学年ワーストのギャルが騎士道で成り上がる英雄譚   作:TT_お休み中

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#2 #初投稿 #フラペうまー #桐原はヤバい

「って、カンジでさ~! 勝っちゃったんだよね、ユリちゃんに!」

「……キサラ、イッキ病にやられたんじゃない?」

 

「はぁ!?」

 

 折木を破り、無事に使用試験をクリアしたものの……七星剣武祭への選抜戦を放棄していたキサラは一ギャラリーとして試合の数々を見届ける事となった。

 

「まー。キサラか桐原が居れば、ちょっとはココの雰囲気も良くなったカモ」

「あたしに言わないでよ、言うなら過去のあたしに言って」

 

 上級生と下級生のみとなった代表選抜選手達に、一部の二年生達は不満に包まれていた。「俺ら居ねーじゃん」「全滅かよ」募る募る地獄のような雰囲気。

 

「何か最悪だね。ここ」

「桐原来ないし、来ても結末は想像したくないケド――」

 

 二人の言葉を遮るようにクラスメイトの男子はヤケッパチに言った「アイツは二年(俺達)に泥を塗ったんだ」――キサラはその言葉に噛み付いた。

 

「それ、違うくない?」

「あぁ?」

「"ぱーふぇくと・びじょん"でヤられるまで、みんなは桐原の事応援してたのに……負けたら掌返すってさ。フィールドに立った事も無いヤツが言うコトバじゃ無くない?」

 

「なんだよ、現代剣に頼ってるバカ女が偉そうに言うじゃねぇか」

 

「ヤメときな? ココで桐原対黒鉄の再放送やっちゃう?」

「んだとオラァ!!」

 

 一触即発になるも、周りのクラスメイト総出で宥め、その場は落ち着いた。

 友人を始めとし、他の男子からも釘を刺された。この澱んだ雰囲気を刺激しない様に。

 

「大道。イキるのはいいけど、みんな鬱憤が溜まってんだ……あんまケンカ売るようなマネは勧めねーぞ」

「分かってるって。一番鬱憤が溜まってたのはあたし!」

 

 呆れる男子であったが、自らのスマートフォンにある映像を映し出した。

 

「この大会。裏七星剣武祭とか言われてんだけど、刀剣のルールも無いんだ。興味あったら参加すればいいと思うぜ」

 

 大会名は『無法地帯(ノー・ホールズ・バード)』その名の通り、身分、霊装、ランクは無礼講。選抜はシャッフルで決められ、学校を代表することも無い個人戦。危なげな魅力に惹かれる。

 

 だが、指定大会以外の出場は理事長への許諾が必要であった。その足で頼もう、理事長へ。

 

○●○●○

 

「ダメってどういうコト!?」

「学園側では許可出来ない。安全上の問題が保証出来ない以上、生徒を出場する事は出来ない」

 

 理事長の神宮寺黒乃は頑なであった。ごもっともであり、反論の余地も無い。

 

「自分の身は自分で守るって!」

「否、それは認められん。君は破軍学園の生徒だ――責任を取るのはどちらだ?」

 

 大改革を行った彼女を持ってしてでも、無法地帯へ放り込む事には抵抗がある。負ければ学園のイメージ以上にキサラ自身の生命の危機がある。教育者としても伐刀者としても、ソレを肯定する事は出来ない。

 

「大道君。君が現代剣を使用している事も理解している。今回の改革も、君達の騎士道を肯定する為の存在だ。今回は理解してくれ」

 

「……黙って口咥えてろっての?」

「指咥えてろ、だよ。キサラ」

「分かってるって! ……こういう風に、あたしは戦いしか出来ないの。敬語だって全然使えないし!」

 

「そうか、礼儀作法を学ぶ事から始めても遅くはないな。話は以上だ」

 

 問答を切り上げ、話は終了。理事長直々の禁止命令。やはり、夢を持つ事は認められないのか。廊下を歩くと、彼女へ投げかけられる声の数々。「大会すら出られないって可哀想だよね」

 

「同情するなら対応する剣か刀をくれっての」

「んじゃさ、許可を出すように動けば良いんじゃない?」

「動くったって、どうすりゃいいの」

 

「なんでも、学園を通さなくたって。広い目線に訴えかければ許可は得られるんじゃない?」

 

 学園から許可が出ない。ならば、現代文明の恩恵を受けよう。友人の手元で震えるスマホ。大衆を動かす剣が、そこにはあった。

 

