おっぱいフロントライン ※休載中※ 作:スクランブルエッグ 旧名 卵豆腐
「ったくよぉ、アホみたいな仕事だったな今日の任務は」
B-29地区郊外を走る黒色のバンの中で、木原数式はつまらなさそうに溜息を吐いた。
彼の手には手のひら大程のカプセルが握られている。
「ククッ………!にしても笑える話だ。シュパーゲルの馬鹿はヘドラとやらを使って糞くだらねぇ計画考えてやがったようだが、これで御破算って訳だ」
そう言って木原は視線を窓の外に向ける。
その先には、キノコ雲のような爆煙を上げているB-29地区の中心部があった。
「軍の連中も遊びたがりだよなあ。オキシジェン・デストロイヤーなんざ、俺が暇つぶしと冗談を掛け混ぜて偶然作り上げた玩具だってのに」
やっぱ新兵器ってのに御偉方は惹かれるんだろうな、と呟きながら手に持っているカプセルを弄ぶ。
「………あの、木原さん」
「あん?何だよ、死に損ないの捨て駒野郎」
運転手の男の問いかけに不遜極まりない言葉を投げかける木原。
それに構うことなく、運転手は木原に気になっている事を聞いた。
「その…、カプセルは一体何なのですか?」
「あ?別にお前みたいな雑魚が知る必要はねーもんだよ………と言いたい所だが、暇つぶしがてら教えてやるよ」
そう言って木原はカプセルをクルクルと回す。
「このカプセルにはな、一言で言っちまえば新しい可能性って奴だ。今までの生物の既存の常識って奴を塗り替える程のな。お前らが交戦したヘドラの分離体がいただろ?このカプセルにはな、あの化け物どもを化け物たらしめていたモノが入ってんのさ。そもそもだ。どう考えても不自然だろ?B-29地区で見つかった最初のヘドラは汚染物質を食うだけで肉食性は確認されなかった。勿論、性質も穏やかで、他の生物を襲うなんて有り得ねー。だが今じゃ、あの有り様だった。何故だと思う?」
ここまで聞けば運転手も何となく察してしまう。
穏やかな性質で食性も今とは異なっていたヘドラが何故あれ程変わり果ててしまったのか。
「ま、まさか………」
「ああ。シュパーゲルの野郎はな、ヘドラにこいつを移植したんだ。それが真相だよ。………移植したのは何だと思う?そう、このカプセルの中には『ある存在の細胞』が詰まってる。つまり、こいつが元凶さ」
「俺はこの細胞をこう呼んでいる。『オルガナイザーG1』ってな。略して『G細胞』だ。こいつはな、他者の支配を決して受け入れない。G細胞を取り込んだ生物は例外なく、細胞を自身のモノにするどころか、逆に細胞に『喰われる』………ヘドラがそうであったようにな」
笑みを浮かべながら、楽しげに話す木原。
「だが、俺ならば、木原である俺ならG細胞すら制御してみせる。軍の一部の御偉方はオガスにご執心の用だが、俺から言わせりゃ人間の力じゃ電子の海ではAIにゃ逆立ちしたって勝てねーし、制御も無理だ。なら残された手段は一つ。俺たち人類自身が生物的に進化するしかない。人間としての知性と在り方を維持したまま、E.L.I.Dや人形を上回る力を手に入れる。そして、このG細胞には、その力がある。なら、やるべき事は決まってる。そうだろ?」
木原の問いに運転手はそれ以上口を開く事はなく、黙って運転を続けた。
これ以上は踏み込むべきではない。
運転手は本能でそう悟ったからだった。
「んだよ、ダンマリかよ。つまんねー奴だよなお前はよ。まあいい。さっさと帰って実験準備だ。丁度良いモルモットが手に入ったしな。ククッ………!」
そうして、彼等を乗せた車は闇夜の中へと消えていく。
その頃、鉄血司令部では………
「随分とこっぴどくやられたみたいですわね、アルケミストにウロボロス。B-29地区で起こっていた事象の真相を得るどころか、グリフィンの鉄屑や人間に遅れをとるだなんて………ご主人様も失望していますわ。どう弁明するおつもりで?」
冷ややかな目で2人を見つめるエージェント。
絶対零度というべき視線を向けられたアルケミストは特に表情を変えることもなく、黙ってこちらを見つめている。
対するウロボロスは、人間に一方的にやられた事が余程腹に据えかねているのか、ワナワナと腕を震わせていた。
「確かに、私があの人間に遅れをとったのは事実だ!だが、次こそは必ずあの人間を肉片残らず始末してやる!アルケミスト、お主も何とか言ったらどうだ!」
ウロボロスがアルケミストに声を掛けるが、何故かアルケミストは言葉一つ発しようとしない。
「おい、アルケミスト!聞いておるのか⁉︎」
返答が無い事に苛立ったウロボロスがアルケミストの身体を揺さぶる。
すると、アルケミストはどういう訳か床へと倒れてしまった。
