おっぱいフロントライン ※休載中※ 作:スクランブルエッグ 旧名 卵豆腐
取り敢えず安全圏内まで離れる事は出来た。
それにしても、オキシジェン・デストロイヤー………ね。
物騒な名前だが、そもそも兵器の時点で物騒もクソもないな。
ヘリアンが言うには正規軍の兵器開発部が肝いりで製作した新型ミサイルだとか。
本来はELID相手に使うつもりだったらしいとの事だ。
まあ何にせよ、あの化け物を倒せるってならそれに越した事はない。
後は正規軍に任せりゃ何とかなるかな。
「ミサイル、後30秒で着弾!衝撃に備えろォ!」
パイロットのオッさんの野太い声が聞こえ、暫くして辺りを埋め尽くす眩い閃光が広がった。
まるで核兵器みたいだが、それにしては爆発範囲も狭いしガイガーカウンターには放射線も検知されていない。
やがて、B-29地区を覆っていた閃光が消え去り、静けさを取り戻した頃には巨大なヘドラは跡形もなく消滅してしまっていた。
まるで、ヘドラなど最初から存在していなかったとばかりに。
終わった………これで終わったのか?
「おっと………指揮官さんよ。ちーっとばかし、厄介な事態だぜ?」
パイロットのオッさんの声に、周りを見ると確かに彼の言う通り厄介そうな事になっていた。
何故か?
俺達が乗るヘリと並ぶようにして戦闘機が飛んでいたからだ。
「ねぇ、これかなり不味い状況じゃない?軍の連中、私達の口封じにでも来たんじゃ………」
「それはどうかしら、9?あの戦闘機、部隊章が見た事のない物ね」
45の言う通り、正規軍の戦闘機にしては翼の部分に部隊章が明記されていない。
他所のPMCの可能性は限りなく低い。
そもそも戦闘機の運用や維持にかかるコストは言うまでもなく膨大であるし、戦闘機を使うPMCなぞ今まで聞いたことも見た事もない。
軍でないとするなら、一体この戦闘機は何処の所属なんだ?
「ついてこい………って事かァ?ま、この状況じゃ従うしかないわな。燃料が持つといいが………」
さて、どうなるやら………この後どうなるか、こればっかりは神様仏様しか知り得ない。
何だろうな、益々厄介事に巻き込まれそうな気がするが、杞憂である事を祈っておこう。
暫くの間戦闘機に先導されながらついて行くと、やがて巨大な全翼機が現れた。
その見た目は、旧アメリカ軍が運用していた爆撃機『B2』に酷似している。
機体下部の中央部分が開き、その中に入れという指示をされ、俺達を乗せたヘリは機体の中へと入っていく。
「こいつァ…たまげた。今まで色んな機体を見てきたが、こんな代物は初めてだ。にしても連中無茶言いやがる。この激しい気流の中で機体の内部に入れだなんてなァ………!」
パイロットのオッさんが感嘆しながら呟き、同時にブツブツと文句を言う。
とは言え、それでも激しい気流の中で機体を上手く制御しているのは彼が優秀なパイロットだという事だろう。
「航空母艦ならぬ航空母機って所か?これだけの装備を持っているなんて、こいつら一体何者だ?」
ヘリが全翼機の中に入り、着陸すると直様武装した兵士達がヘリを取り囲んだ。
ヘリから降りた俺達は兵士達に囲まれたまま移動するよう促され、全員が別々の密閉された部屋へと連行された。
部屋の中には簡素な机と椅子があり、部屋には俺以外誰もいない。
てっきり尋問でもされるのかと思っていたが………アイツらの考えがまるで分からん。
どうしたものかと考えていると部屋の扉が開き、一人の女性が入って来た。
「こうしてお会いするのは初めてですね。キョウヘイ・ヤマネ指揮官。まず、このような形でこちらにお連れした事を謝罪します。私はエレナ・コールマン。特務生物研究機関『MONARCH』所属の生物学者です」
特務生物研究機関『MONARCH』………聞いた事もない。
これだけの装備や人員を保持していながら何故今まで表に現れなかった?
「我々は常に歴史の裏側にいましたから。それにMONARCHはあくまで研究機関です。別に世界を支配しようだの、作り変えようとか企む秘密結社ではありませんからね。その点についてはまた後でお答えしましょう。まずは別室に移動して貰えますか?」
………分かった。
今はアンタの言う事を聞くしかないだろうしな。
別室とやらに案内してくれ。
ところで、404小隊の皆に手を出したりはしてないだろうな?
