唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第6話

「よっと」

 

「うおっ!」

 

軽い掛け声と共に振り下ろされる太刀川の弧月。対して俺は横に跳んで回避するも……

 

「くっ!」

 

直ぐに切り上げられる一撃は完全に回避する事が出来ず、腕からトリオンが漏れる。

 

しかし太刀川は一切容赦せず、袈裟斬りを放つ構えを見せてくる。やはり防御に回っていてはいつか負けてしまう。

 

「(まだ反撃のイメージは出来ないが……)アステロイド!」

 

そう判断した俺は適当に威力と弾速と射程を設定したアステロイドを太刀川に放つ。射手スタイルーーーすなわちトリオンキューブを放つ場合、撃つ度に毎回威力と弾速と射程を設定しないといけない。

 

普通は状況に応じて細かい設定をするのだが、太刀川が相手だと細かい設定をする時間すら惜しく、適当に設定するしかない。

 

それに対して太刀川は焦る事なくシールドで防ぐ。これは予想通りだ。こんなんで倒せるなら個人総合1位って肩書きはゴミ屑でしかない。

 

しかし今はそれで良い。大事なのは太刀川は離れる事だから。

 

「グラスホッパー」

 

俺はそう呟いて、足元にジャンプ台トリガーであるグラスホッパーを展開する。そして太刀川から距離を取るべく、グラスホッパーを踏んだ時だった。

 

「旋空弧月」

 

その呟きと共に太刀川の持つ弧月の光が一層輝いたかと思えば、弧月が伸びて、グラスホッパーを踏んだ事によって後ろへ跳び始めた俺の左足を斬り飛ばした。

 

「ちっ……バイパー!アステロイド!」

 

俺は空中で体勢を崩しながらも両手にトリオンキューブを展開してそれぞれ8分割する。

 

そして左手のトリオンキューブーーーバイパーを放ち、一拍置いて右手のキューブーーーアステロイドを放つ。バイパーの軌道はあらかじめイメージしておいた軌道ーーー太刀川を取り囲むようにする軌道で、アステロイドは太刀川の顔面に向かった軌道を描く。

 

こんなんで倒せるとは微塵も思っていないが、少しでも足が止まればまた距離を取れる。

 

そう思っていたが、目の前にいる太刀川は楽しそうに笑い……

 

「グラスホッパー」

 

そう言って足元にグラスホッパーを設置して踏む。すると機動力が上がり、バイパーの攻撃範囲から逃れながらこちらに近づいてくる。

 

そして弧月を振るってアステロイドをぶった斬り……

 

「残念だが……鬼ごっこは終了だ」

 

返す刀で弧月を振り下ろして俺を真っ二つにした。それによって俺は体勢を崩して尻餅をついてしまう。

 

『唯我君ダウン〜』

 

すると国近ののんびりした声が仮想空間に響き渡り、真っ二つになった俺の身体は元に戻る。

 

「よぉし。一旦休憩にするぞ」

 

「了解……」

 

太刀川の言葉に俺は頷きながら仮想空間の壁を見る。そこには俺と太刀川の名前が表示されていて、その下には数字が表記されていた。

 

唯我 2

太刀川 230

 

それは俺達の戦績だが、圧倒的な差があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜、改めて見ると圧倒的な差だな。伸びる気がしない……」

 

「いや、入隊して1ヶ月弱で俺を相手に2回勝てるなら十分だろ」

 

「そうそう。今の唯我君の近接戦の対応力はマスタークラスに近いよ〜?」

 

作戦室のソファーにて、良いとこのどら焼きを食べながら戦績を見てため息を吐くと、太刀川と国近が俺を褒めてくる。ちなみに出水は遊びに行っているらしくここにはいない。

 

「いや、2000回もぶった斬られたり、蜂の巣にされてるのに褒められても微妙ですからね?」

 

今の俺は射手としての基本的な練習に加えて、太刀川と出水を相手取る実戦経験もしているが、その訓練を初めて1週間の間に俺は軽く2000回は負けているだろう。

 

「正確に言うと、2130回だね」

 

あ、予想以上に多かったな。ボコボコにされてるって意味じゃ同じだけど。

 

「まあそれだけやったんなら嫌でも強くなるだろ?って訳で唯我」

 

「はい」

 

「今から個人ランク戦をやって来い。既に俺と出水によって反応速度の向上と反撃する為に必要なイメージの構築はある程度出来るようになってるだろうから、この辺りで今のお前の実力をしっかりと把握しておく必要がある」

 

太刀川はそんな指示を出してくる。言ってることに関しては一理ある。俺は今日まで太刀川と出水とだけしか戦闘(実際は蹂躙だけど)を行ってきた。

 

しかし実力差があり過ぎて殆ど勝っていない。それだけでは俺自身の実力を正確に把握するのは無理なので2人以外の人間と戦うのは正しい。

 

(つまり今日がある意味で唯我尊としてのデビュー戦みたいだな)

 

転生してから俺は派手にデビューする為、実力を隠すべく太刀川隊作戦室以外では一度も訓練していない。

 

しかし師匠の片割れからランク戦をしろとオーダーが出た以上、逆らうつもりはないので、他の隊員からしたら今日が俺のデビュー戦となる。

 

「わかりました。詳しいオーダーは?」

 

