唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第77話

「尊、毎回ごめんね。あたし尊には弱い所を見せてばっかり」

 

そう言う桐絵は頬を染めている。それでも抱きついている状態なので弱さを見せる事を嫌悪してる訳ではなさそうだ。

 

「気にしないでください。完璧な人間なんていないですし、俺は桐絵先輩の可愛い姿を見れて満足です」

 

「っ!だ、だから変な事を言うんじゃないわよ!」

 

案の定桐絵は慌てるが、口元はニヤニヤしている。良い機会だし今回の旅行で桐絵も玲レベルの甘えん坊にさせたいものだ。玲は会う度に抱きついて頬にキスをするくらいだが、あのレベルの甘えん坊になった桐絵はメチャクチャ可愛いだろう。

 

「変な事を言ったつもりはないですよ。こうやって俺に抱きつく桐絵先輩は凄く可愛く、桐絵先輩に甘えられたいと思います」

 

ここで俺は自分の望みを言うと桐絵はモジモジし始める。

 

「馬鹿……!」

 

俺を馬鹿と言う桐絵。この調子で桐絵をツンデレからデレデレにしたい。

 

俺は桐絵の背中に回している手を桐絵の頭に回して撫で撫でする。

 

「んんっ……尊ぅ……」

 

桐絵はくすぐったそうにしながらも拒絶する事なく、抱きしめる力を強めて足を俺の腰を絡めて今以上に甘えん坊になる。

 

「やっぱり桐絵先輩は凄く可愛いです」

 

「んっ……尊、楽しんでるでしょ……」

 

「桐絵先輩の要望を考えてるだけで楽しんでるつもりはありません。もちろん嫌ならやめますがどうします?嫌なら止めろと、続けて欲しいなら続けろと言ってください」

 

俺は桐絵の頭を撫でるのを止めて、抱きしめるのも止める。意地悪な質問かもしれないが桐絵の口から言わせたい。

 

そう思いながら俺は桐絵を見ると、桐絵は物欲しそうな表情を浮かべながらもやがて恥ずかしそうにしながら消え入るような声で話し始める。

 

「……続けて。もっとあたしを可愛がって……!」

 

そんな風におねだりしてくる。桐絵のおねだりは破壊力が半端なく、俺は薄く笑ってしまうが、幸い周りには人がいないので問題ない。

 

「わかりました。では身体ごと後ろを向いてください」

 

「?わかったわ」

 

桐絵は不思議そうにするも、後ろを向き俺に穢れない背中を晒す。

 

それを確認した俺は桐絵にくっつき……

 

「た、尊?!」

 

そのまま両手を桐絵の肩から前に出す。いわゆるあすなろ抱きってヤツだ。

 

そして桐絵の背中にくっついて密着度を高めて、息をこまめに吐いて桐絵のうなじに吹きかける。

 

「んっ……た、尊……恥ずかしいわ」

 

桐絵らそう言いながらも抵抗しないで俺の行動を受け入れてくれている。

 

「桐絵先輩の温もり、凄く心地良いですね。可能なら今後もその温もりを感じたいです」

 

「べ、別に構わないけど。ただあたしも玲ちゃんや柚宇さんみたいに抱きついても良い?」

 

おっ。そんな要求をハッキリしてくるとは思わなかった。もちろん断る理由はないし受け入れるつもりだ。

 

「それを桐絵先輩が望むなら喜んで。俺は先輩達が望む事をしてあげたいですから」

 

「ありがと(でもその優しさはあたしだけに向けて欲しいって思っちゃうのよね……)」

 

ん?最後の方に何か言っていたが、余りにボソボソしていたので聞き取れなかったぞ。まあ桐絵の性格上、言いたい事はハッキリ言うだろうし多分重要性はそこまでないだろう。

 

そう思いながら俺はうなじのみならず耳に息を吹きかけたり、頭や肩などを優しく撫で続けた。その際に桐絵は一切抵抗しないで、可愛い声を出し続ける存在となっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

2時間後……

 

「そろそろ疲れたので旅館に戻りませんか?」

 

川の中にて俺は浮かびながら浮き輪に乗っている桐絵にそんな提案をする。

 

