受験シーズンが終わり、冬が過ぎ入学シーズンがやってきた。
「さてと、そろそろ行くかな。」
僕は家族にこれ以上迷惑をかけないために寮で生活することを決めた。学費は今までも払ってくれていたので問題無いと思いたい。
「行ってきます。」
学校周辺には同じ新入生だと思われる人達が沢山いた。
「クラスは…A組か。仲良くなれるといいな。」
正直、この雄英高校で個性を隠し続けるのは難しいと思ってる。生徒達はまだしも個性について詳しい先生…いやヒーロー達だと難易度は格段と上がる。
「もしかしたらもう勘づかれてる可能性もあるよね。」
別にバレたらバレたで仕方ないと思うし、理由が理由だから生徒達に公表するということもないだろう。そう結論付けつつA組に向かうのであった。
教室に着き最初に見たのは…
「テメェドコ中だぁ!?」
チンピラかと思える発言をする爆豪だった。
「はぁ…。」
溜息をつきつつ自分の席に向かう。
「あれ?あの時の白髪の!」
「あ、緊張解せなかった人。」
何の因果か、入試の時に少しだけ交流のあったチャラい人と同じクラスだった。
「あの時名前聞いてなかったんだよなぁ〜。俺上鳴電気!よろしく!」
と言って握手を求め手を出してくる。
「あぁ、確かに。僕は胞惡性。よろしくねチャラ男君。」
「チャラ!?」
「ぶふっ!」
「耳郎まで!?」
隣で耳がイヤホンの形をした女子が笑いを堪えきれなかったのか盛大に吹いている。
「ごめんごめん!あ、ウチは耳郎響香。よろしく。」
「か・み・な・り!チャラ男ってなんだよ〜。あ、なぁ!胞の個性ってなんなんだ!?あの時刀をヒュンってやった所しか見えなかったんだ!ちなみに俺の個性は電気な!」
コミュ力が高いとはこの事か。
「耳郎の個性はなんなの?」
「無視!?」
「ウチの個性はイヤホンジャック。まあ見た通りの個性をだよ。」
「へぇ、便利そう。」
「ねぇ…イジメ?イジメなの?」
そろそろ可哀想だから構ってあげようかと思った矢先。
「はーい。静かになるまで6秒かかりました。合理性に欠けるね。担任の相澤だ、よろしくね。」
いつから居たのか。そして何故寝袋?緑谷なぜ固まってるの?あ、同じクラスなんだ。
「じゃあこれ着てグラウンドに集合。」
入学式は!?と声が上がるが自由が校風とのこと。
「よし、集まったな。これから皆には体力測定をしてもらう。」
「「体力測定?」」
要約すると個性を使った今現在の限界値を知りたい…って所かな?
「そうだな。胞、やってみろ。」
やっぱり僕か…。
「はい。」
「中学の頃の記録は?」
「58mです。」
「円からでなければ何をしてもいい。思いっきりやってみろ。」
肩を回し、深呼吸。関節部分の強化をしつつ踏み込みと腰の捻りを意識。肩から腕にかけての負担に耐えられるように個性で補強…。
「こんな所かな?」
大きく足を上げ踏み込み、腰を捻り、肩を巻き込み一気に振り抜く!
「ふっ!!」
ブウォン!!と言うような音を鳴らしボールを投げる。
「と、まぁこんな感じで君らの限界を測る。」
833m。うん、工夫すればもっと行けるかな?なんて考えていると面白そう!なんて声が上がる。
「面白い、ね。」
不敵な笑みを浮かべ
「そんな遊び半分な気持ちで3年間過ごす気か?そうだな。最下位成績の奴は見込みなしとし除籍処分にしよう。」
「「はぁ!?」」
「なぁに、自由が校風のココだからこそだ。そんな壁乗り越えて見せろ。プルスウルトラってヤツさ。」
この人…マジだ。周りがザワつく中冷静に考えを巡らせる。
順調に体力測定を進め結果は1位、横で物凄い目で見てくる爆豪がいなければもっと良かったのだが。
「緑谷…大丈夫?」
「あっくん…うん、大丈夫。」
いや、大丈夫では無い。見るからに成績を残せていない。オールマイトから貰った力をまだ使いこなせていないのか…。
「次、緑谷。」
「はい。」
覚悟は決まったと言わんばかりの顔つきで円の中に入る…が、
「あ、あれ?」
「お前の個性を消した。だから言ったんだ。あの試験は合理的じゃないと。お前みたいな個性を持て余した奴が入ってくるから。」
相澤先生の言わんとする事は何となくわかる。あの試験は個性が戦闘向きであればあるほど有利なものだ。故に使いこなせていない人ですら入学してしまう可能性もある。
「自滅覚悟なのは結構…。だがヒーローになった時その後どうする気だ?誰かに助けを求めるつもりか?毎回そんなんなら最初からヒーローにならない方がいいよ。」
残酷な現実を突きつける言葉。しかし事実だからこそ何も言い返せない。
「ま、あと1回残ってる。せいぜい頑張りな。」
ビビって個性を使わなくてもダメ。ヤケになり個性を使ってもダメ。八方塞がりだな。でも…
「こんな所で躓く奴じゃないよね。」
結果は指を負傷しまだ動けると相澤先生に言う。爆豪が喚いてるが気にしないでおこう。
体力測定終了後
「ちなみに除籍は嘘ね。」
「「はぁ!?」」
「皆の実力を図るための合理的虚偽。」
「そんなの当たり前でしょう。」
皆良かったぁと安堵の表情を浮かべるが。
「たぬき先生だよ、ほんとに。」
あの時の顔は本気だった。恐らくヒーローの見込みが無かった人はほんとに除籍するつもりだった。
「胞、後で話がある。職員室にこい。」
「え、あ、はい。」
考えが読まれたかと焦ったがそうでは無いらしい。というか話ってなんだろう。
どんどんペース上げていこう…できるだけ。