おっぱいフロントライン ※休載中※ 作:スクランブルエッグ 旧名 卵豆腐
指揮官達が会議室で議論をしている頃、AR小隊の面々は建物内のコンビニで暇潰しをしていた。
「あ〜あ。つまんないよ〜AR-15!何か面白い話とかないの?」
「仕方ないじゃない。私達は会議場の中に入れないんだから。ま、仮に入れたとしてもアンタじゃ話の内容が難し過ぎて1分も耐えられないわよ」
「むー!そんなことないもん!」
AR-15の小馬鹿にしたような言い方に頬を膨らませるSOP。
指揮官の警護で来たのはいいが、肝心の会議場の警備は軍が担当しており彼女達は手持ち無沙汰になってしまったのだ。
「おっ!これ見ろよ、AR-15。買ってみたらどうだ?」
ニヤニヤと笑いながらM16が陳列棚に並んでいる紙パックを指差す。
「…?『やっぱこれだね!パイパイ牛乳!これを飲めばペタンコお胸もユッサユサ!』………いい度胸ね、M16。その喧嘩買ったわ」
こめかみをピクピクとひくつかせるAR-15。
指揮官に毎回胸ネタで弄られ慣れ始めてはいるが、やはり気にはなるらしい。
「ハハッ、冗談だ冗談。だが考えてみろ。パックにも書いてある通りの効果があるとしたら、これは買いなんじゃないか?」
「さ、流石にそれはないわよ。私は人形だし、成長するわけないじゃない」
「ん?よく見たらまだ何か書いてあるぞ。何々、『当製品は人形にも効果があります』だとさ」
「買うわ」
AR-15は目にも留まらぬ速さでM16からパックを取ると、そそくさとレジに向かう。
「やれやれ、アイツももっと素直になればいいのになあ。そうすりゃ、もっ『お、おい!何だお前ら…ウワアアアアッ⁉︎』何だ⁉︎」
突如、銃声と悲鳴が辺りに響き渡る。
反射的に外を見ると、複数の武装した何者かが警備兵を殺傷している姿が目に入った。
「ッ!M4、襲撃だ!指示を!」
「M16姉さんと私とAR-15で敵に制圧射撃を!敵が怯んだ隙にSOPとROで指揮官の元へと向かって!指揮官が戻ってくるまで私達で敵を引きつける!」
「分かりました!行きますよ、SOP!」
「了解ッ!お姉ちゃん達、私の分も暴れてね!」
隊長であるM4の指示を受け、M16とAR-15が一斉に弾幕の雨を敵に浴びせ掛ける。
その間にROとSOPは素早くその場を離脱し、指揮官達のいる会議場へと全速力で向かった。
〜会議場〜
「おい、どうなってるんだ⁉︎」
「そ、それが所属不明の武装集団が現在襲撃を仕掛けてきたという緊急の報告が!」
「警備兵は何をしていたんだ‼︎早く此処を逃げなくては………」
会議場は混乱の極みに達していた。
突然の襲撃に全員がオロオロとしている。
その時、俺の無線に通信が入ってきた。
『指揮官、M4A1です。私達は今、襲撃を仕掛けてきた武装集団と交戦中です!なので、指揮官のいる会議場に、護衛としてROとSOPを向かわせました!』
「分かった。敵の規模と武装の程度は?」
『ざっと30人程。武装は一般の歩兵と同程度です!』
「了解。状況が悪いようなら撤退しろ。相手が人間だとしても、数では向こうが有利だ。俺も直ぐに合流する。通信終了」
さて、こうなるともう会議どころじゃない。
ROとSOPちゃんが来たらクルーガーとヘリアンの護衛をして貰うか。
「指揮官。加勢が必要か?」
クルーガー………?
おいおい、どうした銃を引っ提げて。
まさか現場に行こうなんて考えてる訳じゃないよな?
「そのまさかだ。お前の様子を見る限り、敵はそれなりの規模なんだろう?人手がいるんじゃないのか?」
それはそうだが………。
だが、社長のアンタが直接出向こうとするとはね。
どういう風の吹き回しだ?
「たまには身体を動かすのもいいと思ってな。お前の戦い方を見せて貰おうじゃないか」
分かった。
来るのはいいがあんまり前へ出過ぎないでくれよ?
