唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

84 / 132
第82話

部屋で伸びをしていると脱衣所の方から音が聞こえてきた。どうやら桐絵が温泉から出てきたようだ。

 

俺が脱衣所を出てから5分くらいしか経ってないので温泉には浸からず、シャワーと例の行為だけで済ませたのだろう。

 

そう判断したオレは身体を起こし、再度脱衣所に入る。中には裸の桐絵がいた。

 

「あ、桐絵先輩。お風呂に行ってたんですか?散歩してると思いました」

 

俺はあたかも今起きたばかりのように桐絵に話しかける。

 

「あっ……うん。尊もお風呂?」

 

一方の桐絵は恥ずかしそうに挨拶をしてくるが、そこについては指摘しない。

 

「はい。それにしても入るなら俺も起こして欲しかったですよ」

 

「ご、ごめん。気持ち良さそうに寝てたから」

 

「なら仕方ないですね」

 

言いながら俺は桐絵と向かい合う。

 

「改めてまして。おはようございます桐絵先輩」

 

そう言うと桐絵は目をパチクリするが、直ぐに笑顔に変わる。

 

「ええ!おはよう尊!」

 

その天真爛漫な笑顔を見るだけで今日も頑張れる気がする。というか結婚したら毎日見れるってことだよな?

 

そんな事を考えていると桐絵はモジモジしながら髪を動かして額を露わにして物欲しそうに見てくる。この仕草は寝る前にも見たな。

 

俺は桐絵に近寄り、桐絵の額に優しくキスをする。すると桐絵は案の定嬉しそうに口元をゆるゆるに緩ませる。そして俺の額にもキスをしてくる。

 

「んっ……えへへ……尊のキスのおかげで気分が良いわ」

 

桐絵はそう言ってくるが、俺も似たような気分だ。今のおはようのキスのおかげで元々良かった気分が更に良くなった自覚がある。

 

俺は桐絵が横で着替える中、そのまま衣類を全て脱ぎ捨てて温泉に入り、シャワーで汗を流し始める。

 

(しかしここで桐絵があんな行為をするとはな……)

 

しかも俺をネタにしながら。正直言ってメチャクチャ嬉しい。まあいつか妄想ではなく現実にするつもりだ。

 

その時まで色々手を打つ必要があるな。下手な手を打ってNice boatされたくないからな。まあ迅によれば刺される未来がないのは安心だが、未来は無限に広がる以上油断は出来ない。

 

俺は内心にてそう考えながらもシャワーで汗を流し、身体を洗い終えると温泉に浸からず、脱衣所に戻る。

 

そして身体を拭いてから持ち込んだ下着と私服を着て部屋に戻る。部屋では桐絵がテレビでニュースを見ているが、俺を見ると驚きの表情を浮かべる。

 

「もう出たの?早くない?」

 

「汗を流しただけですから。俺としては桐絵先輩を待たせるのを悪いと思いましたし、温泉に浸かる時間より桐絵先輩と過ごす時間が魅力的ですから」

 

「ふ〜ん。そんなにあたしと過ごす時間が好きなのね、しょうがない後輩ね」

 

そう言って俺の頭を撫でる桐絵だが、口元はゆるゆるで嬉しいと思っているのは馬鹿でもわかる。

 

しかしそれを口にするつもりはない。

 

「ふふ〜ん」

 

何せ今現在、桐絵はこの上なく幸せそうに笑っているのだから。この笑顔を消すのは悪手だ。

 

それから俺は桐絵の気が済むまで頭を撫でられ続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後……

 

「では桐絵先輩。忘れ物はありませんか?」

 

朝食を済ませ、辺りを散歩した俺達は帰りの支度を済ませた。チェックアウトの時間までそこまで余裕があるわけではない。

 

「大丈夫よ、尊は?」

 

「確認済みです。では行きましょうか」

 

「うん!」

 

桐絵は手を繋いでくるのでいつものように握り返してから部屋を出て鍵をかける。

 

フロントでチェックアウトを済ませ、旅館の外に出ると丁度良いタイミングでバスがやって来る。狙ったわけじゃないがラッキーだな。

 

バスが停車したので乗り込み、適当な席に座るとすぐに発車する。

 

「尊、今回はありがとね」

 

バスが険しい山道を下っていると桐絵がお礼を言ってくる。

 

「こちらこそ旅行に誘っていただきありがとうございます。俺も良い気分転換になりました」

 

桐絵と川遊びをしたり、桐絵とお風呂に入ったり、桐絵と一緒の布団で寝たりと桐絵のフルコースを満喫出来たのだ。最高の旅行であることは否定しない。

 

