唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第76話

「それっ!」

 

桐絵の可愛らしい掛け声と共にボールが放たれて、俺の方に向かってくるので、俺はバレーのブロックの要領でボールを叩き落とす。落とされたボールは水面に向かって落ちていくが水飛沫を上げる前にキャッチする。

 

「お返しです……はっ!」

 

俺はボールを宙に投げ、手をパーにして桐絵に向かって放つ。同時に桐絵に向かって思い切り水をぶっかける。

 

すると桐絵は両手で目を隠すがそれにより防御が疎かになり、ボールが桐絵の腕に当たる。ここが陸地ならともかく、身体の自由がきかない川の中なら戦いようがある。

 

「これで3対2。俺の勝ちですね」

 

「む〜!悔しいっ!」

 

桐絵は悔しそうにジタバタ暴れるが可愛いだけだからな?

 

「わかりましたから暴れないでください。危ないですよ」

 

「子供じゃないんだから大丈夫に決まって……っ!」

 

そこまで言う中、桐絵は突如苦しそうな表情になったかと思えばいきなり顔が水中に入る。

 

(もしかして足が攣って、焦りで溺れたのか?言わんこっちゃない)

 

俺は急いで川に潜ってジタバタする桐絵の腰を掴み、そのまま水面に浮上する。

 

「ぷはっ……大丈夫ですか?」

 

「ご、ごめん……左足を攣っちゃって……っ……」

 

痛そうに顔を顰める。泳いでる時に足が攣ったらパニックになって溺れる事もあるからな。

 

「とりあえず一旦上がりましょう。少し不快かもしれないですが、我慢して頂けると助かります」

 

言いながら俺は桐絵の腰に手を回した状態でゆっくりと岸に近寄り、足がつく所まで近付いたら桐絵を抱き抱える。

 

「っ……尊ぅ」

 

腕に抱かれた桐絵は恥ずかしそうにしながら上目遣いで見てくる。普段強気な桐絵が弱さを見せるのは破壊力が半端ない。

 

内心理性を刺激されるのを自覚しながら俺は桐絵を地面に優しく座らせて、左足のマッサージをする。

 

「痛かったら直ぐに言ってください」

 

俺の言葉に桐絵は無言で頷くので優しい手つきを心がけながら、足が攣った時にやるマッサージを桐絵にする。桐絵の美脚にドキッとするが、煩悩を押さえ込む。

 

暫くマッサージを続けて桐絵を見る。

 

「一応マッサージをしましたが大丈夫ですか」

 

その言葉に桐絵は足を軽く動かすが、痛みに顔を顰める事はなかった。

 

「大丈夫ね……ごめん尊。悔しいからって暴れて足を攣るなんて間抜けよね」

 

桐絵は弱々しい笑みを浮かべてくる。このまま放置すれば暫くこの調子だろう。折角の旅行でそれは避けたい。

 

(仕方ない、少々攻めるか。多分今の桐絵なら大丈夫だろう)

 

これまでに桐絵は俺に抱きついたりしてるし、2人きりの温泉旅行を提案してきたことから察するに俺に対する好意は強いだろうから、多分多少攻めても大丈夫だと思う。

 

そう判断した俺は賭けに出る。自分から桐絵を抱きしめる。

 

「ふぇっ?!た、尊?!」

 

桐絵の身体の柔らかさが俺の肌から伝わる中、桐絵はさっきの弱々しい笑みとは打って変わり真っ赤になる。しかし引き離すなど嫌がる素振りを見せない。賭けは成功したようだ。

 

「悔しいなら態度に出すのは仕方ないです。それに俺は落ち込んでる桐絵先輩の表情は好きじゃないです」

 

言いながら背中を優しく撫でると桐絵は真っ赤な表情を俺に向けながらもゆっくり俺の背中に手をまわす。

 

「俺は自分の感情に素直な桐絵先輩が好きなんです。ですから桐絵先輩は気にしないでいつも通りの表情をしてください」

 

「あ、あぅ……」

 

俺の言葉に桐絵は碌に返事を出来ずに口をパクパクしてしまう。そんな桐絵も可愛いが、このまま攻め込む。

 

「桐絵先輩が落ち込んでるなら、俺は桐絵先輩が立ち直る為に何でもやりますから言ってください。俺は桐絵先輩を心から敬愛してますから」

 

「は、はひ……わかりましたっ……」

 

桐絵は限界が来たのは今まで以上に真っ赤になって、普段使わない敬語で返事をする。ヤバい、少々攻め過ぎたか?