社長のアンタの身に何かあったらグリフィンの存在自体が危うくなるんだからな。
「勿論だ。ヘリアン、悪いが君は此処にいる高官連中の面倒を見ていてくれ。パニックになった奴らが変なことをしないようにな」
「了解しました!くれぐれも気をつけて下さい!指揮官、クルーガーさんを頼んだぞ!」
そう言って、ヘリアンは敬礼をするとキビキビとした動作で慌てふためいている高官達の方へ走っていく。
それと同時に、会議場の扉が開きROとSOPちゃんが入ってきた。
「指揮官!M4から連絡があったと思いますが、一階のフロアでM4達が武装集団と交戦中です!私とSOPは指揮官の元へ合流して指揮官達を護衛しつつ避難させるようM4から伝達されました」
「状況は悪いようだな。ROとSOPちゃんには悪いが、二人には別の任務を遂行して貰う。内容は……………だ。やってくれるな?」
「それは、勿論です。ですが指揮官、貴方はどうされるのですか?」
「俺はクルーガー社長と一緒に下にいるM4達の加勢に行く。お前達はお前達の任務を確実かつ的確に実行しろ。いいな?」
「了解しました!SOP、行きましょう!」
「む〜!私も指揮官達と行きたかったけど。まあ仕方ないかあ」
二人はそう言って足早にその場を去っていく。
頼んだぞ、もしもの時はお前達が眼になってくれ!
さて、それじゃ俺も行くとしますかね。
〜一階・中央フロア〜
「チィッ!次から次へと!」
舌打ちをしながらM16は近くの柱の影に隠れて空になった弾倉を交換した。
敵何人か倒したものの、状況が悪くなるばかりだった。
それもその筈、同じ会議場の警備についていた兵士までもが武装集団と一緒になって攻撃してきたからだ。
全ての警備兵がそうではないが、思わぬ展開に流石のAR小隊も追い込まれていた。
「クソッ………裏切り者がいたとはな!M4、弾に余裕はあるか?」
「弾は2マグ分しか残ってません!AR-15は⁈」
「私も似たようなもんよ!このままじゃ、埒があかない!一掃するわ!M4、M16援護して!」
AR-15が叫ぶや否や、バッ!と隠れていた場所から飛び出す。
彼女の電脳が通常の倍以上の速度で働き、動作の一つ一つが高速になる。
「さあ…己の運命を受け入れなさい!」
AR-15の叫びと共に強烈な速射を伴う弾丸の嵐が敵に降り注ぐ。
その制圧力は並ではなく、数多くいた敵を一瞬で薙ぎ倒していた。
「ふぅ………!手こずらせてくれるわね」
「待て、AR-15!一人まだ動いているぞ!」
M16の言う通り、AR-15の銃弾を受けた敵の一人がゆらりと立ち上がる。
「嘘…!頭を撃ち抜かれてるのに⁉︎」
立ち上がった敵兵の片腕が肩口から千切れ落ち、傷口から歪で黒い巨大な腕が生える。
余りにもおぞましい光景に、AR小隊の面々は思わず顔を背けた。
「ハッ、とんだ化け物が出て来たみたいだな。気を引き締めろ!アイツはヤバイぞ!」
M16が言うと同時に、片腕を変容させた元人間の怪物は、一瞬でAR-15の目の前に距離を詰める。
「え………?」
想定外の速さに、AR-15の反応が僅かに遅れた。
怪物の腕が彼女の足を鷲掴み床へと叩き伏せる。
「あ、がっ……ぐぅ…!」
更に怪物はAR-15の胸を足蹴にし、踏み潰そうと力を込め始めた。
「AR-15が不味い、撃て!」
AR-15を助けようと、M4とM16が銃弾を怪物に叩き込むがまるで効き目がない。
しかし怪物も己に銃弾を撃ち込んでくる二人を鬱陶しいと感じたのか、身体をブルブルと震わせる。
すると、怪物の変容した腕からゾゾゾゾゾッ!と白と黒が入り混じった棘が無数に生え始めた。
「何かくる!M4、伏せろーーッ!」
直感で危機を感じ取ったM16が叫ぶと同時にズアッ!と無数の棘が凶悪な弾丸となって放たれた。
「何て奴だ………!新種のELIDか何かか⁉︎」
思わずM16は悪態をついて怪物を見る。
怪物は己の攻撃が当たらなかったのが不服なのか、今度はAR-15に棘を放とうとしていた。
勿論、足で押さえ込まれているAR-15に逃れる術などある訳もない。
「このおおおおおおッ‼︎」
AR-15も迫り来る死に抗おうと自由な両手足を振り回しすが、怪物は微動だにしない。
もう終わりだ、と誰もが思った瞬間ーーーーーーーー
怪物の背中に銃弾が降り注いだ。
予想外の方向からの攻撃に怪物が呻きをあげ、後ろを向く。