「ご安心を、我々はその様な事をする為に貴方方をこの場所にお連れした訳ではありませんから。さあ、行きますよ」
エレナに連れられ、案内された部屋には404の面々と眼鏡をかけた一人の男がいた。
「初めまして、ヤマネ指揮官。私はイシロウ・セリザワと言う者です。古生物学を研究しています」
眼鏡を掛けた男………セリザワが手を出して握手を求めてくる。
その手を握り返しながら、俺は目の前の男が中佐や俺と同じ日本人だと言う事に驚いてもいた。
「早速本題に入りましょう。いくつかの質問を私がします。ヤマネ指揮官、あのヘドラという生物の事をどの程度までご存知ですか?」
エレナが俺の対面の椅子に座り問いかけてくる。
そうだな………細かいことは分からんが、汚染物質を喰う微生物が何らかの影響で異常な進化・発達を遂げた存在…でいいか?
「成る程………では少し質問の仕方を変えます。研究所地下から現れた巨大なヘドラ………アレを最も普遍的且つ分かりやすい表現をするなら、貴方は何と呼称しますか?」
…………………いや、まさか、そんな筈はない。
アレはあくまで微生物だ、中佐もそう思うだろう?
「他人に話を振らないで下さい。分かっているのでしょう?アレが何なのか」
……………そうだな、ああ。分かっているとも。
だがな、俺は認めない。
その呼称はヘドラのような微生物の群体などに、どんなに姿形が変わろうとも生物の一角に過ぎないアレに本当の意味での、その呼称は似合わない。
『怪獣』
という呼び名は。
「………その一言がお聞きしたかったのです。やはり、貴方はその目で見たことがお有りなのですね?『怪獣』を」
エレナの眼光が鋭さを増す。
一つ聞きたいが、アンタらは俺の事をどこまで知っている?
「概ね一通りは。五年前の『アラトラム事件』の事も含め、把握しています。貴方は、あの事件の中心であり当事者でもあった。『アラトラム事件』で貴方が義理の姉を亡くした事も………」
ズキ、と頭が痛む。
思い出したくない事をズケズケと掘り出しやがって………!
俺は思わずエレナを睨んでしまう。
俺の視線に気付いたエレナは僅かに目を伏せた。
「申し訳ありません。ですが、どうしても知る必要があったのです。その目で怪獣を直に見た人間は非常に少ない。不快な御気分にさせてしまった事は謝罪します」
いや………構わない。
で?具体的に俺に何を求めてるんだ?
「怪獣を目撃し、その一端に触れた貴方に協力して貰いたいのです。ヘドラは始まりに過ぎない。怪獣は………一つや二つだけじゃない。元々この世界は彼等の物だった。彼等は世界中にいる。問題は、いつ奪い返されるかです。これを見て下さい」
エレナは、そう言ってモニターを起動させる。
画面が表示され、そこには何かの壁画のようなものが映しだされていた。
これは………!
エレナとセリザワの方を振り向くと、二人は真剣な表情で画面を見ていた。
画面には、剣山のようにそびえ立つ王冠のような背鰭を背負った生物が描かれている壁画が映しだされている。
画面が切り替わり、今度は翼竜のような絵が描かれた壁画が、そして更に大きな蝶………いや蛾か?が描かれた壁画が映る。
だが、それらを上回る俺には決して無視出来ない画像が映し出された。
それは、三つ首のドラゴンのような姿が描かれた壁画だった。
まさか………あの時のアレなのか⁉︎
………いや、そんな筈はない。
アレは確かに三つ首だったが、胴体は無かった。
何かの間違いだろう。
そして、最後の画面が映し出される。
そこには、先程の背鰭を背負った生物と三つ首が争う様を描いた壁画が表示されていた。
「これらの壁画は皆『遺跡』で発掘されました。『遺跡』に残された僅かな文献から、彼等の個体名も分かっています」
「翼竜の名は『ラドン』。蝶…若しくは蛾に見える生物は『モスラ』。三つ首の生物の名については名称を記した文献が見つからなかったので、便宜上我々は『モンスター・ゼロ』と呼称しています。そして………この背鰭を背負った生物の名は………」
エレナが途中で言葉を切り、セリザワを見る。
彼女の言葉に続けるように、セリザワは唯一言ハッキリと言った。
「ゴジラ」
「かつて、ペルム紀と呼ばれていた古生代時代に地球の生態系の頂点に君臨していた、この地球という星に存在する」
「『怪獣の王』です」
何処かで、咆哮が聞こえた気がした。
この地球という星の、真の霊長たる『王』の声が。
まだもう少し続きます。
御容赦を………!
おっぱい万歳!