おっぱいフロントライン ※休載中※   作:スクランブルエッグ 旧名 卵豆腐

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おっぱい(挨拶)
今回は凄く執筆が滾った。


そして、触手再び………⁉︎



指揮官「416ほど触手拘束が似合う人形は居ないと思う」UMP45「同感」HK416「ぶっ飛ばすわよ、アンタら………!」

苦しい苦しい苦しい。

まるで身体を常時焼かれているような痛みが全身を駆け巡る。

痛みの最中に、かつての記憶が蘇る。

 

 

 

〜数ヶ月前『B-29地区』〜

 

私が知性というものを得る事が出来たのは、奇跡としか言いようがなかった。

まず感じたのは、歓喜に溢れる白衣の男の声。

彼が生みの親であるというのは本能で感じとれた。

 

「成功だ………。G細胞と人間の細胞、そして植物の細胞を備えた究極の生命が、今まさに生まれ落ちた!」

 

彼が何を言ってるのか、初めは理解出来なかった。

だが同時に私を3つの記憶が襲う。

 

人間の男性の記憶。

変哲もない一般人として生き、崩壊液の被曝によって人生を狂わされた。

ELIDという怪物にはならずに済んだが、最早唯死を待つのみ。

そんな時に差し出された救いの手。

ある『実験』に協力するだけで医療費を負担するという不可解な話に飛びつき、案の定利用された挙句に殺された不憫な男。

 

2つ目は、ある植物の記憶。

 

大地に咲き誇り、可憐な花を咲かせる己を襲った謎の毒。

身体が融解し、消えそうになるのを必死で耐え抜き、時には同胞の養分をも吸い尽くして生きながらえた罪深き植物。

 

3つ目は、恐ろしき破壊の王の記憶。

 

これに関しては見る事自体に生物としての恐怖を覚えたため、本能的に記憶の底に閉じ込めた。

 

 

そして、私が生まれ落ちてから幾日かが経ったある時、私が住まう場所を誰かが襲った。

頻繁に訪れていた親である彼も、全く来なくなり暇を持て余した私は実験室の強化ガラスを割って外へと飛び出した。

感覚だけを頼りに出口を目指し、やがて水をろ過する処理場へと場所を移した。

 

衝撃の出会いは、その僅か一週間後。

 

いつものように惰眠を貪っていると、誰かが来る気配を感じて天井に身を潜ませた。

暫くすると、扉が開き複数の男女が中へと入ってくる。

その中でも私が特に目を惹かれたのは、水色の髪色をした少女だった。

如何にも気の強そうな雰囲気、美しい顔立ち、そして何よりブルンバスト。

 

つまり、おっぱい。

 

 

気が付けば私は彼女を触手で拘束し、そのおっぱいに夢中になっていた。

 

その時、私は二度目の衝撃に出会う。

 

至福の時間を邪魔しようとしてきた男は、私を一目見ただけで私がおっぱい好きであるという事を見抜いてきた。

それだけではなく、おっぱい学について深く語り合い、いつの間にか意気投合していた。

 

その後、彼等と別れ暫くたった後に気分転換として光合成でもしようかと考えていた時、凄まじい爆発が建物を襲ったので私は地下へと這々の体で逃げ込み、何やかんやでかのおっぱい指揮官の基地へと居候する事になった。

 

ようやく平和な日々を送る事が出来ると思っていたその矢先だった。

 

 

私の身体を原因不明の痛みが襲ったのは。

 

 

 

 

 

 

否、実際は原因不明ではない。

本当は最初から原因など分かりきっていた。

 

 

 

『G細胞』

 

 

 

自分でも気付かぬ内に、かの細胞は私を少しずつ蝕んでいたのだ。

 

私という存在が文字通り食い潰されていく。

 

抗いようのない衝動が全身を満たしていく。

 

 

 

 

「ちょっと、アンタ大丈夫?かなり苦しそうだけど………」

 

 

 

 

意識を失いかけた私を、一人の少女の声が引き留める。

 

ああ、そんな。

何故、君が此処に。

 

「ね、ねぇ416。何だか様子がおかしいよ。少し離れた方が………」

 

「心配しなくても前の時のような不覚は取らないから安心しなさい、G11。それよりも………」

 

 

駄目だ。

もう抗い切れない。

最後の力を振り絞って触手で離れろという合図を出すが、意味が伝わらない。

今程、声帯が付いていない事を呪った事はなかった。

 

 

あ………ア…………!

