唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ! 作:ユンケ
8月8日
俺はいつものように太刀川隊作戦室に向かうべく、廊下を歩きエレベーターの前で待機する。
既に自分の考案した計画書は完成してコピーもしてあるので、後は草壁の考案した計画書を待つだけだ。
そんな訳で今は特に忙しい仕事はないが、第三者に記録を見られない作戦室で戦術の考案に挑戦するつもりだ。太刀川や出水に比べて才能がない以上、戦術と鍛錬でその差を埋めるしかない。
そして機動力に関する戦術を編み出したら草壁に気に入られる為に余す事なく教えるつもりだ。既に協力関係を築いたので、それを理由に教えれば怪しまれずに済むだろうからな。
そう思いながらエレベーターを待っているとドアが開いたので、中に入るとそこには柚宇がいた。
「お〜、尊君。作戦室に行くのかね?」
「そんなところです。トリガー戦術の訓練をするつもりなんですが、付き合って貰えますか」
言うなり俺に抱きつくので俺は左手で抱きしめながら太刀川隊の作戦室がある階のボタンを押そうとしたが、既に柚宇に押されていたようで光ってたので閉のボタンを押す。
「良いよ〜。それと尊君。前に言ってた遊びに行く約束なんだけど、10日は空いてる?」
そういや夏休みには柚宇や玲と遊びに行く約束をしていたな。俺としては柚宇と遊びに行くのは楽しみであるが……
「すみません柚宇さん。その日はどうしても外せない用事があるんで無理です。13日、15日、16日のどれかじゃダメですか?」
既に予定が入っているので無理だ。自分だけの用事ならともかく自分以外も絡んでいる以上、違う日にして貰いたい。
「じゃあ16日でお願い」
「了解しました。詳しい時間は12、13あたりに決めましょう」
「ほ〜い」
柚宇が頷くと同時にエレベーターのドアが開いたので抱擁を解いて歩き出そうとしたら……
「お〜、草壁ちゃんお疲れ〜」
エレベーターの外には草壁がいた。向こうも俺達に気付いたのか会釈をする。
「お疲れ様です。それと唯我先輩、もう完成したから唯我先輩のパソコンに送ったわ」
草壁の言葉に柚宇は不思議そうな眼差しで俺を見てくる。多分俺と草壁の関係性に疑問に思っているのだろう。
「早いな。後で確認しとく」
「ええ。10日は楽しみにしてるから」
草壁はそう言ってエレベーターに乗るが、ドアが閉まったタイミングで肩に重みを感じたので横を見れば……
「へ〜、どうしても外せない用事って草壁ちゃんと過ごすからか〜。いつのまに仲良くなったんだね〜」
柚宇が満面の笑みを浮かべながらドス黒いオーラを生み出していた。ハッキリ言おう、メチャクチャ怖い、
「ちゃ、ちゃうんです……」
俺は柚宇のオーラに逆らうことが出来なかった。年齢は実質柚宇よりもあるというのに勝てる気がしなかったのだった。
「って、事があったんですよ」
「なるほどね。そんな事があったんだ〜、変な邪推してごめんね」
太刀川隊作戦室にて俺は草壁との間に何があったかを全て話す。正直に話した結果、柚宇はドス黒いオーラを消して謝罪してくる。とりあえず命拾いはしたな。
「それにしても尊君はそんな凄い計画を立ててたんだね」
柚宇はそう言ってくる。計画を立てた理由は前世で原作を読んでいた為被害を減らすからだが、この世界でそんな事を言えないので言い訳は考えている。
「はい。自分の立場からして、何らかの対策を取るべきと思いましたから」
「?ボーダー隊員だからって事?」
「いえ。スポンサー会社の社長の息子だからです。柚宇さんもご存知だと思いますが、父の会社はボーダーにおける最大のスポンサーです」
「もちろん知ってるよ〜。唯我グループがボーダーと提携している事を公表して勢いに乗ってるからね」
柚宇の言う通り、唯我グループはボーダーと提携している事を世間に公表している。ボーダーに否定的な人間がいるのは事実だが、ボーダーは若者からはヒーロー的扱いで人気組織である。
そんな組織と提携している事が世間に知られたら、ボーダーのファンは唯我グループに属する店などに興味を持ち、若者達から支持を得ている。
一方ボーダーからしてもメリットがある。唯我グループと組んでいるという事実はネームバリューになるからだ。
唯我グループは日本でもかなり大きいグループで、そんなグループがボーダーのスポンサーになっている以上、他の会社もボーダーとの繋がりを求めていて、ボーダーからしたら資金源が増える。
よって唯我グループもボーダーも提携する事で利益を生み出しているが……
「しかし大規模侵攻で大量の死者が出たらどうなると思います?ボーダーの評価は地に落ちますし、ボーダー最大のスポンサーのウチの会社にも飛び火するでしょう」
もちろんボーダーに比べたらマシだと思うが、間違いなくダメージはあるはずだ。そこがボーダー最大のスポンサーとしてのデメリットだ。
「なるほどね。唯我グループの御曹司の尊君からしたら、市民から犠牲者を出さないようにするべきって思うね」
「はい。ですからボーダーの情勢について調べ、改善案などをピックアップしたんです」
そう締めくくると柚宇は納得してくれた。これについては発表の際に聞く人間に計画を立てた理由を聞かれたらそう答えるつもりだ。
実際言っていることは間違ってないし、少なくとも「俺は別世界からやって来て、この世界は前世に存在した漫画の中であり大規模侵攻が起こる場面があった」と戯言を吐くよりは遥かにマシだ。というかそんなことを言ったら精神病院に入院させられそうだ。
「そっかぁ〜、尊君は偉いねぇ〜」
柚宇はそう言いながら俺を抱き寄せて頭を撫で撫でする。顔に伝わる柚宇の胸の柔らかさと頭に伝わる優しい手つきからはバブみを感じる。
いや、バブみって年下の女に対して男が「赤ちゃんのように甘えたい」という感情を表現した言葉だったし、違うな。なんにせよ母性を感じるのは間違いない。
「よしよし、頑張った尊君には何かご褒美をあげよう。何か欲しいものはあるかね?」
正直ママって言って甘えたい気持ちはあるが、それをやったらヤバい。多分柚宇あたりならノリノリで付き合ってくれるかもしれないが、万が一太刀川にバレたらボーダー全体に広がって、ボーダーを辞める事態になるかもしれない。まあ柚宇は作戦室にセンサーを付けているので大丈夫と思うが。
「いえ。まだ何も結果は出してないのでご褒美を受け取る資格はありません。強いて言うならオペレーターの育成の方を手伝ってくれませんか?」
よって特に要求しない。そもそも目先の利益に釣られて本命を見逃したら意味ないからな。
「そっか〜、うん、わかった。尊君がそう言うなら私も手伝うよ。けど、頑張ったらいい子いい子して欲しいな〜」
「俺は歳下ですけど?」
「私は気にしないよ〜、尊君に甘えたいんだけど駄目、かな〜?」
柚宇は上目遣いでそんな事を言ってくるが……
「駄目なんかじゃありません。俺で良ければいい子いい子しますのでいくらでも甘えてください」
返答は決まっている。いくらでも甘やかすし、最終的には俺の存在を必要不可欠ってレベルにするつもりだ。
俺は柚宇に対して優しく笑うのだった。
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