 

俺は内心やり過ぎたかと後悔するのだった。

 

しかし暫くして桐絵は顔を上げる。顔を見れば真っ赤ではあるが先程よりも落ち着きがある。

 

「尊、迷惑かけてごめん」

 

「いえ。特に気にして「そ、それと!」それと?」

 

「さっきは助けてくれてありがとう。だから……お、お礼よ!」

 

ちゅっ

 

桐絵は真っ赤になったまま俺の頬にキスをしてきた。うん、最高のお礼だな。

 

俺は桐絵を愛おしく思い抱きしめる力を強めると桐絵も恥ずかしそうにしながらも抱きしめる力を強め、お互いに抱き合う体勢のまま暫く過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

(た、尊の馬鹿ぁぁぁぁ〜!どんだけあたしを溺れさせようとすんのよ〜)

 

唯我に抱きしめられる桐絵は真っ赤になりながら内心にて唯我に文句を口にする。

 

遊びで負けたから悔しくて川で暴れたら足を攣って、溺れそうになっていたら尊に助けられた桐絵だが、助けられた時は好きな人に迷惑をかけてしまったと自己嫌悪していた。

 

しかし……

 

 

ーーー悔しいなら態度に出すのは仕方ないです。それに俺は落ち込んでる桐絵先輩の表情は好きじゃないですーーー

 

 

ーーー俺は自分の感情に素直な桐絵先輩が好きなんです。ですから桐絵先輩は気にしないでいつも通りの表情をしてくださいーーー

 

 

ーーー桐絵先輩が落ち込んでるなら、俺は桐絵先輩が立ち直る為に何でもやりますから言ってください。俺は桐絵先輩を心から敬愛してますからーーー

 

そんな言葉を好きな男から抱きしめられながら言われ、桐絵はパニックになっていた。

 

あまりのインパクトに桐絵は既に落ち込んでおらず、唯我の言葉により違う意味で平常心を保てずにいる。

 

(もう無理……あたし、尊の事しか考えられなくなってる。いつもあたしを大切にしてくれる尊の事が本当に大好き)

 

尊になら自分の全てを捧げてもいい、桐絵はそう思っている。

 

(けど、尊は誰でも大切にしてくれる……)

 

客観的に見れば唯我の態度は立派であるが、唯我に恋する人間からしたらその態度は不満だ。自分以外の女子には優しくしないで欲しいのが本音だ。

 

しかしそれは矛盾している。桐絵は唯我の努力家で誰にでも優しい所に惹かれ、自分に対して優しさと敬愛を向けられて恋に落ちた。

 

自分だけを大切にして他の人を蔑ろにする唯我を見たら幻滅してしまうかもしれないと桐絵は考えていた。

 

(本当に尊って厄介ね……多分今告白しても悪い未来になるだろうし)

 

振られたら最悪だし、仮にOKを貰ったとしても唯我の人間関係に亀裂が走るのは間違いない。そうなって唯我に「桐絵と付き合わなければ良かった」なんて言われるのはもっと最悪だ。

 

(あーあ、複数の女子と付き合える事が一般的なら悩まないのに)

 

桐絵は思わずそう考えてしまう。仮に唯我が複数の女子と付き合えるなら人間関係に亀裂が生まれないだろう。

 

桐絵自身、唯我を独り占めしたい気持ちはあるがライバルが強力なので、誰かに取られるなら自分以外の女子と唯我を囲むのもアリだと思っている。

 

(ま、無理よね。玲ちゃんと柚宇さんはともかく、尊は納得しないかもしれないし)

 

玲と柚宇は自分と似た境遇だから唯我を囲む作戦に乗ってくれるかもしれないが、当の唯我が納得するかわからないからだ。

 

(とりあえず今は尊に謝ってお礼をしないと)

 

迷惑をかけてばかりながら謝罪と礼は絶対だ。

 

桐絵は顔を上げて唯我を見る。その際には心臓が高鳴る。

 

「尊、迷惑かけてごめん」

 

「いえ。特に気にして「そ、それと!」それと?」

 

唯我の言葉を遮りながら桐絵は前のめりになり……

 

「さっきは助けてくれてありがとう。だから……お、お礼よ!」

 

ちゅっ……

 

唯我の頬にそっとキスをする。恥ずかしさで頭が爆発しそうだが、少しでも唯我に対して「自分は異性としてお前を好いている」って事を伝えたかったのだ。

 

すると唯我は無言で抱きしめる力を強めてきた。

 

(気持ちいい……私も……)

 

桐絵も負けじとばかりに唯我を抱きしめる力を強める。唯我から伝わる温もりは桐絵の身体と心を熱くした。

 

 

 

 

 

(大好きよ尊。本当に大好き……)

 

まだ口には出来ない言葉を桐絵は心の中で呟き暫くの間、唯我と抱き合い続けるのだった。

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