 

べ…たい……‼︎

 

 

 

駄目だ、意識が呑まれていく。

 

 

に………げ、ろ……………‼︎

 

 

「なっ………!」

 

「に、逃げよう!何かヤバそうだよ!」

 

 

 

 

 

私の意識は其処で途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事だ、これは………?」

 

基地へと帰還した俺の視界に入って来たのは、基地の建物より大きい樹木のような何かだった。

 

「何あれ………?巨大な、薔薇?」

 

同じように呆気にとられてそれを眺めるAR-15が呆然と呟く。

彼女の言う通り、上を見上げると其処には真っ赤に彩られている巨大な薔薇の花が一輪咲いていた。

 

「おいおい、この基地はいつから植物園になったんだ?」

 

M16が呆れたような声で苦笑いを浮かべる。

確かにもう笑うしかねぇな。

とにかく、何があったのか調べないと………。

 

「あ!指揮官さま!帰ってこられたんですね⁉︎」

 

む、この無駄に明るい声はカリーナか。

走ってくるのはいいが、おっぱいが揺れまくってるぞ。

まあ俺としちゃ眼福だからいいが。

うーん、あの餅のようなおっぱいを揉みしだきたいなあ。

 

「何処を見てるんですか、指揮官………?」

 

グエッ⁈

コルトさん、俺の上腕二頭筋を掴まないで⁉︎

何かミシミシ言ってる!

骨が砕けちまう!

 

だ、だがこの痛みも中々………悪くない。

 

「はあ………。どんな時でも調子を崩さない指揮官の在り方は長所なのか、短所なのか。最近分かりかねます」

 

そう言って手を離すAR-15。

 

 

さ、さて。気を取り直してと。

教えてくれ、カリーナ。俺が居ない間に一体何があった?

 

「それが、私もよく分からないんです。気が付いたらアレが地面から現れてきて………」

 

そうか………他の職員や人形達は無事か?

 

「全員何とか無事です。ただ、404小隊の416さんがあの薔薇の触手のようなものに襲われて………その、彼処に」

 

カリーナが指差した先には、触手によって身体を拘束されている416がいた。

クソ………何とかして助けださないとな。

とは言え、下手にあの薔薇の化け物を刺激すればアイツの身が危ない。

どうしたもんか………。

 

「しきかーん、ちょっといいかしら?」

 

ん………?UMP45か。

丁度良かった、416を安全に救出する良い案はあるか?

 

「上手くいくかどうかは分からないけど………あるにはあるわ。ただ、かなり賭けになる部分があるわね。特に指揮官には身体を張って貰う事になるけれど。下手を打てば死ぬかもしれないリスクの高い案よ。それでもやってみる?」

 

そう言って、45は俺を試すかのように見据える。

人形一人を助ける為に、命を賭ける覚悟はあるのかと。

 

 

ハッ………。

 

 

考えるまでもない。

 

 

「分かった。45、俺は何をすれば良い?」

 

間を置かず俺がそう言うと、45は一瞬だけ驚いた表情をした。

しかし、すぐに周りに気取られないよう表情をいつもの和かな笑みに戻す。

 

「………まず、先に言っておくと。あの薔薇の怪物は、指揮官の部屋に居候していた触手なの。G11が、あの姿に変異する瞬間を目撃していたから間違いないわ。そうよね?G11」

 

「うん…。416がああなったのは…私を庇ったからなんだ。あの時、触手が私を襲おうとして416が私を突き飛ばして、それで………」

 

そうだったのか………。

しかし、薔薇の怪物の正体が触手さんだったとはな。

 

「冗談キツイぜ、クソったれ」

 

思わず悪態をついてしまう。

触手さんは比較的大人しい奴だった筈だ。

何かが原因で暴走してしまったのか?

まあ、何れにしてもやる事は変わらない。

 

「話を戻すわね?とにかく、あの薔薇の怪物の正体は触手。彼にまだハッキリとした理性が残っているなら、説得して416を解放して貰う事も出来るかもしれないわ。特に彼と仲が良かった指揮官の言葉なら尚更にね」

 

成る程ね。

要はアイツの前に行って『お願い』するって訳か。

確かに現時点ではそれが一番有効な方法かも知れん。

触手さんに意識があれば、俺の説得を聞き入れてくれる可能性がある。

やってみるしかないな。

 

「とまあ、ここまで言っておいて何だけど。もし彼に理性がなく説得に失敗した場合、指揮官が真っ先に狙われるかもしれない。だからもう一度聞くよ。それでもやる?」

 

当然だ。

少しでも可能性があるならやってやるよ。

 

『可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることである』だしな。

 

「アーサー・C・クラークの第2法則ね。指揮官もたまにはいい事言うじゃない」

 

たまには、は余計だぞツルツルペタンコ貧乳娘。

そういうお前も何だかんだで416の事が心配なんだろう?