○●○●○

 

 腕自慢が集う『タフマン・コンテスト』に二人の姿はあった。――企みはこうである。友人に撮影してもらい、自らの腕を全世界に公開する。中世には無いであろうソーシャル・メディアとのタッグ。白鳩もビックリなイマドキ発想。

 

「ってかー。あれとかいいんじゃね? やっちゃう?」

「良いじゃん良いじゃん!」

 

 大剣を肩に担ぎ、辺りを睨み付ける。撮れ高豊富なガチムチンピラ。キサラ曰く「よくアニメの一話で居そうなヤツ」――だが、挑むとなると少し及び腰になってしまう。

 

「えーっと。あたし達JKやってるんデスケドー……良かったらお相手して――」

「ガキのアマが何の様だ?」

 

「破軍です! 破軍の二年やってまーす……えっへへ!」

 

 気付けば『Let's Go Ahead(試合開始)』――大剣でフィールドの彼方へとすっ飛んでしまった。相手は大柄で横柄。ファイトスタイルも似たような物。

 

「あっちゃー……キサラ吹っ飛ばされてんし」

「なんだァ? 破軍ってのは雑魚しか取り扱ってねぇのかアァ!?」

 

 圧倒され、土埃になだれ落ちるキサラの姿を撮る。――名を上げる為。SNS映えする様な戦い方を求めるキサラ。脳内の検索エンジンは、猛スピードで結果を弾き出した。

 

 

『もしかして:受けて 受けて 最後は勝つ』

 

 

 そう、やられても勝てば良いのだ。首をわざとらしく鳴らし、仕留める時を待つ執行人。

 ならば、待たせて焦らせよう。あえて間合いをロングレンジの端へと近付ける。吹き飛ぶリスクを最低限かつ、体力を使い果たすような立ち回りに男は怒る。

 

「チョロチョロガキの癖に……ぶち殺すぞオラァ!」

「いやいや、殺されちゃスナッフビデオになっちゃうんで……」

 

「知るか殺すぞアマァ!!」

 

 またしても大振る舞いでホームラン。だが、最初の勢いより飛距離は少なくなっていた。剣でのダメージよりも砂利で擦りむき、見よう見まねの受け身でこなすのがやっと。

 

「キサラー! 負けんなー!」

 

 友人の励ます声が身に沁みる。一人では絶対に出来ない事。彼女の為にも負ける訳には行かない。

 そう思い、デバイスを握り締める。だが、輝きを灯さずジッとその場を動かない。フィールドの中心点で迎え討つ。さながら、気分は闘牛使い。

 

「そこから動くな。必ず仕留める」

 

 肩で風を切り、剣で風を切り裂こうとしたその時――キサラは動いた。

 

「ちゃんと撮っててッ!」

 

 デバイスを展開し、光速で振るう。すると、砂埃と共に彼女も空を舞う……男の視界が滲み、思わず目を背けた瞬間。

 

『――狂乱ノ蝶(超ヤバイって)!』

 

 頭上で身体を反らし、再展開。太陽の様に輝く光刃を思い切り振りかざし――脳天直撃。決着は一撃であった。

 

「……撮った?」

「撮った……うわぁ土埃のコンシーラーだよ」

「えぇ!?」

 

 映像を確認しようとしたものの、取り巻きが今にも襲おうとする事に気付き、慌てて逃げる。

 この日は追っ手を巻くまで半日掛かってしまった。その間も端役と言えるような連中を光刃で薙ぎ払い、その光景も映像化した。

 

「もう……来ないよね?」

「あー疲れたー!!」

 

 ヘトヘトになりながらも、行きつけのカフェへと駆け込む。フラペチーノを飲みながら、スマホの無料アプリで映像を編集。ネット上へとアップロードする寸前。重要な事を忘れていたと、友人が彼女に言った。

 

「あーキサラ。タイトルどうするよ」

「うーん……イマドキな長ーい名前がいいんじゃね?」

 

 あまりに適当であるが、ただでさえ回らない頭が更に鈍っている。カフェインが無ければ思考停止である。

 

「今の成績は?」

「ドン底。女子界の"ワースト・ワン"名乗れるよ」

「んじゃ、決まり。"学年ワーストのギャルが騎士道で成り上がる英雄譚"!」

 

「やば。めちゃ長いじゃん」

 

 こうして、初めての動画がセカイへ放出された。イマドキのギャルが大男へ戦いを挑むという一風変わったムービーは、本人が思った以上に話題となった。が、疲労困憊の身体を労る為に睡眠する事にした。

