とされた訳ではないが、動きに支障が出ている。

 

「ちっ……!」

 

舌打ちをしながらも桐絵も連撃を迎え撃つ。

 

(右、左上、斬り上げ、袈裟斬り……)

 

桐絵の戦闘スタイルは型にはまわらない自由なタイプである。しかし人間である以上、癖や好みの型があるのは紛れも無い事実なので、データを見直せば完全な先読みは無理でも何となく予想はつく。

 

しかし……

 

(ちっ、完全には防げねぇ……!)

 

左足の反応が悪く、更には重いレイガストを左手に持っているので左側のガードが甘くなってしまい、何発かは掠りトリオンが漏れ出る。

 

今のところ大ダメージはないが、この状態が続けばトリオン切れになる可能性も低くはない。

 

一方の桐絵は脇腹に穴があるも、既にトリオンは漏れてないので俺よりダメージは軽いだろう。

 

そして桐絵もそれを理解しているから決して無理な攻めはしない。まるで予選決勝の影浦の時と似たシチュエーションだな。

 

けど諦めるつもりはない。桐絵に弱い姿を見せるつもりはないからな。

 

そう思った俺は桐絵が弧月を横薙ぎに振るってきた瞬間……

 

「シールド!」

 

ガァンッ!

 

「うわぁっ!」

 

腕の軌道上にシールドを展開する。腕にシールドがぶつかり、その衝撃で桐絵の腕の軌道は変な方向に変わり、それに伴い太刀筋もメチャクチャになる。

 

その隙を逃すはずもなく、俺はシールドモードのレイガストを斜めに傾けて、思い切り横に振る。それによってレイガストが桐絵の足にぶつかり、体勢を崩す。

 

そして俺はトドメとばかりにリボルバー銃を腰に展開して、ホルスターから取り出して桐絵に向ける。何処を狙ってもこの距離なら外さない。

 

と、その時だった。

 

「甘いわよ!」

 

桐絵はそう叫び、体勢を崩しながらも左手に新しい弧月を展開してリボルバー銃に向けて振るう。この軌道なら斬られるな。

 

体勢を崩す中、リボルバー銃を向けられながらも一切焦らずに反撃するのは見事の一言だ。

 

しかし……

 

 

 

 

 

 

 

 

「信じてましたよ、桐絵先輩」

 

銃がぶった斬られる直前、俺の隣にキューブが展開される。これには桐絵も目を見開いている。

 

これはもちろんアステロイドだが、普通トリガーは同時に使う場合、主トリガーと副トリガーの2種類しか使えない。

 

よって副トリガーのレイガストを使ってる時の俺は、リボルバー銃とアステロイドの片方しか使えない。

 

しかし例外はある。それは銃の機能をOFFにした時だ。

 

俺はレイガストを持ちながらリボルバー銃を展開して桐絵に向けたが、桐絵の実力なら体勢を崩しながらも反撃出来ると判断して、リボルバー銃を向けながら機能をOFFにしたのだ。

 

それにより発砲は出来ないが、リボルバー銃以外の主トリガーを使えるようになったので、アステロイドを展開したのだ。

 

要するに桐絵から見たら「レイガスト+リボルバー銃」だが、リボルバー銃は桐絵に向けた瞬間に機能をOFFにしたので実際は「レイガスト+リボルバー銃と見せかけてアステロイド」なのだ。

 

そしてこのアステロイドは分割せず、威力に特化したアステロイドだ。射程は必要ないし、弾速もそこまで速くなくても桐絵の体勢なら避けれないのは明白。

 

(俺の……勝ちだ!)

 

勝ちを確信しながら俺はアステロイドを放つ。狙いは人間の中心である心臓だ。

 

その時だった。

 

「あぁぁぁっ!」

 

桐絵は叫び声を上げながら右手に持つ弧月を地面に突き刺して、その勢いを利用して無理矢理身体を動かしたのだ。

 

 

結果、アステロイドは心臓を穿つことが出来ず、桐絵の脇腹を通った。

 

しかも最悪なことに、さっき穿った場所と偶然にも重なってしまい、僅かにトリオンが漏れただけで致命傷に至らない。

 

「(っ……まだだ!)スラスター、ON!」

 

桐絵の執念は予想以上だが、まだ俺は負けてないし桐絵も体勢を崩している。

 

俺はレイガストをブレードモードにしながら左腕を振り上げて、間髪入れずにレイガストを振り下ろす。

 

「グラスホッパー!」

 

対する桐絵は不恰好な姿のまま地面に着地しながら、左手の弧月を消してグラスホッパーを使う。

 

 

しかも狙いは俺の腕の下、さっき俺がシールドを使った時と同じパターンだ。

 

慌てて対処しようとするがスラスターは既に使用している為、勢いを止められず俺の左腕はグラスホッパーに触れてしまう。

 

結果、腕が桐絵に反発するかのように跳ね上がり、予想よりも強く俺の身体も浮き上がってしまった。

 

(マズい、このままだと負ける……!)

 

俺は宙に浮きながらも新しいリボルバー銃を作り引き金を引く。

 

ドパッ!ドパッ!ドパッ!

 

銃口から放たれた弾丸は桐絵に向かうが、既に身体を起こした桐絵は身を捻って回避して、そのまま弧月を投げてくる。

 

放たれた弧月は空中で身動きが取れず、尚且つ2種類のトリガーを使用しているが故にシールドを使えない俺を逃すことなく、リボルバー銃を持った俺の右腕を吹き飛ばす。

 

そしてトリオン体にヒビが入るのを自覚しながらもレイガストを構えようとする中、桐絵は猛スピードでこっちに詰め寄り……

 

 

 

 

 

「あたしの勝ちよ、尊」

 

 

レイガストを構える前に俺の胸に弧月を突き刺した。

 

それに伴い、俺の全身が光に包まれてトリオン体が爆散するのだった。

 

ちくしょう……勝ったと思ったんだがな。

 

 

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