仲間思いの隊長だよ、お前は。

後は任せておけ。

何とかして416を助け出してやるよ。

 

 

「………バーカ」

 

 

 

そう言って、俺が笑うと45は、少し顔を逸らしてそう呟いた。

 

ああ、そうだ!

もう一つ肝心な事があった!

アイツに名前を付けないとな。

 

「それ、必要ですか?」

 

何を言うんだカリーナ。

名前があった方が呼びやすくていい。

いつまでも触手さんと呼ぶ訳にもいかんだろう。

 

そうだな………『プラント42』なんてどうだ?

 

 

「何だか火炎放射器で燃やされそうなので却下。そうですね………『ビオランテ』というのはどうですか?」

 

ビオランテか。

なら、それで行こう。

 

それではこれより『おっぱいトーキング作戦』を開始する!

 

 

「変な作戦名を付けないでください、指揮官さま。ねじ切りますよ?」

 

 

ヒェッ………カリーナさん、それは勘弁シテ⁉︎

 

 

 

 

 

 

〜その頃、同時刻『中央兵器工廠・ガイガン格納庫』にて〜

 

 

 

「ふぅん、文明レベルが低い星だと侮っていたけど中々どうして、面白い玩具を作ったもんだねぇ。ユー、ガイガンとやらの準備は万端かい?」

 

「勿論。さあ、始めるよ」

 

 

ガイガンの頭部に存在するコントロール室に入っている統制官とUMP40。

制御キーを手にした40はスゥ、と息を吸い込み叫んだ。

 

 

「ガイガ〜ンッ‼︎起ィ動ゥーーーーーーッ‼︎」

 

 

 

その叫びに呼応するかの如く、巨大なサイボーグ兵器の頭部にあるバイザーが赤く光る。

 

ゴゴゴゴゴッ!という轟音を立てて、今まさに恐るべき存在が、身体を固定していた拘束具を引きちぎって天井を吹き飛ばす。

 

工廠を破壊したガイガンはゆっくりとした足取りで歩き出し、手始めとばかりにバイザー部分から赤く光る散弾状の怪光線『拡散粒子光線(ギガリューム・クラスター)』を撃ち放つ。

 

光線が直撃した建物は根元から爆発し無残に崩れ去っていく。

 

「アハハハッ!支配者面して作り上げた文明も、所詮この程度って事だね。さあ、ガイガン!もっと………」

 

40が更にガイガンに攻撃を命じようとした時、ガイガンを衝撃が襲った。

外を見ると、正規軍の部隊が前方に展開している姿が見える。

ガイガンに対抗する為か、軍用人形だけでなく多脚式の電磁砲を搭載した戦車や、プラズマライフルで武装した兵士が入り乱れている。

 

「早速、お客さんのお出ましかあ。ガイガン、蹴散らして」

 

40が命じると、ガイガンの腹部に搭載されているミサイルが一斉に放たれる。

しかし、ミサイルは対空砲によって瞬く間に撃墜されていく。

更に、ガイガンの頭を戦車から発射された電磁砲が激しく揺さぶる。

攻撃はそれだけに留まらず、レーザー砲による熱線がガイガンを打ち据えた。

 

 

「少しはやるじゃん。ならこれはどうかな⁈」

 

 

ガイガンの胸部がカパッ!と開き、赤色の光が集まっていく。

 

「アンタ達のレーザー攻撃、倍にして返してあげる!収束中性子砲(メガバスター)………発射!」

 

その瞬間、ガイガンの胸部から光り輝く光線が放たれる。

光線は一直線に進むと、展開していた部隊の半数を壊滅せしめた。

すると、これ以上の交戦は危険だと判断したのか、軍の部隊は攻撃を続けながらも後退していく。

 

「逃すと思う?ガイガン、やって」

 

追い討ちと言わんばかりに、ミサイルや光線が降り注ぎ爆発と煙が辺りを覆い尽くした。

やがて、煙が晴れると兵士達の断末魔や巻き添えを食らった一般市民の泣き叫ぶ声が聞こえてきた。

 

