おっぱいフロントライン ※休載中※   作:スクランブルエッグ 旧名 卵豆腐

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罰ゲーム開幕


SOP「罰ゲーーーーーームッ!だよ指揮官♪」指揮官「マジすか」

朝。

降りそそぐ暖かな太陽の光に晒される俺はベッド替わりにして寝ているソファーから起き上がった。

 

はあ………………。

我知れず溜息が漏れる。

昨夜に宣言された人形恋愛前線という謎企画が始まる初日。

何とも言えない微妙な気分だ。

いや、確かにデートできるのは嬉しいがな。

だけど仕事も大事だと思うんだよ。

てか大丈夫なのか、鉄血の襲撃があったとき対応できんのかね?

臨時でヘリアントスが来てくれるらしいが、どこかポンコツな所があるから不安だ。

 

「指揮官?入るぞ?」

 

………………おや?

誰か来たようだな。まあ声色で大体察しはつくが。

いいぞ、入ってこい。

 

「あーたーらーしーいー朝がー来たー!」

 

朝っぱらから鍋とお玉をカンカンと打ち鳴らしながら俺の部屋に入ってくるM16。

………何だそれは。

 

「人形恋愛前線期間中は私が毎回これで起こしに来るつもりだ。どうだ、面白いだろう?」

 

面白いのはお前だけだ、バカ!

せめて朝くらい普通に起こさせてくれ!

 

「ハハッ!まあそうカリカリするな指揮官。今日は記念すべき人形恋愛前線の初日だからな!いつまでもそんな景気の悪い顔をしてるとSOPが可哀想だぞ?」

 

カリカリする原因はお前だっつの。

心配しなくても、SOPちゃんの笑顔を曇らせるなんてことは決してしないぜ。

俺の実力を見ておくことだな!

 

「ほう………自信ありげじゃないか。デートから帰ってきたSOPの話を聞くのが楽しみだな」

 

それだけ言うと踵を返してM16は部屋を出て行った。

 

 

っておい!鍋とお玉を置いてくな!持って帰れ!!

 

 

 

 

 

 

AM0850。

そろそろ時間だな。

俺は私服に着替えて部屋を出る。

服装は普通の長袖シャツとジーパンだ。

そもそも仕事柄、外へ行くときも制服か戦闘服だったのであまり私服で外出する機会というものがなかったりする。

基地の正門に歩いていくと、いつも通り掃き掃除をしているメイド長に出くわした。

 

「おや、ご主人様。珍しい格好ですね。そう言えば今日からでしたか。指揮官終末前線は」

 

おい待て。

その言い方だと俺が死ぬみたいじゃないか。

 

「ああ、申し訳ありません。冗談です、ご主人様。それでは行ってらっしゃいませ」

 

ペコリ、と流れるような動作でお辞儀をしたメイド長は颯爽と建物の中へと戻っていく。

いや、冗談って言ってるけどお前さっきの表情マジな感じだったじゃん。

はあ………………まあいいか。

AR小隊全員ってことは実質4日間だけだろうし。

なるようになるだろ。

 

 

 

 

そして、俺はこの時の甘い考えを後に後悔する事になる。

 

 

 

 

 

 

「あ!おはよー指揮官!」

 

門の前では、SOPちゃんがニコニコと笑顔を浮かべて俺を待っていた。

 

「おう、お早う。んじゃ早速街にでも行こうか。何処か行きたい所はある?」

「どこでもいーよ?指揮官と一緒に行くならどこでも!」

 

おうおう、嬉しいこと言ってくれんじゃないの。

こいつは唯の罰ゲームと思って掛かっちゃいけないな。

 

「指揮官早く!早く行こ!」

 

SOPちゃんがトテトテと小走りで駆けていく。

何だか子供みたいだな。

可愛い。

 

 

 

 

 

 

街は今日も活気に満ちていた。

ここにいる間だけは戦時という事を忘れさせてくれる。

 

「ねぇ指揮官!あれ何なの?」

 

俺の前を歩いていたSOPちゃんがファミレスを指して聞いてくる。

 

「あれはファミレスだよ。正確にはファミリーレストラン。要するにご飯食べるとこだ」

「そうなの?ふ~ん」

 

こんなご時世だってのにファミレスなんてやってるんだな。

店の中からは鼻腔をくすぐる良い匂いが流れてくる。

 

「ちょっと早いが食事にするか。行こうぜSOPちゃん」

「わーい♪行こ行こ!」

 

 

店の中は昼前の時間だというのにそこそこ混みあっていた。

家族連れや若い男女のカップル、老夫婦などといった様々な客がいる。

 

「SOPちゃん、何が食べたい?好きなもの頼んでいいぞ」

「ホント!?じゃあじゃあ!………………このお子様ランチで!!」

 

それでいいのか?他にも色々あるが。

 

「私はこれでいーよ?指揮官はどうするの?」

 