そこに居るのは、2人の人間。
グリフィンの社長、ベレゾヴィッチ・クルーガー。
そして、変態にしておっぱいに命を懸ける指揮官ことキョウヘイ・ヤマネ。
「こうして銃を撃つのは久しぶりだ。軍時代を思い出す」
「昔語りは老化の証拠だ。さて、部下が大分世話になったみたいじゃねぇか。取り敢えず…その足を退けろ」
指揮官とクルーガーの手に握られているショットガンが火を吹いた。
一点破壊に特化したスラッグ弾が怪物の頭を爆散させ、床に血潮を撒き散らす。
頭部という重要な器官を失った怪物は倒れ伏し、その骸を晒すことになった。
怪物が死んだ事を確認した指揮官は床に倒れたままのAR-15を抱え、堂々と彼女の胸を触る。
「おいおい、胸がペタンコだな。ああ、あの怪物に踏まれて凹んじまったのか?そうだとしたら実に気の毒だ。アーハッハッ「当然のように胸を揉むなぁッ⁉︎」グベラァッ‼︎」
AR-15の肘打ちが顎にクリーンヒットし、指揮官は堪らず悶絶した。
「ふ…いつになくキレのある肘打ちだ………!俺の神経が沸き立つぜぇ!」
しかし、これである。
指揮官の変態ぶりにAR-15は無表情になると平手でスパーン!と頭を叩いた。
ベラアアッ!と何処か嬉しそうな顔で5メートル程吹っ飛ぶ指揮官。
「悪かった悪かった、コルト。もうやらんから、その懐から出した棍棒を引っ込めてくれ。流石の俺もそれでぶっ叩かれたら死んじまう」
「全く、少しは真面目にやって下さい。ところで、ROとSOPは何処に?」
「ああ、あの2人は今………待て!敵がまだ1人いるぞ!」
指揮官が示した先には、さり気なくその場から逃げだそうとする1人の敵兵がいた。
「逃すな!あいつを捕まえて色々と聞かなきゃならん!AR小隊、俺と来い!クルーガー社長、アンタには悪いが軍と政治家連中の対応を頼む。ヘリアンだけじゃ多分荷が重いがだろうしな」
「………いいだろう。後は任せたぞ」
クルーガーは精悍な顔付きを崩す事もなく、颯爽と身を翻して去っていく。
「よし、あの逃げた奴を追うぞ。ROちゃん、ROちゃーん!聞っこえるかー⁉︎」
『ROちゃんって大声で叫ばないで下さい!聞こえてますから!』
指揮官のあんまりな無線越しの巫山戯ぶりにROが応答する。
ROの顔は恐らく真っ赤に染まっているだろう。
「で、ROちゃん。今しがた建物から逃げた敵が1人いるんだが、追えてるか?」
『もうROちゃん呼びは変わらないんですね………。ええと、逃走中の目標はメインストリート北西、257番ルートの路地裏を徒歩で移動中。今SOPが追っています』
「了解。ROちゃんはそのままハッキングした監視カメラで居場所を逐次伝えてくれ。俺と他のAR小隊で其奴を追う。………まあSOPちゃんが俺達より早く捕まえそうだが。やれやれ、こういう時の為に2人を配置につけておいて正解だったよ」
指揮官がROとSOPに伝えていた任務は正にこれだった。
簡潔に言うと、敵が逃走した場合の追跡要員。
高度な電子戦能力を持つROが街中の監視カメラをハッキングし居場所を逐次送り続け、追跡と捕獲に優れたSOPがその情報を元に捕らえる。
「指揮官にしては用意周到ね。普段からそれでいれば良いのに…ハア」
「はん、俺が真面目キャラに見えるか?桃色絶壁娘さんよ?」
「フンッ!」
「グブゥッ⁉︎」
胸ネタで弄る指揮官の腹にAR-15の放ったメガトンパンチがめり込む。
「ハッハッハ!2人とも、漫才はその辺にしておけよ!」
いつも通りの光景にM16が笑った。
「うるさいわね!元はといえば指揮官が!」
「はーい、出ました他人の所為〜!他人に罪を擦りつけようとするなんて性格が出てますよ性格が!そんなだから胸がアフリカ大草原なんだよ!」
「うっさい!指揮官のドアホ!バーカ!変態色ボケ男!G36に頭が上がらない雑魚の中のザーコ!」
「ああん………………?」
「何よ…………………?」
「「やんのかコラァ‼︎」」
〜路地裏〜
ふぅ、AR-15とのバトルの所為で目標と大分距離が開いちまった。
SOPちゃんが追ってくれてるが、他の仲間と合流でもされたら厄介だ。
何とかしてここで捕まえないとな。
『指揮官、目標が車を奪って逃走しています!35番通りを猛スピードで走ってます!』
クソッ、車で逃げやがったか。
そうなると俺達も奴を車で追う必要があるが………ん?