「ああ、その娘なら残念だけど後10時間くらいは目が覚めないよ?僕がそういう風に設定しておいたからねぇ?」
突然、聞こえた男の声に咄嗟に戦闘態勢を取るウロボロスとエージェント。
声と共に何処から現れたのだろうか、黒いコートを着た青年と茶鼠色の髪をした少女が、その場に佇んでいた。
「なっ………!一体何処から!」
ウロボロスが驚く。
それに対して、青年はヒラヒラと手を振りながら笑っていた。
「なーに、ちょっとした科学の力って奴さ。こうして会うのは初めてだねぇ、お嬢さん達。しっかし、こんな簡単に侵入出来てしまうなんて鉄血も大したことないね、アッハッハ!」
何が面白いのか、ゲラゲラと笑う青年。
次の瞬間、ギィンッ!という鈍い発泡音が部屋の中に響き渡った。
発泡した主は、エージェント。
捲り上げられたスカートの中には、無骨な黒光りする複数の銃身が見えている。
「銃弾を手で逸らしたッ………⁉︎」
「やれやれ、乱暴なお嬢さんだ。スカートの中に、そんな物騒なモノを仕込むなんて、君はとんだ変態だな!」
事も投げに手の平を振る青年。
「そーら、お返しだ!」
そう言うと同時に青年の姿が消え、次の瞬間には人形の彼女達でも認識できない速度でエージェントに接近し、強烈な掌底を放った。
「グッ………!?ま、さか。貴方も戦術人形だと言うのですか!?」
壁に吹き飛ばされたエージェントは痛みに顔を顰めながらも問いかける。
「フフーフ、ざ~んねん!生憎、僕は真っ当な正真正銘の人間さ。まあ、正確に言うとこの星の人間じゃないんだけどね」
ヘラヘラと、憎たらしいほどの笑みを浮かべて自らを人間だと宣う青年の態度にエージェントは珍しく苛立ちを覚えた。
「チィッ!離れていろ、エージェント!私がやる!」
ウロボロスがそう言うや否や、彼女に装着されていた兵装『スティンガー・バースト』が展開される。
その時だった。
「まあまあ、落ち着きなって。貴方の相手はあたいだよ?」
「なッ!?貴様はーーーー!?」
茶鼠色の髪の少女の手が、ウロボロスの顔面を掴み床に叩き伏せた。
「やれやれ、君はホントに好戦的だねぇユー?大事なのは一にも二にも、対話だよ?暴力に頼ることなく話し合いで解決するのが大切だっていつも言ってるじゃないか」
「そういう統制官も手を上げてるじゃない。あたいだけが暴力を振るったみたいな言い方しないでよ」
髪をかき上げながら統制官と呼ばれた青年は笑い、ユーと呼ばれた茶鼠色の髪の少女は若干不機嫌そうに言い返す。
「拗ねないでくれよ。後でジャンボチョコクリームパフェを奢ってあげるからさ」
「ホントに!?約束だよ、統制官………………ってあれ?」
統制官の言葉に目を輝かせたユーは、違和感に気付く。
それもその筈、一瞬の隙を突いたエージェントの放った銃弾が彼女の右腕を奪い去ったからだ。
「油断大敵………………ですわね」
ユーの右腕は千切れ飛び、切断された肩口からは配線や金属が飛び出していた。
「痛いなあ。アハ、フフフ………!」
右腕が千切れたにも関わらず、不敵な笑みを浮かべ笑い続けるユー。
すると、驚くべき事に切断された肩口から銀色に光る液体のような何かが現れるとビデオの逆再生のように腕が瞬く間に修復されていく。
余りに常軌を逸脱した光景に、流石のエージェントも言葉を失う。
同じくウロボロスも驚愕に目を見開いていた。
「バカな!貴様は一体………⁉︎」
「そんな化け物を見るような目で見ないでよ。あたいも好きでやってる訳じゃないんだからさ。では改めて、自己紹介させて貰おうかな。あたいはユー。統制官の副官を務めている戦術人形。一応、UMP40っていう個体名があるみたいなんだけど、統制官に拾われる前の記憶が所々欠けていてよく分かってないんだよね〜」
そう言ってユーこと、UMP40は薄く笑う。
「さて、修復できたとは言え腕を吹き飛ばしてくれた御礼にあたいの力………ナノメタルの真価を見せてあげる」
ガシャガシャガシャッ!という音と共にUMP40の右腕が歪に変形し、怪しい輝きを放つ。
「変形完了〜っと♪そんじゃ、引力光線destroyed・sander発…」
「はいはい、ストップ。流石にそれはオーバーキルだよ、ユー?」
「統制官〜⁉︎もう、折角いい所だったのに!」
「その兵装だと、鉄血の彼女達が塵になってしまうじゃないか。ここに来た目的を忘れちゃったのかい?」
ガシッと右腕を統制官に掴まれたUMP40が頬を膨らませて頂き抗議するが、統制官は諭すようにUMP40を窘めた。
「んじゃ、本題に入ろうかな。今回僕達がここに来た理由はね、同盟を結ぶ為なんだよ。君達鉄血とね」
いきなり何を言い出すんだ、と言いたげにエージェントが困惑した表情で統制官を見る。