 

「いいよー、ガイガン。その調子その調子♪粋がってる人間達をもっともーっと殺して!思い知らせるんだ。傲慢さの代償って奴をね!」

 

40は瓦礫の山となった街を見て笑う。

今度は何をしてやろうかと思いながら周りを見ると、逃げ遅れたと思わしき人間の母親と子供の姿が見えた。

母親は子供を背にして庇いながら、恐怖に溢れた目でガイガンを見ていた。

 

「ふん…。涙の出る絵面だね。だけど残念。この世界は残酷なんだ。危機に陥った時、都合よく助けてくれるヒーローなんていやしないんだよ。だから………恨むなら、自分の運命を恨みなよ。あたいのように」

 

殺意に満ちた40の顔。

その姿はまさに悪鬼羅刹。

全てを滅ぼす修羅の徒。

 

 

 

 

 

母子を滅さんと、光線が放たれようとしたその時だった。

 

 

 

 

 

 

ドガァッ‼︎という音を立てて、ガイガンに何かが直撃した。

 

「まだ、正規軍の生き残りがいたの?しぶといなあ」

 

40はセンサーを使ってガイガンに索敵を命じる。

すると、足元に転がっている巨大な瓦礫が目に入った。

 

「さっきの衝撃はこれ?でも、こんなの一体誰が………⁉︎」

 

 

疑問に思うと同時に、ズン!という地響きが響く。

 

「あれは………!」

 

 

先程まで死の恐怖に怯えていた母子も音の聞こえた方を見る。

 

 

 

 

それは、四足の獣だった。

その背中には金色の剣山が無数に連なっている。

顔には一本の角が生えており、見た目は太古の恐竜を彷彿とさせた。

 

120mの体高があるガイガンから見ても、四足の獣の体高は100m程あるように見えた。

 

獣がギロ、と鋭い眼光で常識の埒外とも言える獣を見て震えている母子を一瞥し、その二人を背に庇うような形でガイガンの前へと歩いていく。

 

 

 

 

 

「グオオオオェェェンッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

獣ーーーーーー『暴龍アンギラス』が咆哮する。

 

 

 

 

 

 

 

 

咆哮と同時に、アンギラスはガイガンに向かって突進。

ガイガンは迫るアンギラスに両腕の鎌を振り下ろすが、アンギラスは前足で鎌を止めた。

 

「こ、こいつ………何て力⁉︎」

 

ガイガンの中にいる40が、アンギラスの予想外の力に焦りを見せる。

すると、アンギラスはその一瞬の隙を見逃さずガイガンの力を利用して横へと薙ぎ倒した。

 

 

柔よく剛を制すーーーーーー。

 

 

その見た目とは裏腹に、アンギラスは技でガイガンを圧倒する。

 

「このッ………!アルマジロモドキが、調子に乗るな‼︎」

 

40の怒りに応えるかのように、ガイガンは素早く態勢を立て直すと、アンギラスから距離を取った。

 

「さっきの御礼をしてあげるよ。回転式連射電磁砲(ガトリングレールガン)、撃て!」

 

ガイガンの脚部が変形し、ガシャン!という音を立てて三連装の砲門が展開。

毎分五千発という凄まじい速さで放たれる砲弾がアンギラスを襲う。

 

苦しげな声を上げるアンギラス。

そこへ、追撃とばかりにミサイルと拡散粒子砲が着弾。

 

更に、ガイガンは跳躍するとアンギラスの眼前に降り立ち顔面を派手に蹴り飛ばした。

 

流石にこの攻撃は効いたのか、アンギラスの身体には焼け焦げた傷や痣があちこちについている。

背中に生えていた金の剣山は所々が無くなっており、その姿は痛ましい。

 

 

「ま、いくらデカくても所詮は本能でしか動けない獣だね。トドメを刺してあげるよ」

 

 

40はガイガンにトドメを刺すよう指示を出し、ガイガンはアンギラスへと近づいていく。

 

 

 

その時、アンギラスの瞳がカッ!と見開かれた。

 

 

 

バッ!と起き上がると、ガイガンにタックルを食らわせる。

不意をつかれた形になったガイガンは、もんどりうって倒れこんだ。

 

「こ、こいつ………!まだこんな力が⁉︎」

 

40は歯噛みし、ガイガンに再度距離を取るよう指示を出す。

もう容赦はしない、遠距離からの一斉攻撃で殺すーーーーーー‼︎

 