「指揮官?」
M4、あそこの工場って軍の兵器廠だった場所だよな?
「恐らくは。街に来る前に地図を記憶してきたので間違いないと思います。でもあの工場は大戦後は稼働していなかった筈ですけど………」
そうか。
いや、それだけ分かれば充分だ。
やるべき事は一つだな。
〜工場内〜
「いいもん見ーーっけた!」
ふふん、思った通りだ!
これが動けば後は問題なしだな!
「指揮官…まさかとは思うけど、コレを動かそうなんて考えてる訳じゃないわよね?」
そのまさかだぜ、コルト。
この戦車であの逃げた野郎を追う!
そうと決まれば善は急げだ、早く中に乗り込め!
M4、こいつの操縦は頼んだぞ!
俺は車長、AR-15は機銃手を、M16は砲を頼む!
「わ、私が運転でしゅか⁈」
操縦を任せられるとは思ってなかったのか、M4が噛みながら上擦った声をあげた。
「何、基本は他の車とそう変わらん。M4のドラテクに期待してるぜ!」
俺がそう言うと、M4は覚悟を決めたような顔をして操縦席に座る。
よし………!
戦車前進!
〜メインストリート〜
その日の街のメインストリートはいつも通りの日常が広がっていた。
道を行き交う車、通勤する人々。
ただ一つ、いつもと違う事をあげるとするならば。
「わあああ!ど、退いてー!退いて下さーい‼︎」
………道のど真ん中を爆走する戦車が居るという事だろうか。
………いやぁ、中々の運転じゃないかM4。
まさかお前がこんなに運転が下手だとは思わなかったよ。
変態の俺もびっくり仰天だぜ。
「M4!ハンドル切り過ぎよ!アクセルから足を離して!」
「こ、こう⁉︎ああああ!目が〜‼︎」
AR-15の指示通りにした筈なのに戦車が回転しながら前に進むってどういう事なんだ、オイ。
ん?俺は目が回らないのかって?
ハッハッハ、俺は神経と三半規管を極限まで研ぎ澄ましてるから全くもって問題ないのさ。
しかしあれだな、車体が回転してる所為なのかM4とM16のおっぱいが凄い揺れ方をしている。
これぞ、ブルンブルン揺れるバスト。
即ち、ブルンバストってヤツだな!
え?違う?
………まあいいか。
おっと、ROちゃんから通信が入ってきたな。
『指揮官⁉︎今そちらの姿を確認しましたが、何がどうなってるんですか⁈』
「カメラで見てるなら分かるだろ、戦車で街中を爆走してる」
『何がどうなれば街中を戦車で爆走する事態になるんです⁉︎』
「何でって…其処に戦車があったからだよ。そりゃあ………乗るだろ?」
『意味が分かりません!もう………!と、とにかくそのまま真っ直ぐ進んで下さい。目標は2ブロック先の14番通りを走ってます!………あ!』
「どうした?」
『敵の増援です!3台の武装した車両が、そちらに接近中!』
増援か………面倒だが、相手にせずにやり過ごすのは難しそうだ。
こうなりゃ、3台纏めて相手にしてやる。
ROちゃんは引き続き目標を追い続けてくれ。
『了解しました!ご武運を!』
通信を終了し、道路の先を見据えると確かに3台の車両が迫って来るのが見えた。
その内の一台はRPGを構えた奴が乗っている。
「M16、砲の発射準備を!」
「よしきた!任せろ!」
ウィーン!という軽快な音を立てて125ミリ滑腔砲が敵車両の方を向く。
「いいか、優先して狙うのは対戦車装備を持っている車だ!絶対に狙いを外すな!何せ街中だからな!」
「勿論だ!」
スゥ…!と呼吸を整え、M16は電脳の演算力を目と耳の挙動に集中する。
「仰角調整、ターゲットロック。………
ドオッ‼︎という轟音と共にAPFSDS弾が唸りを持って敵車両に食い込み、吹き飛んでいく。
流石に勝ち目が無いと悟った残りの車両は諦めたのか、後退していった。
「よし、このまま追いかけて………おっと」
安心したのもつかの間、今度はビルの陰から攻撃ヘリが現れた。
クソっ、ヘリ相手に戦車じゃ不利だがそんな事言ってる場合じゃねぇわな!