うーん………………俺は何でもいいからなあ。

ここは安牌で日替わりランチにしておくか。

 

「スンマセーン、日替わりランチとお子様ランチ一つ」

 

かしこまりましたー、と言いながら店員が厨房へと入っていく。

こういう所は今も昔も変わらないな。

ああとっても平和だなー。

ん?どうしたSOPちゃん。何か言いたそうにしてるけど。

 

俺がそう言うと突然SOPちゃんが身を乗り出してきた。

ちょ、顔近いって。

 

「指揮官ってさ、私の事どう思ってるの?」

 

随分と唐突な質問だな。

どうも何も、SOPちゃんは大切な仲間だと思ってるよ。

俺がそう言うとSOPちゃんはしばらく考えるような素振りをした後に「ふ~ん♪」と言って運ばれてきたお子様ランチを食べ始めた。

俺も同じように運ばれてきた日替わりランチのスパゲッティを食べる。

 

「とっても美味しいね指揮官♪配給で食べる物より良いね!」

 

そりゃあな。

配給の食事と同じにしちゃ駄目だぜ?

 

でもやっぱりあれだな。

誰かと一緒に楽しく食事するってのはやっぱり良い。

 

 

 

 

 

 

 

さて、次はどこに行こうか。

行く所といっても限られているしな。

そうだな…………ん?

 

 

「今思ったんだが、SOPちゃんは私服とか持ってないのか?」

 

SOPちゃんの着ている服はいつも通りの素肌の上に黒いジャケット。

俺は普段から見ているから何とも思わないが、一般の人々からすれば中々きわどい恰好だ。

だって素肌の上に直に着てるんだよ?

下着も何も着けてないんだよ?

基地内でならともかく…………ねぇ?

 

「持ってないよ?私ずっとこの服着てたから」

 

まあそうだよな。

彼女達のような戦術人形がいる場所は硝煙と血煙が漂う戦場だし、そもそもこうやって街に出るって機会そのものが少ないだろう。

だが、俺の基地にいてる間くらいは少しくらい自由に居ても良い筈だ。

 

「そうか。だったら服でも買いに行くか?」

「えっ?ええっ!?指揮官が買ってくれるの?」

 

虚を突かれたような顔で俺を凝視するSOPちゃん。

そうと決まれば行くか、UNI〇LOへ!

 

 

 

 

 

 

2062年でもかの店は健在だ。

よく今の時代まで残ってるよな。流石はUNI〇LOだぜ!

さて、ここで問題が発生した。

来たのはいいが、俺は男だしそもそもファッションセンスなんて欠片もない。

SOPちゃんも普段なら足を運ぶ事のない場所に来たからか、一言も話さず俺の服の裾を掴んで離さない。

ここは一つ、店員さんに任せてみるか?

 

「いらっしゃいませー!どのような服をお探しでしょうか?」

 

いや、服を探してるのは俺じゃなくてこの娘なんだけど、どんな服選んだらいいのか分からなくて。

店員さんのセンスで見繕ってあげてくれないか?

お願いします!

 

「畏まりました。それではこちらにどうぞ~」

 

さあSOPちゃん。

あの店員さんについて行ってコーディネートして貰ってきなさい。

 

「え…………?指揮官は一緒に来てくれないの?」

 

ホントは一緒にいてあげたいけど、試着室まで一緒に行く訳にはいかないからね。

大丈夫さ。

鉄血と戦うのに比べたら全然大した事は無いだろう?

 

「それはそうだけど…………うん。ちゃんと待っててね指揮官!すぐに戻ってくるから!」

 

そう言ってSOPちゃんは店員さんと女性服売り場へ走っていく。

俺にも娘なんてものがいたらこんな感じなのかね?

これじゃ父親と娘みたいだな。

だからこそ、時々思い悩んでしまう。

俺が今やっている事は、ある意味においてとても残酷な事をしているのかも知れない。

どれだけ人の姿をしていても、どれだけ感情豊かでも。

彼女達は『戦術人形』という『兵器』なのだ。

本来戦う事しか求められていない彼女達に戦場とは掛け離れた事を教えてしまうのは残酷な事なのではないだろうか。

別に俺は、彼女達を『銃を持たされて無理矢理戦わされている可哀想な女の子』なんて事を思っている訳じゃない。

そんな事を考えていたら指揮官なんて務まる筈もないし、何より『戦術人形』である彼女達への侮辱になる。

だが俺は、だからこそ彼女達には色々な事を知っておいて欲しい。

形はどうあれ『戦術人形』として生まれてきた『個』である彼女達がどう生きるのか、どう在るべきかは彼女たち自身が見つけ出すだろう。

自分が『何』で、世界は『どう在るべきか』と。

 

だから俺は彼女達に与え続けるんだ。

まあ、俺が出来る事なんざ限られてるがな。

 

