唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第79話

川遊びを楽しんで疲れた俺と桐絵はお互いに寄り添いながら景色を眺める。特に何もしてないが最近は訓練やランク戦、B級隊員量産計画の考案などが忙しかったので、こうやってリラックスする時間も悪くない。今後は2、3ヶ月に1回旅行に行くことも視野に入れておこう。

 

とはいえ大分日が傾いてきたので、そろそろ動くとしよう。

 

「桐絵先輩。そろそろ夕食に行きませんか?」

 

川ではしゃいだからかそこそこ腹が減っている。時間を見れば夕食を出される時間帯なので食べに行くべきだ。夜遅くに食うと太るからな。

 

「んっ……そうね。じゃあ行きましょ」

 

桐絵は頷いてから手を離すことなく立ち上がろうとするので、俺も手を握ったまま立ち上がり、貴重品を身につけて部屋を出る。

 

廊下を歩くと浴衣を着て身体から湯気を出す客もいる。どうやら飯前に温泉に入ってきたのだろう。俺も温泉は好きだが、酒が飲めないのは残念極まりない。

 

食堂に入ると何人かの客がいて和食を食べている。俺達も入り口にいる受付に話しかけると番号の書かれた紙を渡され、好きな場所に座れと言われるので適当な席に座る。

 

そして席に着くと、ズボンのポケットから携帯が落ちたので拾おうとしたら、落ちた際に電源ボタンに触れたようで画面が表示されることに気づくが……

 

(トークアプリで迅からメッセージ……お前、草壁ちゃんといつから仲良くなった?、だと?)

 

意味がわからない。草壁と会った事は数回だけ。弓場の弟子で俺の兄弟子の里見とは会えば話すが、里見が所属する隊の草壁隊隊長の草壁とは里見繋がりで軽く挨拶をするくらいだ。

 

会えば軽く会釈や挨拶をする程度なら仲が良いとは言わないのは明白。そうなると迅は俺が草壁と仲良くしてる未来が見えたってことか?

 

「どうしたの尊?携帯壊れたの?」

 

頭に疑問符を浮かべていると桐絵が話しかけてくる。確かに長時間屈む体勢をとっていたら怪しまれるな。

 

「いえ。ちょっと通知が多く来てただけです」

 

適当に返しながら身体を起こして料理を待つ。しかし草壁と接点があるって情報はありがたい。

 

草壁は見た目や雰囲気から木虎に近いイメージがあるので交流を深めるのは難しいと思っていたが、仲良くなる未来があるならその未来に向かってみるとしよう。

 

そこまで考えていると料理が運ばれてくる。料理は炊き込みご飯に刺身に天麩羅、筑前煮や味噌汁とザ・和食といった料理だ。自宅では洋食が多く、ボーダー基地ではカレーやラーメン、炒飯が多いので純和食は久しぶりに食べるだろう。これに焼酎があれば文句はないんだがな……

 

そう思いながらも出された海老の天麩羅を食べるが中々美味い。衣はサクサクで海老の味もしっかりしている。ツユが無くてもいけるな。

 

と、目の前にいる桐絵も美味そうに食べているが、小さい口がパクパク開いて可愛らしく、いじめたい気持ちが生まれてくる。

 

「桐絵先輩」

 

「ん?何よ?」

 

桐絵が俺をみる中、筑前煮の中にある人参を箸で掴み、桐絵に突きつける。

 

「どうぞ、あーん」

 

すると桐絵はポカンとした表情を浮かべるも、直ぐに茹で蛸のように真っ赤になる。

 

「なっ?!い、いきなり何してんのよ?!」

 

予想通りの反応だ。益々いじめたくなるな。

 

「すみません。小さい口でパクパク食べる桐絵先輩が可愛くて、ついやってしまいました」

 

「か、かわっ……!というか子供扱い?!」

 

そう言いながらも嫌そうな雰囲気はないが、嫌そうな雰囲気と認識したフリをしよう。

 

「すみませんでした。桐絵先輩からしたら不快ですよね。もうしないって約束するんで嫌わないでください……」

 

「あっ……ち、違うわよ!驚いただけで嫌なんかじゃないわ!それにそんな事で尊を嫌わないわ!」

 