しかし冬休みは更なる高みにある旅行を満喫できる可能性がある。桐絵1人でも最高の旅行だったのに、玲と柚宇も参加するからな。3人とお風呂にでも入ったら嬉しさで昇天するかもしれないな。

 

「桐絵先輩はどうですか?俺が一緒で退屈じゃありませんでしたか?」

 

「そんな事ないわよ!川遊びした時もお風呂に入った時も一緒に寝た時も凄く幸せだったわ。朝風呂の時もつい尊の事を考えって!なんでもないわ!今聞いたことは忘れなさい!」

 

ここで桐絵は真っ赤になって俺に詰め寄ってくる。そんな桐絵には鬼気迫るという言葉がよく似合っていると思う。

 

「わ、わかりました」

 

俺はあたかも知らないフリをして頷く。まあ内容は予想できるがあからさまな地雷源に踏み込むほど俺は馬鹿じゃない。

 

「なら良いわ。とにかく尊と過ごした時間は幸せだった。これについては嘘じゃないわ」

 

桐絵は話を切り替えてくる。なら俺も乗るとしよう。

 

「なら良かったです。桐絵先輩が幸せならそれだけで旅行に行った甲斐があります」

 

「ふぇっ?!」

 

言いながら桐絵をそっと抱きしめると桐絵は慌てるが、離すつもりはない。桐絵を俺色に染めるにはガンガン攻めるしかないな。

 

「もう尊ったら、本当に甘えん坊なんだから」

 

桐絵はそう言って抱き返しているが、甘えん坊レベルならお前の方が上だからな?まあレベル上げをしたのは俺だけど。

 

何にせよ桐絵の甘えん坊レベルが上がったので何よりだ。予定としては高校に上がるまでに桐絵と玲と柚宇の甘えん坊レベルをMAXに、そして今後接点が生まれる女子を甘えん坊にしたい。

 

俺はそう決意しながら桐絵を抱きしめて、思い切り甘やかすのであった。

 

 

 

 

 

 

2時間後……

 

「やっと三門市に帰ってきたわね!」

 

桐絵が電車から降りてから伸びをして、その最中に離れた場所にあるボーダー本部を見る。確かにボーダー本部を見ると三門市に帰ってきたのを実感できるな。

 

そして俺達はホームから改札に向かい、改札を出る。ここで解散するのも悪くないが……

 

「送りますよ」

 

「え?そんな気を遣わなくて良いわ」

 

「俺としては少しでも長く桐絵先輩と居たいんです」

 

「んなっ?!」

 

真剣な表情を浮かべ桐絵にそう言うと案の定桐絵は真っ赤になって慌て出す。

 

「もちろん桐絵先輩が嫌ならここで解散しましょう」

 

「い、嫌じゃないわ!あ、あたしももっと、もっと尊と一緒に居たいわ」

 

桐絵は恥ずかしそうにしながらハッキリと口にする。やっぱり嫌なら無理強いはしないと言えば桐絵は素直になるな。

 

「ありがとうございます。では行きましょうか」

 

俺は桐絵の手を握って歩き出す。そして桐絵は俺に追いつくので桐絵の歩幅に合わせて歩く。

 

それから20分くらい歩くと桐絵が服を引っ張り一軒家を指差すのでアレが桐絵の家だろう。

 

「では名残惜しいですがお別れですね。本部に来るときには連絡をお願いします。また個人ランク戦をしましょう」

 

「わかったわ……あ、最後に良いかしら?」

 

「あ、はい。なんですか……っ!?」

 

「んんっ……」

 

桐絵に返事をした瞬間、桐絵の可愛らしい顔が目の前にあり、俺の唇に柔らかな感触……桐絵の唇の柔らかさが伝わってきた。

 

「そ、その……楽しい旅行にしてくれたお、お礼だからっ……!それだけだからっ!」

 

しばらくして唇を離すと、桐絵は早口になりながらそう伝えて足早に自宅の中へ入る。その際に少しだけ見えた彼女の顔は真っ赤に染まっていた。

 

「ったく、最後に爆弾を落としやがって……」

 

俺はというと顔に熱が溜まるのを自覚しながらそう呟くことしか出来なかった。

 

こうして俺と桐絵の旅行は俺のファーストキスを失う形で幕を下ろすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……尊が起きてる時にキスしちゃった……ま、まあこれなら玲ちゃんと柚宇さんに対してリードを……いや、2人が尊にキスしたら……ううん!絶対負けないんだからっ!」

 

ベッドで悶える桐絵だが、この時の彼女は知らなかった。

 

ライバルが沢山増える事、そしてそのライバルの内何人かはとある事件により自分よりも遥かに積極的にアピールするという事を。

ヒロインは何人まで希望?4人は確定

  • 4人
  • 5人
  • 6人
  • 7人
  • 10人以上

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。