その反応を面白そうに眺めた統制官は、更なる爆弾を投下した。
「同盟を結んだ暁には、君達のボス…エリザに搭載されているオガスの原型となった『遺跡』のメインAI。それを『遺跡』から回収する作業を手伝って欲しい。勿論タダでとは言わないよ?見返りとして、君達のボスが欲している『M4A1』という戦術人形を連れて来てあげるからさ」
統制官の突然の同盟要請に、エージェントはどのように返答すべきか考えた。
いきなり現れた挙句、先に手を出したのは此方側といえども自身を含めたハイエンドモデル2人を圧倒した謎の男女。
しかし、敵対ではなく同盟を結びたいなどと言い出した男の真意が読めない。
『遺跡』のAIをどうこうしたい云々はともかくとして、彼等は余りにも不気味過ぎた。
さて、どうすべきか?とエージェントが悩んでいると、部屋の扉が開き、見た目が少女のような人形が入ってきた。
彼女こそ、鉄血のボス『エルダーブレイン』ことエリザである。
「いいよ、同盟。M4を連れてきてくれるなら結んであげるわ。それに貴方達面白そうだし。いいよね、エージェント?」
「ご、ご主人様⁉︎本当に宜しいのですか?」
「あら、エージェントは不満なの?別にいいじゃない、私もこの2人に興味が湧いたわ」
「………分かりました。ご主人様がそう仰るのであれば、私に異論はありません。ですが、くれぐれもお気を付け下さい」
「………うまくいったみたいだね、統制官?」
「いやあ、良かった良かった。まさか鉄血のボスがロリっ娘とは思わなかったけどねぇ。彼女を作った科学者はもしかしてロリコンだったのかな?引くわー、マジ引くわー」
もしこの場にリコリスがいたら殴られそうな事を言いながら、統制官はニヤリと笑ってみせた。
「あ、そうだわ。貴方達のことは何て呼べばいいのかしら?」
「ふむ、確かにそれは大事な事だね。ユーにはUMP40っていう名前があるけど、そうだな………取り敢えず僕の事は………」
「『X星人』………そう呼んでくれていいよ」
今ここに、鉄血と『X星人』の同盟が誕生した。
この流れが何を引き起こしていくのか、それは誰にも分からない。
〜世界の片隅における出来事〜
B-29地区から遥かに離れた崩壊液で汚染された海を、事も投げに進む巨体がいた。
赤と黄色が入り混じった大きな瞳。
泥のよいな物資で構成された体躯。
ヘドラだった。
B-29地区でオキシジェン・デストロイヤーを間近でくらったヘドラであったが、しかし絶命する事はなく、地下で身体を修復し気付かれないよう地中を進んで海へと脱出する事に成功していたのだ。
新天地を目指し、やがて辿り着いた島に上陸したヘドラは何かの気配を感じて振り返り、思わず固まった。
ヘドラはソレを知っている。
知識でなく、本能として。
ソレは『王』だった。
秩序に反するものを、焼き尽くす破壊の化身。
彼方より現れし、黙示録の獣。
ヘドラを怒りの形相で見下ろす『王』が咆哮を上げた。
ヘドラの身体を冷たい何かが走る。
それが所謂、恐怖という感情であるという事をヘドラは知らなかった。
しかし、恐怖の中にありながらも生存本能が勝ったのかヘドラは咄嗟に泥の塊を投げつけた。
投げつけた泥には崩壊液や放射性物資が多量に含まれており、並みの生物なら数分と掛からずに死に至る。
その筈だった。
泥塊を直接投げつけられたにも関わらず、『王』には傷一つつかなかった。
ならば、とヘドラは身体を群体化させ『王』の身体を取り込もうと身体に纏わり付く。
複数のヘドラに纏わり付かれた『王』は鬱陶しそうに咆哮する。
纏わり付くヘドラを引き剥がそうと暴れるが、ヘドラも必死で食らいついて離さない。
暫くすると、『王』の動きが止まった。
諦めたのか?と思うヘドラは再び『王』を取り込もうとして身体を覆っていく。
その時だった。
タービンが回るような重厚な音が響いた。
ヘドラは、その時になって漸く『王』の背中が青白く光っている事に気付いた。
次の瞬間、眩い閃光が『王』の全身から発せられ、ヘドラは己の身に何が起こったのか理解出来ぬまま、細胞一つ残すことなく消し飛んだ。
ヘドラを葬りさった『王』ーーーーゴジラは咆哮を上げると、海の中へと消えていく。
後には、何事も無かったかのような静けさだけが残されていた。
『operation detritus』
完
次章 『変態!オッパイ!野望都市!』
に続く。
エルダーブレインの口調が分からーん!
もう怒ったぞ、次の章でエルダーブレインを触手やら粘液やらでベチョベチョにしてやる!
※嘘です、そんな事はしません。
因みに次回からはオッパイ祭りです。