桐絵は慌ててそんな事を言ってくる。しかしもう少し攻めたい。

 

「……本当ですか?桐絵先輩が優しいのは知ってますが、嫌なら嫌と言ってください」

 

「本当よ、嘘なんかじゃないわ。あたしは尊の事が好き……って!あくまで後輩としてよ!本当の本当だから!」

 

桐絵は序盤は切なそうな声でそう告白するも、すぐに後輩としてを強調する。これについては本当に恋愛感情がないのか、桐絵が素直じゃないからか、第三者が見ているから誤魔化したのか、判断がつきにくい。

 

「とにかく!驚いただけで嫌じゃないから食べさせて!」

 

桐絵は小さい口を開けて受け入れ態勢になる。そんな桐絵に対して俺は再度人参を突き付けて桐絵の口の中に入れる。

 

「んっ……ありがとう尊。お返しよ、あーん」

 

桐絵は刺身を箸で掴み俺に突き付けてくるので遠慮なく口にする。

 

「んっ、美味しいです。桐絵先輩、あーん」

 

再度桐絵にあーんしたくなった俺は天麩羅を箸で切り、桐絵に突きつける。

 

「あーん」

 

桐絵は口を開けて天麩羅をモグモグする。小動物みたいで可愛いなぁ。

 

結局俺は桐絵からも再度あーんされたが、自分で食った場合よりも数段美味かったような気がしたのだった。

 

 

 

 

 

 

数十分後……

 

夕食を済ませた俺達は部屋に戻り、テレビを見る。今は腹一杯だから部屋で休んでいるが暫くしたら風呂に入る予定だ。

 

(風呂に入ったら疲れを取り、上がったらコーヒー牛乳を飲んで、浴衣を着た湯上がり状態の桐絵を見て卓球をしたいものだ)

 

酒やタバコを楽しめないのは痛いがまあ仕方ない。未成年じゃなかったら桐絵に酌して貰いたかったんだがな……

 

そう思いながらも暫くテレビを見るが、見ていた番組が終わってキリが良くなった。

 

(大分腹も満腹じゃ無くなったしそろそろ行くか)

 

俺は一度伸びをしてから桐絵に話しかける。

 

「桐絵先輩、俺はそろそろ風呂に行く予定ですが桐絵先輩はどうしますか?」

 

「あっ……うん、そうね……」

 

しかし桐絵はどうにも歯切れが良くない。もしかしてまだ腹が一杯だから入りたくないのか?

 

「体調が悪いなら無理しないで休んでください」

 

「そうじゃなくて……えっと……」

 

桐絵は真っ赤になってしどろもどろな返事しかしない。まさか熱でもあるのか?

 

すると……

 

 

 

 

 

「その……尊が嫌じゃないなら、部屋に備え付けられてる温泉に一緒に入らない?!」

 

意を決したようにそんな提案をしてきた。予想外の誘いに思わず桐絵を見ると桐絵は真っ赤になりながらも話しかける。

 

「その……折角の旅行だから、尊と同じ景色を一緒に見たいし……やっぱ昼に助けられた借りとして背中を流すわ……」

 

素直になった桐絵はそう言ってから上目遣いで俺を見てくる。お風呂イベントは待ち望んでいた事もあるので当然逆らうつもりはない。

 

しかしがっつくと怪しまれるから確認を取っておく。

 

「本当にいいんですか?俺は貸し借りなんて気にしないんで、桐絵先輩が少しでも無理と思いなら無理しないでください」

 

「無理なんて思ってないわ。それに……尊と入りたいから」

 

恥ずかしそうに自分の欲求を口にする桐絵。これ以上食い下がるのはらしくないし、乗るとしよう。

 

「わかりました。桐絵先輩が望むなら俺はその期待に応えます」

 

「ありがと……じゃあ早速行きましょ?」

 

桐絵は艶のある眼差しを向けながら俺に手を差し伸べるので俺は桐絵の手を握り、了解の合図をする。

 

「はい。行きましょうか」

 

俺は桐絵と手を繋いだまま脱衣所に向かうのだった。今から楽しみで仕方ない、よな……

 

まあ折角だし、温泉や桐絵の艶姿を見て楽しむとするのは絶対だな。

 

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