非現実的。いや、有り得ないと思って出来事が実際に目の前で証明された時、人はどのような行動を取るのか?
私の場合は現実逃避という行動をした。だが、それは空を飛ぶ虹色のアレの所為で強制的に引き戻された。なぁに、あれ?
とは言え、何時までも現実逃避という行動はできない。意識を戻されたのならば、現状を見定めて現実を受け入れるべきである。と言う訳で、私は視線を前に戻す。
「ピッ?」
首を傾げて、私に向けられる目は、およそ邪気というものが介在しない子供のような瞳だった。
うん。どこからどう見てもピカチュウである。
「ピッカチュ!」
ピカチュウは私に向かって手を上げて声を上げる。挨拶をしてくれたのだろうか? だとしたら嬉しいのだが、絶賛混乱中の私には同じように手を上げることしかできないよ?
「ピカ、ピカチュ!」
私の挙手を返事と受け取ったのか、ピカチュウは私の方を見ながら別の方向に指を向ける。それが示す先には、木の実が無くなって空になった木箱があった。
なんだ? もっと木の実を寄越せってことか? 何という食いしん坊だ、デブチュウと呼んでやろうか?
取り敢えず私は一度頷くと、ピカチュウを置いて広場を後にした。
◇
新しい木の実を取りに森の中を駆ける。私は今、少しでも先程の光景を考えないようにしたかった。現実感がない、有り得ない、なんでピカチュウが居るんだ? きっと虹色の鳥の所為だ、アレの所為で私の頭が整理する時間を奪われた。つまりにピカチュウが現れたことは問題視するようなことではない。
そんな訳あるかぁぁぁあああああああああああああ!!!?
ここ、現実だよね!? 実は夢の中とかじゃないよね!? 私が突然、別の場所に来てしまったとか有り得ないよね!?
私は森の中を駆け回りながら周囲に目を向ける。
知っている光景だ、私がいつも遊んでいる森の中だ。リスがいる。イタチがいる。キツネがいる。シカがいる。それは、いつも通りの光景であり、この山は私の知っている山だという証拠である。
いや、だったらなんでピカチュウがいるんだよぉおおおおおお!!!?
いけない、思考がループしている。こういう時は別のことを考えるべきだ。もう一度、ちゃんと現実逃避して情報を整理するんだ。取り敢えず、木の実を取りに行こう。
そんなことを考えていたのだが、私は既に新しい木の実を腕に抱えていた。もはや頭と身体が別々になって行動しているようだ。
これは一度冷静にならなければならない、頭を冷やすべきだ。
―――ドッボーン!
ふう、夏だけど川の水は冷たいぜ! ………いや、ちょっと待て私の身体! 頭冷やすってそういう意味じゃないから! 物理的に冷やすんじゃなくて、思考を落ち着けるってことだから!
あぁ、でもこうしていると昔も川で遊んでいたことを思い出すなぁ~。
―――グニュ
そんなことを考えていると、川の底で何か柔らかいモノを私は踏んだ。なんだろうと思って手で掴んで川から出してみると、それは子供用の小さな靴だった。
そう言えば、昔遊んでいるときに溺れかけて持ち物を何個か失くしちゃったことがあったっけ? その時は助けてもらったから、大慌てになっていたような記憶がある。あんまり覚えていないけど。
今の私だと、流石に
とりあえず私は、冷やした木の実と靴を持って広場に戻ることにした。あれ? そんな理由で川に来たんだっけ?
◇
「ちゃ~」
広場に戻ると、やはりそこにはピカチュウが居た。いよいよ本格的に現実を受けいれなければならない。
そんな私の葛藤など知らないとばかりに、目の前のピカチュウは私が持ってきた木の実を美味しそうに食べている。
「レビィ!」
更にその隣では、2本の触覚のようなものが付いて透明な羽のついている全体的に緑色の妖精が木の実を頬張っていた。
……………なんか増えた!?
「レビィ! レビィレビィ!」
お前もか! お前も木の実を寄越せってか!? 良いよ良いよ、沢山取って来たから好きなだけ上げるよ、だから服を引っ張るな、はだけちゃうだろ!
そうして私は二匹の食いしん坊に全ての木の実を差し出した。ピカチュウは満足したようでその場で丸まって眠ってしまった。自由過ぎるだろ!?
それで妖精の方は―――
「レビィィィイイイイイ!!!」
なんかメッチャ光り輝き始めた。その光は、まるで周りの木々に脈動するかのように伝わり、一際は強く発光する。その光量は余りにも強く、私は思わず目を閉じた。
いや、ちょっ、これぇえええええええええ!?
そうして私は、光の中に飲み込まれた。
セレビィの声って、これでいいのだろうか?