学年ワーストのギャルが騎士道で成り上がる英雄譚 作:TT_お休み中
「再生数伸びてんね~……いや、だから桐原戦はムリだって」
桐原への"物申し"は流石に悪手であったと反省するも、再生数は伸びる一方。新作を考えなければ、そう思っていると思わぬ報告。
「キサラー!
友人は大はしゃぎ。キサラの無法地帯出場は"無事"運営委員会に受理され、着々と準備を進めていた。
そんな中でも数々のコメントに目を通す。罵詈雑言に多種多様。だが、ある一件のコメントが彼女達の感心を止めた。
『
ただの忠告メッセージなら気にも止めないが、本名らしきユーザー名『
「そんな人がわざわざメッセ飛ばすなんて、ウチら超売れっ子じゃん。行ってみようよ!」
フットワークの軽さは相変わらず。二人はスマホ片手にいざ外出。
○●○●○
「すっごいね……」
「ハンパないマジで……行こッ」
荒廃を極めていたとの噂もあった『綾辻一刀流道場』――だが、綺麗に再建されたソレは威厳を持ち、普段の姿勢も正されそうな規律正しき由緒を醸し出していた。
「あの、コメントをもらったので来ちゃったんだけど! 大道キサラだよッ!」
戸がゆっくりと開かれる。その影は、二人よりも大きく威圧感の有る存在。
「てめェら、どの面下げてこの道場に来てんだ……アァ?」
獣をも逃げ出す眼光、睨みを利かせる胸元のスカル・タトゥー。道場生というには……不適格な攻撃性。
「あっ、あの……綾辻絢瀬さん、ですか……?」
「はぁ? 人違いが過ぎんだろォが」
友人の様子が何時もと違っていた。驚愕と恐れを兼ねたような表情で震える。
「ままま、まっ、まさか……あの貪狼学園の……倉敷蔵人!?」
彼は舌を打ち「その通りだ」と返す。『
「ったく、うるせぇなァ。師匠の代わりに顔立ててるだけだろーが」
まさか、綾辻一刀流の門下生となっていたとは――彼女達はその事実に対し、更に驚く。
「……鳩が豆鉄砲食らってやがんな。来いよ」
思わぬ展開だが、彼は絢瀬の代わりと言わんばかりに
○
「な、なにそれ……」
「んな事知らねぇで突っ込む気だったのか!? 自殺志願者かテメェはァ!?」
怒号に絶句するキサラに呆れる蔵人。それもその筈。蔵人が説明した無法地帯の環境は文字通りの物。
通常大会では負傷した伐刀者の『回復期間』を挟み、数週間から数ヶ月に及んで開催されている――だが、同大会は連盟外の大会故、『
運が悪ければ、試合後に勝ち抜き戦と称し回復無しでの連戦を強いられる事もある。
「言っとくがな、大会は一切の生命保証を採用してねぇ。自分の身は自分で守るのが鉄則。まぁ、
「く、倉敷センパイは参戦の経験があるんですか?」
面白いコト聞くじゃねェか。――蔵人は乾いた笑い。
「一度だけな。出場停止処分を喰らった一年の頃、準決勝まで進出した。その一夜で5連勝。気が付きゃぶっ倒れちまったがな……意識が戻った頃には"不戦勝"で相手がコマを進めていた。こっからが面白ェ」
その人物が決勝戦へと出場。が、その時点で7連戦を強いられたとの事。その末路を笑い飛ばした。
「オレと剣を交えなかったソイツは……見るも無残に、ブッ殺されちまった」
血の気が引くキサラ達を嘲笑い、傑作だ。と高笑う「経験談が聞けて良かったな、テメェらも運が良けりゃそうなってただろうな」――笑えませんよ、と言う友人に「甘ぇな」と払いのける。
「いいか、このオレが何故七星剣武祭のベスト8まで残れたか……バカなテメェらに仕込んでやる」
表出ろ、と促す蔵人。彼女が止めようとするも彼は厳しい目で答えた。
