『お話』は既に終わり、完結した作品への蛇足である。
でも、そんなものであっても欲しいと思うのだったら、読んでみるのもいいかもしれない。
森の中を私は歩く。ここを去る以上、この森の姿はコレで見納めだ。
ゆっくりと、しっかりと、じっくりと、ここが私の生まれた場所であり、育った場所であり、生きた場所であることを思いながら、少しずつ前に進む。
もう、新しい『ばけのかわ』は被った。あとはこのまま、気の向くままに別の土地へ行こう。なるべく、この山から離れよう。あの子に会わないようにしよう。
◇
どれくらい時間が経っただろうか?
これで最後だと考えて、山の中をグルグル回るように遠回りして出口に向かっていた。
でも、それももう終わり。
ここから外に行けば、もう私を知っている者は居ない。ここを通れば、この思いもきっと切り替えて行ける筈だ。
じゃあ、さよならだ……。
「ブイ!」
……?
「ブイ! ブイブイブイ!」
「パッチ! パッ!」
「コン! ココン!」
「シーキ!」
……………。
私の目の前に、4匹の動物がいた。あの、彼女のフリをして広場に置いた木の実を食べていた4匹だ。
「パッチ!」
白い体に水色の模様が付いたリスは、頬にパチパチと電気を走らせる。
「ブイブイブーイ!」
両腕にヒレと首の回りに浮袋が有るイタチは、後ろ足で立ちあがると両腕を組む。
「コーン!」
尻尾が6本に分かれて毛がカールしてる赤いキツネが、ジッとこちらを見ている。
「シキシキ!」
今の四季が夏なので緑色の体毛になっているシカが、道を遮るように立っていた。
「……………」
これはなんなのだろうか? どうして私を通らせないように道を塞いでいるのだろう。
もう、私がこの山に居る理由は無い。私はこれから、山の外で生きていく。どうせ私は一人なのだ、なんの後腐れも無い筈だ。
「ピーカーチュ!」
今度は後ろから声が聞こえた。聞き間違える筈もない、あのピカチュウの声だ。まさかピカチュウまで私の邪魔をするつもりなのだろうか? そう思った私は、その直後に聞こえて来た声に、目を見開いた。
「待って! 待って、ミミッキュ!」
「!?」
その声を、私は知っている。その顔を、私は知っている。その人間を、私は知っている。
山の奥から、ピカチュウと一緒に息を切らせながら走って来た女の子は、先ほど広場で見た時よりも明らかに泥だらけだった。
「やっと、やっと見つけた」
荒い呼吸をしながら、女の子は私を見て来る。
まさか、ずっと私を探していたとでもいうのか? こんな、泥だけになるまで――
「良かった。もう一度あえて、本当に良かった」
なんで、なんでなんだ! やっと、踏ん切りが着いたのに! やっと、諦めることを受け入れたのに! なんで! 今になって! 君は、私の前に現れたんだ!
避難の目を、女の子に向ける。だが、そんなことなど気にもしないように、女の子は屈んで私に笑いかける。
「ずっと、お礼を言いたかったんだ。あの時、私を助けてくれて――――」
ありがとう
「っ! ――ッ!」
私は、うつむいた。目から出て来る水を、見られたくなかったからだ。
違うんだ、助けられたのは私の方なんだ。水遊びをしている君に不用意に近づいて川に落ちた私が悪いんだ。
君を危険に晒したのは私の方なんだ。君にお礼を言われる資格なんて、私には無いんだ!
「ねぇ、ミミッキュ? 良かったらなんだけど、私のお願いを聞いてくれないかな?」
「っ!」
なんだ、どんなお願いだ? なんでも言ってくれ! 私に君へお礼を――いや、
「私と、友達になってよ!」
「――――――ッッッッッ!!!!!」
あっ
ああぁ……
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!
そうだ。私は、君を見つけて、友達になりたくて、近づいたんだ。
一人は、さみしくて! 一匹は、さみしくて! 私も、皆と、仲良く遊びたいのに、私の姿は恐ろしいから! それでも、友達になりたくて!
限界だった。目から溢れて来る水を止めることができなかった。そんな私の姿を見た女の子は――
「おいで、ミミッキュ」
笑顔で私に腕を広げてくれた。
「キュー!」
それに私は、恥も外聞もなく全力で女の子に飛び込んだ。
ある地方のポケモンリーグで、新しい殿堂入りトレーナーが生まれた。
持っていたポケモンは僅か6体であるにもかかわらず、みごとチャンピオンとのバトルで勝利を収めた少女。
殿堂入りした彼女が記念撮影された写真には彼女のポケモンである『パチリス』『フローゼル』『キュウコン』『メブキジカ』『ピカチュウ』そして、彼女の腕に抱きかかえられている『ミミッキュ』の姿が映っていた。
これにて本当に完結です。ご愛読ありがとうございました。