おっぱいフロントライン ※休載中※ 作:スクランブルエッグ 旧名 卵豆腐
朝。
いつもの様に俺の顔を太陽の暖かい日差しが照らす。
昨日の夜は大変だったな。
クジ引きの後、夜遅くまでバーで飲んでたらG36ことメイド長に絡まれた。
全く、何が「火遊びは程々に」「目を離すと喰い散らかしますから」だ。
確かに俺は変態であるが一線を超えたことなどない。
何が喰い散らかすだ。
俺はそんな好色肉食系男子じゃねぇっての。
まあでもアレだな。
今まで散々セクハラ変態行為をしておいて言うのも何だが、暫くは変態を自粛するか。
………と、そろそろ奴が来る時間だな。
「あーたーらーしーいー朝がー来たー!」
昨日と同じく鍋を片手にお玉をカンカンと打ち鳴らしながらM16が部屋に入ってくる。
当たり前みたいに入って来てるけどさ、ここ俺の執務室なんだけど。
せめてノックくらいしようぜ?
「お早う指揮官。昨日はよく眠れたかな?」
ああ良く眠れたよ。
お前が来るまではな。
「そうか。まあそれはさておき、今日はM4とのデートだったな?………指揮官、これは一々言わなくても分かるだろうがM4は私の大事な妹なんだ。普通に過ごす分には構わんが手を出したらどうなるか………後は分かるな?」
分かってるよ。
そんな凄まなくても何もしないっての。
その辺はわきまえてるから心配するな。
「それなら良いがな。昨日SOPから聞いたが、変な輩に絡まれたそうじゃないか。まあ指揮官が助けてくれたから良かったと本人は言っていたが」
あー………あの連中の件ね。
気を付けないとまた現れそうだ。
暫くは警戒しないと駄目だな。
徒歩で行くのはあまり良くないかも知れない。
ならどうするか………………そうだ!
その手があったな。
よし、そうと決まれば行動に移るとするか。
「おや、指揮官?また何か新しい企みでも思いついたのか?」
おうともよ。
我ながら良いアイデアが浮かんだのさ。
それはそうとM16、さり気なく俺の机の上にあるレーズンパンを食べるな。
冷蔵庫の中にある牛乳を当たり前みたいに飲むんじゃない。
「んっぐ………ふぅ、やはり朝はパンと牛乳に限るな!じゃあな、指揮官!」
いや、お前マジで何しに来たの?
俺の部屋にある食料を漁りに来ただけか⁉︎
そんないい笑顔されても全く嬉しくないんだけど。
後、鍋とお玉を放置したまま帰るなッ!
AM0850。
昨日と同じ時間に門の前に向かうと、やはりというべきかM4A1がそこに居た。
しかも私服を着ている。
何処かで買ったのか?
「こ、これはM16姉さんが私用にって貸してくれた服です。昔着てた服だと言ってました」
ふーん、あのM16がねぇ?
意外だな。
「指揮官………ど、どうですか?」
「可愛い。結婚しよ」
「ふぇっ⁈」
おっと不味い不味い。
思わず本音が出てしまったぜ。
今のM4の服装を簡潔にまとめるとライトグリーンの長袖ボタンシャツに白のロングスカート、そして黒縁の眼鏡。
………こうして見ると、ホントに一人の女性としか見えないな。
今のM4の姿を見ても、誰も彼女が戦術人形だとは思わないだろう。
眼鏡をかけてるが視力が悪いのか?
人形だから目が悪くなる何てないだろうし………。
「こ、これは伊達眼鏡です……指揮官は…お嫌いですか?」
「全然問題ない。ノープロブレム!」
いやいやいや、その眼鏡を僅かにズラしながら上目遣いで見つめてくるのは反則ですわ。
待て、耐えるんだ俺!
鼻血が出ないように全身の細胞を活性化させて血流を制御しなければ………‼︎
「さ、さあ!出掛けるとしようか!な?」
「は、はいッ⁉︎よ、宜しくお願いします‼︎」
顔を若干赤くしながら挨拶をするM4。
別にそんな畏まらなくてもいいんだぞ。
気楽にいこうぜ。
「わ、分かりました。それで、今日は何処に行きますか?」
そうだな。
まあ昨日色々考えていたんだが、それは着いてからのお楽しみという奴で。
そんじゃ、早速車で出かけるぞ。
今日は………ドライブだ!
「ドライブ…ですか?」
おう。
車で出かけるのも悪くないだろう?
運転は俺がするから君は隣で座っててくれれば良いさ。
グリフィンの基地の地下に存在する駐車場には様々な自動車がある。
骨董品のようなクラシックカーもあれば、誰が持ち込んだのか第二次大戦頃の戦車まである。
………何で戦車まであるかって?
さあな、俺の前任者の趣味じゃないか?