おそらく何十年、もしくは何百年後には人類は滅び去って地球の新たなる霊長として人形達が君臨しているかもしれない。

今よりも豊かな文明を手に入れてるのかも知れない。

どうなるかは誰にも予測がつかない訳だが。

 

 

 

 

「指揮官………」

 

おっと、SOPちゃんが来たようだな。

そして声のする方に俺は振り返って………固まった。

 

 

 

「えっと………どうかな?」

 

 

………こいつは予想外だ。

一瞬、本当にSOPちゃんかと思ってしまったくらいだ。

今のSOPちゃんの恰好は、短めの茶色のプリーツスカートに白のボタン付きのシャツ、ベージュ色のコートというものだ。

服装が変わっただけなのに雰囲気までもがガラリと変わってしまっている。

何だか急に成長した感じに見えるぞ。

 

「指揮官?どうしたの?………やっぱり似合ってないのかな?」

 

「とっても良い!!最高!!SOPちゃん超可愛い結婚しよ!?」

 

ハッ!?俺は一体何を口走って………!

 

「そ、そうかな?指揮官が良いって言うなら………」

 

そう言って頬を若干紅く染めてもじもじするSOPちゃん。

やめるんだ、その動作は俺に効く。

 

 

………あ、鼻血が。

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮官が鼻血を出している頃、街の一角にあるスーパーにその二人はいた。

 

 

「騒がしい所ね。耳が痛くなりそうだわ」

「我慢するしかありませんね。人間の街というのはこういう物らしいですから」

 

短めの黒髪に色白の肌の女性………『イントゥルーダー』がハア、と手を頬に当てながら呟くと同時にツインテールの少女『スケアクロウ』が言葉を返した。

彼女達は鉄血人形のハイエンドモデルである。

イントゥルーダーは別名で侵入者とも呼ばれており、スケアクロウも案山子という呼び名が存在していた。

 

そんな彼女達がなぜ街に居るのかというと。

 

 

「全く、何で私達が洗剤を買う為に人間の街に来なくちゃいけないのよ」

 

 

イントゥルーダーは不機嫌そうに言う。

そう、全ての原因は先日グリフィンの基地に襲撃を仕掛けにいった処刑人が返り討ちにされ、逃げ帰ってきた時にどこからか持って帰ってきた袋だ。

外に捨ててくればいいものを、態々司令部で開けてくれた処刑人とハンターの所為で鉄血の首脳部はこの世のものとは思えない異臭に晒される憂き目を見たのである。

余程の臭いであったのかデストロイヤー・処刑人・ハンターは気絶し、アルケミストは『これは新しい拷問として使えそうだ………ゴフッ』と言ったまま屍のように棒立ちになり、ドリーマーは鼻と口を抑えてトイレに駆け込み、ウロボロスは口からグハッ!?と疑似血液を吐いたまま動かなくなり、代理人は即座に防護マスクを自身とエリザに装着していた。

 

問題はその後服に染みついた匂いである。

どれだけ洗っても臭いが取れない。

あっという間に洗剤がなくなり、早急に調達する必要に迫られた首脳部は別件で司令部を離れ難を逃れていたイントゥルーダーとスケアクロウに頼み込んで洗剤を買いに行って貰ったのである。

 

 

 

「そもそもの原因はあれを持ち帰ってきた処刑人でしょう?彼女が率先して来るべきなのよ」

「仕方ありませんよ。土下座をしてでも頼んでくるくらいですからね。まあ私はウロボロスの無様な姿が見れたので満足ですが」

「貴方って結構毒舌よね。そんなにウロボロスが嫌いなのかしら?」

「嫌い………と言うよりは『気に入らない』と言った方が正しいでしょうか。彼女は少しプライドが高すぎるというか………傲慢な所があって戦闘においても短気さと浅慮さが見え隠れしています。彼女の指揮下で命を預けようとまでは思えないですね」

 

 

そんな会話を交わしながらスケアクロウは棚に並んでいる洗剤を凝視している。

様々な種類があるが、どれを選んでいいのかが分からない。

 

「お客様、洗剤をお求めでしょうか?」

「はい、洗剤を………ッ!?」

 

唐突に声を掛けられたスケアクロウが振り返った先には一人の男が立っていた。

彼が着用している服には『最強?いいえ店長です』いう文字がプリントされている。

センスを疑うしかない。

 

「お客様?どうかされましたか?」

「あ、いえ。何でもありません。店長さん、強力な臭いも取れる洗剤はあります?」

「ああ、それならこのスリジャヤワルダナプラコッテ洗剤が一番………」

 

 

 

 

二人の洗剤買い出しの旅はもう少し続きそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「何だって?スケベクロウにインキュベーター?変わった名前だな」ーーーーーーとある基地の変態指揮官

 

「スケッ………⁉︎間違え方に悪意を感じますね」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル・スケアクロウ

 

「私は某魔法少女アニメに登場する白い生物じゃないわよ‼︎」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル・イントゥルーダー

 

 


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