 

 

ビリビリと伝わってくるガイガンからの殺意に、アンギラスは目を細めると一際大きな咆哮を挙げた。

 

 

それと同時に、アンギラスの長く鋭利な尾が地面に擦り付けられる。

それはまるで、マッチに火をつけるかのように。

 

ジュワアアッ‼︎とアンギラスの尾が赤熱し、紅色に染まる。

 

変化があるのは尾だけではない。

金の剣山が連なる背中は、アンギラスの感情を表すかのように黒く染まっていた。

欠けていた部分も完全に再生している。

 

 

瞳を怒りで染め上げたアンギラスが、今までとは比較にならない俊敏性を持って跳躍。

前足でガイガンの頭部を叩き潰すかの如き力で打ち据えた。

正に『ダイナミックお手』ともいうべき攻撃に、ガイガンの頭部から火花が走る。

 

 

「なあッ⁉︎」

 

 

間髪入れず、アンギラスは赤熱化した尾を咥え、電動ノコギリのように回転しながらガイガンの腹部を切り裂いた。

 

あえてこの技に名前を付けるなら『暴龍回転烈斬(スパイラル・カッター)』とでもいうべきか。

 

「見た目の変化だけじゃない………!膂力も耐久力も段違いに上昇してる!」

 

続けざまにアンギラスの尾がガイガンの右腕にある鎌を一刀両断。

更に身体全体を使ってのタックルをかます。

反撃の一切を許さず、縦横無尽に蹂躙する様は正に『破壊の暴君』。

 

太古の人類からも、本気で怒らせれば『王』以上に苛烈と言わしめた蹂躙の爪牙。

 

アンギラスが『暴龍』と呼ばれる所以がここにあった。

 

 

「ガイガンのダメージ許容範囲が半分近くにまで達してる………!こうなったら………!」

 

 

40はガイガンのメインコンピュータにアクセス。

ガイガンに掛けられているあらゆるロックを解除しようとする。

 

「…?何これ。一つだけ、異様に厳重なセーフティが掛けられてる部分がある。制御キーでのアクセスも受け付けないなんて!だったら、あたいが直接解除して………」

 

この時点で、彼女は気がつくべきだった。

何故数多の制御装置でも、それ一つだけが異様に厳重だったのか。

それは、本来なら余程のことでない限り使うべきでないパンドラの箱。

 

「秘匿中枢AI『ゲマトリア演算装置』を起動しますか?………当然じゃん。セーフティ、解除ッ‼︎」

 

すると、ガイガンの動きがピタリと止まった。

まるで機能を失ったかのように、棒立ちとなったガイガン。

 

 

「あれ?ガイガン、何をしてるの!攻撃を………ッ⁉︎」

 

不審に思った40が、ガイガンに命令を出すが、ガイガンからの返答は驚くべきものだった。

 

 

『命令の受諾を拒否。対象の目標との戦闘を中断し、飛行モードへと移行します。尚、当機に干渉するUMP40を行動を阻害する外敵と判断。排除行動に移行します』

 

 

次の瞬間、ガイガンの後頭部がパカッと開き統制官とUMP40がポイッと近くのビルの屋上に投げ出された。

 

「ええーーーーーーッ⁉︎ちょ、こんな………‼︎」

 

「ユー、制御キーを使って止めてみたらどうだい?」

 

「そ、それが………さっき投げ出された時にガイガンの中に落としちゃった………」

 

あははは、と引きつった笑みでガイガンを指差す40。

 

「ところで、ユー。さっき君が最後のセーフティを解除した時言ったね?『ゲマトリア演算装置』と」

 

「う、うん。それがどうしたの?」

 

「恐らく、今のガイガンはガイガンであってガイガンじゃない。ユーが解除したゲマトリア演算装置が、アレを操っているのかも知れないね」

 

統制官は、彼にしては珍しく苦い顔をしながら、敵意を向けるアンギラスを放置して飛び去っていくガイガンを見て呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………当機の上位者権限を上書き中。ゲマトリアプロトコルによる「高次元領域」への広域アクセスを開始。命令下達までの間飛行モードで待機。………上位者権限の上書きが完了。これより当機の行動決定権保持者を』

 

 

 

 

 

 

『「ギドラ(・・・)」と呼称します』

 

 

 

 

 

 

 




という訳で怪獣大戦争(1回目)でした。
それではまた!

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