唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第74話

いったい何があったんだ?

 

温泉旅館に向かっている俺はそう思わずにはいられなかった。

 

「どうしたの尊?なんかあった?」

 

「あ、いえ。何でもありません」

 

「そうなの?変な尊」

 

そう言ってクスリと笑うのは桐絵だが、桐絵の様子が変わったのだ。出発してから直ぐに桐絵を誉め殺すべく、メチャクチャ誉めたら最終的に桐絵は暫く俯いた。

 

しかし乗り換えをする駅に到着する直前に話しかけようとすると、桐絵は顔を上げ……

 

『ずっと黙っててごめん。もう大丈夫。それとさっきの尊の言葉は嬉しかったわ』

 

そう言って今まで以上に魅力的な笑みを浮かべたかと思えば、下車するべく立ち上がったタイミングで俺の腕に抱きつき、乗り換えた電車の中でも俺の腕に抱きついたまま甘えているのだ。

 

毎回俺に甘える際は必ずツンデレを見せていた桐絵だが、今は一切見せてこない。もしかして素直になったのかもしれないな。

 

桐絵を見ると、桐絵は恥ずかしそうに目を逸らすがいつものような強気な態度を見せずにいるのだった。

 

『次は〜〜駅。〜〜駅でございます』

 

と、ここで降りる駅が近づいた。改めて車窓から外を見渡すと、家が疎らに点在したり、畑や田んぼや山が近くにあったりと地方の方に向かっているのを理解出来た。

 

さて、これからどんな事があるかわからないが楽しみにしないとな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(恥ずかしい……けど、あまり強気になっちゃダメ……)

 

小南桐絵は唯我の腕に抱きつく中、恥ずかしい気持ちで一杯だが、唯我に対して強く当たることはしなかった。

 

理由は……

 

(強く当たってるようじゃ玲ちゃんと柚宇さんには絶対に勝てない)

 

既に唯我に対する恋心を認めた以上、素直にならないのは悪手と判断したからだ。

 

自分に対して敬愛を持っている唯我に対して、自身の恋心を認めず強気な態度を取っていたら嫌われる可能性があるし、嫌われなくても普段唯我に対して素直に甘える玲と柚宇との差が開いてしまうと桐絵は判断した。

 

『次は〜〜駅。〜〜駅でございます』

 

と、ここでアナウンスが流れる。自分達が降りる駅が近づいてきたのだ。

 

同時に隣に座る唯我が荷物に手を伸ばし降りる準備を始めたので、桐絵もそれに続く形で降りる準備をする。

 

降りる準備を済ませると桐絵は唯我の腕に抱きついたまま立ち上がり、2人でドアの前に立つ。

 

そしてドアが開くので降りると爽やかな風が吹き、心地良さを生み出す。三門市に比べたら家や店の数は僅かであるが、のどかな雰囲気を桐絵は気に入った。

 

背後にある電車が出発すると唯我が改札に向かって歩き出すので桐絵も並んで歩く。

 

改札を出て旅館行きのバス停で時刻表を見ると、バスがくるのは10分後のようだ。

 

バスを待っていると唯我が話しかけてくる。

 

「改めまして、今日から二日間宜しくお願いします」

 

優しい笑みを浮かべてそう言ってくる唯我にドキリとする。昨日までなら恥ずかしさの余り強気な発言をしてしまう桐絵だが、挨拶をされたのに強気な発言をするのは無礼と判断して……

 

「こっちこそ宜しく!この二日間を最高の思い出にするわよ!」

 

いつも友達と過ごす時のように元気良く返事を返す。それに対して唯我は……

 

「えっと……は、はい、そうしましょう」

 

珍しくキョドリながら返事をする。頬は染まっていて恥ずかしそうだ。

 

余り見ない唯我の態度に桐絵は可愛いと思い、唯我の腕に抱きつく力を強めて甘えるのだった。

 

 

 

 

 

 

(マジで素直になってんな……)

 

俺は純粋にそう思った。改めて挨拶をした結果、強気で素直じゃない返事ではなく、素直で元気な返事をしてきたのだ。

 

その返事は桐絵の魅力である明るさを最大限まで引き出していて凄く魅力的であり、思わず照れてしまったのは否定しない。更には腕に抱きついて甘えてくるし、もうマジで可愛すぎる。

 

と、ここで旅館に行くバスがやって来たので俺達は荷物を持ってバスに乗る。

 

適当な席に座り、他の客が乗るとバスが発車する。窓から外を見るが、コンビニや小さい店が数軒あるだけで、本屋とかの娯楽系の店は全くない。偶に旅行に行くならともかく、暮らすとなれば結構退屈だろうな。

