唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第78話

「すみません桐絵先輩。玲さんと柚宇さんからメールや電話が来てました。ちょっと折り返し連絡するために部屋の外に出ますね」

 

川遊びから戻った俺は携帯に連絡をしてきた玲と柚宇に返事をするべく桐絵にそう話すと、桐絵は難しそうな表情で口を開ける。

 

「(旅行中は私 あたしだけを相手して欲しいけど、尊の性格的にスルーはしないわよね。それに多分バレてるし……)わかった。けど連絡するならここでしなさい。あたしも2人から連絡が来てたし、一遍にやっちゃいましょ」

 

桐絵はそう口にするが、それをやったら3人で口論になりそうだから部屋を出ようとしたのに……

 

とはいえ桐絵の言い分も間違ってないので、ここで遠慮するのは難しい。出来ないとは言わないが、理由の説明を求められたら、「何故そこまで必死に遠慮する?」って怪しまれそうだから却下だ。

 

よって俺は桐絵の提案に反対する選択肢はなかった。

 

「わかりました。では……」

 

俺はスピーカーモードにして柚宇に電話をかける。するとワンコールで電話に出てくる。

 

『もしもし。どうしたのかね尊君』

 

『桐絵ちゃんとの旅行は楽しんでる?』

 

柚宇が電話に出たかと思えば、玲の声も聞こえてくる。どうやら2人は一緒にいたようだ。というか旅行に行ってんのもバレてんのかよ?

 

しかし返事は決まってる。馬鹿正直に答えて鈍感キャラと思われるように動く。

 

「はい。ちょうどさっきまで川遊びをしてましたが、遊んでる際の桐絵先輩が凄く可愛かったです」

 

「ちょっ……」

 

桐絵が真っ赤になって俺を見てくるが、今はスルーする。

 

『……そう。それは楽しそうね』

 

『尊君は本当に誰にでも可愛いって言うよね〜』

 

予想通り、電話から聞こえてくる2人の声は不機嫌丸出しだ。そんな2人に対する返事はすでに頭の中にある。

 

「可愛いと思うから言っただけです。それと玲さん、楽しそうと思うなら今度一緒に旅行に行きませんか?」

 

俺は相手の言葉の裏を読まず、額面通りに受け取って玲にそう返す。それにより桐絵が不機嫌丸出しの表情になる。

 

『良いの?じゃあ冬休みに行きましょう』

 

すると玲の嬉しそうな声が聞こえてくる。可愛いなぁ。

 

「もちろんです」

 

玲の誘いに了承する。これで冬休みの予定も1つ決まったな。

 

『尊君、私も尊君と旅行に行きたいから一緒に行こ?』

 

「あたしも1回じゃ満足出来ないし、夏休み以降にもう1回行くわよ!」

 

ここで柚宇と桐絵が圧のある声で誘いをかけてくるが、2人の発言についても予想通りだ。

 

「でしたら皆で行きませんか?3回行くのは俺が大変ですし、3人と一緒に過ごすのは楽しそうですから」

 

あくまで3人を平等に扱う態度を示す。目標が目標である以上、誰か1人を贔屓するわけにはいかないからな。

 

『む〜、尊君ならそう言うと思ったけど〜』

 

『尊君……』

 

電話から聞こえる2人の声は若干残念そうで、横にいる桐絵も半目で見ている。その事から3人は俺と2人きりで旅行をしたいと考えられるが、この考えは多分間違いではないだろう。

 

「嫌でしたか?」

 

『嫌じゃないけど……まあわかったよ。じゃあ詳しい予定は冬休み直前にね』

 

「わかりました。俺もその時までに3人が満足出来る旅行になるように色々考えておきます」

 

『ええ。私達も各々良い旅行になるように考えるわ』

 

「宜しくお願いします。それではそろそろ切りますね」

 

『うん。あ、それと小南に話したいことがあるからスピーカーモードをやめてから小南に渡して』

 