「善人ぶんのも今の内にしろ。ここは由緒正しき"認可済道場"だ。精々オメーの眼の前でダチがくたばらねぇ事でも願っとけ」
静止を無視し、キサラ達を庭へと連れ出す。「オラ、カメラ回せ」――活動を理解しているのであろう、友人は嫌々ながらスマホを取り出す。
「大丈夫。なんとかする」
「あのタップダンスじみた動き、予習させてもらったぜ。続きのタイトルは……『予襲復讐』でどうだ?」
「いいね、面白そー……はははっ」
「絢瀬ってヤツに言ったら……分かるよな?」
「言わないって、マジで!」
キサラが冷や汗を掻いてるのは、レンズ越しに嫌でも感じ取られる。だが、現実は過酷だ。蔵人の言葉に従うかの如く、
骨密度の限界に挑むかのような大蛇が、今にもキサラを喰らおうかと牙を剥き、空を舞う――『
「(ヤバ……ヘビじゃん!?)」
キサラも負けじとデバイス展開。――『
「さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい――蝶のように舞い、蜂のように刺す……大道芸者の輝く舞台へようこそッ!」
「面白ェ……久々の剣客なら、存分に楽しまねェとなァ!!」
大蛇と閃光。ハブとマングース。騎士道の皮を被った異種格闘技戦――
○●○●○
キサラは得意のフットワークで間合いを詰めようと、軽快にステップを踏む。
だが、その脚を喰らおうと大蛇丸は今か今かと強引に詰め寄る。それどころか、アクロバティックな身のこなし。
「んな小技、オレには見えっこ無ェ……テメェにも見えっこ無ぇがなァ!!」
リーチという概念が辞書には無いのか、巨蛇を操っているとは思えない蔵人の機敏性に驚愕する。この力は才能だけで手に入るような代物では無い、そう判断したキサラはステップにフェイントを盛り込む。
リズミカルにツーステップを踏みながら太刀筋を読み、袈裟を繰り出すも、そのまま切り替えされる。
『ダンスと行こうぜ……蛇骨刃!』
彼女のステップに応戦し、操り手の蔵人の手元から誘われた伐刀絶技『蛇骨刃』――右足を差し出せば、右側へ大蛇が襲い、今度は左脚を差し出せば、左側から蛇骨が襲う。
さながら、聖書のような因果応報。まるでモーションを予測するかの如く、彼の剣はボリューム・バーを連想させるかの様な自由自在。それは間合いを侵食する様に。
「結構磨いてんじゃん……骨が折れそうだってのッ!」
「当たり前ェだろォがッ……! 自分の技磨かねェで、ナニが
速度も然ることながら、一発の威力も甚大。火花を散らし、キサラへ防戦を強いろうと押し切る。――切羽詰まる程の勢いに『
「(返すのが精一杯……ってか、何なのこの速度!?)」
蛇の挙動に気を取られるも、己の脚へ意識を向けリズムを乗せる。わざとらしくスピーディーに前後へ出し抜き、蔵人の意識下へ集中させる。
「何だァ、社交場気取りかァ?」
両足共々狙おうと、彼は狙いを済ました。――だが、キサラの身のこなしは脚だけでは無い。
水面斬りのムービングを見せた蔵人に笑みが溢れる「そう来なくっちゃ」――閃光を空へ振りかざし、身体を思い切り宙へ浮かせる。
「あたしさ、縄跳び大好きなんだよねッ――!」
地上を這い斬ろうとする大蛇を避け、ボディウェーブで身を波打たせると、肩を軽く揺らし、これまでの緊張を解く。脱力する様にリズムを自らの物へ落とし込む彼女の器量。蔵人は更に滾る。
「ほう……そんなんで身体が保つか、見モノじゃねェか!」
「(やっぱ速い……反射速度と軌道修正が両立してる……ッ!)」