それはさておき、俺の自家用車も2062年の今となっては時代遅れも甚だしいekワゴンだ。
新車を買うにも値段が高いし、丁度これが安く売ってたから買った。
どうせ乗る機会も余りないし、誰かを乗せるなんて想像もしていなかったしな。
「遠慮せず乗ってくれ。座り心地はあまり良くないかも知れないが」
「いえ、そんな事………」
はにかみながらM4は助手席側に座った。
控えめに言って可愛い。
「いい喫茶店があるんだ。今日はそこに行くつもり何だが………構わないか?」
「あ…はい、指揮官にお任せします」
基地から車を走らせること約20分。
街はずれの裏通りの一角にその喫茶店はある。
この喫茶店のマスターは元正規軍の対ELID特別任務部隊の隊員だった人物だ。
同じ元正規軍という点で俺と共通するものがあったからか、マスターとは意気投合して今は数少ない友人の一人となっている。
歳は俺の方が下だけど。
「いらっしゃい………と久しぶりじゃのう」
喫茶店の扉を開けると白髪の老人が出迎えてくれた。
彼がこの店のマスターだ。
「ようマスター。相変わらずだな」
「御主もな。横にいるのはお前のコレか?」
マスターが小指を立ててニヤニヤと笑う。
また変な事を言いやがって。
「それなら良かったんだけどな。俺は罰ゲーム中で今日この店に来たのもその一環だ」
「罰ゲーム?さては御主、また下らぬ事をやらかしおったな?あれ程火遊びはよせと忠告したというのに」
うるせーやい。
昨日も部下に同じ事言われたわ!
別に気にしてないけど!
全然気にしてないけど!
そもそも俺は火遊びなんかしてないっての!
「指揮官、火遊びって何の事ですか?」
M4、疑問を持つのはいい事だが今この状況で俺にそれを聞かないでくれ!
返答に困る!
「良いか、お嬢さん。この場合に置ける火遊びという言葉の意味はじゃな………」
「やめんかアホマスター!変な事をM4に教えるんじゃない!ほらッ、席に座って注文でもしよう!な⁈」
全く、油断も隙もあったもんじゃない。
強引に話を逸らして二人がけの椅子に座った。
「ほら、メニュー表。好きな物頼んでいいぞ?俺の奢りだから気にせず頼むといい」
「そ、そんな!流石に悪いです!私の分は私が払いますから………!」
「遠慮しなくてもいいさ。こういう時くらいカッコつけさせてくれ。普段任務を遂行してくれてる労いの一環だと思ってくれればそれで良い」
俺がそう言うとM4は申し訳なさそうな表情を浮かべたが、納得してくれた様だった。
「俺はアメリカンにするかな。M4は何にする?」
「で、では私はカプチーノで………」
マスターに注文をした後、互いに言葉を発する事無く時間が過ぎていく。
やべぇ、会話がない。
SOPちゃんやM16は自分からグイグイ話に食い込んでくるタイプだから会話に困った事無かったが、M4は違うようだ。
まあ確かに性格はAR小隊で一番大人しくて少し内向的な面もあるからな。
仕方ないと言ってしまえばそれで終わりだが、今の状態は良くない。
取り敢えず何か話題を振ってみるか。
「なあ、M4は将来の夢とかそういうのあるのか?」
「夢………ですか?」
「そうそう。例えば、鉄血との戦争が終わったら〜〜がしたいとかさ」
「わ…かりません。今までそんな事考えた事も無かったので………」
うーん、と言って考え込むM4。
まあそう言う反応は予想通りだな。
「そんなに深く考えなくてもいいんだぞ?グリフィンを退職して別の仕事をするとか、趣味に人生を費やしたいとか簡単な物でいい」
「………あまり、想像出来ないです。仮に鉄血が居なくなって平和になったとして………戦術人形の私達に居場所があるんでしょうか?」
「居場所がないなら作ればいい。M4がM4で居られる場所をな。AR小隊の皆も交えて色々試行錯誤してみるのも1つだ。別にグリフィンに留まってもいいだろうし、戦術人形として生き続けるのも君の自由だ。ただし、それは誰かに強制されたものではなく自分の意思でという前提だがな」
「指揮官、私達は人形です。私達はプログラムされた事以外の行動は取れない………分かっている筈でしょう?自分の意思なんてものは持ち合わせて居ないんです」
「ペルシカがいるじゃないか。何もかも全部終わったらアイツに頼み込んで何とかして貰えばいい。アイツなら断らないだろうさ」
「そうでしょうか………」
長々とした話になってしまったが、M4にはM4なりに考えておいて欲しい。
今は分からなくてもいい。
手探りでも構わない。
いつかM4が本当の自分を手に入れるその時まで、ゆっくり考えておいてくれ。
必ず理解出来る日が来る。
「分かりました。………少しだけ考えてみます」
僅かに微笑みながらM4が言う。
おう、よく考えて悩んでみな。
………にしてもコーヒー遅いな。
「お待たせしました。アメリカンとカプチーノです」
あれから数分後、マスターがコーヒーを持ってきた。
花柄の茶碗にコーヒーを入れているというのが、また独特だ。
意外に綺麗な組み合わせだよな。
とても良い香りがしている。
コーヒー豆も仕入れが難しいんじゃないのか、このご時世。
「何、それがそうでもない。儂の知り合いに仕入れの調達が得意な奴がいてな。多少の値は張るものの、上手く買い付けてきてくれる」
成る程ね。
昔はありふれた物であったであろうコーヒーも今となっては贅沢な高級品か。
嫌になっちまうな、この世界は。
「所で御主、少し話があるのだが良いか?」
話………?
