唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第94話

「ふぅ、とりあえずポスターの文はこれで良いか」

 

8月15日、俺は自宅でパソコンを操作しながら息を吐く。

 

現在俺はB級隊員量産計画における宣伝用ポスターの制作をしている。

 

まだ予算における対策案が思い浮かばないので上層部に報告してないが、実行の際に備えて下準備をしている。

 

理由としては9月の正式入隊日まで余裕があるわけではないから可決されてから動いたんじゃ間に合わないことに加えて、既に協力者の中には武器トリガーにおける教本を作り始めているからだ。

 

協力者が動いてるのに統括担当が動かないなんて論外でしかない。

 

よって予算の対策案を考えながら今出来ることを進めているのだ。

 

今やってるのはポスターの制作だ。理由として正隊員はボーダーから端末やタブレットが支給されるが、訓練生には支給されないのでポスターをボーダー基地に大量に貼り付ける必要がある。

 

「後はイラストなどを付けたいが、コイツはオペレーターに任せるか」

 

俺はイラストとか得意じゃないからな。

 

しかし肝心の予算の対策案が浮かばない。正直言って以前草壁と話した「やる気のない雑魚を切り捨てて、没収したトリガーを使い回す」のは今のボーダーにはリスクがデカイから無理。

 

実家の親父に頼むのは無理。実績が出た後ならまだしも、実績が出てないのに融資額を増やすのは厳しい。俺が頼めば可能かもしれないが、つい最近一人暮らしをする為に「自立したいから可能な限り頼らない」って言っちまったからなぁ。

 

そうなると夜間のボーダー基地の電気の節約とかぐらいしか思いつかん。唐沢なら金集めが上手いかもしれないが、それにしてもこっちがある程度考えてないと動かせないだろう。

 

(というかC級が多過ぎるだろ)

 

今でも300人近くいて、原作開始時点では400人以上いるが多過ぎる。

 

一方正隊員は今は80人前後で、原作開始時点では100人ちょっとだ。

 

つまり1年で20人近くの正隊員が生まれ、100人以上訓練生が増えるのだ。

 

しかも原作だとアフトクラトルが攻めて以降、修の記者会見の影響で更に入隊希望者が増えているし、いずれボーダーのランクのピラミッドは1番下がぶっちぎりの大きさになる……ん?

 

(待てよ、よく考えたらあるじゃねぇか)

 

予算を増やすのは実績を出してからだが、無駄を省く方法としては良い手があった。

 

俺は早速草壁にメールをしてみる。すると直ぐにメールが返ってきて、草壁は賛成の意を表明していた。実際このやり方はリスクが少ないし賛成するだろう。

 

そうと決まれば早速上層部とコンタクトを取る必要があるな。俺は携帯を取り出して本部長に連絡をする。以前太刀川が問題を起こしたら連絡しろと教えて貰った。

 

「もしもし、忍田本部長ですか?」

 

『ああ私だ。私に電話するということ慶がまた何かやらかしたのか?』

 

真っ先に太刀川の名前が出るあたり、戦闘以外では一切信用されてないようだ。

 

「太刀川さんは関係ありません。実は上層部に少々話したいことがあるのですが」

 

『上層部?城戸さんとかにもか?』

 

「はい。以前武富桜子がやったようにプレゼンをしたいことがありまして16日以降で予約出来ますか?」

 

16日は柚宇とデートの約束があるからな。

 

『……なるほどな。話はわかったが、唐沢さんは今県外に交渉に行っていて17日の夜まで帰ってこないから、今日から17日までは無理になるが大丈夫か?』

 

「大丈夫です」

 

唐沢は金集めが得意だから居て貰わないと困るしな。

 

『わかった。後で他のメンバーにも予定を聞いてみるが、空いている時間があればまた連絡する』

 

「宜しくお願いします」

 

本部長への連絡を済ませた俺は向こうが通話を切ってから、次に柚宇に連絡をする。

 

『もしもし?どうしたのかね尊君?明日のデートの集合時間について?』

 

「はい。柚宇さんは何時頃がいいですか?」

 

『………』

 

あれ?返事がない?

 

「あの、柚宇さん?」

 

『……呼び捨て』

 

そういや2人きりの時はタメ口や呼び捨てにしろって言われていたな。

 

「悪かったよ、柚宇」

 

『えへへ〜、良いよ〜。それで集合時間なんだけど……じゃあ明日の9時半に三門駅前西口でどう?』

 

柚宇は笑いながらそう言ってくるが可愛い声だ。

 

「わかった。明日は楽しみにしてるからな」

 

『うん。私も楽しみ〜』

 

柚宇の声には喜の色が混じっているのがわかる。柚宇についても明日のデートで甘えん坊レベルを数段上げたいのが本音だ。

 

それから暫く雑談をした俺は通話を切り、先程思いついた予算の対策案をデータに打ち込んでから、完成したデータを草壁に送る。

 

(了承を得たら、訓練室の使用頻度を調べたり、必要なら新しいトレーニングプログラムの手配をしないといけないし……なんかこの世界でも社畜になってないか?)

 

まあ前世の職場に比べたら遥かに楽だし、実力主義の組織なので結果を出せば認められるから全然苦じゃない。

 

それに比べて前世の職場は残業が月に120時間なんてのは当たり前で、ミスをすれば怒鳴り散らされ、手当は付かず仕事が一段落ついたかと思えば、褒められることなく次の仕事を渡されていたからな。

 

(つか転生できるって事がわかってるならあのクソ上司を殺しときゃ良かったな)

 

何回か本気で殺そうと思っていたが、こうなる事をわかっていれば絶対に殺しただろう。

 

そんな事を考えながら俺はパソコンをカタカタと操作するが前世と違ってキーボードの音は煩わしくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ〜ん、尊君とのデート、楽しみだなぁ」

 

柚宇は鼻歌を歌いながら唯我とのデートを考える。表情はまさに幸せ一色だった。

 

「明日は新しいゲームと漫画の開拓に協力して貰って、ゲームセンターで遊んで……下着を選んで貰おうかな〜」

 

柚宇は鏡に映る自分の胸を見る。柚宇の胸は高校2年生にしては発育が良くクラスメイトの加賀美や今からは嫉妬の眼差しを向けられ、男子からは卑猥な眼差しで見られる事もあり、自分の胸の発育の良さを嫌っている。

 

(尊君が大きい胸を好きなら嫌いにならないかもしれないけどね〜)

 

自分の好きな男は自分に対して卑猥な眼差しを向けてこないが(唯我本人が欲望を出さないようにしているだけ)、仮に大きい胸が好きなら自分の胸も気に入ってくれるかもしれないと考えることもある。

 

「まあ尊君は胸で人を判断しないか……けど、ちょっと攻めてみよっか」

 

柚宇はため息を吐いてそう呟く。現時点でライバルは桐絵と玲と2人いるが、最近唯我は草壁と交流を深めている。

 

交流している理由や草壁の性格を考えるとライバルになる可能性は低いが絶対ではないので、柚宇は今回のデートで少し攻めるつもりであった。

 

「デートの最後に楽しませてくれたお礼って事で……き、キスとかしてみたり……うぅ〜」

 

唯我とキスをする場面を想像した柚宇は真っ赤になって俯いてしまう。自分の願望を明確に思い浮かべるだけで恥ずかしくなってしまう。

 

 

「と、とにかく……明日は積極的に行かないと」

 

柚宇はベッドに寝転がり、明日のデートに対するシュミレーションをするが、キスをする場面を想像する度に、思考が止まってしまうのであった。

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