「そうだな……先ずは個人ポイント6000以下の相手5人と戦え。本数は任せるが最低5本は勝負しろ。一発勝負だとマグレ勝ちやマグレ負けって可能性もあるからな」

 

だろうな。実際、世の中にはマグレというのは結構ある。俺も何度か勝ち星を挙げたがアレは絶対マグレだし。

 

しかし複数回の勝負ならマグレの連続はそうそう起きないだろうし、正確な実力の把握に役立つだろう。

 

「わかりました」

 

「そんで5人中3人以上に勝ち越せたら、次は個人ポイント6000以上7000以下の相手5人に挑め。それで5人中3人以上に勝ち越せたら次は7000から8000の相手5人だが……まあそこに辿り着くのは難しいだろうな」

 

太刀川は軽く笑いながらそう言ってくる。つまり太刀川の見立てだと俺の実力は、個人ポイントが6000以上7000以下の人間より若干下って所なのだろう。

 

「わかりました。ちなみに負け越した場合は?」

 

「負け越したらワンランク下の相手に挑め」

 

つまり個人ポイント6000以上7000以下の人間5人に負け越したら、6000以下5人に挑む感じか。

 

「って感じだから行ってこい。俺は中間試験の勉強をしないといけないから後は任せた」

 

太刀川はそう言ってカバンからテキストとノートを取り出す。いやいや……稽古をつけてくれるのはありがたいが学業を優先しろや。もしも単位落としまくったら洒落にならないぞ。

 

「わかりました。それと国近先輩。トリガーセットの変更をしたいんですけど良いですか?」

 

俺はトリガーの組み合わせの研究を行う為、基本的に毎日トリガーセットを変えて色々試している。今日も初めて使用するトリガーセットだ。

 

しかし今から行うランク戦は現在の自分自身の実力確かめるもの。だからトリガーセットも今の自分にとって最善の組み合わせにするべきだろう。

 

「ほーい。シールド2つとバッグワームは残しとく?」

 

「お願いします」

 

国近が了承したのでトリガーを渡すと、国近は専用工具を使ってトリガーを開けて、メイントリガーにあるシールドとサブトリガーにあるシールドとバッグワームの3つのトリガーチップだけを残し、残りの5つのトリガーチップを外す。

 

 

 

「それで?必須トリガーの3つを除いて残り5つ、何を入れるのかね?」

 

「とりあえずメインに……と……と……を、サブに……と……をお願いします」

 

「ほ〜い。じゃあ……はい完成」

 

言うなり国近は専用工具を使ってトリガーを閉じて俺に渡してくる。

 

「ありがとうございます。それでは行ってきます」

 

「頑張ってね〜」

 

俺はそんな気の抜けた激励を受けながら、太刀川隊作戦室を出て近くにあるエレベーターに向かう。そしてボーダーから支給された小型端末を起動して個人ランク戦のステージがある場所を検索する。

 

唯我に転生してから今日まで太刀川隊作戦室以外、殆ど足を運んでおらず、それ故に個人ランク戦はやった事がないので場所を知らないのだ。

 

するとエレベーターがやって来たので端末に表示されている階のボタン押す。そしてエレベーターは動き出し、30秒もしないで到着する。

 

ドアが開くと目の前には個人ランク戦ラウンジが目に入る。それを確認した俺はエレベーターから出て、ラウンジに向かう。

 

すると方向から視線を感じ、ヒソヒソ話が生まれる。ヒソヒソ話をしている人間は多分俺、というか唯我尊の存在を認知している人間だろう。

 

(こうなることは予想していたが、いざヒソヒソ話をされると結構嫌な気分になるな……)

 

面倒だし、さっさとブースに入ってランク戦をするか。

 

そう思ってブースに入ろうとした時だった。

 

「ねぇ、ちょっと良いかな?」

 

いきなり声をかけられたので振り向くと、見覚えのない男がニヤニヤ笑いを浮かべていた。

 

(誰だこいつ?俺の知る限りワールドトリガーにこんなキャラは居なかったし、まだ出てきてないキャラか?)

 

ワールドトリガーは割と好きな漫画だからキャラは覚えている。しかし見覚えのない顔って原作では出てきてないのだろう。胸元を見るとBー000と表示されている。確かこのマークは個人であり、チームを組んでない事を意味するんだったっけ?

 

まあそれは良いや。問題はこいつの態度。明らかに俺を見下した態度だ。多分俺を唯我尊であり、『コネで入隊した雑魚』とでも思っているのだろう。

 

とはいえシカトするわけにはいかない。この類の人間はシカトすると面倒だからな。

 

「何だ?」

 

「君だろ?入隊して直ぐに太刀川隊に入った唯我って?暇なら俺とランク戦をやらないかい?B級上がりたてとしてA級1位の実力を知りたいんだ」

 

嘘つけ。単に俺の存在が気に入らないから耳目のある場所でボコしたいんだろうが。バレバレだ。

 

(とはいえここで断ったら逃げたと思われて癪だし受けるか)

 

こいつは今B級上がりたてと言っていたし、多分個人ポイントは6000を下回っているだろう。

 

「……わかった。受けて立つ」

 

俺がそう言うと男は嘲笑を強くしながら頷く。

 

「ありがとう。胸を借りるつもりで戦わせて貰うよ」

 

男はそう言ってブースに向かうので俺もそれに続く。やれやれ、面倒なことになってきたな。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ……?あれって唯我君、だよね?」

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