まあ構わないが………。
すまん、M4。
ちょっと待っててくれ。
〜その頃、グリフィンの基地〜
「くっ………認めない、認めないわ!今度こそアンタに勝つ!」
HK416は苛立たしげに携帯ゲーム機を持つ両手をワナワナと震わせながら悪態をついた。
「フッ、何度やっても結果は変わらんさ。なら次はこのゲームで勝負しようじゃないか」
M16は不敵な笑みを崩さぬまま416を煽るように新たなゲームによる勝負を持ちかける。
彼女に対して並々ならぬ対抗心を持つ416はまんまとその策にハマってしまった。
「じゃあ次の勝敗はG級のリオレウス希少種を何分で狩れるかで決めるぞ。異論はないな?」
「望むところよ………!見てなさい、私の完璧な狩りを!」
ギャアギャアと騒ぎながらゲームに没頭する二人の戦術人形。
その二人に近づく影が1つ。
「アンタ達ねぇ………!ゲームばっかりして遊んでんじゃないわよ!全く………!」
肩を怒らせながら現れたのはAR-15だった。
心なしか、その額には青筋が立っているようにも見える。
「おっ、出たな桃色まな板娘」
「出たわね、桃色スキー板娘」
「喧しいわッこのニートAR‼︎指揮官と同じ呼び方をしないで‼︎貴方達二人に言われると余計に腹立つわね………!」
M16と416の「どうよ!」と言わんばかりに主張する胸を睨みつけながらAR-15は溜息をついた。
「落ち着けよAR-15。ほら、昨日指揮官が買ってきたメ◯ミルクでも飲んで気を静めたらどうだ?」
M16はそう言うと「プフー!」と笑いながら牛乳を差し出してくる。
「要らんわ!もうヤダこの小隊………」
最早数えるのも億劫なほどの溜息をつくAR-15。
彼女の心労は日に日に高まり続けるのであった。
「いよっしゃアアアッ!全部の部位破壊達成だ!どうだ、416。この時点で勝敗はもうついたも同然だろ?」
「フン、そうやって精々胡座をかいておきなさい。最後に勝つのは私よ。私は完璧なんだから………あッ!アンタが話しかけるから間違えてモドリ玉使っちゃったじゃない⁉︎」
「おいおい、人の所為にするな。『私は完璧よ(笑)』」
「殺す!」
ドッタンバッタンと盛大な音を立てて取っ組み合いを始める二人。
「仕事しろ!」と、AR-15がブチ切れて銃を乱射するのはこの5秒後の話である。
「で?話ってのは?」
「うむ………御主の連れの娘、戦術人形か?」
マスターは煙草に火をつけながら問いかけてきた。
相変わらずアンタは勘がいい。
「そうだ。よく分かったな」
「御主とあの娘の会話を聞いてたのじゃが………何を企んでおる?」
「別に何も企んじゃいない。何故そんな事を聞く?」
俺がそう言うと、マスターは訝しむような目つきで俺を見る。
暫くの沈黙が続き、マスターが口を開いた。
「儂には………まるで、御主が人形を人間に仕立て上げようとしているようにも見えるが」
「………さあ?どう思う?マスターなら理解しているだろう?俺が何を一番この世で重視しているかを」
「そうじゃな、分かっておる。妙な事を聞いて悪かった。ほれ、あの娘の所に戻るといい」
「1つだけ言っておこう。あまり、彼女達に入れ込むな。これはあの娘らが人形だからという事ではなく、御主の為を思うて言うておる。………過去はどうしても変えられぬのだからな」
「………………。」
マスターはそう言うと先に店内へと戻っていく。
忠告感謝するよマスター。
やっぱりアンタは優しい人だ。
だが知ってる筈だぜ?俺の諦めの悪さをな。
次回予告
「指……揮………官?」ーーーーーーAR小隊の隊長・M4A1
「聞いてくれ!とうとう私にも春が………!」ーーーーーーG&Kの上級代行官・ヘリアントス
「結婚詐欺じゃないのか?」ーーーーーーAR小隊の隊員・M16A1
「結婚詐欺ですよ、それ」ーーーーーーG&Kの後方幕僚・カリーナ
「結婚詐欺ね」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15
「結婚詐欺って何なの?」ーーーーーーAR小隊の隊員・M4SOPMODⅡ