「M4、照準を何としてでも躱してくれ!でないと対戦車ミサイルに食われちまうぞ!」
「了解!なら、こうするまでですよ!」
な、おい!
M4、このまま真っ直ぐ走ればホテルの中に突っ込むぞ!
「当たって砕けろ、ダメで元々!って前にペルシカさんが言ってたので!」
いや、砕けちゃ駄目だろ其処は⁉︎
う、うおおおおおおおおおおおおおッ⁉︎
マジか、本当にホテルの扉をぶち破り中に突入しやがった………。
当然ながらホテルの客や従業員はあまりの事態に目を点にして呆然となっている。
「M4、お前って以外とアクティブなんだな………」
「そ、そうですか?えへへ………」
褒めてる訳じゃないんだが………ハア、まあいいだろう。
兎に角ここを出るぞ。
ホテルの壁を強引にぶち破って外に出ると、再び攻撃ヘリが追いかけて来た。
しつこいストーカー野郎め!
「これでも喰らえ!」
車載されている12.7ミリ機関銃をヘリのコクピット目掛けて撃ちまくるが、防弾仕様なのかヒビが入るが割れはしない。
「むう…弾切れか」
悪い事に機関銃の弾が切れてしまった。
まあ、元々放置されてた奴だから弾が残ってただけでも奇跡なんだろうが………間が悪過ぎる!
思わず歯噛みした俺に、AR-15が銃を片手に声を掛けてきた。
「指揮官、私がやるわ」
「無茶を言うな。お前の銃じゃあのヘリを撃ち落とせん」
「それなら大丈夫よ。指揮官がヒビを入れてくれたあのコクピットを狙えばチャンスはある!」
「ッ………!」
AR-15の毅然とした目に俺は僅かに気圧された。
………ならばここは一つ、賭けてみるか!
「分かった!あの蚊トンボを叩き落してくれ!」
「言われなくても!」
AR-15は身を外に乗り出しながら、銃の狙いを定める。
「貴方にトドメを刺すのは、この私です!」
AR-15の放った.300BLK高速弾は、吸い込まれるようにコクピットに突き刺さり赤い花を咲かせた。
「………流石だな、コルト」
「当然です。私は完璧ですから」
それ416のセリフじゃねぇか………。
ま、まあいいさ。
さて逃げた野郎はっと。
『指揮官、目標が車を乗り捨てて徒歩で逃走しています。場所を伝えるので、先回りして確保して下さい!』
了解!
サポート助かったぜ、ROっぱいちゃん‼︎
『RO、ROっぱい⁉︎破廉恥ですよ指揮官‼︎』
ふむ、この様子だと相当羞恥に顔を染めていそうだな。
帰ったら弄り倒してやるか、へへへッ‼︎
「指揮官?ROに変な事を言ったりしたら、貴方の生爪を剥ぎますよ?」
ヒェッ………それは勘弁してくれよコルトさん⁉︎
薄暗い道を一人の男が息を切らして走っていた。
彼こそ、指揮官達が追いかけていた逃走中の兵士である。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ!クソが!聞いてないぞ!何でグリフィンの人形が会議場にいたんだ⁉︎人形はいないって話だっただろうが!あのクソ野郎、俺達を嵌めやがって………!」
悪態と罵倒の言葉を並び立て、男は苛立ちを募らせる。
「何とか撒けたか………!これで…ッ⁉︎」
暫く呼吸を整えていた男は何かの気配を感じて振り返る。
だが、振り返った先には誰もいない。
「………?気のせいか…」
「見〜つけったああ〜‼︎」
男が意識を失う最後に見た光景は、頭上から己に迫り来る黒い金属製の腕と。
血のように紅い眼と狂気を感じる表情を浮かべて笑う少女の姿だった。