アレから俺達はお互いに甘えあったり、桐絵から頬に何回かキスをして貰ったり、川で泳いだり、川の中で抱き合ったりと色々過ごしたがだいぶ疲れてきたので切り上げたいのが本音だ。

 

「そうね。浮き輪、押してくれてありがとう」

 

言いながら桐絵は浮き輪から川に落ち、そのまま俺にギュッと抱きついてくる。この川遊びだけで桐絵は今までより遥かに甘えん坊になっている。もうこの時点で旅行は充分満足出来ている。

 

しかしまだ旅行はまだ1日あるし、これからもっと桐絵を甘えん坊にしたいのが本音だ。

 

「いえ、問題ありません。ところで川から上がるなら離して貰ってもいいでしょうか?」

 

桐絵に抱きつかれるのは嫌じゃないし歓迎だが、流石に疲れた状態、尚且つ川で立ち泳ぎしている状態で抱きつかれるのは少々キツい。

 

そう思い桐絵にさり気なく提案するが……

 

「……もう後3分だけ、ダメ?」

 

「わかりました。後3分だけですよ」

 

「ありがとう!」

 

不安そうな表情に加えて上目遣いによるおねだりには拒否出来ず、即答してしまう。だってデレ状態の桐絵のおねだりって破壊力が半端ないからな。

 

それから俺は川で立ち泳ぎをしながら桐絵の甘える攻撃を3分間受け続け、3分経過してからは桐絵と一緒に川に上がり荷物が置かれた場所に向かう。

 

「じゃあ服に着替えるんで、桐絵先輩は岩陰で着替えてください」

 

この辺りは更衣室がないから川から上がった際は必然的に外で着替えないといけない。それを考えると岩がたくさんあるこの場所はベストスポットだろう。

 

「わかったわ。誰か来ないか見張ってて。それと……絶対に覗くんじゃないわよ!そういうのはまだ早いんだから!」

 

桐絵は真っ赤になって指を突きつけるが、逆に言えば更に関係を深めたら覗いてもいいって事か?

 

ともあれまだ早いと言われた以上、覗くつもりは毛頭ない。

 

「わかりました。覗きもしませんし見張っておきます」

 

俺の言葉に桐絵は納得したのか服を入れたビニール袋やタオルを持って岩陰に隠れたので俺は桐絵に背を向けて見張りをする。

 

すると直ぐに桐絵の息の音や水着を外す音が聞こえてきてドキドキするが、絶対に振り向くつもりはない。振り向いて一瞬絶景を見る代わりに信用を失うなんて愚行は絶対にしない。

 

暫くすると音が大分少なくなり、肩を叩かれたので振り向くと私服を着た桐絵がいた。

 

「お待たせ。次は尊が着替えなさい」

 

俺は頷き、服やタオルの入ったビニールを持って岩陰に入り、パパッと拭いて速攻で着替える。男子はこの辺り、色々手間がかかる女子よりも楽だ。

 

「お待たせしました。では旅館に戻りましょう」

 

桐絵にそう言って歩き始めると桐絵は俺の腕に抱きついてくる。チラッと桐絵を見れば恥ずかしそうにしながらも離す気配を見せないので気にしないで歩き出す。

 

「戻ったらどうします?夕食までもう少しありますし、温泉に入りますか?」

 

「温泉は食後で良いわよ。別に無理に目的を探さなくてもノンビリするのも良いじゃない」

 

「そうですね」

 

否定はしない。最近ボーダーでも色々あって疲れているのは事実だし、ゆっくり休息をしたい。

 

俺は桐絵の提案に賛成しながら旅館につながる階段を上って、ようやく旅館に戻る。

 

そしてフロントで鍵を受け取り、自分の部屋に入って伸びをする。割と遊び倒したから疲れた。桐絵がダラダラするなら俺もダラダラしよう。

 

そう思いながら金庫から財布や携帯を取り出し、メールチェックをするが……

 

 

 

 

 

 

 

「あっ……玲ちゃんや柚宇さんから沢山連絡が来てる」

 

桐絵がそう呟く。俺の携帯にも玲と柚宇から数件のメールと数本の電話着信が来ていた。

 

 

 

もしかして桐絵と一緒に旅行に行ってるのがバレちまったか?

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