 

○●○●○

 

『えーっと。動画を見てくれているみんな。あたしの名前は『キサラ』無法地帯目指して、今日から騎士道で成り上がるぞー!』

 

 SNS上では、ワースト・ギャルに対して様々な議論が飛び交った。それはそれは膨大な意見の数々。

 

「力を持て余した不愉快な遊び」

「新たな剣士の可能性」

「ネット界の七星剣武祭」

「所詮道具だけ」

「若者の道徳を疑う問題作」

「痛快な少女達の活躍」――賛否両論共々集うが、どちらにせよ『大道キサラ』をアピール出来た事は間違いない。

 

『良い子はマネしないでねっ! これマジだからッ!』

 

 イマドキのクラブ・ミュージックをバックに実況しながら、長き茶髪を靡かせ、光刃を捌く彼女の姿に校内のトレンドは持ち切りであった。

 

「キサラ達、あんたらヤバイって!」

 

 つゆ知らずの二人はごく普通に登校するも、投稿の威力は甚大であった。

 校内の掲示板には「大道キサラ、及びその友人。至急理事長室へ向かう様に」――投降命令。二人は血の気が引いた。

 

○●○●○

 

「えーっと……」

「「すいませんでしたッ!」」」

 

 早速、理事長から呼び出された二人。第一声は「ふざけるな」"有難き"数時間もの説教の後、タバコ混じりのため息を吐いた。

 「本当なら退学処分」そう念頭に置き、彼女は重い腰を上げた。

 

「大会へ出場したいのなら、我々は一切のサポートを行わない――何が起ころうと、自己責任で出場してくれ」

「「あっ、ありがとうございましたッ!」」

 

 SNS万歳。ソレだけで充分であった。だが、動画を見ても尚、キサラ達の実力を疑問視する学生達。――皆は口を揃えて言う。「桐原とやってみろ」無理難題過ぎる。

 

「いやー……そもそも出てくれんの?」

「しーらない。ケド、コメント欄には『vs桐原はよ!』ってさ。期待してるっぽいよ?」

 

「そーゆー"夢のカード"は夢のままでいいんじゃない?」

 

 と、言いながらも、何処から噂が飛んできたのか……桐原静矢が住む寮前まで来てしまった。しかも撮影を行いながら。

 

「マジでどうすんの?」

「ピンポーンって鳴らして、居ますかー? って言えば良いんじゃない?」

「……オッケー。コレ見てるみんな、狩人を狩る準備はいい?」

 

 RECが灯れば、こちらのモノ。出なくても居なくても、動画の撮れ高にはなる「あたし達は挑もうとしましたよ」感を出せば、それで良いと二人は判断した。

 チャイムを鳴らすも、返答は無し。あの歴史的敗戦以降、教師相手でもこうらしい。

 

「んじゃ、口で行こう」

 

 軽くノックし、開口一番「桐原ってばー。あたし、三組の大道キサラだけどー……今度でいいから、あたしと戦ってくんない?」――返答は無い。無音。

 ダメか、キサラはそう思うと、友人は"切り札"を繰り出した。

 

「ねー。このまま出てこないと、黒鉄クンみたいに落第しちゃうよー?」

 

 マズいって! と、ジェスチャーする彼女をヨソにカメラ越しに煽り倒す。その言動は『狩人(パパラッチ)』と言えそうな程。

 思わずドアに傾けていた耳を外し、ドアから一歩距離を置く。本能的にマズい。

 

「Cラン騎士なんでしょー? アタシ、桐原クンのファンだったんだけどなー……まぁ今じゃ君こそが最低のワーストワンだって――」

「ヤバイって!」

 

 そう叫んだ瞬間、ドアから無数の轟音が響く――二人が耳を塞ぐこと、約数秒。

 再び視線をやると、音の数だけ矢が刺さったのか、ドアは岩石の様に無残となった。歪んだ郵便受けから、小さな一言。ソレは確実に聞き取れた。

 

「……殺ス」

 

 思わず駆け出し、その場を後にした二人は「#桐原はヤバい」とハッシュタグを残し、動画を投稿。それらも賛否両論となったが、対桐原戦を望む一部の声は変わなかった。

 

 だが、揃って言う言葉は決まっている。何度も言う事となるであろう「桐原はヤバい」――後に、タグが意味を成すことになるとは、この時の二人は知り得なかった。

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