「わかりました」

 

特に拒否する理由はないのでスピーカーモードをオフにして桐絵に渡す。

 

「もしもし、どうしたの?……はぁ?!そ、そういうのはもっと手順を踏んでからに決まってるじゃない!しないわよ!じゃあまた!」

 

桐絵は真っ赤になって反論してから通話を切り、俺に返してくるが柚宇に何を言われたんだ?しかし聞いたらヤバそうなので聞かないでおこう。

 

「……とりあえず、本来の目的通りに少し休みますか?」

 

「……そうするわ」

 

桐絵は真っ赤になりながらもそう呟き、背もたれのある椅子に腰掛けるので俺も近くの壁に寄りかかり息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(うぅ……柚宇さんの馬鹿……!あんな事を言ってきたら尊の事を意識しちゃうじゃない……!)

 

桐絵は顔に熱を感じながら壁に寄りかかる唯我を見る。頭の中では……

 

ーーー抜け駆けについては私もするから強くは言わないけど……エッチをするのはやめてよね〜ーーー

 

先程柚宇に言われた事が頭から離れずにいた。桐絵も年頃の女子だからそういった知識について興味が無いわけじゃないが、今日恋心を自覚したばかりであるのでああもハッキリと言われたらドキドキしてしまう。

 

桐絵自身、柚宇の忠告に反対するつもりはない。まだ唯我とは付き合ってないし、そういった行為をするのは唯我が賛成しないだろう。

 

(で、でもいつか尊と付き合ったら……)

 

ーーー愛してるよ、桐絵ーーー

 

ーーーあたしも尊を愛してるわーーー

 

(〜〜〜っ!な、何想像してんのあたしは?!)

 

ベッドの上で一糸纏わぬ姿となった自分と唯我が甘え合っている光景を想像した桐絵は首をブンブン振って顔に溜まった熱を消そうとする。

 

(で、でもいつかはそんな未来になって欲しい……)

 

弱い人間が嫌いな桐絵は自分の弱さを第三者に見せるのも嫌いだ。しかし唯我の前では弱気になったり甘えん坊になってしまっているが、そこまで嫌ではないと思っている。

 

その事から自分の抱く恋心は強いもので、先程想像した光景は自分が将来体験したいものであるのは間違いない。

 

そんな唯我はというと、桐絵の気も知らないように壁に寄りかかりながら可愛らしく欠伸をしている。

 

(全く呑気ね……まああたしが振り回したからだけど)

 

桐絵は椅子から立ち上がり、そのまま唯我の横に座り唯我の手を握る。

 

「桐絵先輩……?」

 

「別に手を握るなんていつものことじゃない。気にしないで休みなさい」

 

「はい……ありがとうございます」

 

唯我は礼を言って桐絵の手を握り返す。だったそれだけの事だが桐絵は既に幸せの絶頂にいた。

 

(こうやって隣に座って手を握るだけで幸せを感じるなんて、あたし尊の事を好きになり過ぎでしょ)

 

そう思いながらも桐絵は唯我から離れずに甘え続ける。少しでも玲と柚宇との間にある差を詰める為に。

 

(尊の性格的にまた無自覚で女子との交流を深めているのは厄介ね)

 

桐絵は新たなライバルが増えるかもしれないという嫌な予感に悩みながらも唯我の手を離す事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

玉狛支部にて迅はあらゆる未来を見るが、唯我の作った計画ファイルを見ていると、ある未来を見てしまい焦ってしまう。

 

「どうした迅?」

 

「いや、レイジさんにはなんの影響もないよ。俺ちょっとトイレ」

 

そう言いながらリビングから立ち上がり、トイレに向かうと迅はため息を吐く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く唯我の奴、小南と旅行に行ってるはずなのに……何で旅行が終わったら草壁ちゃんとカフェでお茶する未来が見えるんだろ?アイツ、マジで刺されそうだな」

 

 

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