 

暫くバスに乗っていると畑や田んぼなどが周囲に見え、巨大な橋を渡ると綺麗な川も見え、カヌーを漕ぐ人を見つけられる。

 

「楽しそうね。尊はちゃんと水着を持ってきた?」

 

「もちろんです」

 

桐絵が楽しそうに川を見ながらそう言ってくる。この辺りの川は有名なスポットであるので、旅行前に桐絵から水着を準備するように言われたので当然持ってきている。

 

水着を忘れても桐絵の水着は見れるだろうが、桐絵と遊べないのは嫌だ。桐絵はスキンシップをよくするに、水着を着てもして欲しいものだ。

 

そんな事を考えながらもバスは川沿いの道を走りながらも高度を上げ、やがて速度を落とすので周りを見渡すと崖の近くに木造の建物が目に入る。周りに他の旅館はないのであそこが泊まる場所だろう。

 

案の定、バスは建物の前で停車する。俺と桐絵はバスの出口から近い場所に座っていたので1番最初に降りる。

 

そしてフロントに向かい、桐絵はフロントにいる姉ちゃんに話しかける。

 

「すみません。予約した小南桐絵と唯我尊ですが」

 

「小南様と唯我様……お待ちしておりました。宿泊券をお預かりします」

 

桐絵は鞄から宿泊券を二枚取り出してフロントに渡す。

 

「ありがとうございます。それではお部屋にご案内いたします」

 

その言葉に傍にいた男性職員が一礼して歩き出すので俺達もそれに続く。

 

暫く長い廊下を歩くと男性職員があるドアの前に止まり鍵を開けたので中に入る。

 

案内された部屋に入ると、窓から絶景が広がっていた。窓から見える山や川は美しい。

 

しかもこの旅館、大浴場に加えて部屋ごとに温泉があるのは良いな。

 

「夕食は18時から20時までの間にお願いします。また大浴場は16時からですので、それ以前にお風呂を希望する場合、部屋の温泉をご利用ください」

 

男性職員は部屋の鍵を渡してから一礼して、部屋を去っていく。それを見送った俺達はドアが閉まると同時に一息吐いて荷物を降ろす。

 

「とりあえず景色でも見ますか?」

 

「そうね。部屋の温泉も気になるし」

 

桐絵が頷き、温泉に繋がる扉を開けると木製の露天風呂が絶景と向かい合わせになっていた。

 

「凄く綺麗ね」

 

桐絵はそう言ってくるが同感だ。こんな絶景を眺めながら一杯の酒を飲むのは格別だろう。

 

(その点、唯我尊が中3なのは痛いな……)

 

今の俺は未成年だから酒が飲めないのが辛い。早く成人したいものだ。

 

ま、今は学生生活を満喫しよう。

 

「はい。夜寝付けない時や朝風呂に利用するのもいいかもしれないですね」

 

「そうね……」

 

言いながら桐絵は恥ずかしそうにチラチラ見てくる。この態度……もしかして一緒に入る想像でもしたのか?

 

正直今の桐絵が相手なら一緒に風呂に入らないか誘ったらOKを貰えるかもしれないが、却下されたら気不味くなるしやめといた方がいいな。

 

「ま、それは夜になってからでしょう。それより部屋にこもってるのも勿体ないですし、外に出ませんか?俺としては以前から計画した川遊びがしたいですから」

 

俺の言葉に桐絵はハッとした表情になりながら頷く。

 

「え、ええ!あたしも賛成よ!じゃあ服の下に水着を着て行きましょう!トイレ借りるから」

 

桐絵はそう言って鞄を片手にトイレに入っていく。鍵をかけたのを確認した俺は鞄からボクサーパンツに近い水着を取り出して、ささっとズボンとパンツを脱いで水着をはく。

 

そしてズボンを履いた俺は貴重品を金庫の中に入れて、予備の服や下着を鞄から取り出して、鞄の中を遊び道具やタオルやビニール袋だけにして桐絵を待つ。

 

暫くすると桐絵がトイレから出てきて、俺と同じように金庫に貴重品を入れて透明じゃない袋を部屋の隅に置く。多分アレは桐絵の服や下着だろう。

 

「お待たせ。さあ行くわよ!」

 

 

桐絵はそう言って腕に抱きつくので、俺は自分の指を桐絵の指に絡めながら部屋を出て鍵をかけて、フロントに向かうのだった。

 

さぁて、童心に帰って思い切り遊びますか……

 

 

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