キサラの思い通り、反射神経を活かし、回し斬ろうとする蔵人のボディワークにハッキリと理解した『太刀筋など存在しない』と。
「じゃあどっちが速いか……チキンレースと行こうじゃないッ!!」
「上等じゃねぇか! オレと張り合うとは、最高に面白れェ
骨刃は閃光へと疾走り、相討ちが連続する音の波として響く――二発、いや、三発……その瞬間連斬は、銃弾が走る様な、乾き切った戦場の体を成していた。
「オレの反射神経をナメてもらっちゃ困んな嬢ちゃん!」
どれだけ距離を稼ごうが、置こうが"リーチが存在しない"。ならば、反射には"別の反射"で返す。陽はキサラの閃光へと向けられた。
「――何ッ!?」
「このデバイスの名前――なんだか知ってるッ!?」
光刃の輝きが伸びた。蔵人の大蛇丸と対するかの様な一筋の光。明らかに延びたソレは、骨の髄まで打ち始めた。
「テメェは操れんのか……光ってヤツをッ!」
彼はその事実に笑い、連撃を速める。秒速四連、五連、六連……トップギア知らずのモンスターマシンの如く、閃光へ突き進む。
「まだまだ……まだまだァ……まだまだァァ!!」
八連撃で応える蔵人にシャッフル・ステップとボディワークを使い、閃光を瞬かせる。何撃かは交わし切れず身に刻まれるも、光の恩恵を受けアドレナリンは全開。――更にギアを上げようと、キサラは伐刀絶技を繰り出した。
「アンタの太刀筋最高……あたしも答えるよッ!
肩を揺らし、身をこなし、ステップを速める。連斬のリスクを少しでも抑え、後方へ下がろうとする。
「いいぜ、攻めて来い……テメェの太刀筋なんざ、断ち切ってやっから、掛かって来やがれってんだオラァ――!!」
連撃のリズムにステップを乗せ、出し抜く。蛇の動きに"乗る"――身を宙返りさせると、骨の背びれを把握。閃光を這わせると、デバイスの輝きを強める。蛇から蔵人への最短ルートが完成。
「(今しか、今しかない……ッ!!)」
塀へ足蹴りし、身体に勢い付ける。剣士『大道キサラ』はロングレンジの大蛇丸を"グラインド"――そのまま蔵人に閃光を突き刺そうとした。が、戦闘狂は軌道修正。彼女を縛るように蛇を掴もうとする。
「させっかァ!!」
キサラをワシ掴み、縛り上げた瞬間。一筋の光と痛みが蔵人の胴を走った――「その言葉、そのまま返してやるってのッ……!」
大蛇が縛れば縛るほど、閃光の威力が増す。まるで、ありとあらゆる光が強制的に身体へ流し込まれる様な破壊力に、生粋の戦闘狂は苦しみを通り越し『歓び』を笑い叫ぶ。
『最高だ……最凶に……最高だぜッ!!!!』
閃光を抜き取りながらも、身体を封じる蛇骨を捌き切る――着地と共に光刃を土へと突き刺す。トドメに派手に。キサラは叫んだ。
『――閃光魔術』
見栄を切ったキサラの背から、粉塵爆発――蔵人の身体諸共、地が吹き飛ぶ。新たな伐刀絶技が"爆誕"した。
「ようやく分かったぜ……テメェの力が……まだ、テメェ自身では判ってねぇ様だがなァ――!!」
力を振り絞るように、剣士殺しは満足気に狂笑を広げる。そんな彼の姿に光を向ける……その時であった。
「いい加減にせんか!!」
一喝の先には帰還を果たした最後の侍――『綾辻海斗』の姿があった。主による強制決闘終了。『反射に気を付けろ』蔵人はそう残すと、名前を問うた。
「キサラ。大道キサラ――異名はまだ無いッ」
鼻で笑うが、彼は何処か満足気であった「いつか、もう一度ヤろう。その時はァ――」師匠の怒号に返すと、言葉半ばに道場を去った。肩に二つの挨拶を覚えたのは、その後であった。